コーヒー、
紅茶、
ジュース……、嗜好品としての飲み物はいろいろあるが、私はもっぱら
日本茶(緑茶)党である。独特の苦みを口にすると、口の中が引き締まり、気持ちも落ち着く。今よりも若い頃から、暑い夏でも熱い
緑茶をすすっていた。健康効果は様々な疫学調査で色々議論されているが、あってもなくても
緑茶をやめることはないだろう。
さて、その
緑茶党として、少々気になることがある。
緑茶は少し時間がたつと色が緑から茶色に変わってしまうことだ。
緑茶というぐらいで、色を楽しむのも興趣のひとつなのだが、“茶色い緑茶”は、飲んでみると、心なしかコクというか深みもなくなっているような気もする。市販のペットボトルのお茶は、すべて茶色であるが、成分などに変化はあるのだろうか。
そんな私の疑問に対して、関係者が次のように教えてくれた。
「茶色に変化するには2つの要素があります。茶成分中のカテキン成分が時間の経過とともに自然にくっついて着色変化します。そして、茶成分中のアミノ酸(旨味成分)と糖分(ほんの少し含まれています)が時間の変化により、アミノカルボニル反応で侵出茶葉溶液の赤化が進みます。栄養分については変化はほとんどありませんが、カテキン成分の若干の減少があります」(東京都茶協同組合)
いわゆる
酸化ということである。市販のペットボトル茶については、次のような理由で茶色になるという。
「ペットボトルや缶、紙パックのお茶は製造工程で、ニーダーという機械でお茶を抽出する際に、茶葉にかかる温度と抽出している時間が、ご家庭でお茶を淹れるものより長くなる為、色が茶色くなります。『栄養価や化学成分』につきましては、大きな違いはございません」(キリンビバレッジお客様相談室)
茶色だから健康に悪いというわけではないようだ。
いずれにもいえる、
緑のお茶を茶色にするキーワードは「時間」である。入れてすぐに飲むものでない限り、緑茶は茶色になってしまうのが必然のようだ。考えてみれば、番茶や紅茶など、他のお茶はすべて文字通り茶色である。むしろ、緑茶の「緑」の方が茶としては例外的に生じる現象である。緑茶をたしなむという行為は、その僅かな時間を楽しむものといえる。
ただし、だからといって茶色でも全くお構いなしというわけではない。お茶にも寿命があり、「1度お湯を通した茶葉は、二煎目、三煎目程度までは使用可能ですが、2時間程度過ぎたら茶葉を捨てるようにして下さい」(緑茶流通事業協同組合)とのことだ。
『健康情報・本当の話』
草野直樹=著
328ページ
定価2100円(本体2000円+税)
正体不明の健康食品から癌の代替療法、みのもんたと「おもいッきりテレビ」、倖田來未の「羊水が腐る」発言まで、さまざまなメディアに氾濫するデタラメな健康情報。これらの情報を豊富な資料と独自の取材を通じて検証し、誰もが気になる「本当のトコロ」を明らかに。さらに、健康情報に対するまっとうな接し方を示す。ヘルス・リテラシーが身につく一冊。
【目次】
第1章 危ない健康食品
第2章 健康観と治療法の疑似科学
第3章 テレビの健康情報
第4章 危機煽り本の危うさ
第5章 芸能人の健康情報
第6章 “怪しい健康情報”からわかったこと