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ユーザ中心設計のすすめ(第62回)―タッチユーザインタフェース プリント
2011/02/26 土曜日 07:07:37 JST

<タッチユーザインタフェースについて>

最近、画面をタッチして操作する製品が多くなってきたと思いませんか。みなさんが最初に頭に思い浮かべる製品はiPhoneではないかと思います。コラム読者の中には
「実際に使っているよ」という方もたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。

では、みなさんのご家庭でタッチ操作できる製品は何台ありますか。ニンテンドーDSもタッチ操作ですね。最近のデジカメはタッチ操作出来るものもあります。最新式のインクジェットプリンタもしかり。カーナビにもタッチ式のものが多いですね。パソコンも当然あります。

いかがでしょう?タッチ操作製品を5台以上持っているっていう人もいるかもしれません。公共製品では、銀行のATMや自動券売機もタッチ操作ですし、世の中、タッチ全盛時代でしょうか。

<タッチパネルの原理について>

タッチパネルは、液晶画面にタッチした位置を検出するための透明のシートを張り合わせたデバイスです。つまり、タッチパネルは表示と入力の2つの機能を備えていることになります。画面をタッチする行為をパソコンで例えるなら、ユーザの指がマウスカーソルの役割で、画面をタッチする動作はマウスをクリックすることと同じ役割になります。

タッチパネルにはいくつかの方式があります。
抵抗膜方式は押した圧を感知するものです。押さえられるものであれば指でなくてもなんでも良いという利点がありますが、このタイプは画面が鮮明でなくなるデメリットがあります。
静電容量方式は指でパネル表面に触れたとき生じるわずかな電荷の変化をキャッチするものです。iPhoneはまさにこの方式で2本の指で操作するというマルチタッチも可能です。しかし何を使っても押せるわけではありません。基本は指で操作しますが、ペンは専用のものでないと反応しません。

<タッチUIのメリット、デメリット>

メリット:
・目的のボタン、アイコン等にダイレクトにタッチ出来るため直感的な操作が可能。
・ハードボタンを使うUIと比べると、少ない押下回数で目的が達成できる。
・液晶画面と入力装置が一体であるため、製品の小型化が可能。
・ハードボタンを少なくすることで、すっきりした外観デザインとなる。

デメリット:
・クリック感(フィードバック)がないため、操作時の達成感が少ない。
・ポケットに入れたまま操作するようなブラインドタッチができない。
・手で触れるため画面が汚れやすい。
・キーボードのような素早く正確な入力には不向き。
・パネルが平面で凹凸がないため、触覚に頼る視覚障害者は利用出来ない。
・なぞり操作で、目的でないボタンに触れてしまう場合がある。

<タッチUIあれこれ>

タッチUIはApple社のiPhone で火が点いた感はありますが、実はかなり昔からタッチUIはあったのです。鉄道用自動券売機がそうです。通常の乗車券、乗り継ぎ券、特急券など各種乗車券を販売する目的のためにGUIを採用しているのですが、ユーザが画面内の金額ボタンに直接タッチすることで操作時間の短縮が可能になっているわけです。これがトラックボールやマウスだと時間がかかるのは想像できますよね。

ではiPhoneのCMを思い出してください。
指をスライドさせて画面スクロールさせる→「フリック」、タッチパネル上に親指と人差し指を乗せ、二本の指で押し広げて画面を拡大する→「ピンチアウト」、逆に二本の指で摘んで画面を縮小させる→「ピンチイン」、などの操作はCMの中でもアピールされていますよね。
iPhoneは今までにない新しい操作経験(ユーザエクスペリエンス)を訴求し売れている製品と言っても過言ではないでしょう。

<まとめ>

私は流行っているものがすべてよいとは限らないと思っています。製品開発者は、どのようなユーザがどんな利用状況でタッチUIを使うのか、それはユーザにとって本当に便利で使いやすいかをよく検討すべきです。
消費者の立場から言えば、タッチUIの製品を購入する際には、前述のメリット、デメリットを把握した上で、製品をよく触ってみてから慎重に検討されることをオススメいたします。

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筆者プロフィール
鞆 幾也 (TOMO, Ikuya)
tomo.jpg1988年 金沢美術工芸大学工業デザイン科卒業。
1990年 株式会社ノーバス設立に参画。
2003年 株式会社ジー・テック・ノーバス設立。代表取締役に就任。
(2005年10月株式会社U'eyes Designに移管)
2005年10月から2007年9月まで株式会社U'eyes Designの上級執行役員に就任。
現在はU'eyes DesignのUCD上級コンサルタントとシニアアドバイザーを兼務。
医療機器のプロダクトデザインを行いつつ1996年頃よりユーザインタフェースデザインの業務をスタート。
特に1998年頃から携帯電話の操作仕様設計から画面のグラフィックデザインまで数多くの端末の開発支援をおこなう。
UCD開発支援の実績としては鉄道自動券売機(オムロン製)がある。

株式会社 U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp
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