オーガニックは本当に体にいいのか:The Omnivore’s Dilemma続き

割合気をつけてなるべくオーガニックなものを食べているのであるが、心の底では

「・・・実はオーガニックは良くない、ということになる日が来るかも」

と微妙に疑っていたりする私。まぁオーガニックが全部ダメってことはないでしょうが、中には「実は化学薬品を使うより悪い」というモノもありえるんじゃないかなぁ・・と。

先日書いたアメリカの食を追った本、The Omnivore’s Dilemmaにはオーガニックについての章もあります。で、大量生産のオーガニックは、環境にやさしくない面もある、とは書いてある。

えー、アメリカは、オーガニック野菜の花盛り。

昔からあるスーパーのチェーン、Whole Foodsはオーガニックが売り。生鮮食料品の半分以上がオーガニック。アメリカのスーパーらしく巨大な売り場面積に、オーガニック野菜が山積み。売っている肉は(多分)全て抗生物質を使わずに育った動物のもの。もちろん、草を食べて育った牛の牛肉もあります。(草を食べて育った牛については先日のエントリーをご参照あれ)。デリにはそうした食材で作った惣菜で一杯。高いけど。

Whole Foodsは、健康的食材を普通のスーパーのスケールで売る全国チェーンとしては先駆けだったが、最近では他に波及中。大量安売りで知られるWal-Martまでがオーガニックを売る昨今。

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一方、家庭菜園でもなんでも自分で野菜を育てたことがある人だったらわかると思うが、殺虫剤を使わずに野菜を育てるのは至難の業。あっという間にワシワシと食い散らかされて穴だらけに。そこまでいかなくても、はっと気付いたら葉っぱと全く同じ色のアブラムシ(aphids)がびっしり群がり、その重みで茎がしんなりしていたり。

しかし、スーパーで大量売りされているオーガニック野菜には虫の食い跡は殆どありません。

・・・・こんなことがありえるのか?

The Omnivore’s Dilemmaによれば、オーガニック野菜を大量生産する際の最大の問題点は殺虫剤より除草剤を使えないこと、とある。

オーガニック大量生産の先進地、カリフォルニアでは、土を頻繁にかつ深くまで掘り返すことで雑草が育たないようにするらしい。育てている野菜が生長してトラクターが入らないようになったら、人海戦術で雑草をトーチで焼き切るそうな。そのせいで、土壌内の生態系が破壊される。また、繰り返される掘り返しで、土中の窒素が空中に放出されるため、これを補うために多量の窒素を人為的に加えないといけない。

普通に除草剤を使う農地よりも、盛大に掘り返されることになる。

ちなみに窒素は、チリの鉱山から取れるものが使われており、これはアメリカの規定上「オーガニック野菜に使ってよいもの」となっている。国際的なルールではダメとのこと。

こういうことをして始めて大量生産が可能。少なくとも現状では。カリフォルニアには、160エーカー、65ヘクタールのブロッコリ畑、なるものもあるらしい。北海道の農家一戸当たり耕地面積が17ヘクタールとのことで、その4倍。

こうして、オーガニック野菜が全国チェーンのスーパーにいきわたるわけです。

(ちなみに、少なくともアメリカでは、農業というのは実は耕地面積を増やしても効率化せず、小規模な農家の農地の方が生産性が高い、という話も載っている。じゃぁどうして企業として運営される大規模農家が多いのかというと、マーケティングと流通コストだそうな。)

以上、「大量生産のオーガニックは環境には決してやさしくない」という話。

じゃ、体にはいいのか?ということに関しては、これも、一概に盲信しないほうがいいのかなぁ、と個人的には思います。天然に存在する植物や動物で猛毒なものって沢山あるじゃないですか。化学薬品を使った殺虫剤だったらほんのちょっとでいいところ、オーガニックと銘打つために大量にそういう天然の毒を使ったりするケースもありえるんじゃないかと。(以上、特に根拠はありません。ちょっと探してみましたが、そういうデータも無し。)

もちろん、「本物」のオーガニック農家では、「環境にやさしく、生態系内だけでなるべく完結する」作物を作っているところもある。しかし、これを実現するためには、多数の野菜をローテーションしながら育てる、牛や鶏もこれまた場所をローテーションしながら育てて、全体としての生態系を維持、さらに、益虫が育つ植物を導入するなど、ものすごい努力が必要。

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てなことを考えつつ、さらに精製された砂糖は良くないとか、揚げ物にはオリーブオイルよりコーンオイルの方がいいとか、そういった情報を頭の中で半分疑いつつ半分信じつつ、食材の産地やら飼育方法やらの記述を読みながら買い物をすると、ものすごい疲れる。

The Omnivore’s Dilemmaによれば、コアラというのは、頭蓋骨のサイズに比べて脳みそが少ないそうな。原因の仮説の一つが、

「従来複数のものを食べたコアラは、『何を食べるべきか』と頭を使ったために脳が発達した。しかしその後、ユーカリの葉しか食べないようになり、食に頭をひねる必要がなくなったため、脳が退化した」

ということだそうです。ありえる。

しかし、私一代で脳が進化するはずもないので、個人的には無駄な悩みな気もしますが。

オーガニックは本当に体にいいのか:The Omnivore’s Dilemma続き」への13件のフィードバック

  1. ご無沙汰でございます。訪米時はありがとうございました。
    ウチのニョーボの実家が農家(といっても柿畑と栗園、榊畑)なので”時々”手伝っていますが、以前は頻繁にムシ対策の消毒してました。最近は周囲の土地が売却されてマンションが乱立し、消毒なんぞしようもんなら苦情の嵐。消毒の薬の成分が云々ではなくて、「飛沫が洗濯物に付着する」からが苦情の内容ですが。どちらにしても消毒できなくなって、さらに、ムシを手でつまむ訳にもいかないので、案の定、葉っぱは虫食い。実も落ちます。
    消毒時代は、「お宅のは手作りで美味しいし安い」といわれ、街頭販売でよく売れましたが、ほんとの無消毒にしてからは、見栄えも悪く、「最近は色が悪いわね」といわれてしまいます。実際、甘みも少なくなってしまったような。
    近所では、オーガニックは廃れ気味で、「XXさんのおじいちゃんの人参」的な顔の見える系が人気を博しています。マーケティング的には、焦点を本体から外して、「小規模だから手作りでやっても大丈夫」までは、意図してないか?笑

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  2. SJマーキュリーにどの果物・野菜に殺虫剤がたくさん残留しているか、というリストのリンクが出ていました。
    http://www.mercurynews.com/ci_9895871?IADID=Search-www.mercurynews.com-www.mercurynews.com
    http://www.foodnews.org/index.php

    クリックしてTOC_Pocket_Guide.pdfにアクセス

    リストによって若干食い違う品目もありますが(Cantalope等)、大量に消費されるりんごやジャガイモ、皮が柔らかい果物(桃、ネクタリン、苺、さくらんぼ、西洋梨)などはオーガニックにしておいたほうが無難なようです。
    でも、こういうことって気にし始めるときりがなくて、アメリカではorthorexiaという摂取障害というものがあるそうです。

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  3. 気にしすぎが一番からだの毒なのでは。。美味しいものを節度を持って食べていれば、良いと思うのですが。こーゆー事が気にならない健康な体が一番で、その原因のほとんどが食べ物とも思えないです。

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  4. オーガニックは高コストになるので、普通の人が普段大量に食べるのは難しくなる。 それよりも、多少農薬を使っていても普通の人がジャンジャン食べれる価格の野菜が出回るほうが、世の中全体で考えると健康によろしい。という考え方もあるみたいですね。
    個人的には、農薬使った野菜ってそんなに体に悪いの??と若干懐疑的。例えば父親とかの世代は、今よりもっと農薬のきつい野菜を食べていた筈なのですが、自分の世代と見比べて特に不健康だとは感じられないし。

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  5. 日本では「無農薬、低農薬」はわりと達成可能ですが、「化学肥料を使わない」というオーガニックのもう一つの要件はなかなか充足が難しいようです。植物の生育に必要なリンが、もともと火山灰地で土壌中に少ないうえに、雨が多いので土壌から流出してしまって欠乏しやすいので、大量の化学肥料でせっせと補充する必要があるということです。現実的にはリンの与えすぎでかえって水質汚染(富栄養化)の原因にもなったりしていますが。アメリカと中国がリンの輸出を事実上禁止したことで化学肥料の価格が暴騰していて、日本の農業が今後どうなるのか心配です。
    無農薬の方は、ハウス栽培や防虫ネットを張り巡らしたり、野菜によく出る害虫のヨトウガを防除するために、夜間にずっと黄色蛍光灯を畑に照らし続けて繁殖を妨害する、という手法が使われていると園芸学校で学びました。畑がコウコウと明るいと、ガは昼間だと思って交尾しないんだそうです。なんか奥ゆかしいではありませんか。でも、ハウスの製造や処分や、蛍光灯を照らし続けることを考えると、無農薬栽培をするために環境に与える悪影響は小さくないと思います。

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  6. 実家が農家をやっています。農作物の場合、種の大部分が種苗業者から購入した一世代交配種になります。これらは農薬・化学肥料を前提として味・収量が良くなるように品種改良されていますので、裏を返すと無農薬で化学肥料を使わないオーガニックには不向きな品種ともいえます。
    本当にオーガニックで育てるには種から育てていかなきゃならないのですが、そこまでやっている農家はまだまだ少ないですね。

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  7. 食べすぎ飲みすぎならば、マクロビでもうまくいかない。適食を知るのは、自分で自分の経験から見つけるしかない。とにもかくにも、美味しいものを毎日食べていたり、楽チンだったりすると、まず、無理だろうね。そうそう、中華思想の面白いところは、「経験」の分析なんだよね。西洋的学問というのは、論文でしかなかったりする。つまり、経験の分析というのは、書かれていないところを、どれだけ理解する能力があるかということ。コアラの仮説というのは、どこにも経験がないよね。ということで、本を読むより、食を経験した人から直接話を聞いた方がいいんだな。とりあえず、コアラには日本語も英語も通じない。笑。

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  8. オーガニックは本当に体にいいのか

    On Off and Beyond: オーガニックは本当に体にいいのか:The Omnivore’s Dilemma続きhttp://www.chikawatanabe.com/blog/2008/08/the-omivores-di.html

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  9. オーガニックの生野菜は、やめた方がいいと、某T大学病院の外科医から、聞いたことがあります。というのも、生野菜に寄生虫がつき、その虫が体内の胃袋の一部を食ったため、激しい胃痛で、病院の緊急に運ばれて来たおじちゃんがいたそうです。おじちゃんは、開腹手術で、彼がその手術の執刀医だったそうです。びび〜〜んと細長い虫を取り出したそうです。おじちゃんは、自宅のオーガニックの生野菜をたべていたらしく、その寄生虫(名前を忘れてしまった)常に対で居るために2匹いたそうです。生野菜は、気をつけなさいといわれたのを思い出しました。

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  10. 化粧品の商品開発職におり数々のパッチテストを行っていましたが
    スキンケア用品などもオーガニックだから肌に優しいというわけでは
    ありません。
    天然植物が入っているというと、刺激が少ないというイメージがありますが、実際の天然植物も肌にとっては結局異物。かえって精製されてなかったりするのでキツい。ま、その分効く人には、パワーがあったりもするんですけど。
    皮膚科で肌荒れの処方や火傷の治療なんかにも使われるのは、肌に刺激の少ないいわゆる化学製品(石油系ワセリンなど)だったりもします。

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  11. 牛の体にとうもろこしは合わない

    少し前のエントリーなのですが、改めて On Off and Beyond: ブログ再開します&食べ物を語る本 The Omnivore’s Dilemma を読んでちょっと驚いたのでご紹介。
    ヨーロッパから移民してきて何とか小麦を作ろうとしたがダメだったが、とうもろこしはがんがん育ち、さらに改良を加えて、安価に大量生産できる農業体系ができたため、それをどうやって使うか、と頭を絞った結果、驚くほど多彩なものがコーンから取り出せるようになったそうな。 …

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