敏腕クリエイターやビジネスパーソンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ第59回。ゲームデザイナーのアダム・ソルツマン(Adam Saltsman)氏に続く今回は、世界を相手に二足のわらじを履きこなすクリスティーナ・シュウ(Christina Xu)さんにインタビュー。

「ToDoリストアプリは、シャンプーみたいに選んでます」。彼女ほどの多忙な人であれば、まだパーフェクトなToDoリストマネージャーに出会っていないのもうなずけます。世界中のプロジェクトを助成する「The Awesome Foundation」のグローバルコーディネーターと、クールな商品を売って利益を寄付する団体「Breadpig」のコアメンバーを兼任している彼女には、はたして寝る時間なんてあるのでしょうか。そんな疑問を解消するため、彼女の仕事術を聞いてきました。

  • 氏名:クリスティーナ・シュウ(Christina Xu)
  • 居住地:ニューヨーク州ブルックリン
  • 現在の職業:Breadpigでクラウドファンディングプロジェクトのお手伝い、Awesome Foundationでグローバルコーディネーター
  • 現在のコンピュータ:MacBook Air
  • 現在のモバイル端末:Samsung Galaxy S4
  • 仕事スタイル:カオス

「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?

シュウ:私が依存しているツールは、予想どおりのものが多いと思います。アイデアやメモを書き留めるには「Notational Velocity」を愛用しています。新規プロジェクトは、「Googleスプレッドシート」2枚と「Dropbox」のフォルダーを作って初めて、リアルなものになります。

最近は、「Trello」にもはまっています。TrelloのAndoidアプリは、機能だけじゃなくて見た目がいいのも素敵ですね。これらのアプリには共通してソーシャル機能が付いていますが、これは偶然ではありません。昔から、私が仕事を進められる唯一の手段は、周囲からのプレッシャーなんです。だから、仕事仲間やクライアントが進捗を確認できる環境で仕事をすることが、私が責任を果たすためには必須なのです。

業務上、書類を書くこともよくあります。書類にパパッと署名して送付するのには、「HelloSign」が最高です。家計簿管理には「Expensify」。飛行機での出張には、知りたい情報が何でも手に入る「TripIt」が便利です。秘密兵器は「Proximate」。まだ発展途上ですが、登録からコミュニティ分析まで、イベント開催にまつわるすべてを取り扱えちゃう、すごいツールなんです。

つまらないけれど大事なこともあります。先日、Breadpigの福利厚生代行業者をMaxwell Healthに切り替えましたが、そのサービスが感動もので。インターフェースは素晴らしいし、スタッフは技術に精通してるしで、至れり尽くせりなんです。

仕事場はどんな感じですか?

シュウ:自宅では主に、寝室に置いたスタンディングデスクで仕事をしています。いつのまにか、横たわりデスク(つまりベッド)に倒れ込んでいることもよくあるのですが。出張時には、明るいコワーキングスペースやカフェを利用しています。ラップトップと高速Wi-Fiさえあれば、仕事の95%は進められます。

お気に入りの時間節約術は何ですか?

クリスティーナ・シュウ氏の仕事場

シュウ:これまでに学んだ教訓の1つに、「タスクによって必要なエネルギーも異なれば、それによって得られる報酬も異なる」というものがあります。例えば、つまらない単純作業だって、会議でたくさんのストレスをため込んだあとにやれば、作業に没頭することで高ぶった神経を落ち着かせることができますよね。人に影響を与えるような大きな決断は特に疲弊するので、1日に2つまでと決めています。月曜日に1週間の計画を立てるとき、これらのことを頭に入れながらやっています。まるで食事のメニューを考えるみたいにね。たいてい、計画通りにはいかないんですが。

それから、事業を営む者として心がけているのが、仕事をする時間(と場所)に厳しい制限を定めること。緊急の場合や心が躍ること以外は、週末に会議や約束を入れることはありません。そうでもしないと、いつでも半分働いて半分手抜きみたいな状態になってしまうから。そんなのイヤじゃないですか。

携帯電話とPC以外で「これは必須」のガジェットはありますか?

シュウ象印の湯沸かしポットですね。お湯が沸くと楽しい音楽で知らせてくれるし、緑茶にぴったりの温度にお湯を保ってくれるのが便利で。もう、アナログのヤカンには戻れません。また、アジアのおばちゃん予備軍として、白湯も飲んでます。同じくアジアンとして、纏足とウェストポーチも始めないとね(笑)。

それから、お鍋にもスペシャルサンクスを贈ります。鍋なしでは冬を越えられませんから。

日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?

シュウ:違う分野の知識を持った人や、考え方の基準が違う人同士の間で、アイデアやコンセプトを翻訳することです。移民第1.5世代として育ったので、コードスイッチングは得意なんです。橋渡し役や企画立案者として、この特技をいかしていきたいです。

愛用中のToDoリストマネージャーは何ですか?

シュウ:ToDoリストアプリは、シャンプーのように選んでます。つまり、1ヶ月もすれば別のものになるのですが、Trelloだけはポテンシャルを感じます。私は毎日いろんなコンテクストを切り替えながら仕事をするのですが、それに対応できるシステムにもっとも近いものだからです。特に忙しい日は、メモ帳に大きなことを書き出して、都合よく忘れてしまうことのないようにしています。

どんなToDoアプリも、けっきょくは使う人がどれだけ誠実かつ現実的でいられるかにかかっています。だから私は、やりたくなくて長い間先延ばしにしているToDoを削る時間を定期的に取ることが重要だと思います。

Trello

仕事中、どんな音楽を聴いていますか?

シュウ:デスクの前で立ちっぱなしは膝に悪いので、ダンスミュージックをかけて飛び跳ねながら仕事をしています。好き嫌いが激しくて音楽リコメンドサービスには向いてないので、好きなプロデューサーによるミックステープが手放せません。この秋は、こちらのミックステープにはまっていました。この冬は、ブルックリンを拠点にしているDubble Dutchプロデュースのこのアルバムで乗り切ろうと考えています。もっとポッドキャストとかを聞けたらいいんでしょうけど、そんなに注意力がなくって!

今、どんな本を読んでいますか?

シュウ:サンクスギビングの間に、『Hunger Games』三部作を一気読みしました。内容は若干がっかりでしたが。もっと実用的な本としては、『Junkyard Planet』を読んでいます。世界のスクラップ業界について書かれた魅力的な本です。

あなたは外向的ですか、内向的ですか?

シュウ:何でも2つに分けようとするのは、あまりに乱暴だと思います。社会的交流には色んな種類があって、それぞれに対する許容範囲も人によって違うでしょう。親友とは朝から晩まで何日でも過ごせるし、それによって疲れることもないけど、些細な世間話をしなければならないような大規模な社交の場は、5分でもうお腹いっぱいです。

睡眠習慣はどのようなものですか?

シュウ:若干不眠症かもしれません。早朝よりも深夜の方が仕事がはかどるので、自分でスケジュールを決められる今の仕事はラッキーですね。9時ごろに起きて、ベッドの中でゴロゴロしながら、TwitterやInstagramを眺めます。寝室には東向きの大きな窓が2つあるので、朝の光が私を目覚めさせてくれます。

あなたが受けたものと同じ質問をしてみたい相手はいますか?

シュウ:人類学者でご近所さんでもある、ポストイット使いのTricia Wangです。

これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください

シュウ:友人のJess Goldfinにこう言われたことがあります。「ぐずっている幼児には、靴を履きたいかどうかを聞いちゃダメ。それよりも、どっちの靴から履きたいかを聞くといいの」って。今まで感じていてうまく表現できなかったことを、簡潔に示してくれた言葉でした。これは、コミュニティの結成からUXデザインまで、何にでもあてはまると思います。

Tessa Miller(原文/訳:堀込泰三)