「なんかヤバいもの作ってんのよ」
とは言うけど、技術の具体的なところは一切語らない。こういう生殺しは嫌だよね?
「Magic Leap」という超ステルスなスタートアップが、シリーズBで5億4200万ドル(655億円)という未曾有の出資を集めて空中に象が現れる何かを作ってると聞いて、さっそく何つくってんのか調べてみました。以下が取材で知り得た事実です。
もし僕の結論が間違っていなければ、Magic Leapが作ろうとしているものは、こんな世界。
Google Glassにステロイドぶち込んだ補強版。
そこではCGのグラフィックスと現実がシームレスに溶け込む。
ヘッドセットには光ファイバーのプロジェクター、クレイジーなレンズ、
おびただしい数のカメラが実装されている。
まったく現実と区別がつかないAR(拡張現実)。
-まあ先走らずに、ひとつひとつ見ていきましょう。長いよん。
錚々たる顔ぶれ
マスコミのレーダーに初めてMagic Leapの存在が探知されたのは、キャッシュの大山がゴゴゴゴーッと動いた後でした。
今年2月にVentureBeatは、謎の企業が5000万ドル(60億円)の出資を集め、「人がイメージや情報とインタラクトする在り方を永久に変える」「ゲームチェンジング」(Magic Leap)な技術の開発に乗り出したと報じています。
「はいはい、ゲームチェンジングね」と普通なら軽く受け流してしまうところだけど、会社のバックにいる面々はヌヌヌ?と興味をそそるものです。
まずRony Abovitz。彼は医療ロボットのマコ・サージカル社を16億5000万ドル(1994億円)で売却したばかり(MAKO共同創業者)。
次にRichard Taylor(WETA共同創業者)。彼は「ロード・オブ・ザ・リング」「ホビットの冒険」「第9地区」など手がけたVFXのプロ集団・WETAウォークショップのクリエイティブ・ディレクターです。
今年3月にはベテラン・ゲームデザイナーのGraeme Devineが参画してまたまた信用度アップ。彼はこの正体不明の技術を核に、まったく新しいゲームスタジオをつくる仕事を任されました。
4月にはベテラン・テックマーケティングチーフのBrian Wallaceが仲間に加わります。彼はサムスンのあの広告キャンペーン「Next Big Thing」で知られる辣腕。
いずれも共通してるのは、「どこでも働けるレベルの人」だということ。
その彼らがMagic Leapを選んだのです。
グーグル直々の投資、異例の役員出向
そして秋にドッカーンときたのが、グーグルが筆頭でとりまとめた5億4200万ドル(655億円)の超大型投資ラウンドです。
出資したのはQualcomm、Legendary Pictures、VCの大御所のアンドリーセン・ホロウィッツ、Obvious Ventures、クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ(KPCB)。ここに至って俄然記者団も耳ダンボ、アンテナ全開となりました。
グーグルの投資は珍しいことではありませんが、普通は投資会社を通します。また、Magic Leapにはラリー・ページの腹心サンダー・ピチャイも役員として名を連ねており、全グーグルプロダクトの総括責任者が名もないスタートアップの役員に出向するなんて普通では考えられないことです。
Magic Leapはアレでもコレでもない
大物と大金が動いて何やらすごそうだというのはわかるんですが、Magic Leapに聞いても返ってくるのはせいぜい仮想現実(VR)と拡張現実(AR)のコンセプトを超越する「軽量ウェアラブル」の一部だという情報ぐらいなんですよね…。Fast CompanyのDavid Lidsky記者からの取材に答えてAbovitz氏は、アレでもコレでもないとヒントにもならないヒントを出しています。
「(Magic Leapは)ホログラフィーではない。立体3-Dでもない」
「頭の上にホールドするのに、巨大なロボットは要らない」
「家にいなくても使える」
「市販のパーツで作れるようなものではない」
「スマホをビューマスターで覗くようなのとは違う」
む…。えーとまあ、これまでで一番わかりやすい説明はけっきょく、会社のプレスリリースのこの一節かもね。「Dynamic Digitized Lightfield Signal™を使ってリアルの物体と区別がつかないイメージを生成し、それを現実世界にシームレスに置く」
もちろんこの説明は、ほんの触りの部分に過ぎません。
Magic Leapの前身
Magic Leapはもともとテック企業でもなんでもありませんでした。
Wayback Machineで2010年当時の会社のサイトを見てみたら「Magic Leap Studios」という骨と皮のなんもないサイトが出てきました。4年前の当時からMagic LeapはWetaワークショップとは付き合いがあったようですね。と言っても仮想現実ではなく、グラフィックノベル(米版単行本漫画)、映画シリーズでWetaを提携してるという風にサイトには書いてます。
このシリーズというのは「Hour Blue」という、シンギュラリティ(技術的特異点)が迫るディストピアンな世界が舞台の作品で、アイディアの実現化はアメコミの大物デュオ、Dan AbnettとAndy Lanningに任せました。
ちなみにMagic Leap Studiosはインディーレーベルもやってて、お抱えバンドのSparkydog & Friendsの写真を見ると、なんと先般のマコ・サージカルのAbovitz氏とDebb夫人、同社ロボット部門ディレクターのArthur Quaid氏、今のMagic Leapの特許保有者Graham MacNamara氏もメンバーです。大物ミック・グロソップがプロデュースを手がけたアルバム、見つけたんで下に貼っておきますね。思ったほど悪くない!
…とまあ、Abovitz氏が仲間と楽しくなんかやってる雰囲気だったMagic Leapに転機が訪れたのは2011年のこと。この年の5月にMagic Leapは法人化され、同年7月のコミックコンでARアプリ「Hour Blue」をリリース、「物理的世界に映画を持ち込む」新たなゴールに向け最初の一歩を踏み出します。
10月を迎える頃にはサイトもプロっぽく変え、秘密のオーラをまとい、テクノロジー企業を標榜するように。正確には「ソーシャルな映画体験と共同のイマジネーションのビジョンと自社プラットフォームを通してプロプリエタリなコンテンツを開発&配信するデジタルメディア&テクノロジーカンパニー」(動画下)ですがね。いや~舌噛むわ。
2011年当時、Magic Leapはこう書いてますよ。「今作ってるものはかなりクール(みんなもそう思ってくれたらうれしいな)。そっちの仕事で忙しいので今はあんまり目立たないようにしてる」
何がMagic Leapを変えたのか?
方向転換を後押ししたものが何だったのか? それは僕にもわかりません。が、たぶんこういうことなのかなーと想像はできます。たぶん…Rony Abovitzがいつかどこかでワシントン大学のEric Seibel教授とバッタリ出会っちまったんすよ、ええ。
Seibel教授はかれこれ10年以上前から、光ファイバー1本で人体のかつてないほど微細な割れ目の中まで安全に覗ける高度な新型エンドスコープの開発に取り組んできた人です。圧電でファイバーの先端を螺旋形に振動させながら、想像よりずっと高解像度なイメージを「スキャン」できる装置ですね。 こういう技術の採用に興味を示すのはAbovitz氏のマコ・サージカルみたいな医療ロボット企業ぐらいだろうし、どこかで接点があったというのは想像に難くないです。
これがARとどう絡んでくるのか?-要するに光ファイバーの先端を螺旋状に振動させることでイメージを拾うことができるなら、これと全く同じシステムで光ファイバーのプロジェクターも作れるんじゃないか、ということですね。
話が面白くなるのはここから先です。
Seibel教授のチームが取り組んでいたのは、まさにそんなプロジェクターの実現でした。ヘッドマウントディスプレイの試作機に装着したこともあります。それでわかったのは小さなLCDやOLED(有機ELディスプレイ)よりファイバーの方がずっと実用的で安く、しかも頭に装着しなくてもポケットサイズまで小型化できる利点もあるということ。理論上は眼鏡の中にも埋め込めるぐらい小型化が可能なこともわかりました。
Magic LeapがSeibel教授の研究パートナー、Brian Schowengerdt氏を雇ったのはこの技術が欲しかったからなんじゃないでしょうか。それが証拠にSchowengerdt氏の力添えでMagic Leapは、ファイバースキャニング・ディスプレイ技術の超高解像度4Kバージョンの研究開発費として米国防省から15万ドルの奨学金を取り付けてもいます。また、Magic Leapの出願特許はファイバーから光を目にバウンスさせる手法に関するものがやけに多いんですよ。やはりこの出会いが転機だったと見るのが自然でしょう。
特許で知り得た事実
極秘企業の内情を探るには特許出願を見るのが一番です。もっとも、特許だけではなんの証拠にもなりませんが、どの領域に興味があるかぐらいは見当はつきますからね。Magic Leapの特許を見れば、A)目ん玉にイメージ投射するだけの会社から、B)リアル世界に3DのCGの象が出てくる会社へと、いかにして飛躍を遂げたのかもわかるんじゃないでしょうか。
現実と見分けがつかない拡張現実、これは実現が難しいものです。リアル世界を見ている時には、近いもの、遠いもの、さまざまなものに目が焦点を合わせます。目の前の小さなガラスだけ見てるのとは違いますからね。
また、リアル世界では大量の光が目に反射します。Google Glassのようなヘッドマウントのディスプレイが照射するイメージが透明で霊のように見えるのは、そのため。現実世界をとりあえず見なきゃならないので、眼鏡の前をプロジェクターで覆うわけにもいきません。光を横から中に投射しなきゃならないとなると、視野もそのぶん狭くなりますからね。
そして言うまでもなく、CGの物体がリアル世界の一領域を占めるように見せるためには、頭と周辺環境の動きを追跡する方法も必要です。それじゃないとフラットな画像に見えてしまいますからね(残念ながら既存の多くのARはスペック的にどうしてもこうなってしまう)。
Magic Leapの特許出願では、こうしたあらゆる問題に対処するソリューションが網羅されています。たとえばこの特許では、LCDの「occlusion mask(閉塞マスク)」を使って、CGオブジェクトが出現する場所にピンポイントで現実世界からの光を遮断し、幽霊っぽく浮き上がって見えないようにする手法を説明しています。
こちらは、大きなメガネ大のレンズに光をバウンスし、視野のどこにでもCGの動物が現れるようにできる導波管の説明です。
こちらはNASAからライセンスしたもので、外付けカメラ1組だけで現実世界の現在地をソフトウェアに知らせる手法。
こちらは、視野のどこに現れるかに応じてCGオブジェクトの外観を変える手法です。
Magic Leapで空中にサメを照射したとしますよね? あなたはそのサメの周りを歩いて、どのアングルからでも眺めることができます。その間もずっと絶えずソフトウェアがあなたの動きを追っているというわけです。
こちらはMagic Leapでメガネ搭載カメラ1組を使って、両目の動きを追い、両目がどこに焦点を合わせているのかを検出する手法です。これができれば、Magic Leapが一番実現を望んでいることも可能になるかもしれません。つまり、デジタルのライトフィールド技術で現実世界の中にCGオブジェクトの奥行きを確保することです。
微小反射体、回折パターニング装置、デフォルメ可能な薄膜ミラーといった高度な光学系ハードウェア(どれもSchowengerdt氏が前から実験に成功している技術)を駆使すれば、現実のオブジェクトとまったく同じようにバーチャルの3Dオブジェクトにも人は焦点を合わせることができるというのが、Magic Leapの思惑です。視線の深さに合わせて3Dオブジェクトをスライスし、見ている場所に合わせてぴったりのスライスを表示することでそれを実現しようとしているようです。最後にこの特許出願。これは「tactile glove(触覚手袋)」です。ヘッドギアを使いながら2本指をこすり合わせるとロボット1組の操縦が可能。たぶんMagic Leapで見える物体とインタラクトするのに使うんだと思います。Magic Leapの出願特許の中ではこれが一番そそられました。なぜって、もう手袋は会社でつくってテスト済みだと書いてるんですよ。しかも、ヘッドギアでシースルーのARモードと不透明なVRモードを切り替える手法についても触れているのです。
つまりMagic LeapはGoogle GlassのライバルでありOculus Riftのライバルでもある、というわけ。
ちょっとここでは書ききれないことも多いのですが、これだけ読めばなんとなくMagic Leapが作ろうとしてるものの大枠は掴めると思います。
さて次に、同社が既に開発したものが何で、これから開発したいものは何なのかを見てみましょう。
目撃者の証言
あんまり誰にも注目されなかったんですが、同社の技術は今年7月にニューヨーク・タイムズのJohn Markoff記者が実は会社にお邪魔してその目で見てきています。「検眼室にある何かに似た精巧なビュワー」を通して眺めたら、本当に空中に3Dの生き物が浮かんで見えたって報じてます。それって一大事なんじゃ…。Markoff記者はさらに、装置からデジタルの光照射野が網膜に投射されるという話は事実だった、と書いてます。
今はまだ冗談のようにデカい
ゲームデザイナーのGraeme Devine(中の人になっちゃったのであんまり確かな情報源とは呼べないけれど)によると、今のプロトタイプは超巨大らしく、彼は「The Beast(あの化け物)」って呼んでます。「映画の『ブレインストーム』見たことあるなら、あの初代ヘッドギアみたいなもんだと思えばいい」と8月のUnite 2014ではゲームデベロッパーを前にぺらぺら喋ってますよ。
求人情報で知り得た事実
求人情報を見ると、このThe Beast(化け物)の原始時代もそう長くは続かない、これからどんどん小型化が進みそうな気配です。新バージョンの試作機を大急ぎでつくって工場への機械据え付けの準備ができるハードウェアエンジニアを探してますからね。他の求人職種によると、この新バージョンはスマホ風のモバイル部品に依存していて、OSはAndroidみたいです。
驚くほど内情が詳しく書かれた求人情報もあります。どうやらクアドコアのモバイルプロセッサ、携帯無線信号、GPS、ノイズキャンセリングヘッドフォン、3D深度感知カメラ、これ全部ひとつのパッケージに収まるようです。
大きな屋内の3Dモデルを構築するのに「ヘッドマウントデバイス搭載の長距離深度センサー」が必要だという記述も。なにやらグーグルのプロジェクトTangoを彷彿とさせますね。「RGBDレンジのセンサーは超大事。このウェアラブルにはこれを搭載する」とMagic Leapは書いてます。
プロジェクトTango
「目線追跡・認識の技術も突っ込む」と冒頭に書かれてる求人情報もあるので、さっきの出願特許の情報もただの思いつきじゃないんだな、というのがわかります。
オーディオエンジニアの求人では、音声認識、テレプレゼンス、「ライブの音声・楽曲転送&再生」とあって、これも何やら心惹かれますね。たぶん好きなバンドと一緒の部屋にいるような感覚が味わえる…とかかな。
Magic Leapの場合、AndroidをただOSに使うという範疇にとどまりません。既存のAndroidオープンソースプロジェクトとその基幹アプリケーションを土台に「映画のような現実」のインターフェイスを構築するのが同社の狙い。
もっともMagic Leapのエクスペリエンスはウェブ経由で配信するような節も見られます。求人情報には「Magic Leapの映画現実のエクスペリエンスに対応するクラウドベースのアプリケーションとサーヴィス」だとか、会社のクラウドサーヴィス用の「ブラウザベースのUI」という言葉も出てきますからね。
あと事業規模の話ですが、Magic Leapとしては相当大きなスケールで展開したいみたいですよ? サプライチェーン・マネジャーの求人情報には、「複雑な家電や電子光学製品を迅速に量産(年産数百万台規模)化できる能力はマスト」とあって、売る気満々です。
その他、目についた要件:
「動きをとらえ、それを空間に投射することで、友だちと一緒にもうひとつの現実を生きているかのような感覚を実現したい」
「ずっと奥から物体を探し、ヒトや動物のポーズを決め、シーンを識別し、固くはっきりした動きを捉え、行動を理解し、ユーザーの身元を特定し、光ってるものを見つけ、内在するイメージと光の向きなどなど探り出す」
「カメラはいろんなことに使う。コンシューマから情報を読み込む部分と、ARディスプレイに情報を表示する部分の両方で。パノラマ映像を継ぎ合わせ、ティルトシフトの動画を作成し、超高解像度、ノイズリダクション、あらゆる種類のイメージフィルタリング、クールなエフェクトもエンドレスに実装したい」
「物体とシーンのスキャンには従来にない新しい手法をいろいろ実験的に使ってみたい。そして物体、玩具、家電、ロボット、特にクアドコプターから成るエコシステム(これも君が開発する)、その中でARシステムの流れがどうあるべきかについても実験してみたい。我が社が求めているのは、テレプレゼンス、ARと特定のモダリティ(医療から機械、農業、建設分野に至るまで)をミックスする新しい手法をハックできるような人材だ」
クアドコプターといえば、「クアドコプター(つまりはドローン)開発経験があれば尚良し」と書いてる求人情報もいくつかありました。
最後に注目なのが、Magic Leapのプラットフォームには現実のゲームもくるということ。それがわかる求人情報も2つあります。ひとつはスチームパンク・ファン垂涎のゲーム。
この動画の0:29-にある「Dr. Grordbort's Infalliable Aether Oscillators」っていう、Wetaワークショップがつくったレイガン(光線銃)のレプリカ。この次世代のファーストパーソンシューティングゲームをWetaワークショップとMagic Leapが共同開発してるんだそうな。 「高度なレイガン、波動弾のダイナミクスが味わえる」ものらしいです。
特に注目の社員
Rony AbovitzとBrian SchowengerdtとGraeme DevineとBrian Wallaceの四天王は先ほど紹介しましたが、ほかの重要っぽい社員をピック。
Gary Bradski: オープンソース・コンピュータ・ビジョン・ライブラリ(OpenCV)創始者。自走車に「見る」ことを最初に教えたガイのひとり。Jean-Yves Bouguet: 最初のグーグルストリートビュー部門メンバー。 屋内ストリートビュー事業トップだった人。Greg Broadmore: Dr. Grordbortのレイガンだらけの世界のクリエイター。Austin Grossman: ビデオゲーム脚本家。「System Shock(システムショック)」、「Deus Ex(デウスエクス)」、「Dishonored(ディスオナード)」など手がける。John Root: モーションキャプチャのアーティストでありアニメーター。「Epic Games (Unreal Tournament 2004)」、「id Software (Doom 3, RAGE)」、「Remedy Entertainment (Alan Wake)」、「Digital Domain」などビデオゲームと映画の有名企業に勤続20年。Dave Gibbons: 漫画本ライター兼アーティスト。ウォッチメン共同クリエイター。プレリリによれば「新しいパーソナルコンピューティング・プラットフォームを活かしたプロジェクトとIP(知財)を開発する」のが担当。Andy Lanning: 漫画本ライター兼アーティスト。「Guardians of the Galaxy」共同クリエイター。「Hour Blue」契約4年。現在はMagic Leapのコミック・ワールド・アンバサダーを務める。商標登録で知り得た事実
さて最後に忘れちゃならないのが商標登録。ただのマーケ語みたいなのも多いけど、たぶん重要なキーターム。:
FLUTTERPOD、別称FLUTTERBOARD: 「動くバーチャルな飛行物体。バーチャルリアリティー体験。電子コミックブック」-現実世界に投射されたものの仮称。「Flutterpod」はMagic Leapがmagicleap.comで選んだ検索キーワードのひとつ。
THE MAGIC SHOP: 「Magic Leapのハードで使える録音済み音声、音声ビジュアル作品、関連マーチャンダイズといったエンタメ分野の販売ストアサービス。供給はインターネットや他のコンピュータ、電気通信ネットワーク経由で行う」。アップストアみたいなものですかね。
SENSORYWARE: ヘッドマウント・ディスプレイと関連周辺機器をMagic Leapはこんな風に呼ぶようです。
DYNAMIC DIGITIZED LIGHT-FIELD SIGNAL: Magic Leapのプレスリリースで既に使われてる用語。同社のビジュアル技術全般をこう呼んでます。
A NEW OPERATING SYSTEM FOR REALITY: 「ユーザーがバーチャル世界の構築に参加・貢献できるウェブホスティングプラットフォーム」。ふむふむ。
MAGIC LEAP'S MONSTER BATTLE: 同社プラットフォーム初のゲームのひとつ。共有された世界でプレイヤーがカスタマイズ可能なバーチャルペットを飼い、ペットは指の指令に従って(たぶん)戦う、というようなやつ(Graeme Devine氏が8月に言ってた話)。これについてはこんなツイートも出てます。
Why we are doing this: "Please make it possible for my brothers and I to have real life Pokemon battles in our backyard." - Alex
— Magic Leap, Inc. (@magicleap) October 21, 2014
ROADKILL WARRIORS: 「コミックブック」の項にある用語。プラットフォームで展開するARコミックブック?
COSMIC CODE AUTHORITY: 認証スタンプ。2010年のHour Bluegraphicでも使われてたものですが、商標登録は2013年。
FUNONE: 不詳。ゲーム関連っぽい。
TAKE A MAGIC LEAP、WHAT'S YOUR MAGIC LEAP、WELCOME TO THE EXPERIENCE、THE WORLD IS YOUR NEW DESKTOP(世界は新たなデスクトップになる)、THE WORLD IS YOUR NEW SILVER SCREEN(世界は新たな銀幕になる)、A ROCKETSHIP FOR THE MIND、SOCIAL CINEMATIC EXPERIENCE、COLLECTIVE IMAGINATION、CONNECTED INNER SPACE: 全部マーケ語。
IMAGINE IF THE IMAGINATION COULD IMAGINE: さっきからトライはしてるんですけどね。いくら考えてもビジュアライズできません。
全体像
以上です。丸1週間Magic Leapのことで入手できる情報に片っ端から目を通して、やっと全体像がぼんやり見えてきましたよ。フェイスブックがVRのパイオニア「Oculus VR」を買収したとき、「なんでこんな名もない会社に20億ドルも出すんだよ」と訊ねられたマーク・ザッカーバーグがこう言ってたの覚えてますか? 「これは次のグレイトな通信プラットフォームなんだ」。
Magic Leapも目指してるものは同じです。唯一の違いは、それが現実世界の上で展開されるということ。
実現にはメガネとほとんど区別つかない軽量ウェアラブルを使います。光ファイバーを装備し、そこにプロジェクター(+たぶん電池やプロセッサ)も備える。カメラとセンサもどっさり積んで、デプスマップ(深度マップ)で現実世界を再現し、その中で何がどこにあって、どの方角を向いてるかも識別できる。OSはAndroid。独自のアップストアもある。ゲームとインタラクティブな漫画が最初は注力分野、というところですね。
かなり手堅い事業という印象です。投資が5000万ドル(60億円)+5億4200万ドル(655億円)ついて、グーグルの懐刀が役員参加してるというだけでも現実味充分です。ウェアラブルとして快適に装着できるぐらい小型化できるのも時間の問題かも。フェイスブックとグーグルの戦いも、未来のウェアラブルコンピューティングの陣地争いに発展、ですね。
まあ、クドクド書いてるだけで、Magic Leapの技術は見たことも触ったこともないので、いかほどのものかはわかりませんけどねー。Magic LeapのCEOや他の社員のみなさんに当たってみたんですが、どん詰まりでした…。仮に技術が実在するのだとしても、ポシャる可能性だってありますしね。でもシームレスにCGイメージが見える世界の実現を阻むネックをMagic Leapが片付けたのだとしたら胸熱展開だなあ。早くマジックをこの目で見たいですね。で、目を何度もこすってみたい(Show me the magic, Magic Leap. Make me a believer)。
Promotional images via Magic Leap, diagrams via USPTO
Sean Hollister - Gizmodo US[原文]
(satomi)