10代でシングルマザーになった米国人女性、アフリカ・ガーナの「女王」に
(CNN) ケネディ・ジョンソンさんは1996年2月、米ミシガン州デトロイトにある10代の母親のための養護施設で女児を出産した。15歳だった。25年後、西アフリカ・ガーナ北部で自身が「女王」に任命されたと知ったとき、ジョンソンさんは自分の運命を信じられなかったという。
ジョンソンさんは2021年10月、ガーナ北部最大の都市タマレの熱狂的な観衆の前で地元の宗教指導者「ダクペマ」から名誉称号「ゾシムリ・ナー」を授与された。ゾシムリ・ナーは「友愛の女王」を意味し、実質的にこの地域の発展を担う責任者となっている。
自宅から何千キロも離れた土地で、馬に乗り、伝統的な王室の衣装を身に着けたジョンソンさんが、夢の中にいると思うのも無理はない。
ジョンソンさんはCNNに対し「私はまだ自分をつねっている。とても非現実的な感じがする」と語った。
「子ども時代の多くの目標を捨てなければならなかった」
ジョンソンさんが15歳で妊娠していたとき、養護施設までジョンソンさんを送り届けてくれた親戚は、子どもが生まれたら迎えにくると約束した。しかし親戚が戻ってくることはなかった。
「私は子ども時代の多くの目標の多くを捨てなければならなかった。私はただ深く掘り下げて、ある種の強さを見つける必要があった」(ジョンソンさん)
西アフリカなど世界各地を旅行したジョンソンさん/Lavon Washington
娘が成長して家を出た後、ジョンソンさんはDNA検査を受け、自身がナイジェリアとガーナの血を引いていることを知った。そこで初めて西アフリカを旅した。同地に降り立ったときのことをジョンソンさんは「帰還」と表現。「大きな安堵(あんど)のため息をつくような感じ」だったという。
この最初の旅の直後となる18年にジョンソンさんは離散した人々のための西アフリカ旅行を企画する会社グリーン・ブック・トラベルを設立した。大西洋奴隷貿易の輸送場所など、歴史的に重要な場所に人々を案内している。
ジョンソンさんによると、この企画にはすぐに何百人もの人が興味を示したため、西アフリカへの渡航はより頻繁になった。ある旅行の際、ジョンソンさんは体に火がついたようにガーナ北部を訪れずにはいられないと感じたという。
同地を訪れた2日目、ジョンソンさんはタマレのダクペマと長老らを訪問するよう頼まれた。ジョンソンさんはこれが通常の会合ではないことにすぐ気づいたという。
「彼らはお互いに相談し始めた。そして、『女王になる準備をしに行ってほしい』と言った」
王族になる
4カ月後、ジョンソンさんは娘と親友とともにタマレで友愛の女王として公式に認められた。毎年恒例のダンバ祭りのパレードに馬に乗って姿を現したジョンソンさんは群衆からの歓声を受け、地域社会に受け入れられた。
ジョンソンさんと親友のケンドール・ジョーンズさん(右)/Nana Kyei, Captured Studios
友愛の女王の役割には、高尚な地位と地域社会に対する実際的な責任が伴う。ジョンソンさんは、14世紀に建国され、人口約500万人からなるダグボン王国の長老たちと協力し、現在住んでいるタマレで建設的な取り組みを進めている。慈善財団とともに、きれいな水や生理用品、靴を地域社会に提供する活動を行ったり、孤児を支援する計画にも取り組んだりしており、地元で尊敬を集めている。
ダクペマはジョンソンさんについて「彼女は平和、団結、希望、そして私たちの過去と未来のつながりを表している。彼女はダグボンで非常に人気があり、尊敬されている。人々は彼女を賞賛している」と話す。
ジョンソンさんは24年11月、ガーナの完全な市民権を取得。同月、「アフリカ系で最も影響力のある人々(MIPAD)」の24年のフューチャリストおよび革新者トップ100にも選ばれた。
ジョンソンさんは、この展開は自身の夢を超えたものだと語る。
「粋な女王」
ジョンソンさんはタマレの若者たちから「粋な女王」と呼ばれ、特に人気がある。それはカラフルなガーナ生地を活用し、鮮烈なファッションセンスを発揮していることによる。
ファッションセンスでも知られるジョンソンさん/Steven Kwame Atuahene
しかし、ジョンソンさんのことを最も尊敬しているのは現在28歳になるジョンソンさんの娘だ。娘は「これは、すべてが逆風にあった人が宇宙のあらゆるものから祝福される物語だ」と語った。「母親が家族のいない中で成長し、その後何百万人もの人々を家族として得るまで成長するのを見たら、すべてを見たと言えるだろう」
そしてデトロイトにいた10代のときのジョンソンさんはタマレにいる今の女王のことをどう思うだろう。ジョンソンさんは「彼女は勇気づけられるだろう」と語る。「若いときの自分が今の自分に会ったら、彼女は歩み、前進し続けるべきだということを理解するだろう」