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南極と北極、どちらもとても寒い雪と氷の世界ですが、実はずいぶん違います。南極や北極で取材をしてきた朝日新聞社会部の中山由美記者の解説をもとに、どこが違うのか調べてみましょう。
オーロラはときに激しくゆらめき、夜空をかけめぐる=南極の昭和基地、中山由美撮影
こんにちは、中山です。さあさっそく始めよう。北極と南極、どちらもとっても寒い雪と氷の世界。そっくりなようで、ずいぶん違うんだ。いったい何が違うんだろう?
北極は海で、南極が大陸だ!
そう。北極の中心は海で南極は大きな大陸。だから氷の量も全然違う。氷が広がっている面積はあまり変わらないけれど、北極の中心にあるのは海、その表面の氷は海氷だから、数メートルくらいで薄いでしょ。南極の中心は大陸で、その上に氷がのっている=写真。平均で厚さは2千メートル、一番厚い所は富士山よりも1千メートルくらい高い4800メートル近くあるんだ。
北極の方が、氷は少ないんだね。
南極には地球上の9割の氷があって、北極は1割くらいなんだ。標高が高い南極大陸の内陸へ行くと、世界一低い気温マイナス89.2度を記録した所もある。北極はそこまで寒くはないんだ。それに一番寒いのは北極点の近くじゃない!
北半球で一番の寒さってマイナス何度だったんだろう? 最低気温を記録した所は、どこか調べてごらん。ちょっと意外な所かも!どうしてそこなんだろう。北海道で考えてみたらどうかな。一番寒いのは北の端っこの稚内(わっかない)じゃないんだよね。海のそばでなくて、もう少し南の・・・どんな所かな?
地球温暖化で氷がどんどんとけちゃうって聞いたことあるけれど、どうなっちゃうんだろう。
【動画】氷河が解けだし、激流が海へ向かう。氷の表面は雪氷微生物で汚れていた=2012年、中山由美撮影
それも南極と北極では違うんだ。南極は氷がいっぱいで、とっても寒くて、そんなに温暖化が進んでいるわけではないし、氷がたくさんとけているという報告もまだあまりない。でも北極は氷がたくさん解け出している。地球上で温暖化が一番進んでいる所のひとつとも言われているんだ。氷がとけると困ることって何かな?
「海面上昇」って聞いたことがある。海面が上がると、低い所は海につかっちゃう。大変だ
【動画】北極の薄い海氷の上に現れた珍しい氷の結晶「フロストフラワー」。2014年冬、グリーンランド北西沖で撮影できた。北極の海氷は年々、薄く面積も小さくなってきている=中山由美撮影
北極海の氷がとけても海面はあがらないよ。試してごらん。コップにいっぱい水を入れて、氷を浮かべてみる。氷が全部とけるまで待ったら……水はあふれないでしょ? 浮かんでいる氷がとけても水面は上がらないってこと。でも浮かんでいない氷だったら?
陸の上にある氷がとけて、水になって海へ入ったら、海面はあがってしまうよね。陸の上にある氷がたくさんとけだしている所が北極にあるよ。どこだか調べてみよう。
南極と北極ではすんでいる動物も違うよね。
北極にはシロクマ、南極にはペンギンだね!
そうシロクマって正確には「ホッキョクグマ」っていうものね。
じゃあ北極にもいて、南極にもいる動物ってどんなものがいるかな? いくつわかるかな。
南極の観測隊は昔、犬をつれていって、そりをひかせたんだよね。
そう、「南極物語」って映画もあったよね。でも今は犬を南極へ連れて行ってはいけないんだ。もともとそこにいた動物じゃないから、人がもちこんで野生化してしまったら困るし、何か病気を持っていて、ペンギンのようにもともと南極にいた動物に影響を与えることがあってはいけないから、禁止にしたんだ。
日本の第一次観測隊が南極へ行って、昭和基地=写真=をつくったのは1957年。でもそれよりずっと昔にも犬を使った人たちがいた。誰だろう?
探検に行った人だね。
正解! 南極点に世界で初めて立ったのはノルウェーのアムンゼン。1911年12月。翌年1月には日本人で初めて白瀬矗(のぶ)中尉の探検隊が、南極点には届かなかったけれど、南緯80度5分の所までたどり着いた。どちらも犬ぞりを使っていたよ。
北極でも犬を使った?
昔も、そして今でも使っているよ。南極は探検隊が入るまで誰も住んでいなかったけれど、北極には何千年も前から人が住んでた。エスキモーとかイヌイットとか呼ばれる「先住民」だね。かれらは猟(りょう)をするために昔から、そして今でも犬ぞりを使っているよ。
犬は昔から人間の仲間なんだね。
【動画】グリーンランドで43年間、猟師として暮らしてきた大島育雄さんの犬ぞり猟の旅=中山由美撮影
行ってみると、動物と人間との距離も北極と南極では違うのがわかるよ。南極では目の前でアザラシがごろんと寝ていたり、ペンギンの方から寄ってきたりすることも! 人間におそわれたことがないからのんびりしている。でも北極のアザラシなんて、人を見たら逃げちゃう。トナカイでもウサギでも。つかまえられちゃうからだね。
北極の先住民たちは寒くて、とてもきびしい環境の中で動物を捕まえて肉を食べてた。でもそれだけじゃなくて、いただいた命に感謝して、むだにしないよう、体のいろんな所をいろんなことに使ってきた。
毛皮では何がつくれるだろう? ほかは何をどんな風に使ったのかな?
南極にある昭和基地とかドームふじ基地とか、そこは日本なの?
南極に、いくつの国がいくつの基地を持っているか調べてごらん。南極は、どこの国でもないんだ。どの国も「うちの領土だ!」と言わない「南極条約」を結んだんだ。鉱物資源を探して採ったり、軍事基地をつくったりしないという約束もした。争いがおきないように、みんなの南極で、みんなで協力して守ろうって決めたんだ。1959年のこと。それからずっと南極は平和で戦争もない。世界中がそうなればいいのにね!
北極は違う? みんなのものじゃないの?
でも、どこまでが北極なの? 北極海だけじゃないんだよね。
「北極圏」といえば北緯66度33分より北、「南極圏」は南緯66度33分より南の地域を指すんだ。でもこの「66度33分」ってはんぱな数字、何の境なんだろう? これより北とか南で何かが違うってことだよね。これは難しいかな~。
朝日新聞東京本社社会部記者。外報部、科学部、特別報道部などを経て現職。2001年の米同時多発テロ実行犯を追った長期連載「テロリストの軌跡」(02年度新聞協会賞受賞)取材班。
女性記者で初めて南極観測隊に同行して越冬。45次隊で-60度の内陸・ドームふじ基地で氷床掘削、51次隊ではセールロンダーネ山地の氷上で1カ月半暮らし隕石探査を取材した。北極へは4回、グリーンランドでとけゆく氷などを取材してきた。
著書に「南極で宇宙をみつけた!」「こちら南極 ただいまマイナス60度」(ともに草思社)。共著に「南極ってどんなところ?」(朝日新聞社)、「テロリストの軌跡」(草思社)。
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