99U :貴重な戦力だったメンバーが会社を去ってしまい、急に補充が必要になった。もしくは、大きなプロジェクトが決まったため、必要なスキルをもっている人材を増員する必要が生じた。多くの採用に関する決定は、スピードが求められます。長期的な安定よりも短期的な痛みの埋め合わせのために、スピーディーな採用が実施されるのです。

とはいえ、クリエイティブなチームを築くために重要なのは、長期的な視点です。クリエイティブな職場の成功例・失敗例を見ると、強いチームをより強くするためには、押さえなければならない重要なポイントがあります。

この重要なポイントを押さえれば、バランスのとれた生産的なチームが生まれ、次のようなカルチャーがチームに浸透します。

  • 従業員同士の対立がなく、楽しい雰囲気である
  • 生産性向上を妨げる要因が除外される、または少なくなる
  • クライアントや他部署のスタッフを、パートナーや支援者ではなく、敵とみなすような不健全な態度が消える

重要なポイントとは、チームに取り入れるべき「5つの存在」です。ただ与えられるだけの仕事をこなすのではなく、情熱をもって仕事に取り組むチームを築くのに欠かせない、その5つの存在を以下に紹介しましょう。

1.チアリーダー:チームの雰囲気を盛り上げる者

あなたのチームは団結していますか? やる気が満ちており、楽しんで仕事に取り組める環境ですか? 答えがノーであれば、必要なのは「チアリーダー」です。

「チアリーダー」はチームのやる気を高め、チームに積極的に関わり、士気を高めつつ、メンバー全員をよりクリエイティブにし、仕事に対する情熱を向上させる存在です。社交的であり、チームメンバーを会話と共同作業に引き込むことのできる、生まれながらの能力をもっています。「チアリーダー」はメンバー同士のコミュニケーションを活発にするため、社交的ではないメンバーは、最初は1歩引いたり、不快に感じることもあるかもしれません。

こうした「チアリーダー」を採用する際に気をつけなければならないのは、多くの「チアリーダー」は出しゃばりすぎであったり、お調子者である可能性があるという点です。理想の「チアリーダー」は、人生と仕事の両方に本物の情熱と愛情を抱いています。また、チーム内で社交的に話しかける存在です。

2.業界通:業界のトレンドを常に追い、チームに情報を共有する者

あなたのチームは、カルチャーシーンやクリエイティブな業界全般で起きていることについて十分な情報を得ていますか? 答えがノーであれば、必要なのは「業界通」です。

「業界通」は、ソーシャルメディアや業界向け出版物を通じて最新の業界ニュースを追うのを好みます。業界関連のイベントや、注目されているトレンド、将来有望なクリエイター、会社の情報を追って、チームに共有することを重視します。「業界通」は、チームの仕事が日々変化している業界の動向と合っていることが重要であると考えます。

「業界通」なしには、チームは大きなインスピレーションに欠け、時代遅れになってしまうでしょう。理想的な「業界通」とは、読むことが好きで、好奇心旺盛である人です。

3.感情面でのクォーターバック:チーム内の対立を緩和する者

特定のチームメンバーの性格やチーム内の対立によって、チームの雰囲気が壊れることがありますか? 答えがイエスであれば、必要なのは「感情面でのクォーターバック」です。

「感情面でのクォーターバック」は、クリエイティブなメンバーを管理する際にしばしば生じるチーム内の対立をやわらげたり、処理することのできる存在です。自分の理想に突き動かされるあまり、時にこだわりすぎてしまうことのある右脳の持ち主のクリエイティブなメンバーに対して、仲介者、セラピスト的な役割を果たすことで、社内政治とメンバー同士の対立を最小限に抑えます。

「感情面でのクォーターバック」の存在によって、社内の対立は抑えられ、チーム全体がまとまって機能することができます。こうした社内の対立を解消するのは、チームリーダーの役割だとみなされていますが、リーダーはそうした役割を担うのに必要な辛抱強さや対立を適切に処理するスキルをもっていないこともあります。「感情面でのクォーターバック」を担うべき者は、誠実で、人当たりがよく、理性的で、共感力の高い、感情的なサポートとフィードバックを与えることのできるメンバーです。

4.主張者:時に「悪役」を引き受け、賢明に交渉を進める者

あなたのチームメンバーは、実際の能力よりも多くの仕事を受け入れてしまったり、クライアントの言いなりになる傾向がありますか? 答えがイエスであれば、必要なのは「主張者」です。

「主張者」はチームの中心に立って、チーム全体を管理します。厳しい決断を下すことも厭わず、チーム全体が利益を得られるように、ルールとプロセスを徹底します。それが、クライアントとの厳しい会話を伴うものであっても、最終的により良い結果と、誠実な関係をもたらすのです。「主張者」は、対立と摩擦を起こすことなく「悪役」を演じることができます。「主張者」は、標準となる作業手順を遵守し、従業員とクライアントとの好ましい関係を維持するのに、非常に重要な存在のです。

「主張者」の役を進んで引き受けてくれるメンバーがいなくては、クライアントや他部署のスタッフはメンバーを好きなように利用しかねません。チームの規模にもよりますが、「主張者」はその仕事を専門に行う者か、もしくはクライアントとの交渉やメンバーの管理を任されている大きな権限をもった人が担うべきでしょう。

5.政治調整者:社内政治や組織的な問題を上手に処理する者

あなたの会社は、社内政治の力の大きい、階層形組織ですか? 社内の委員会が下した決定を拒否することは困難ですか? 答えがイエスであれば、必要なのは「政治調整者」です。

「政治調整者」は、会社やクライアントとチームの間に生じる溝を埋めます。「政治調整者」は、自社やクライアントの政治、組織を理解し、受け入れ、うまく扱うことができるのです。複雑で組織的な問題に取り組むことに積極的で、むしろそのチャレンジをやりがいがあるとみなすので、チームを内側から強力に支えます。

「政治調整者」がいなければ、チームはクライアントから突きつけられた無理難題をただ責めるだけでしょう。しかし、「政治調整者」がいれば、対立を生むことなく、組織的な問題やクライアントとの問題を健全かつ適切に処理、解消することができるのです。

The 5 Hidden Superpowers of Balanced Creative Teams I 99U

Emily Cohen(訳:佐藤ゆき)

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