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ユーザ中心設計のすすめ(第24回)― その文言はユーザに伝わりますか? プリント
2009/02/12 木曜日 20:33:55 JST
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本編: エアコンの消費電力の表示
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冬のある日、私は暖房にどれだけ電気代がかかっているのか気になり、部屋のエアコンの底にある消費電力の表示を見てみました。すると写真のような記載がされていて、冷房は1項目なのに対し、暖房は「暖房標準」と「暖房低温」の2項目に分かれていました。  rs-090212-1.jpg
                     暖房標準と暖房低温

私は「暖房低温」という表示を見て、低く温度設定をしている暖房だと思いました。さらにその定格消費電力は960Wと、「暖房標準」の460Wに比べ倍以上の数値になっていました。
このことから、「暖房低温」の状態、つまり温度をより低く設定しているほうが、より電気代がかかるのだと思いました。それ以来、違和感がありながらも高い設定温度でしばらく暖房を使っていました。部屋を思う存分暖めて省エネができるなんて、こんないいことないですよね。

しかし数日後、こんなに楽して省エネなんてありえない!と我に返った私は、「暖房標準」と「暖房低温」の意味を詳しく調べてみることにしました。すると、私が考えていたものと全く逆のものでした。
・暖房標準:室外の空気の温度が7℃、室内の空気の温度が20℃であるときの暖房の消費電力※
・暖房低温:室外の空気の温度が2℃、室内の空気の温度が20℃であるときの暖房の消費電力※

簡単にいうと、外気温に応じた消費電力のことだったのです。外が寒いほど部屋を暖めるのにより電力が必要という、ごく当たり前のことですね。これで納得し再び暖房の設定温度を下げたのですが、一時は世間の常識が信じられなくなってしまいました。
業界では標準的に使われている表示にも、ユーザにとってはこれほどまぎらわしいものがあるんですね。

※参考サイト:http://www.jraia.or.jp/product/com_aircon/jis_02.html 
ページ最下部の「暖房能力試験条件」に説明があります。 
※本編部分は使いやすさ研究所<http://usability.novas.co.jp/>
の使いやすさ日記(No.471 担当:加藤)より、一部加筆修正して転載しています。
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解説: 「文言の重要性について」
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今回は文言のお話です。
本編の「暖房標準」と「暖房低温」をインターネットで検索してみましたが、掲示板やブログ等で「判りにくい!」「どういう意味でしょうか?」といった複数のユーザの書き込みが見受けられました。当事例のように、ユーザに理解できない専門用語を使っているために、ユーザが混乱し使えない状況に陥ることはよくあることです。

「暖房標準」 「暖房低温」 という文言の「暖房」「標準」「低温」というそれぞれの意味は判りますが、「暖房標準」 「暖房低温」がどういった状況なのかがまったく判りません。百歩譲って、業界で決められた用語ということでこの文言の記載を認めたとしても、その用語の説明は必要ではないでしょうか。エアコン本体の下側に記載されるものですから、スペース的には問題ないはずです。あえて簡潔に記載するのであれば「暖房標準」 「暖房低温」 の替わりにそれぞれ 「外7℃ 内20℃」 「外2℃ 内20℃」という表記でもよさそうです。
ユーザインタフェースの問題点の70%は文言の不具合が起因しているとも言われているくらいです。それゆえに適切な文言を検討することは大変重要なことなのです。

たとえば、テレビのリモコンに記載されている文言はどうでしょうか。限られたサイズの操作パネルに多数のボタンが並んでいます。ユーザに使い方を知らせるために、文言はボタン上にシルク印刷で記載されています。リモコンのサイズとボタン数の関係から非常に狭いエリアに文言をいれないといけません。文字数を多くすれば逆に文字サイズが小さくなり視認性が悪くなりますので、自ずから文字数も限定されます。リモコンなどのハードだけでなく、携帯電話、カーナビ、デジカメ等の画面の中でも同じことが言えます。

重要なのは、設計者は常にユーザの視点で文言を検討し採用することです。そのために簡単なユーザビリティテストを実施することをお勧めします。社内の設計に携わっていない方(たとえば事務職の方)に文言検討案を見てもらい、それらは何を示しているかをアスキングするだけでもよいのです。複数案の中から一番判りやすい文言を採用するだけでも、ユーザビリティは確実に向上します。

*本コラムに関するご質問、ご感想などは、お気軽に
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筆者プロフィール
鞆 幾也 (TOMO, Ikuya)
tomo.jpg1988年 金沢美術工芸大学工業デザイン科卒業。
1990年 株式会社ノーバス設立に参画。
2003年 株式会社ジー・テック・ノーバス設立。代表取締役に就任。
(2005年10月株式会社U'eyes Designに移管)
2005年10月から2007年9月まで株式会社U'eyes Designの上級執行役員に就任。
現在はU'eyes DesignのUCD上級コンサルタントとシニアアドバイザーを兼務。
医療機器のプロダクトデザインを行いつつ1996年頃よりユーザインタフェースデザインの業務をスタート。
特に1998年頃から携帯電話の操作仕様設計から画面のグラフィックデザインまで数多くの端末の開発支援をおこなう。
UCD開発支援の実績としては鉄道自動券売機(オムロン製)がある。
株式会社 U'eyes Design:http://ueyesdesign.co.jp
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