英語を学ぶ上で大切なのは"納得する"ことであり、"納得を積み重ねる"ことです。(3ページより)

頑張らない英文法』(西澤ロイ著、あさ出版)の「はじめに」に記されているこのフレーズは、英語学習になんらかのストレスを感じている方を勇気づけてくれるかもしれません。たしかに英語を学ぼうという際には、とかく難しく考えてしまいがちだから。

「思っているほど英語は難しいものではありません」という考え方を軸に、「英語の語順や構文」「冠詞のthe」「動詞」「前置詞」など、基本的な項目に従って文法を解説した内容。「基礎をしっかり理解する」という点を、意図的に重視しているわけです。Chapter 1「英文法の基礎を捉えなおす」を見てみましょう。

「リンゴ」を英語で言うと?

「答えはapple」だという答えは、正解のひとつにすぎないと著者は説明しています。つまり、an appleやapplesも正解だということ。

日本語は非常にシンプルで、「リンゴ」「本」などと名詞をただ言えば、それで相手に通じます。ただし、その「もの」が具体的な形を持っているか、そうでないかによって言葉が違うのが英語。「リンゴを1個買いました」と言う場合には、その「1個のリンゴ」には具体的な形があるので、不定冠詞のa/anをつけてan apple(複数個の場合はapples)に。対して「サラダのなかにリンゴが入っていました」と言う場合には、リンゴは細かく切ってあり、数えられるような形がないためapple(無冠詞)と言うことになります。

日本語は、形や個数を曖昧にし、相手に解釈を任せることの多い言語。しかし英語では、「具体的な形があるのかないのか」、形があるならば「単数なのか複数なのか」を相手が瞬時にわかるように伝えなければならない。つまり英語が上達するためには、そういった考え方の違いを受け入れ、理解し、うまく使い分けられるようになることが重要だというわけです。(16ページより)

冠詞も考え方がわかれば簡単

英語の名詞は、具体的な形の有無、単数/複数という区別に加え、冠詞がつく場合があるもの。不定冠詞のa/anと、定冠詞のtheなどがそれにあたります。著者はここで、次の問題を提示しています。

「昨日、本を買った。その本はとてもおもしろかった」という文に2回出てくる「本」という言葉が指しているのは違う本ですか、それとも同じ本ですか?(19ページより)

もちろん、正解は「同じ本」。まず、最初の「本」という言葉で「とある本」のことを話題に登場させ、「その本」と言うことで、同じ本を再登場させているわけです。しかし、これを英語で言うと、たとえば次のようになります。

I bought a book yesterday.The book was very interesting.

最初に「本」と言ったところをa book、後の「その本」はthe bookと表現しています。当然ながら、a/anはoneが弱くなった言葉で、「ひとつあること」を表すもの。複数個ある場合には、some booksのように言います。someは「漠然と少しある」ことを意味するため、some booksは「数冊の本」「少しの本」といった意味合い。

そしてa/anやsomeについて知っておくべきは、これらの冠詞は「話題に登場させるときに使われる」ということ。日本語では「本を買った」のように言いますが、英語では、単数ならa book、複数ならsome books(もしくは数を明示してtwo books)などのように言うということです。

I bought some books yesterday./I bought two books yesterday.(18ページより)

「その」の意味

すでに出てきたものを話題に再登場させるとき、日本語では「その本」などと表現します。そして日本語の「その」には、大きく分けて2通りの意味があります。ひとつは、物理的に目の前にあるものを指し示すこと。相手が持っている本を指して「その本」と言ったりする場合です。この場合、英語ではthat bookのように言います。もうひとつの使い方は、話題に出ている本を指して「その本」などと言うケース。目の前にはない、相手が了解しているものを指し示す場合です。

後者の場合、英語では定冠詞のthe を使ってthe bookのように表現。theはもともとthat(あれ、それ)が弱まった形。相手の心のなかにあるなにかを軽く指で指し、「(なにを指しているか)わかるでしょ?」という感じに近いといいます。

冠詞は日本語には存在しないため、難しいことのように捉えがち。しかし、同じ役割を果たすものは日本語にもほぼ存在するだけに、変に身構えて「難しそう」「暗記しよう」などと思う必要はないと著者は言います。日本語を振り返ることで、「日本語はこうで英語はこうなのだ」というふうにつかんでいけばいいということです。(20ページより)

このとおり非常に平易な内容ですが、だからこそ原点に立ち返りつつ、「基礎をしっかり理解する」ことができるというわけです。頭を柔らかくするためには、格好の内容だと思います。

(印南敦史)