敏腕クリエイターやビジネスパーソンに仕事術を学ぶ「HOW I WORK」シリーズ。今回は株式会社ヌーラボのファウンダー&CEOの橋本正徳(はしもとまさのり)さんの仕事術をお聞きしました。
橋本さんは2001年からJavaとPHP言語を主に使うプログラマーとして働き、2004年に福岡でヌーラボを立ち上げました。ヌーラボは、「チームで働くすべての人に」をコンセプトに、プロジェクト管理ツール「Backlog」やオンラインで図を共有できる「Cacoo」、チャットツール「Typetalk」など、仕事を楽しく、コラボレーションを促進するサービスを開発している会社です。近年はニューヨーク、シンガポールに支社を設立し、台湾、ベトナム、アリゾナにリモートのスタッフを置くなど、世界展開も図っています。
1. 「これがないと生きられない」アプリ/ソフト/道具は何ですか?
iPhoneです。家族からも、会社の皆からも、iPhone中毒と思われているくらい利用しています。ひとつのデバイスで、書籍を読んだり写真を撮ったり、オンラインのニュースを読んだり、困りごとを検索して解決したり、英語辞書として使ったりと、さまざまなことができるので非常に便利です。また、ソーシャルネットワークやダイレクトメッセージなどで世界中のいろいろな人にコンタクトできるので、ネット上の世界が手のひらに収まっているようなイメージで使っています。2. 仕事場はどのような環境ですか?
場所は、福岡県福岡市の大名というところにあるオフィスビルです。7階建てのオフィスビルで、周囲にはラーメン屋が4件ほどあります。建物内は、2階にエントランスおよび、ミーティングルームと管理部の部屋があります。3階はセミナールームで、各種勉強会などを開催したり、社外の皆さんにも利用してもらったりしています。
6階が、プログラマーなどがいる開発室です。7階が、社外の人も訪れることのできるカフェスペースになっています。僕が働いているのは、2階管理部と6階開発室に置いてあるスタンディングディスクと、7階のカフェスペースのいずれかです。気分に応じて使っています。最近は、基本的に立って仕事しています。落ち着きのない性格のようで、じっと座っていることができません。各部屋をうろつきながらiPhoneで仕事していることもあります。
3. お気に入りの時間節約術は何ですか?
自分のことを時間の浪費家だなあと感じながら仕事しているので、時間節約術は持っていないと思っています。強いて言えば、沢山承認を得ないといけないワークフローに沿ってものごとを進めるのが苦手なので、そのような場面に出会った場合は、ダイレクトにワークフローの終わりの方に話をしに行くか、もしくは端から諦めるかのどちらかを選択するようにしています。結果的にかなりの時間を節約することができますが、オススメはできません。
4. 愛用している、仕事をうまく進行させるためのツール(ToDoリスト、アプリ、道具など)はありますか?
もちろん、自社製品であるプロジェクト管理ツールのBacklogや、作図ツールのCacoo、チャットツールのTypetalkを愛用しています。
他には、ミーティングではホワイトボードなどを使うことが多いです。空中で会話することが発生しないように、気をつけています。もっと上手に仕事を進行していきたいと思っているので、いいやり方などがあったらどんどん真似していきたいです。
5. 携帯電話とPC以外で「これは必須」のガジェットはありますか?
特にありません。極力手ぶらでいたいので、今後も特に欲しいガジェットはないと思います。iPhoneだけで十分。
6. 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?
基本、1箇所に落ち着いて仕事していることがないので、音楽は聴いていないのですが、聴いているときはテクノ・ミュージックが中心です。ここ最近だと、石野卓球さんのアルバム『LUNATIQUE』。他には曲が途切れないDJがミックスした音源なども聞いています。1995年に田中フミヤさんがリリースした『I Am Not A DJ』なんかは今でも仕事中に聴いていたりします。
早歩きしているときと同じBPM130前後くらいのテンポが脳にフィットするなあと感じています。仕事中の音楽に関しては、派手な展開などがないミニマル・ミュージックのようなものが良く、最低、ベース・ドラムの4つ打ちが鳴っているだけでいいと思います。7. 仕事において役に立った本、効果的だった本は何ですか?
ダイヤモンド社から出ている『ザ・○○シリーズ』は読んでいてとても面白かったし、多くを学べました。『ザ・プロフィット 利益はどのようにして生まれるのか』では利益モデルのパターンを学習しましたし、『ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か』ではTOC(制約理論)を知り、『ザ・ファシリテーター』ではファシリテーションとその効果を知りました。
あとは、キース・ソーヤーさんが原著の『凡才の集団は孤高の天才に勝る グループ・ジーニアスが生み出すものすごいアイデア(原題:Group Genius: The Creative Power of Collaboration)』は、現在の会社「ヌーラボ」のコンセプトを見つけ出したときに出会った書籍で、「コラボレーション」について深い実験をしている書籍でした。以上、全部オススメです。特にヌーラボの社員の皆様には是非、読んでおいて欲しい(笑)。
8. 現在、どんな本を読んでいますか?
本はあまり興奮を覚えなくなってしまって読まなくなっているのですが、一番最近読んだのは『Sprint: How to solve big problems and test new ideas in just five days』という洋書です。英語の勉強がてらもありますし、自分の仕事にも関係あるし、アメリカで人気のある書籍だったのでつい読んでしまいました。
こういう実践的なビジネス書を読むと、実際に行動したくなってソワソワしちゃって、最終的には書籍自体を放り出して動いてしまうことが多いので、最後まで読み切るということが少ないです。どうにか落ち着いて最後まで読めるようになりたいと思います。
9. 睡眠習慣はどのようなものですか?
iPhoneでニュースやソーシャルネットワークなどを覗いてしまって、どうしても午前2時くらいになってしまいます。起きるのは午前8時くらい。休日は寝続けるつもりもないのに寝すぎてしまうことも多く、ちょっと困っています。睡眠習慣としては、とても良いとは言えない状況かもしれません。
10. 仕事をよりよく進めるために「習慣」にしていることはありますか?
習慣というわけではないのですが、笑顔であることと、ミーティング中の笑い声は自然でいて、かつ大きく。身の回りに聞くと「そんなことないよ」と言われるかもしれませんが、大抵の仕事は笑っていると楽しくなっていくと思っています。
誰が言ったのか忘れましたが「楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しいのだ」っていうのは、確かに一理あるなと思います。本当に切羽詰まっていると、笑顔の余裕はなくなっていきますが。
11. いまお答えいただいている質問を、あなたがしてみたい相手はいますか?
願いが叶うのならば、「Aphex Twin(エイフェクス・ツイン)」として知られている、アンビエント・テクノの第一人者 Richard D. James さん。EDMや通常のテクノ・ミュージックなどを作曲している風景は想像できるのですが、彼が作っているデジタルとアナログの境目みたいな音色や、奇抜なリズムパターンは、どういう職場環境で作られているか知りたいです。シーケンスの打ち込みのような淡々とした機械的なクールさと、常軌を逸したアナログっぽいクレイジーさが、一人の人間の中に同居しているように感じますが、まったく仕事風景がイメージできません。
また、楽曲のアウトプットの量に驚かされますし、テイストもアルバム毎に変わっていたりします。それでいて、彼の作品だということは聞けば分かる。まるで、現代のパブロ・ピカソ。仕事人として、とてつもなくパワフルです。プライベートも謎に包まれている彼ですが、ひとまず仕事の側面を知りたいと思います。
12. これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください。
「実は仕事を本気でやっている人は少ないから、ちょっと本気でやれば周りと差がつくのだよ。それからだよ。」のようなことを、飲食業に携わっていたときに言われました。
確かに仕事以外の時間を使ってちょっと練習(勉強)すると周りと差がつきはじめるのですが、そこからが一流と二流の境目と言うか、運だとか持ち合わせている才能レベルでの競争になってくるような経験を何度かしました。僕はいつも二流止まりなので、周りの凄さを感じてばかりです。
13. そのほかに読者へ伝えたいことがあれば、教えてください
このようなインタビューを仲間同士でやっても面白そうですね。是非、やってみてください。僕も機会があればやってみます。