極右非難しないトランプ氏をホワイトハウスは弁護 抗議の女性死亡

12日の極右集会には、白人至上主義者として名高いデイビッド・デューク氏も参加した(米バージニア州シャーロッツビル)

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画像説明, 12日の極右集会には、白人至上主義者として名高いデイビッド・デューク氏も参加した(米バージニア州シャーロッツビル)

米南部バージニア州シャーロッツビルで12日に開かれた白人至上主義集会に抗議した女性が死亡し、多数の負傷者が出た問題について、ドナルド・トランプ米大統領が極右による暴力を十分に非難しなかったと批判されているなか、ホワイトハウスは13日、大統領がすべての暴力を非難した中には白人至上主義者も含まれると大統領を擁護する声明を出した。

シャーロッツビルでは12日、米南北戦争で奴隷制維持のために戦った南部諸州軍のロバート・E・リー将軍の像の撤去計画に抗議する「右派を団結」集会が開かれた。数百人集まった白人国家主義者の中には、ネオナチや白人至上主義団体クークラックスクラン(KKK)も含まれた。これに抗議する人たちも大勢集まり、双方が衝突。抗議する人たちの中に、極右集会に参加していた白人のジェイムズ・フィールズ容疑者(21)が自動車で突入し、ヘザー・D・ハイヤーさん(32)が死亡したほか、19人が負傷。ほかにも複数の衝突で15人が負傷した。フィールズ容疑者は第2級殺人(故意ではあるが計画的ではない殺人)などの疑いで逮捕された。

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ハイヤーさんが死亡した数時間後、トランプ大統領は休暇中のニュージャージー州で記者団に対し、「色々な側による、言語道断な憎悪と偏見と暴力の行使を、最大級に」非難すると発言。「憎悪と分断はただちに終わらなくてはならない」、「国を愛するアメリカ人としてひとつにまとまらなくてはならない」と述べた。

しかし大統領が「色々な側」の憎悪と暴力という表現を使い、白人至上主義者などを特定しなかったことについて、民主党だけでなく共和党議員からも批判の声が上がった。

これを受けてホワイトハウスは13日、「大統領は昨日の声明で、あらゆる形の暴力と偏見と憎悪を非難すると、強力に表明した。その中にはもちろん、白人至上主義者もKKKもネオナチも、あらゆる過激主義組織が含まれる」と、大統領発言を擁護した。

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シャーロッツビルの極右集会に抗議していたヘザー・ハイヤーさんは、白人男性の車にはねられて死亡した

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画像説明, シャーロッツビルの極右集会に抗議していたヘザー・ハイヤーさんは、白人男性の車にはねられて死亡した

シャーロッツビル在住のパラリーガル(法律事務)だったヘザー・ハイヤーさんについて、母親のスーザン・ブロさんは米ハフィントン・ポストに対して、「正義感が強くて、子供のころから公正だと思うことに強く関わっていた」、「娘がしていたことは平和的で、人と戦っていたのではないことを誇りに思う」と話した。

シャーロッツビルでの犠牲を追悼し、白人至上主義者など極右への抗議を支持する集会が13日、全米各地で開かれた。シアトルでは、トランプ支持者集会に反ファシスト組織が近づくのを阻止するため、警察が催涙スプレーを使用した。

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一方で、「右派を団結」行進を組織した右翼ブロガー、ジェイソン・ケスラー氏がシャーロッツビルで13日に記者会見しようとしたところ、抗議する人たちの罵声や詰問を浴び、警察に強制的に退場させられた。ケスラー氏は暴力を非難し、暴力を阻止しなかった警察を非難しようとしていた。

共和党議員も大統領を批判

トランプ氏が12日に白人至上主義者を特定して非難しなかったことについて、コーリー・ガードナー上院議員(共和党、コロラド州選出)は、「大統領、悪は名指ししなくてはなりません。連中は白人至上主義者で、これは国内テロリズムでした」とツイートした。

オリン・ハッチ上院議員(共和党、ユタ州)も同様に、「悪は名前で呼ぶべきだ。私の兄がヒトラーとの戦いに命を捧げたのは、ナチスの思想が国内でおとがめなしにまかり通るような事態のためではない」とツイートした。

同様に、大統領選の共和党予備選をトランプ氏と争ったマーコ・ルビオ上院議員(フロリダ州)、テッド・クルーズ上院議員(テキサス州)も、白人至上主義者に強い態度をとるべきだと大統領を批判した。

国家安全保障問題担当のマクマスター大統領補佐官は、「恐怖をあおるために人々を攻撃すれば、それはすなわちテロリズムだ」と言明した。

トランプ氏の長女、イバンカ・トランプさんもツイッターで、「この社会に、人種差別と白人至上主義とネオナチの居場所はあってはなりません」とツイートし、父親よりも明確な批判的姿勢を示した。

衝突現場には花束や追悼の言葉が手向けられた

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画像説明, 衝突現場には花束や追悼の言葉が手向けられた

白人至上主義者の団体がナチス式敬礼でトランプ大統領の当選を祝う集会を開くなど、トランプ氏の当選によって全米の極右団体が勢いづいていると指摘する声もある。

公民権団体「南部貧困法律センター」は、「トランプ氏の出馬によって、極右は一気に盛り上がった。アメリカは基本的に白人男性の国だという自分たちの考えを、トランプが推進してくれると見なしたからだ」とコメントしている。

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トランプ氏の反応は意外なのだろうか――アンソニー・ザーカーBBC北米担当記者

このような事態にトランプ大統領がどう反応するか、それを知る手がかりは大統領選中からあちこちにちりばめられていた。

2016年2月には、KKKとKKKの元指導者でルイジアナ州の共和党政治家となったデイビッド・デューク氏による応援を、当初は拒否しなかった。

南部州から1881年以来初めて共和党から黒人議員として当選したティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)は当時、「KKKのような憎悪団体をただちに非難できない候補は、共和党を代表しないし、共和党を団結させない」と非難した。

トランプ氏は1週間後になってようやくKKKを明確に非難したものの、当初のためらう姿勢は選挙期間中ずっと問題視された。

シャーロッツビルに対する大統領の発言について、トランプ氏の批判勢力はこれはまたしても、白人至上主義者たちに「犬笛」を吹いた、つまり特定集団にしか聞こえない形でアピールを送ったのだと非難している。もしその通りなら、その特定集団は自分たちに向けられたエールをしっかり受け止めたようだ。

ネオナチ系サイト「デイリー・ストーマー」に投稿した人は、「トランプのコメントは良かった。自分たちを攻撃しなかった。単に、国が団結するべきだと言っただけだ。自分たちについては具体的に何も言わなかった(中略)ヘイトはお互いにあると言ったんだ! つまり反ファシスト連中もヘイトする側だって示唆してたんだ。自分たちに反対することは実質的になにもなかった。みんなを愛してると言った。それに白人国家主義者の支持についての質問には答えなかった。まったく何も非難しなかった」と書いている。

(英語記事 Charlottesville: White House defends Trump response)