取材日:2018年12月26日
神奈川県藤沢市で「あおきメンタルクリニック」の院長を務めながら、東京都の大学で教鞭をとる青木豊先生。複数台のパソコンのデータ共有と移動時のセキュリティのために、働き方改革促進サービス「RIO Cloud(リオクラウド)」を導入されました。パソコン内のファイルを仮想化し、情報漏えいのリスクを減らすとともに、NASの共有データに院内外からアクセスが可能。さらにそれらのデータをクラウド上に保存することで冗長化も実現しました。導入の経緯と効果、今後の展望について、「あおきメンタルクリニック」院長の青木豊先生と奥様で心理士の青木奈々子様にお話を伺いました。
青木先生当クリニックは2018年の11月に開設した、心療内科と精神科の診療所です。特徴は大きく2つあり、1つは乳幼児を対象とした専門外来があること。もう1つは、薬物療法がメインのクリニックが多い中で、患者様とじっくりお話をして治療する心理療法・精神療法を重視していることです。
青木先生医師は私と、寺岡先生の2名体制です。私は週のうち木曜日だけ一日中クリニックにおりますが、あとの曜日は時間帯によっていたりいなかったり。基本的に大学にいるほうが多いですね。また、心理士もパートで5名ほどおり、その方たちも乳幼児治療にチームとして携わっています。私が不在がちだからこそ、スタッフ間のコミュニケーションが大切になってきます。
青木先生日々、自宅と2箇所の職場を行き来しています。自宅は鎌倉、当クリニックが藤沢、大学が東京にあるため、移動時間が往復4時間弱にもなります。その間も大切な仕事の時間なので、もちろんパソコンを持ち歩きます。移動用、クリニック、大学の3台のパソコンをどのように統合的に使うか、スタッフも含めていかにデータ共有するか、そういった方面に明るくないため困っていました。
青木先生このクリニックにIT環境を導入する際、システムを構築してくださる方を探していたところ、RIO Cloud推進企業でありプロジェクト仕掛け人であるアール・アイの石坂さんに出会いました。パソコンをどう連係すればいいか、素人の私にも熱心に分かりやすく説明していただき、うまく機能すると直感できました。そしてフランクにお話を伺う中で、私のような業務にとってセキュリティがいかに重要か、あらためて気づかされました。
青木先生患者様のデータについては電子カルテというシステムを導入しており、事務パソコン用のネットワークとは別系統になっているため、個人情報を持ち歩くことはありません。しかしクリニックの業務の段取り、大学でのレポートの作成、そして研究データの編集などを移動中にも行いたいので、それらのデータは匿名化し暗号化ロックしたうえで移動用のパソコンに入れて持って出ることがありました。
青木先生大学での専門は乳幼児の精神医療ですが、さまざまな子どものケースから集めたデータが失われると、研究ひいては今後の心療技術の遅れにつながるおそれがあります。例えば、虐待された子どもとその親御さんの唾液中に含まれる、ある特定のホルモン濃度を調査したデータなどですが、これらももちろん匿名化、暗号化ロックされてはいるもののデータを失うことは許されません。
青木先生また、妻も当クリニックの事務と心理士の仕事を兼務しています。家に子どもがいるためずっと院内で働くわけにいかず、自宅にパソコンを持ち帰って作業をしなければなりません。そこで、安心してパソコンを持ち運んだりデータを共有できるよう、石坂さんがご提案くださったのが「RIO Cloud」です。
青木先生私の職場と移動用のパソコンに「Shadow Desktop」というソフトを入れることで、データの実体はクラウド上に置かれ、パソコン内はデータレスになります。いつでもどこでもアクセスして作業できるのに、持ち運ぶパソコンにデータが残らないことに安心感を覚えました。また、クリニック内ではNAS「LAN DISK」を使い、私と妻のパソコン以外にも、寺岡先生と5名の心理士全員でデータ共有できています。さらに、これらパソコンのデータ、院内のNASのデータはどちらもクラウド上でバックアップされる仕組みになっています。
青木先生論文の執筆は診療に入るとできないので、電車の移動中にしていました。ずっとリスクを感じていながら時間に追われて対処できなかったのが、解決できてうれしいですね。研究のデータも同様に、漏えい予防できて助かっています。私がリーダーとなって他の医療センターや大学病院の先生と共同研究しているものですから、どうしても移動中に確認したいのです。
青木先生災害に関してはもう何が起こるか分からない時代。東日本大震災の際は神奈川にいましたが、患者さんと一緒に机の下に入ろうとしました。あんな体験を一度でもすると、データがなくなることを想像してしまってゾッとします。今まで積み重ねてきた研究や論文のデータはもちろん、ここのクリニックのデータまで、遠隔地の沖縄にバックアップされている安心感は大きいですね。実際、何事も起きないので実感こそありませんが(笑)。
青木先生始めて2か月で便利さを実感していますね。大学にいる間も、クリニックで動いている案件を確認することはよくあります。例えば、連携している児童相談所から依頼があった場合。当院が行う評価の内容を児童相談所から知らされますので、その評価をクリニックスタッフで手分けして担当します。医師は2名のうちどちらが診るのか、どの心理士とチームを組むのか、「LAN DISK」で共有された依頼内容を確認しながらスケジュールを決めるのに役立っています。
青木先生乳幼児の担当スタッフが最も揃っているのが火曜日なのですが、私は別のところにいるんです。「ここまで治療が進みました」ということを伝え合う必要もあるのですが、スムーズに漏れなく意見交換できています。
青木先生あと、診察時間や休診のお知らせなど、クリニックに掲示するご案内などもスタッフでつくり、共有ファイルに入れます。校正する際にいちいちプリントしなくても画面上で全員の目でチェックできます。
奈々子様自宅ではスタッフの勤務状況を整理したり、交通費の請求などの帳簿をつけたりしています。子どもが5歳と8歳でまだまだ手がかかりますし、幼稚園のお迎えの時間に間に合うように持ち帰って仕事をする時間が増えてきています。朝、出勤途中に子どもの具合が悪くなったと幼稚園から連絡があって、急に戻らなければいけないこともありました。セキュリティを保ったまま、家でも同じように仕事できるのはすごくありがたいなと思います。
青木先生いま育児休暇とっている心理士がいて、もうすぐ復帰していただくのですが、子育てしながら働くことになるので利用してもらえると思います。
奈々子様当クリニックは乳幼児を診ていることもあって、スタッフの半分以上が女性です。家庭がある中でやりくりして来ていただいているので、何かあった時に出勤できなくても仕事できる体制はいいことだと思います。従業員の方の福利厚生にもなりますし、まさに働き方改革だと思うんです。
青木先生石坂さんとの間でも、そのお話が出ました。いま世の中には働き方改革をうたうシステムや商品は数多くありますが、そのソリューションは大企業中心になりがち。大企業なら募集をかければすぐ人が来るけど、中小企業はそうはいかない。職場環境を良くして、入られた方にはできるだけ長く在籍してもらいたい。働き方改革は、小規模な事業者のほうがもっと重要だと思いますね。
青木先生ITのシステムの価格は素人には見当がつかないものですが、思っていたより低価格でした。石坂さんは最初に予算を聞いてくださり、何がいくら必要とオープンにしながら、実際の業務に即してムダを削ぎ落とした提案をしてくださいました。
青木先生しかも開業まで時間がない中で、朝から夜遅くまで4~5人詰めていただいて設置していただきました。ここはクリニックビルなので壁が厚いのか電波が飛びにくいようで、作業は難航したのですが、石坂さん自ら床に這いLAN・配線作業までしていただいて感謝しています。
青木先生正直、スマートフォンではメールくらいしか見ていないので、もっと活かしていきたいですね。「Remote Link Files」というアプリを使って「LAN DISK」にアクセスする環境はできているので。特に電車の中など、パソコンを開かなくてもパッと確認できますし。
青木先生また診察中は、医師が目をそらすだけで患者さんに不安を与えるおそれがありますし、ちゃんと向き合ってもらえていない感覚にもなりかねない。パソコンを閉じて、スマートフォンの振動音も出ないほうがいいのですが、スマートウォッチなら振動で着信を教えてくれるので、それでコミュニケーションが円滑になるならぜひ使っていきたいなと思っています。
青木先生このクリニックを開業することがなければ、データ共有の便利さはもとより、セキュリティの危険性すらも想像せずに、日々の業務の中で忙殺されていたと思うんです。私に限った話ではなく、大学の先生としてそれ一本で食べている人はそんなにいない。複数の大学をかけもったり、執筆活動していたり、副業や兼務されている方が多いですよね。IT環境に対して、潜在的であり、実は顕在的な悩みを持つ先生は大勢いらっしゃるはずなので、この「RIO Cloud」をお薦めしたいと思います。