私たちは誰でも「他人に言えない苦手意識」を持っているものです。自分の苦手意識に気づいている場合、克服するにはどうしたら良いのでしょうか? 政府からの助成金を得たい英企業をサポートするサイト「GrantTree」や、建築プロジェクト向けのウェブツール「Woobius」などを立ち上げた起業家Daniel Tenner氏が、自身の経験をもとに「苦手意識を克服する方法」を教えてくれました。
私が知る「ある起業家」は、たくさんのワインを飲んだあと、自分が持つ苦手意識について打ち明けてくれました。彼にとっての苦手意識は「顧客に請求書が送れない」というものでした。「ワインを1本飲んで酔えばやっと送れる」というのは言い過ぎだとしても、顧客に「お金を払ってほしい」と伝えることに強い苦手意識を持っていました。
起業家として、これは非常にまずいことです。自分が行った仕事の対価を請求できなければ、彼のビジネスにマイナスの影響を与えるだけではなく、致命傷にもなり得えます。
私自身もかつて似たような苦手意識を持っていました。それはお金に対する苦手意識で、無意識のうちに「お金は悪いものだ」と考えていました。お金を持っていてもすぐに使ってしまう人は多いだろうし、お金が原因で不幸になる人も多いでしょう。おそらく私だけでなく、なんとなくお金に対して良いイメージを持っていない人は多いと思います。
もうひとつの例として、「仕事を辞めること」に対して強い苦手意識がある知人がいました。彼はいまの仕事に強い不満を持っていました。彼の妻は辞めようとする彼を支えてくれていたし、彼自身も次の仕事を見つける自信がありました(実際、彼は前職でフリーランスのIT開発者として成功していました)。しかし、彼は仕事を辞める決断ができなかったのです。その仕事を辞めてもやっていける実力があるし、理解ある家族もいたのに、仕事を辞めようとするとどうしても尻込みしてしまうのでした。
上記の例を見て「苦手意識は人それぞれ」ということに気づいたと思います。では、このような苦手意識はどうすれば克服できるのでしょうか? 次のセクションより、その方法について詳しく説明していきます。
Photo by Thinkstock/Getty Images.■まずは自己肯定をすること
このセクションで紹介する方法は、おそらく最もくだらなくて、おかしな方法だと思われるかもしれません。しかし、最も効果的といえる方法です。
多くの苦手意識は「深い潜在意識」として存在するもので、それが自分自身に影響しています。例えば、「自分は何をやっても失敗する」という考えを持っている人がいます。この「ネガティブな語りかけ」を自分の中で繰り返していると、いつか本当に失敗してしまうでしょう。このような人は自分自身で失敗する原因を作っているのです。自己肯定することは、この「ネガティブな語りかけ」を「ポジティブな語りかけ」に変えることです。以下、実際に私がやっている方法を紹介します。
まず、自分自身の「ポジティブなフレーズ」を作りましょう。その際、ネガティブな考えを打ち消すような言葉を選ぶことが重要です。もし、「自分は何をやっても失敗する」というネガティブな考えが頭の中にあるなら、ポジティブな言葉は「自分は何をやっても成功する」となるでしょう。このフレーズは必ずしも正確でなくても構いませんが、自分が目標にできて、信じられるものである必要があります。また、短いフレーズにするのがポイントです。
- 「ポジティブなフレーズ」をポストイットなどに書いて、毎朝見ている鏡に貼る。
- 毎朝(もしくは一日の中でできるだけ多く)その鏡の前に立ち、自分の目をしっかり見ながらそのフレーズを口に出す。この際、できるだけ大声で、自信が持てるようにする。
- それを10回でも50回でも、できるだけ多く繰り返す。
上記のことを行うと、あなたは3つの変化を感じるはずです。まず、とてもばかばかしいと思うでしょう。でも気にしないでください。20回やっても同じように感じると思います。でも、これは本当に気にしない他ありません。次に、少し気分が良くなったように感じるでしょう。この理由はハッキリとはわかりませんが、自分で言いたいことを自分の意志で口にするという感覚が、ポジティブに影響するからだと思っています。
最も重要な変化は、頭の中にある「ネガティブなフレーズ」が「ポジティブなフレーズ」に変わることです。この変化は意外と早くやってきます。変化すれば、自己肯定は徐々に必要なくなっていくでしょう。もし、ネガティブなフレーズが頭の奥底に残っている場合は、ポジティブなフレーズに変えるのに少し長い時間がかかるかもしれません。ただ、通常は長くても数週間程度で十分なはずです。
この方法は、自己肯定に強い効果があります。他にも、ポジティブなフレーズを含めた動画を撮影したり、音声を録音したり、紙に書き出してみたりするのも効果的です。ただ、私の経験上、鏡の前で自分自身の目を見ながら語りかけるほうが、ケタ違いの効果があると思います。
■自分で自分を洗脳するメモを取らずに本などをただ読んでいるときは、自分で自分を洗脳している状態といえます。多くの人は気が向いたときに、気が向いたものを読んでいるだけで、本の選択には特に気を使っていません。しかし、読者のみなさんにはぜひ、「自分を洗脳したいと思える本」を自分の意志で選ぶようにしてください。
例えば、お金に対する苦手意識(お金は何となく悪いものという考え方)を直したいなら、お金の良い面について書かれた本を読んでみましょう。このような本を何冊か、数週間かけて読んでいけば、自分の考え方を変えられる可能性が高いでしょう。私の経験上、前のセクションで紹介した「鏡の前で自己肯定する方法」と比べて時間がかかりますが、読みたい本をすぐに読める環境をつくって、考え方が変わるまで読み続ければ、同じような効果が期待できます。
これは本でなくても構いません。動画、ポッドキャスト、ブログ、人と会って話すのも効果的です。重要なのは、変えたいと思っている考え方とは反対の考え方に耳を傾けることです。またこの方法は、前述の「鏡の前で自己肯定する方法」と合わせて使えば、相乗効果が期待できるでしょう。
■付き合う人間を自分で選ぶあなたの苦手意識は、他人が原因である場合があります。例えば、もしあなたの家族や友達が「お前は何をやっても失敗する」と言い続けたら、本当に失敗してしまう可能性が高くなるでしょう。これは鏡の前で自己肯定をするのと同じで、強い暗示効果があるからです。自分に対してネガティブなイメージを持っている人と長い時間を過ごしていれば、その分、あなたにネガティブな影響があるということです。
ただ、このような「あなたに対してのネガティブなイメージ」は、故意に作られたものではないのが厄介なところです。あなたの家族や友達は、意図してあなたの失敗を望んでいるわけではないし、頼めば「もちろん協力するよ」と言ってくれるはず。でも実際、彼らが抱く「あなたについてのイメージ」を、あなたが変えようとするのは非常に難しいのです。長年知っている家族や友達であればあるほど困難になるでしょう。自分についてのイメージは他人から変えてもらうのではなく、常に自分から変える必要があるのです。
結局のところ、そのような人々と距離を保つことしかできることはありません。少なくとも、苦手意識を克服するまでの間だけは、そのような対策が必要です。ただ、克服したあとでも、同じような状況に戻ってネガティブなイメージを聞き続ければ、苦手意識も戻ってしまう可能性があるということを覚えておきましょう。
■苦手意識のルーツを探る最後にもうひとつ使える方法として、「苦手意識を調べてそのルーツを探ってみる」ということを紹介します。何がきっかけで苦手意識を持つようになったのか、苦手だと思うようになった経緯など、5W1Hで分析してみてください。
このような記憶はとても曖昧なことが多く、「これが原因だ!」と思っても、実際には自分の頭が作り上げた「偽りの記憶」という場合があります。だからといって、全く無意味というわけではありません。例えば、私はこのような分析を通して「お金に対しての苦手意識は子供のころから持っていた」と気づきました。子供の頃、お金に執着しないように両親から教わっていたし、大人になってからもお金からある程度の距離を保っていたので、お金が原因で不幸に思うようなこともありませんでした。そして、この苦手意識の原因は「お金に執着すると不幸になる」という考え方にあると気づきました。「お金イコール悪い」と思っていたのではなく、お金に執着したり、強欲になったり、お金のことばかり考えたりするとむなしい人生を送ることになる、と心の奥底で思っていたのです。
このように苦手意識を分析すれば、次に取るべき行動も見えてくるでしょう。私の場合は、「もっとたくさんのお金を稼げば、もっと多くの人を幸福にできる」といったポジティブなフレーズを鏡の前で繰り返すことで、「お金」と「不幸」のつながりを断ち切ることができました。
■うまくいかなくても心配しない上記で紹介した方法を実践しても、中にはあまり効果を感じられない人もいるでしょう。こんなものは単なる「まやかし」と思う人もいるかもしれません。ただ、私自身には大きな効果があったし、今日初めて聞いた人にとっても大きな効果があると信じています。実際、前述の自己暗示はプロのセラピストも使っている方法なので、多くの人に効果があると思います。
苦手意識の原因は自分にあることが多いです。今回紹介したような方法は、解決策となるでしょう。しかし、もし期待通りの効果が得られなくてもあまり心配しないでください。「効果があればラッキー」程度に考えておいてください。くれぐれもこれが原因で悩みを増やしたりしないように。
とはいえ、私自身はひとりでも多くの人に効果を感じてもらえると信じています。うまくいけば素晴らしい成長につながることは保証しますので、ぜひ一度、お試しください。
How to hack the beliefs that are holding you back | Swombat
Daniel Tenner(原文/訳:大嶋拓人)