2024年はゲーム機関連でさまざまな発表があり、うわさも多く流れたのが印象的でした。今になって振り返って見たら、おもしろかった。来年、Switch 2以外にも“何かある”んじゃって印象を受けました。
この記事では2024年のゲーム機関連の話題を振り返りつつ、「ゲームの世界で大きな変化が起こる日」が近い説を唱えてみようかと思います。
Switch 2がくるけど…ソニーもなんか作ってたりする?
社長の古川です。2015年3月にNintendo Switchの存在を公表して以来9年ぶりにSwitchの後継機種に関するアナウンスを今期中に行います。また、2024年後半のSwitchソフトラインナップをお知らせするNintendo Directを6月に実施しますが、そこでは後継機種を扱いません。誤解のないようお願いいたします。
— 任天堂株式会社(企業広報・IR) (@NintendoCoLtd) May 7, 2024
今年いちばん大きなゲーム関連の話題というと、任天堂が「今期中にSwitchの後継機を発表するよ」とアナウンスしたことが挙げられるでしょう。
年末にかけて呼応するように次から次へとうわさが流れ、「Switch 2はこんな感じかも」というものまで。発表時期についても2025年1月では、といった見解が出ています。
Switch 2については耳にした方も多いかと思いますが、実はゲーム関連のあれこれはSwitch 2だけに留まらないんです。
特に気になったのが、ソニーが携帯ゲーム機に向かうような方向性を見せたこと。PlayStation Portalというデバイスで「PS5のゲームを“PS5なし”でプレイできる機能」のβテストを開始したのです。その後、「ソニーは新しい携帯ゲーム機(PS5のゲームがいつでもどこでも遊べる、PS Portalとは別のゲーム機)を作っているかも」というウワサまでも流れました。
実現するならPS5とSwitch 2で直接対決という構図になりませんか。
任天堂が“唯一無二”になりつつある。「一家に一台」をまだやれる
昨今のゲームに思いを巡らせてみてまず思うのが、「Switchって任天堂の独自タイトルがヤバいくらいおもろいよな…」ということ。
任天堂はゲーム機メーカーであるとともに、『マリオ』『ゼルダの伝説』『ポケモン』など、自力で強力なシリーズを複数展開しています。「ゼルダを遊ぶため」「ポケモンを遊ぶため」でSwitchを買った人もいるんじゃないでしょうか。
サードパーティのAAAタイトルに依存せずとも任天堂は戦える。Switch 2がどんな感じであれ、そこは変わらなそう。それくらい、ゲームそのものがおもしろい。
ゲーム機メーカーとしても一流です。今や当たり前すぎて言及されることもありませんが、Nintendo Switchは携帯機でありながら据え置き機にもなれるハイブリッドゲーム機。
ひとりで手で持って遊べるのは当然として、テレビにつないで大画面でも楽しめます。1台でみんなで一緒にも遊ぶことも可能。旅先のホテルにあるテレビを使って家族全員で盛り上がったりもできるという。ファミリー層・ライトゲーマー層も巻き込む力がとにかく強いデザインになっています。
任天堂はWiiリモコンの時代から、いやそもそもファミコンを出したときには既に、先駆的で斬新なアプローチを続けてきたメーカーですが、ほかのゲーム機との差別化はSwitchにおいて完全に達成された感があります。
2. 人気作の多くはどのゲーム機でも遊べる。これはもしかして…課題?
ほかのゲーム機はどうでしょうか?
PS、Xbox、Steamで遊べるゲームは、サードパーティの有名タイトルが主ではないかと思います。『エルデンリング』『モンスターハンター』。PS5で遊ぶ人もいるし、PCで遊ぶ人もいる。どれを選んでも問題なし。専売タイトル以外は「どのプラットフォームでも遊べる」──ゲーム機の没個性化が進んでいるといってもいいかもしれません。
もちろん、各プラットフォームにはちゃんと個性があります。
ソニー(PS)には『The Last of Us』『ゴッド・オブ・ウォー』『Horizon』といった強力な自社スタジオ作品があります。PlayStation VR2で独自にVRを開拓してもいます。
SteamはPCゲーマーにとってはお馴染みのプラットフォームになっていますね。膨大なインディー作品にアクセスできるのはSteamならではで、VRにも強いです。
しかし、「話題作・人気作を遊びたい」という大きめのニーズを満たすというところでは横並びになってはいやしないでしょうか。
そして、PS5にせよSteamにせよ『マリカー』は遊べません。
3.「次のソニーの携帯ゲーム機」は“PSPの再来”じゃなくない?
そんな状況だから、ソニーが見せた「携帯機を目指してるようなムーヴ」が印象に残りました。
PlayStationの魅力は最新のグラフィックス性能で最新ゲームが楽しめるところにありました。そのハードとゲーム体験が明確に紐付いているところがソニーらしさ。
そのソニーらしさは、オンリーワンなものとして展開されてきたと思います。
PlayStationには時代に即してヴァリアントが出ますが(画質がもっといいProが出たりする。最近だとPS5 Proが出ましたね)、基本的に「最新世代のゲームが遊べるのは1種だけ」。以前ソニーが出していた携帯ゲーム機「PlayStation Portable(PSP)」ではPS2などとは互換性がありませんでした。
メーカーが同じでも、安易に最新世代の互換性は与えられないのです(自社製品同士でカニバっちゃうからでしょうか?)。
ところが、今ソニーが試しているのは要は「PS5のゲームが動く別種のゲーム機」的な方向性。「PS5じゃない、PS5のゲームが動くゲーム機」ってそういうことです。Xboxでも遊べる、ゲーミングPCでも遊べる、ならばPS5にこだわらず、自社のデバイスで遊んでもらったほうがいい、みたいに考えてるのかも。
「PS5(現行最新機)のゲームが動く携帯機」、実は今までにない存在になる可能性があるのです。
4.ここにきてセガが何かやろうとしている
と、ここまで新しいゲーム機を巡る話をしてきましたが、新しい動きを見せる「ゲームメーカー」も現れました。『ソニック』などを擁するセガです。独自のゲームサブスクリプションを立ち上げようとしている…という報道がされています。
これはすごくおもしろいなーと思いました。『龍が如く』や『ペルソナ』シリーズ(アトラスはセガの子会社です)はゲーム配信でも人気で、遊んでいる配信者が毎日どこかにはいる、みたいな感じになっています。もしセガのサブスク独占配信になっても、加入して遊びたいファンは多いでしょう。
どのプラットフォームでどのタイトルでも遊べるようになってきた関係で、おもしろい作品が作れるメーカーはビジネス的な勝負をかけやすいのかもしれません。
遊ぶ環境自体はもうたくさんあるから、自社のゲーム機にユーザーを囲わなくても、作ったゲームは遊んでもらえる。ゲーム機を作ることに固執する必要はもうなくなっているのかもしれません。
とりあえず、優れたゲームタイトルのほうから新しいアプローチを狙っているのが、かつてゲーム機戦争で敗れ去ったセガなのは、めちゃくちゃおもしろい気がするんですが、どうでしょうか。
5. Steamの野望
また、PC向けにゲームを配信するプラットフォーム「Steam」を運営するValveについても興味深いうわさが流れました。それは「もしかしたら据え置きのゲーム機を出すかも」というもの。
もし出るなら、Steamで配信されてるタイトルがぜんぶ遊べるでしょうね〜。ValveはSteam DeckというハンドヘルドPC型の端末を既にリリースしているので…あれ? ソニーがもし「PS5のゲームが動く携帯機」を出すなら、似たような関係性になりませんか?
値段がPS5やXboxより安いのであれば、かなり魅力的な選択肢じゃないでしょうか。遊べる主要なゲームは変わらないでしょうから。
6. “一家に一台”が難しい中でメーカーはどうするんだろう?
ゲームを買う側にとってはいい時代です。メーカーがどんどん競争していて、たぶん『FF』がプレステでしか遊べなかった時代よりも、ずっと気軽に遊びたいゲームで遊べるようになっている。
でも、メーカーにとっては試練のときなのかもしれません。
ファミコン・スーファミ・プレステ/サターン等々と続いてきた「特定のゲームが特定のゲーム機でしか動かないのは当たり前」「強いゲームタイトルの力でハードも売る」というビジネスモデルは、多くのタイトルが配信されるようになった結果として完全に崩壊しているように見えるからです。
従来的なビジネスモデルを維持できそうなのは任天堂だけっぽい空気が。ハード・ゲームの両方を作る力がスゴくて、自社タイトルが自社ハードを牽引できてしまう。範馬勇次郎みたいな規格外感、豪腕が過ぎます。
ソニー(PS)・Xbox(Microsoft)・Steam(PC)については、遊ぶタイトルが共通化している面があるので、同じようなやり方ではやっていけないのかもしれません。
じゃあ2025年にゲームの世界は、任天堂が覇権をとってgg、なんでしょうか。
ここまでを見てきた感じだと、ほかのゲーム機/ゲームプラットフォーム/ゲームメーカーが何もしないでいるようには見えません。何か動きを見せる気がします。それもけっこうデカめの。
そんなわけで、2025年のゲーム機市場は、ゲームを買わずに眺めているだけでもおもしろいんじゃ、と。今までの枠組みに囚われない、新しい動きの中で、ゲーム機そのものも、ゲームも、変わっていきそうだからです。