不適切な会計処理をめぐり、第三者委員会から「組織的関与があった」という認定を受けた東芝は7月21日、田中久雄社長と佐々木則夫副会長、元社長の西田厚聡相談役の歴代3社長が辞任することを発表した。
弁護士など外部の専門家でつくる第三者委員会は、問題になった一連の会計処理について、東芝の「経営トップ」を含めた組織的な関与があり、意図的に「見かけ上の利益のかさ上げをする目的で行われたものがある」として、東芝の経営体質そのものを厳しく批判した。
その背景には「当期利益至上主義」や「目標必達のプレッシャー」「上司の意向に逆らうことができないという企業風土」があったと指摘している。利益のかさ上げなど、不適切な処理があったことに伴う決算の修正額は、2008度から2014年度で1518億円にものぼった。
日本を代表する大企業の一つの東芝が、組織的に不正な会計処理をおこなっていたことが明るみになり、日本の株式市場への信頼を揺るがすような事件となっている。過去にも上場企業による粉飾決算事件は何度となく起きているが、そのたびに問題となるのが、その企業が「上場廃止」となるのかどうかだ。東芝は上場廃止にすべきだろうか。
弁護士ドットコムに登録している弁護士に、以下の3つの選択肢から回答を求めたところ、9人の弁護士から回答が寄せられた。
1 東芝は上場廃止にすべき→3人
2 東芝は上場廃止にすべきでない→6人
3 どちらでもない→0人
回答のうち、自由記述欄で意見を表明した弁護士4人のコメント(全文)を以下に紹介する。(掲載順は、上場廃止にすべき→上場廃止にすべきでないの順)
●「東芝は上場廃止にすべき」という意見
【太田哲郎弁護士】
「本質的に、昔のライブドア事件と同じ構図だと考えられます。利益をかさ上げするために、違法な会計処理をしているわけですから、騙された投資家は、たまらないのではないかと思います。東京市場の信頼性を示すためにも、ただちに、上場廃止にすべきです。ライブドアには厳しく、東芝には優しくでは、東京市場は、世界から相手にされなくなると思われます」
【岡田晃朝弁護士】
「どこかでルールを厳格化し、運用しなければ、大企業なら許される、社会への影響が大きいところは許される、東芝でも大丈夫だからと言う風潮が出来てしまうかと思います。短期的にはともかく、そういう緩やかな運用が続けば長期的には、もはや回復できないような状況になる危険があるのではないかと思います。ここが厳格化すべき一線ではないでしょうか」
●「東芝は上場廃止にすべきでない」という意見
【加納雄二弁護士】
「まさか東芝までが、と思うなかれ、カネボウとか大企業でもこんな事件は度々起こってます。原因の丁寧な究明、役員や関係した者、監査法人への処分は重くすべきでしょうが、上場廃止まではいらないのでは? 監視をきっちりすることが重要です。監視機関とかを設けたらいいのかも知れません。参考:決算書の9割は嘘である(大村大次郎著)」
【濵門俊也弁護士】
「本件は、『特設注意市場銘柄』指定の方向で進むようです。これにより、上場廃止は一旦は回避されそうです。当職は、これはこれでやむを得ないのかなと考えています。やはり、上場廃止による『東芝ショック』は回避しませんと、日本の経済力がさらに悪化することは火を見るより明らかであるからです。
『特定注意市場銘柄』指定は、いわば執行猶予付き有罪判決のようなものといえますから、何とか東芝には自浄していただきたいと思います」
【中尾田隆弁護士】
「東芝の上場は廃止すべきではないと考えます。東証の上場廃止基準には、その一つの要件・要素として『直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき』とあります。ガバナンスの改善がなければ市場秩序維持に悪影響することは明らかですが、東芝の株価の現在の推移からすると『直ちに』の要件が満たされていないと考えるからです」