【5704】七冠馬 星河 Sake JUNMAI(ななかんば、せいか)【島根県】
休日の夕方、ふらりとなじみのうなぎ屋へ。常備しているお酒は地酒3種類ほど。しかし、店主が持ってくる“隠し酒”が毎回違っていて、なかなか興味深い。今回持ってきたのは「七冠馬 星河 Sake JUNMAI」だった。
「簸上清酒」のお酒は当連載でこれまで、2種類を取り上げている。さていただいてみる。
シトラス系の香りをやや感じる。さらっとして、そしてやわらかな口当たり。味わいの第一印象は、旨酸っぱい、だった。中盤から余韻にかけては軽い辛み。全体的に酸が良く出ており、飲み飽きしない酒質。飲み進めていくと、次第に辛みが増してくる。しかし、ハードな辛みではなく、優しい辛みだ。味の主体は酸と辛み。食中酒に最適、とおもった。
クラシックタイプの、ライトボディー酒。あるいは爽酒。あるいは淡麗辛口酒。
瓶の裏ラベルは、このお酒を以下のように紹介している。
「『星河(セイカ)』とは夏の夜空に輝く天の川のこと。七月七日の“七冠馬の日”にちなんで『7』にこだわったお酒を仕込みました。精米歩合77%、協会701号酵母使用。夜空を眺め、星々の“縁”に想いを馳せながらお楽しみください」
また、蔵のホームページは、この酒を以下のように紹介している。
「原料米には島根県産独自品種の酒米『縁(えにし)の舞』を使用。低精白のお酒造りに数年前から取り組み、醪(もろみ)の低温発酵など作り方を工夫することで、米の個性を味わえる、香りよりも旨味を重視したお酒を実現しました。旨味を感じつつもすっきりとした軽い味わいに仕上げていますので、簸上らしい食事とともに楽しめるお酒に仕上がっています」
裏ラベルのスペック表示は「アルコール分17%、原料米 島根県産縁の舞100%、精米歩合 77%(純米)、使用酵母 きょうかい701号、製造年月24.08」。
使用米の「縁の舞」は島根県農業技術センターが2004年、母「山田錦」と父「01-66」(母「島系酒53号」と父「神の舞」の子)を交配。選抜と育成を繰り返し、品種を固定。2018年に命名、2022年に種苗法登録された新しい酒造好適米。
酒名「七冠馬」の由来は、過去と現在の蔵のホームページを合わせると、以下のようになる。
「日本の競馬史上最強の牡馬、七冠馬シンボリルドルフ号。昭和59年4才クラシックレースの皐月賞、日本ダービー、菊花賞と、史上初無敗での三冠を達成。同年の有馬記念、翌年60年には天皇賞(春)、ジャパンカップ、2年連続有馬記念制覇とG1七冠を達成した名馬」「1996年には、現在の当蔵の主力銘柄である、七冠馬を発売。これは1980年代に日本の競馬界で活躍したシンボリルドルフ号に由来する銘柄です。1986年にシンボリルドルフのオーナーの和田家と蔵元の田村家が親戚関係になったことから生まれました」
新しいブランドロゴ「七角形の蹄鉄」は、馬の蹄鉄をデザイン化したものだ。
瓶の裏ラベル冒頭には「泡無酵母発祥之蔵」と書かれている。これについて、過去と現在の蔵のホームページは、以下のように説明している。
「昭和37年、当蔵の新酒仕込みにおいて『普通ならば酒樽いっぱいに真っ白な泡があるはずなのに、時々それが出来ない樽がある』ことを先代 田村浩三と杜氏の立石杜氏が確認。これに興味を持たれた当時の東京滝野川・国税庁醸造試験場技官 秋山祐一氏(のちに財団法人 日本醸造協会会長)が研究。改良を施し、現在の協会泡無酵母が誕生した。先代の残した大きな功績を称えるために、当時の蔵があった横田町六日市に建立された顕彰碑(平成8年10月建立)の碑文は秋山祐一氏の筆によるもの」
「泡無酵母は従来の酵母より発酵力が強く、泡守りが不要であるなどの利点が多いため、日本酒製造技術の発展、生産性の改善に大きく貢献しました。現在は全国の多くの酒蔵で酒造りに使用されています」
この蔵の主銘柄「簸上正宗」(ひかみまさむね)の名の由来について、蔵のホームページは以下のように説明している。「明治43年、町内の酒蔵を吸収合併。当時より銘柄を奥出雲一円の旧名『簸上三郡』からとり簸上正宗(ひかみまさむね)と称しています」