スティーブ・ジョブズ、アルベルト・アインシュタイン、マーク・トウェイン。この3人の偉大な人物に共通する点は「机がいつも散らかっていたこと」です。
時代を変えたこの3人は、決して大衆に左右されることはありませんでした。そして、社会のルールに捉われない、その机の散らかりぶりには目を見張るほど。
ですが、その混沌さの中においても一定の秩序が存在していたようです。つまり、積み重なる書類や雑誌の山、さまざまな物が置かれながらも、ある種のルールがあり、その使用者のみが体感できる使い勝手の良さがあったのです。
今回は、その3人以外にも散らかった机で仕事をする著名な人々を紹介しましょう。フェイスブックの創設者・CEOのマーク・ザッカーバーグが職場で仕事をする様子。
Photo by TipherethザッポスのCEO、トニー・シェイ。文化に関する本からカウボーイハットに至るまで、あらゆるものが置かれています。
Photo by ComplexPayPalの共同創業者、CTOのマックス・レヴチンの机。
Photo by Complex計算機科学者、暗号解読者のアラン・チューリングやペニシリンの発見者として知られるアレクサンダー・フレミング、画家のフランシス・ベーコンといった、仕事に創造性が求められていたであろう著名な人々もまた、驚くほど机が散らかっていたそうです。
環境が私たちの創造性に大きな影響を与えることは、歴史的にも示されています。医学者・ウイルス学者であるジョナス・ソークが初めてポリオ・ワクチンを開発しようとしていた時、彼はイタリア、アッシジの聖堂にある修道院を訪れました。彼はのちに、その環境の変化がワクチン開発の成功に影響を与えたと振り返っています。ただ、創造性のために誰でもここまで大きな環境変化が必要なわけではないでしょう。むしろ、机の状態を変えるほうが身近な環境変化になりそうです。
最近、ミネソタ大学が実施した研究結果によって、より散らかった机を使う人の方が創造性が高く、積極的にリスクをとる傾向にあることが示されました。一方で、整頓された机を使う人は、ルールに従い、新しいことに挑戦したり、リスクをとることを避ける傾向にあることが研究で分かりました。研究チームは次のようにコメントしています。「人は混沌とした環境に置かれるほど、慣習を破ろうという気持ちが高まるようです。それは、新しい考え方を生み出すチャンスになるでしょう」
創造性と生産性のレベルに合わせて調整する
常に机を散らかった状態に保つよりも、自分の仕事に合わせて、環境を変化させる方がよいかもしれません。机の整頓レベルを、タスクの種類に合わせるのです。
ミネソタ大学の実験結果によると、整頓された机の使用者は、チョコレートバーよりリンゴを選び、新しい方法よりもすでに確立された解決策を選択する傾向にあることが示されました。つまり、アイデアやコンセプトを練っている時には、机が散らかっている方が良いでしょう。一方で、生産性を高めたい、ある特定の仕事を片付けたい、もしくは創造的なアイデアを実行に移したい時には、整頓された机で仕事をすると、創造性よりも生産性を発揮できるでしょう。
もし創造性をさらに発揮したいなら、次のようなアイデアを試してみてはいかがでしょう。雑誌を読み終わったら、それを本棚に戻すのではなく、机に置きっぱなしにしておく。自分の創造性を刺激してくれる可能性のあるもの(アート作品など)は、机に置いておく。ただ、散らかった環境は2種類あります。ひとつは、雑然とした状態。もうひとつは、汚い状態。今回の研究結果は決して、バナナの皮や食べ終わった食器を1週間も机に放置した方がよいと言っているのではないのでご注意を。
周囲に与える印象も忘れずに
創造性を高めるためとはいえ、こんなリスクも生じます。人材企業アデコの調査によると、多くの社員は机の整頓状態を見て、同僚を評価しているとのこと。アデコの採用部門副社長のジェニー・デード氏は、Forbesへのインタビューで、「机を常に散らかった状態に放置しておくと、実生活でもだらしない者と思われる」とコメントしています。
机を衛生的に保っていれば、こうした周囲からの誤解を最小限に留めることができますが、やはり常に散らかった状態というのは避けた方がよいようです。創造性と生産性がいかに必要かを判断しながら、それに合わせて机の状態を調整するようにしましょう。その際、自分の机の状態が周囲の同僚にどのような印象を与える可能性があるか、という点を意識することも忘れずに。同時に、わざと机を雑然とさせていることを、時には自信をもって周囲に説明しても良いでしょう。この記事にある学術的な裏付けをもって説明すれば、理解してもらえるでしょう。
最後に
子どもの頃を思い出せば、常におもちゃを片付けなさい、ベッドを整えなさいと言われてきました。ですが、もしかしたらお母さんは間違っていたのかもしれません。上記でさまざまな例を紹介した通り、雑然とした環境は人の創造性を高めるのです。
Why You Should Have a Messy Desk|Busy Building Things
Busy Building Things(原文/訳:佐藤ゆき)