Inc.:先日、ヘルステック系インキュベーターのロックヘルス社が、ウェアラブル・テクノロジーに関するレポートを発表しました。ウェアラブル業界で起業を考えている人には大変参考になる内容です。また、アップルやサムスンなどの先行企業がこの業界でどれほど影響力を持ちうるかにも触れています。

このレポートは、よくある業界レポートとは違いウエアラブル市場の未来は不透明であり、専門家によって意見が大きく異なることを認めています。例えば2013年5月に、クレディ・スイス銀行は、2018年のウェアラブル市場は500億ドルになると予測しました。一方、MarketsandMarketsは、同じく2018年の市場規模を84億ドル、ReportsnReportsは80億ドル、台湾のInstitute for Information Industryは206億ドルだと予測しています。

また、人々が実際にウェアラブルを使っているのかという議論もあります。ロックヘルス社はエンデバー・パートナーズの調査を引用しています。エンデバー社の調査によると、購入から3ヶ月の時点で、80%の人がウェラブルを日常的に使っていました。ところが、一年半以内にその割合は50%に下がります。ロックヘルス社でも、自社の社員10人にアンケートしたところ、3ヶ月後には、半数がウェアラブルを日常的に使わなくなっていたそうです。6ヶ月後には、75%が使うのをやめていました。

こうした結果を受け、ロックヘルス社は、今後のウェアラブル業界では次の3つの改革が求められると結論しています。

機能性

現在、ほとんどのフィットネス・トラッカー(活動量計)が、心拍数や歩数など、単純なデータを収集しています。データを見せられたユーザーが自然に持つであろう、「それで?」とか、「このデータをどう使えばいい?」という疑問には答えていません。ユーザーはその答えを求めています。もっとも、機能性の強化は困難な仕事です。ハードウェアとソフトウェアの両方に精通する必要があるからです。そして、ユーザーが実際に有効活用できる形で情報を提供せねばなりません。

その点で言えば、「Lumoback」は一歩先を行くウェアラブルです。腰にLumobackを巻いておくと、常にあなたの姿勢をモニターし、姿勢が悪くなっていれば警告し、正しい姿勢に導いてくれます。このデバイスは、立った姿勢でも座った姿勢でも使えます。さらに、走っていたり、眠っていてもOKです。

信頼性

2つの異なるフィットネス・トラッカーをつけて1日を過ごせば、2つのまったく異なる活動記録を得るでしょう、とニューヨークタイムズ誌は報じています。実のところ、昔ながらの歩数計のほうが正確だったりします。今後、ウェアラブルは情報収集の精度を上げるか、アルゴリズムを用いて不正確さをカバーすべきでしょう。信頼性の向上には、信号の処理など、さまざまな技術的問題が立ちはだかっています。また、米国食品医薬品局の「認可」というハードルもあります。

「Zio patch」はこの問題をきちんとクリアしているウェアラブルです。心臓の不静脈を検出する独自のアルゴリズムは、食品医薬品局の認可を取得しています。

利便性

ウェアラブルは受動的で快適、そして、ユーザーに「正の強化」を提供すべきだと、レポートは述べています。理想的なウェアラブルとは、長もちして充電も容易なバッテリーを備え、データの同期も簡単なものです。ウェアラブルの利便性を向上させるには、パッケージング、工業デザイン、ユーザー・エクスペリエンスの各分野での研鑽が必要です。

「Misfit Shine」はロックヘルス社もその利便性を認めたフィットネス・トラッカーです。腕時計用の電池で動き、充電は不要。データの同期も、スマートフォンの上に置くだけでOK。防水でもあり、水泳やシャワーのときも外す必要はありません。

ヘルス系ウェアラブルという未開拓市場

やはり、この分野は起業家にとって大きなチャンスがあるように見えます。ただひとつ足りないものは、産業全体が集結できる単一プラットフォームです。

ロックヘルス社によれば、プラットフォーム開発でアップルとサムスンが大きくリードしているそうです。アップルは6月2日のWDCで、開発者のためのヘルスキットを発表しました。同社は健康情報プロバイダーの「エピック・ヘルス・システム」、および総合病院「メイヨー・クリニック」とパートナーを組んでいます。サムスンは、5月18日にオープンモジュールシステムのヘルストラッカー「Simband」を発表、ユーザー調査のためにカリフォリニア大学とパートナーを組みました。

プラットフォームが統一されれば、大きな問題の多くは解決される、とこのレポートは語っています。単一プラットフォームになれば、ユーザーと開発企業の両者にとって恩恵があります。ソフトウェア開発企業は特殊なデバイスへの対応に悩まくてもよくなり、ハードウェア開発企業はソフトウェアとの連携を気にせず、機能性に注力できます。もちろんユーザーは、柔軟性とより多くの選択肢を手に入れます。

こうしたことが実現すれば、ユーザーはもっとウェアラブルを使うようになるでしょう。

Why You Stopped Using Your Fitness Tracker|Inc.

Kimberly Weisul(訳:伊藤貴之)

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