ミツバチが忽然と姿を消す怪現象「蜂群崩壊症候群(CCD:colony collapse disorder)」。
5年ぐらい前から世界各地で起こり、アメリカ国内ではコロニーの2割から4割が被害に遭っており、原因をめぐっては殺虫剤から遺伝子組換え農作物まで諸説乱立、研究者たちも頭を抱えています。
メリーランド州の米陸軍エッジウッド化学生物センターとモンタナ州の各大学の昆虫学者らが共同研究した結果、なんと真犯人は菌とウイルスの組み合わせであることがわかったのです。崩壊したコロニーを調べてみたら、どのコロニーでも菌とウイルスの2段階攻撃でミツバチをノックダウンした形跡が見つかったって言うんですね。
菌とウイルスどちらか片方ならまだOKなんだけど、このふたつがタッグを組むとたちまちキラーカクテルに変身! ミツバチは百発百中の確率で死んじゃうのですよ。
どんな仕組みで作用するかは分かりません。一方で弱ったところでもう一方がトドメ...なのか、それとも複合作用で互いに破壊力を高めてしまうのか、その辺は今後の研究課題。でも、菌とウイルスはどちらも冷たく湿り気の多い気候で増殖しますし、どちらも蜂のお腹の中で悪さしますから、それで栄養摂取が困難になるみたいですよ。
これまでにも疑わしい菌とウイルスの名は無数に出てますけど、一体どれなのか?
特定に使ったのは、軍がタンパク質解析用に開発した新ソフトウェアシステムです。ミツバチ調べるために作ったものじゃないので最初は出し渋ったようですが、民間にないものだからと頼み込んで使わせてもらいました。ミツバチの体をペースト状にして調べるんですけど、これはいいろいろ試した結果、コーヒーの豆挽き機が一番とわかったそう。
...ともあれ調べてみたら、DNAベースの新型ウイルスがどんぴしゃ検出され、菌の「N. ceranae(ノゼマ病微胞子虫)」との関連も実証されたのです。前々から怪しいと言われていたノゼマ病原菌ですが、まさかウイルスの共犯者がいたとは!
それにしてもこのCCD。ゾッとするのは蜂の死に様ですよね。
蜂群崩壊には、謎の解明を困難にする厄介な特徴がある。蜂がただ死ぬのではなく、巣から四方八方に飛び去って、ひとりぼっちで死んで、消散することだ。
なぜ巣から飛び去るのか? こちらのミステリーは謎のままです。この研究率いるモンタナ大Jerry Bromenshenk博士は、きっとウイルスと菌のコンビで記憶や方向感覚が壊れて単に道に迷っているか、あるいは「insect insanity(昆虫の精神錯乱)」のようなものではないか、と話してますよ。んー人間に起こったら怖いな...。
研究成果はオンラインの科学ジャーナルPLoS ONEにて掲載中。
[NY Times via New Scientist]
Image via wherethebeesatCasey Chan(原文/satomi)