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Fate/Zero

Fate/Zero 11話 「聖杯問答」 感想

ライダー「まともじゃ王様は務まらねえ。王様ってのは欲張りで!気まぐれで!残酷で!退屈してるんだ」

このアニメは戦闘だけではなくちょくちょく対話シーンを挟むのがいい。
本来ならバトルロワイヤルしてる相手同士が馴れ合ってると緊張感を削ぎかねない結果になるのだが、必ずしも合理的ではない英霊達の性格がその辺のバランスを保っている。特にライダーはもう何をしても「ライダーだから」で許されそうだ(笑)

さて、セイバーにライダー、そしてアーチャーの三英雄が語らうわけだが、今回は三者三様の価値観の違いが浮き彫りに。
まずはアーチャー。この世の宝は全て俺のものと俺様理論全開。これだけだとただの天上天下唯我独尊の馬鹿野郎ですが、一定の範囲で相手を認め得る度量を示しているので確かに彼も王の器なのだろう。

アーチャーの理論は異論を挟む余地がない(ぶっとび過ぎて)ので、メインはセイバーとライダーの問答に集約される。

結論から言うとセイバーさんフルボッコで、ライダーがその格を見せ付けた。
 
王道論を考えるに当たって知識が乏しすぎるので十二国記からの引用になってしまうが、王を欲する世界の理屈を、王はその世界を支配するために踏み越えなければならない。

ぶっちゃけアーサー王物語すら具体的にどういうものか知らないので推測が混じってしまうが、セイバーは理想に殉じ、だからこそ王であるものの努めとして滅びた国の再生を望む。しかし正義と理想を追求する彼女は、臣下から「王は人の心が分からない」と言われる。王はかくあるべきと、理想を追求した彼女の治世がどういうものかは知らないが、おそらくそれは王の理屈ではなく「王を欲する騎士の理屈」なのだ。セイバーは民のためにある王である前に国家に殉ずる騎士である。個人的な観念からすれば、騎士道と王道とは相容れないものだと思う。そしてその違いに気付かないからこそ、彼女は「小娘」なのだ。

一方ライダーは、王とは民に欲望のあり方を示し、導くことが王道だという。王とは徳を示す者という世界の理屈を踏み越えて、彼は人間の欲望を肯定し享受するという独自の理屈で世界をねじ伏せる。王は民を救うのではなく、民を導くものという理論を聞いて思い出したのは、ヴィンランド・サガのクヌートが誰彼構わず殺すことしか知らない戦士達に真の戦いを教えるため導くことを決意するシーンだ。ライダーの信念が臣下達の心を摑んだのは、彼の宝具にそのまま現れている。

民が何を望むのか、人間というものを解かっているからライダーは民の心を征服した王である。これは妄想だがセイバーの掲げる理想は、高潔なものであるがゆえに民にとってはうとましく思える部分もあったのではないかな。とにかく、私の狭い見識から考えると確かに彼女は「王の器」ではないのだろう。
おそらくセイバーは「必死に王であろうとした女の子」というキャラなのだと思う。そんな彼女がライダーが絶対の正解ではないにしても、真の王道の一端に触れて何を思うのだろうか。この物語は彼女の王としての自覚、そして成長をもテーマにしているのかもしれない。

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