黒沢清監督が手掛けた中編作品『Chime』が話題になっている。現在劇場でも上映中の本作は、「映画をコレクションし、ユーザー間でレンタルできる」新しい配信サービス「Roadstead」初のオリジナル作品であり、第2弾となる工藤梨穂監督『オーガスト・マイ・ヘヴン』も8月30日にプレミアム販売された。
「Roadstead」では上記オリジナル作品のほか、どのような作品が観られるのだろうか? 映画ファン必見の9月発売ラインアップを紹介したい。どの作品も配信サービスで視聴ができるのは、「Roadstead」が最初となる。
9月13日発売
爽快、胸アツ、時にスリリング!『ライフ・イズ・クライミング!』
視覚障害のクライマー、コバ(小林幸一郎)とサイトガイドのナオヤ(鈴木直也)の姿を追ったドキュメンタリー。ナオヤに命を預け、その声を頼りに岩を登るコバ。2001年に出会った彼らは、パラクライミング世界選手権で4連覇の快挙を成し遂げた。2人の次なる目標は、アメリカ・ユタ州の大地にそびえ立つ砂岩フィッシャー・タワーズの尖塔に立つこと。かくして、10,000キロにも及ぶ壮大な冒険が始まった――。
病で視力を失うも挑戦を止めないコバの生きざま、そして相棒ナオヤとの絆に胸が熱くなること必至。監督は、2016 年にTV番組「ザ・ノンフィクション」でコバを密着取材した中原想吉。そして、コバの姿に感銘を受けたというMONKEY MAJIKが主題歌を手掛けた。
『ライフ・イズ・クライミング!』
2023年/89分
監督:中原想吉
出演:小林幸一郎、鈴木直也、西山清文、エリック・ヴァイエンマイヤー
© Life Is Climbing 製作委員会
9月20日発売
一途で狂気的な激情――『熱のあとに』
橋本愛、仲野太賀、木竜麻生、水上恒司ら若手実力派俳優が勢ぞろいし、第28回釜山国際映画祭ほかアジア各国の映画祭に正式出品されるなど話題を集めた鮮烈なる愛の物語。2019年に起きた新宿ホスト殺人未遂事件にインスパイアされた新鋭・山本英監督が、TVドラマ「明日、私は誰かのカノジョ」等で知られる脚本家イ・ナウォンと共に練り上げたオリジナル作だ。
周囲に理解されない苛烈な“愛”の概念を持ち、かつて刺傷事件を起こした沙苗(橋本)と、その過去を知ったうえで夫となった健太(仲野)。やがて二人の前に謎めいた女性・足立(木竜)が現れたことから、それぞれの想いが暴走していき――。ファーストカットからラストシーンに至るまで、観る者を翻弄し続ける衝撃作。
『熱のあとに』
2024年/127分
監督:山本英 脚本:イ・ナウォン
出演:橋本愛 仲野太賀 木竜麻生
©2024 Nekojarashi/BittersEnd/Hitsukisha
9月27日発売
高齢者と若者、異なる世代はどのように交わり共存するか『茶飲友達』
『ソワレ』の外山文治監督が、2013年に起きた高齢者売春クラブ摘発のニュースに着想を得て生みだした社会派群像劇。劇場公開時は1館からのスタートだったが満席が続出し最終で全国80館を超えるまで上映拡大するなど現象化した。妻に先立たれた時岡茂雄(渡辺哲)はある日「茶飲友達、募集」という新聞の三行広告を見つけて興味を抱く。その正体は、高齢者専門の売春クラブだった。法律上は摘発対象だが、一方で佐々木マナ(岡本玲)が代表を務める同クラブは社会から孤立した高齢者や若者の居場所として必要とされてもいて――。
センセーショナルな題材の中に超高齢化社会の実態や支援の行き届かなさ、共生の難しさを問いかける力作。
『茶飲友達』
2022年/135分
監督・脚本:外山文治
出演:岡本玲 磯西真喜 海沼未羽 / 渡辺哲
© 2022茶飲友達フィルムパートナーズ
映画ファンにとって非常に魅力的なラインアップ。このほか、10月には『勝手にしやがれ』『軽蔑』等の巨匠、ジャン=リュック・ゴダールの遺作となる作品『Scénarios』の世界独占販売も予定されている。
「映画をコレクションし、ユーザー間でレンタルできる」配信サービスとは
コロナ禍でニーズが急拡大した動画配信プラットフォームサービス「Lumière」等を運用する株式会社ねこじゃらしが2022年12月にサービスを開始した「Roadstead」。
同サービスの特長は、「自分が購入した商品を出品し、第三者にレンタルできる」こと。かつ、レンタルが成立すると出品者だけでなく制作者・権利者に利益が還元される仕組みになっているため、「個人の推し作品を他者に“布教”できる」「作り手の支援にもなる」「出品者にも利益が入る」の“全獲り”が可能なのだ。
映画ファンにおいては、個人でいわゆる“レンタルビデオ屋”を立ち上げるイメージに近い、といえばわかりやすいだろうか。「Roadstead」で購入した商品にはシリアルナンバーが付与され、番号が空いていれば好きなものを選択できる。ラッキーナンバーにするのもよし、記念日や誕生日にするのもよし――世界で自分だけが所有する番号付きの商品を、「価格」「レンタル可能日数」を任意で設定して出品できる。SNSを使って自身のシリアルナンバーをPRするオーナーも出始めており、今後こうした動きは拡大していくことだろう。
最近はオンラインやアプリサービスなどで個人のお気に入り商品のキュレーションが可能となったが、こと映画においてはそうしたサービスがなかなか存在しなかった。そんななか、「Roadstead」では誰かにレンタルされたとき、“同志に出合えた”喜びを味わえる。
また購入者目線でいうと、コンテンツ過多の現代、膨大な数から作品を選ぶ際に「誰が作り、誰が出ているか」はもちろんのこと「誰が薦めているか」も重要なポイントだろう。信頼している映画ファン仲間の「どうしても薦めたい一本」にダイレクトにアクセスできる点も、大きな魅力となっている。
「Roadstead」公式サイト