「わたしの負けは人類の負けではない」 Google人工知能に敗れた棋士がカッコいい

    トップの囲碁棋士が誓ったのは、さらなる努力だった

    Googleの人工知能「AlphaGo」対トップ囲碁棋士の五番勝負。3月15日の第5局で、韓国のイ九段(33)はAlphaGoに敗れ、1勝4敗で負け越した。

    イ九段(33)は「わたしの負けは人類の負けではない。私の弱さを見せてしまったが、人類の弱さではない」と断言。「もっと強くなったイ・セドルをお見せするように努力します」と誓った。

    イ九段は「勝ち越したかったので、残念。私の方が優勢だと思ってこの対局に臨んだ。だが、私の弱さをまた見せてしまった」と振り返り、「後悔している部分はたくさんあるが、多くの人が励ましてくれた。心から感謝しています」と謝辞を述べた。

    人工知能から学んだことも挙げた。「AlphaGoとの対局の経験から、碁の伝統的、典型的な考えに少し疑問を持つようになった」。

    ただ、「わたしより人工知能が必ずしも優れているとは思わない」と分析。「人類は人工知能との戦いでもっとできたことがあると思うので、少し後悔している」と本音をのぞかせた。また、碁の技術では人工知能が秀でているわけではないが、心理的な面では優れていると指摘した。

    AlphaGoには韓国棋院から「名誉九段」の称号が贈られた。勝者に贈られる賞金100万米ドル(約1億1200万円)は、ユニセフや若者のプログラミング教育などのチャリティーに寄付される。

    AlphaGoを開発したGoogle DeepMind社(ロンドン)のデミス・ハサビスCEO(39)は「信じられないほど素晴らしい対局だった。序盤で大きな間違いを犯したが、最後には僅差で勝てた。本当に驚いている」と振り返った。

    AlphaGoを開発しているのは、多目的に適用できるアルゴリズムをつくるためだ。病気の診断など現実問題の解決に使われることが期待される。「今後数年間で研究を進め、AlphaGoを開発するのに培った技術を拡張したい」とハサビスCEO。

    ただ、「この技術は有望だが、まだ初期段階で、取り組まなければならないことは多い。正しい目的に使うため、倫理的な責任も考えなくてはならない」とも付け加えた。

    人類対人工知能。戦いを終えたイ九段は、本当に碁が好きだと思わせる一言で、こう振り返った。

    「碁の本質は楽しむこと。AlphaGoとの対局はずっと楽しかった」