トランプ米大統領、「人種差別は悪」と非難 極右デモでの女性死亡で

ホワイトハウスで声明を述べるトランプ大統領(14日、ワシントン)

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ドナルド・トランプ米大統領は14日、バージニア州シャーロッツビルで12日に起きた極右集団と反対派との衝突で女性が死亡した事件についてあらためて発言し、人種差別主義者による暴力を非難した。

トランプ大統領はホワイトハウスで声明を読み上げ、「人種差別は悪だ。その名の下に暴力を振るう者は犯罪者でごろつきだ」と述べた。

トランプ氏は人種差別団体クー・クラックス・クラン(KKK)やネオナチ、白人至上主義者たちは、米国人が大切にしていることすべてにとって「唾棄すべき」存在だと語った。

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トランプ大統領に対しては、12日の事件直後に白人至上主義者を名指しして批判しなかったことへの批判の声が上がっていた。

シャーロッツビルでは12日に、米南北戦争で奴隷制維持のために戦った南部諸州軍のロバート・E・リー将軍の像の撤去計画に抗議する「右派を団結」集会が開かれ、集会に抗議する人々と衝突が起きた。

極右集会に参加していたジェイムズ・フィールズ容疑者(21)が反対派の人々がいた場所に自動車で突入し、市内在住の法律事務職ヘザー・ハイヤーさん(32)が死亡したほか、19人が負傷した。

フィールズ容疑者は14日に、第2級殺人(故意だが計画的でない殺人)、悪質な傷害3件、ひき逃げ1件の計5件の容疑で正式に起訴された。留置所からビデオ通話で出廷した同容疑者に、保釈金は認められなかった。

フィールズ容疑者は、ナチス思想に共感していたとされる。

司法省は、事件が人種差別を禁じた公民権法違反にあたるかについて捜査を開始した。

休暇を過ごしていたニュージャージー州ベッドミンスターの所有ゴルフ場からホワイトハウスに戻ったトランプ大統領は、「我々は言語道断の憎悪、偏見、暴力行為を強く非難する。アメリカでは許されない」と声明を読み上げた。「偏見の名の下に暴力を広げようとする者たちは、アメリカの核心部分そのものを攻撃していることになる」。

トランプ大統領は、死亡したハイヤーさんや、現場で警察が対応するなか起きたヘリコプター墜落で死亡した警官2人への追悼の言葉を語った。

ハイヤーさんの母親、スーザン・ブロさんはNBCニュースに対し文書で、トランプ大統領による「なぐさめの言葉と、暴力や憎悪をかき立てる人々への非難」に謝意を表した。ブロさんはさらに、ヘリコプター事故で死亡した警官2人の遺族に対してお悔やみを述べた。

一方、トランプ大統領の今回の発言は遅すぎたと考える人もいる。

公民権運動の指導者アル・シャープトン師はMSNBCテレビに対し、トランプ大統領が差別主義者を全面的に非難するまでに48時間がかかったと指摘。「この国の大統領の前に、ドイツの国家元首が(非難の言葉を)語っていた」と述べた。

「(トランプ氏の)沈黙は実に雄弁だった。不十分で遅すぎた」

ジェフ・セッションズ司法長官はシャーロッツビルの事件が「国内テロの定義」を満たしていると語った。トランプ大統領は事件について同様の表現を使うのを控えている。

セッションズ長官は12日に、司法省が事件について人種差別を禁じた公民権法違反容疑での捜査を開始したと発表した。

13日には全米各地で、事件の犠牲者や負傷者への連帯を表明するデモや集会が開かれた。米北西部ワシントン州シアトルでは、トランプ氏を支持する集会に近づこうとした反対派に対して警察が唐辛子スプレーを使用した。

米医薬品大手メルクのケン・フレージャー最高経営責任者(CEO)は、トランプ大統領の事件への対応に不満を表明し、企業幹部で構成される諮問会議「製造業評議会」の委員を辞任した。

黒人経営者のフレージャー氏はツイッターで、トランプ氏が「不寛容と極端な思想に対抗する姿勢を見せる責任がある」と述べた。

オバマ前政権で国務長官を務めたジョン・ケリー氏はツイッターで、トランプ氏の事件に対する当初の反応がより真実を物語っているとコメントした。

「大統領は今何を言っても変わらない。最初の直観はいつも本当のことを明らかにする。彼(トランプ氏)はカメラに向かって『いろいろな側』と言った。あれをなかったことにはできない」

(英語記事 Trump condemns 'evil racism' in Charlottesville)