3:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:21:09.43 ID:rJGb34Ii.net
ことの発端はある昼下がりのことだった。ウチの運命は、星は大きく動き出した。
そう。ウチはスクールアイドル『μ’s』に加入した。
最後の最後に加入……なんか重要キャラっぽいやん?
みんなも驚いている。ウチは調子付いた。
「あの希ちゃんが!?」
「あの達観オーラすさまじい強キャラ希ちゃんが!?」
「あの影ですべてを支配する黒幕みたいな希ちゃんが!?」
ふふふ。そうや。その希ちゃんがなんとμ’sに入るのだ!
どや! 驚いたか!
4:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:22:58.17 ID:rJGb34Ii.net
さらに気をよくしたウチは場を演出するためにこう続ける。
「占いで出てたんや。九人そろったとき道は開けるって」
みんなはまさか! という顔で周りを見回す。まさか、まさか……。
「きゅ、九人だああああああ! 今九人いるよおおおおおお!」
穂乃果ちゃんは叫ぶ。驚嘆する。無理もない。みんなは今奇跡を目の当たりにしているのだから。
今しがた聞いた希ちゃんの予言どおり、この場には九人がいるのだから。
ことりちゃんは口を手で覆い絶句している。花陽ちゃんは腰を抜かして床にへたれている。
海未ちゃんは「こいつ何者なんだ……?」と言わんばかりに頭を抱えている。
なぜなら今しがた聞いた希ちゃんの予言どおり、この場には九人がいるのだから!
誰も、今九人いるから適当に「九人がそろったとき道が開ける」とか言ったなんて可能性は考えていない。
「すげえええええええええ!」
5:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:24:25.35 ID:rJGb34Ii.net
凛ちゃんが目をキラキラさせてウチに尊敬のまなざしを向ける。
しかしそれだけでは終わらない! 預言者のぞみんは続ける!
「そしてさらに……」
嘘だろ……嘘だろ……? そんな雰囲気が立ち込める。まだ何かあるっていうのか……?
一同はウチの言葉を固唾を呑んで待つ。ゴクリ……。
「だからつけたん。九人の女神、『μ’s』って」
「すげええええええええええ!」
「やべええええええええええ!」
「手品かよ!」
「希すげええええええええええ!」
あっ……やっべ。嘘いっちった。
つい勢いで嘘ついちゃった。ごめんね。本当にμ’sって名前をつけた名無しのモブさん。
6:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:25:19.99 ID:rJGb34Ii.net
その場のノリというのは恐ろしい。別にウチは虚言癖があるわけではないというのに。
その日からウチの地獄の仮面生活が始まる。
いつの間にかウチはμ’sの創始者みたいなポジションになった。
なんでも見越しててこいつがいればナントカなる的な感じになった。
趣味でやってただけのスピリチュアルやオカルトも得体の知れないものに昇華した。
逃げるメンバーにたまたま遭遇してつい「待ってたよ」的なことを言ったりしちゃっただけなのに。
ずっと前から今の九人に目をつけていたことになったり、九人がめぐり合うために裏で糸を引いていたことにもなった。
言うまでもないが事実無根である。
8:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:26:24.17 ID:rJGb34Ii.net
どんどん東條希というキャラが思わぬ方向へ膨らんでいった。もはや歯止めが利かないほどに膨張した。
もう後戻りはできない……もう取り返しのつかないところにきてしまったのだ。
ふ……ふはははははははは! いいだろう。こうなったらとことんやってやる!
のぞみんは超人エスパーガールなのだあああああっはっはっは!
ウチは胃薬が手放せなくなった。
13:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:50:08.25 ID:rJGb34Ii.net
みんなで枕投げをしたときは、いたずらで自分が投げた枕を真姫ちゃんが投げたことにした。
くひひ。真姫ちゃん怒るやろうなあ。
「私がみんなになじめるように計ってくれたのよね」
「…………!?」
もっとわかりやすい嘘をつくことにした。
あれはオリオン座やね(適当)。
この草は食べられるよ(適当)。
天気が荒れてきたね(適当)。山頂アタックをかけるのは明日にしよか(適当)。
北極だか南極だかでペンギンさんとオーロラを見たんよ(適当)。
そんなわけわからんことを言って、希ちゃんって案外お茶目なんだなって思うやろうなあ。
「希ちゃんって……」
「一体何者なんですか」
「…………!?」
ウチの得体の知れなさに拍車がかかるだけだった。
15:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:52:50.81 ID:rJGb34Ii.net
なんでこんなことになってしまったんやぁ……。
もう胃に穴開きそう。違うんよ……違うんよ……ウチそんなキャラじゃないんやって……。
どうしてこんなことになってしまったんや……。
もうわけわっかんねえ。なんや笑えてきた。あはは。
いやホント、なんでこんなことに……。
・・・・・
16:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/25(土)
23:54:43.90 ID:rJGb34Ii.net
もともと、別にアイドルになりたかったわけじゃなかった。
ただなんとなく、というか、当時所属していた超常現象研究会を存続させるためだった。
ウチ一人で部員不足のため廃部寸前だった超常現象研究会はアイドル部と合併した。
ウチは部がなくならなくてラッキーって思ったし、向こうも部室や顧問がついて嬉しそうだった。
そう。別にアイドルになりたかったわけじゃなかった。
ただ、なんか楽しいそうだしまあいっかって、そんな感じ。
運動には――ダンスにはそこそこ自信もあったし。そんな感じ。
そんな感じでてきとーに、生徒会長さんが入部したタイミングで、ホント、ノリで。
「九人や、ウチを入れて」なんつって。
バカやろう。時空を超えて飛び膝蹴りしてやりたいわ。
17:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
00:06:40.26 ID:GY+Ui9T+.net
「アホウ! なんでそんなこと言ったんや!」
「べ、別にいいやん……まだ加入しただけやよ」
「本当だ……いい? 調子乗ってカードのお告げとかμ’sって名づけたとか言っちゃダメよ!」
「もう手遅れや……言ったのは自分やろ……」
「本当だ……」
「だからウチはもう、そういう風になるしかないんやよ」
「ごめん……」
「謝らんでよ。自分に」
「ごめん……」
18:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
00:12:26.79 ID:GY+Ui9T+.net
なんとなく、楽しそうだったから。それが悪いなんて思ってない。
ウチは気合とか根性とかキライやから。努力するのもイヤやし、適当に、適度に生きてきた。
それでもなんとかやってこられたのは、ただ運がいいから。そう。全ては運なんだ。
大金持ちになるのも運。階段で転んで膝すりむくのも運。
スーパーアイドルになるのも運。なれないのも運。
うん。アイドルには二面性がある。ウチはちょうど今、そんな感じ。外面と内面がどんどん乖離していく。
周りに求められている自分を作り上げる。
「それは、アイドル症候群だね」
「アイドル症候群?」
「乙女なら誰しもなりうる不治の病ニコ」
20:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
00:16:44.19 ID:GY+Ui9T+.net
「どんな病なん?」
「そのまんまだよ。誰かに求められる自分を作り出しちゃう病」
「どうやったら直るの」
「直らないわよ。ずっと」
「ずっと!?」
「そ。ずぅっっっとね」
「死ぬまで?」
「死んでも直らないわよ。一度偶像化したら、ずっと理想を押し付けられ続ける」
「そんなんいやや」
「いやでもしょうがないじゃない。それがアイドルってものよ」
「ウチ、アイドルになんかなりたかったんと違うよ」
「そんな中途半端な気持ちで始めたあんたが悪いのよ」
「いややいやや! 症状を和らげるお薬とかないの? ねえにこっち教えてよ!」
「そうねえ……胃薬とか」
アイドル症候群。その不治の病に唯一効く魔法の薬。それが胃薬。
「ま、全部嘘だけどね。アイドル症候群なんてないわよ、今適当に考えたの」
21:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
00:22:05.04 ID:GY+Ui9T+.net
「なんや……にこっちはずるいよー! 嘘が嘘のまま嘘で」
「ふふっ! 希ちゃんったらおもしろーい! 真面目な顔してニコの作り話聞いてくれるんだもんっ」
「ふっふっふ、ウチをからかったらどうなるか……教えてあげよか」
「きゃーっ!」
私は存在しない嘘の病、『アイドル症候群』に侵されていた。
28:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
08:53:22.55 ID:GY+Ui9T+.net
「にこっちはそれを嘘って言うけどさ、ウチは人間誰しもそういうところはあると思うよ」
すべてが冗談だよ。すべてが嘘だよ。ぴょんぴょこ跳ねながら逃げるにこっちはそう言っているようだった。
だからウチはにこっちを追いかけた。その冗談に乗っかりたかった。
でも、冗談を捕まえることはできなかった。
「外面と内面が同じ人なんていないんと違う?」
「誰への当てつけ?」
「そんなんじゃないよ、純粋にそう思って」
「ふぅん。さすがなんでもお見通しの希ちゃんだね」
「ウチだったら……苦しいよ、求められる自分と本来の自分がかけ離れてるなんて」
「じゃあやめちゃえば?」
「えっ」
「アイドルなんかやめちゃえばいいじゃない」
29:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:03:34.50 ID:GY+Ui9T+.net
今度はわからない。
それが冗談なのか、本気なのか。
嘘なのか、本音なのか。
「別にアイドルなんかやりたかったわけじゃないんでしょ? なりたくもないんでしょ? なのになんで苦しい思いしてまで続けるの?」
「それは……そんなん……」
「ていうか、『その程度』で根をあげるとか向いてないよ。全然向いてない」
「でも、投げ出したくない」
「だったらあなたはおとなしく、聖母みたいな東條希をやってればいいのよ」
「じゃあこの心のくすみはどうすればいいの?」
「知らないよ。カビキラーでも吹きかけてれば?」
――丁寧に磨いてる暇なんてたぶん一生ないんだから。
・・・・・
30:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:06:58.60 ID:GY+Ui9T+.net
「ことりちゃん、アイドル症候群って知ってる?」
「知らない。なあに? それ」
「『本当の自分』が消えてしまう恐ろしい病なんよ」
「え……! そんな病気があるなんて」
「怖いよねえ」
ウチは気がついて欲しかった。何を隠そうこのウチがアイドル症候群であることに。
「どうして急にそんなことを?」
よっしゃ! 食いついてきた!
「もしかして希ちゃん……」
よっしゃあ! 気付いてくれたっぽい!
さすがμ's1察しがいい(のぞみん調べ)ことりちゃんや。
「私のこと……気遣ってくれてるの?」
え? 違いますが?
「さすが希ちゃんだね。隠せないや」
なんやこの流れは予想外だぞ。なにが起こるんです?
「うん……希ちゃんになら話してもいいよ」
ちょいちょい、勝手になに話し進めてるん?
「私、昔っから自分を出すのが苦手で……」
なんか相談されてるんですけど。よくわからん。
「うんうん。わかるよ」
わかんないよ!? なに言ってるんウチ!?
「でも、そんなところもことりちゃんのいいところ何やない?」
どんなところやねん。
31:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:08:30.86 ID:GY+Ui9T+.net
「そうかな。でも私は……ちょっと変わりたいなって思うことがあるの」
「変わりたいと思うのはことりちゃん自身やなくて、ことりちゃんの心なんやない?」
なんじゃそりゃ。
「こころ……」
ほらぁ! ことりちゃん困惑してるやんまたウチはノリでわけわからんこと言ってからに!
「そうだね……」
なんか納得してるよこの子?
「ありがとう希ちゃん。私わかったよ」
「大丈夫。そんなことりちゃんがみんな大好きやよ」
だからどんなことりちゃんやねん。
「私、ほんのすこしだけ自分に素直になってみるね」
こうしてウチはまた訳のわからんうちにメンバーを救って神格度を上昇させた。
誰かウチを救ってくれ。
32:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:11:42.69 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
「花陽ちゃん、アイドル症候群って知ってる?」
「もちろん。今きてるよね。ショーコーグン」
「はい?」
「スクールアイドルショーコーグン! まさか希ちゃんも知ってるなんて」
「あ、ああー。そうショーコーグンね。巷じゃ略してSKGなんて言われてる……」
ああ、あかんって……またデタラメ言っちゃった!
なんでそんな紛らわしいアイドルいるんや! そんなん知らんわ!
なのにそんな嬉しそうに話されたら違うって言えないやん……。
「SKG? 知らなかった……さすが希ちゃん」
「そんなん知らなくていいんよ……」
嘘ですから。知ってたら知ったかぶりですから。
ていうかウチが知ったかぶったわけですから。
「そんなアイドルの話はいいんよ……」
「そうか……そうだね。私また他のアイドルばっかり」
「いやいや、花陽ちゃんはすごいよ。アイドルに関して誰よりも熱心って感じ」
「でもそのアイドルについてすら、私は希ちゃんに敵わないんだね……」
もう何一つ噛み合ってないわ。
33:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:12:45.88 ID:GY+Ui9T+.net
「そんなことないよ」
ウチは慰めるように花陽ちゃんの肩に手を置く。……ウチはどの立場なんですか?
「希ちゃんは優しいね……でもやっぱりそうだよね」
「そうだよ」
なんのことか知らんけどいま花陽ちゃんを否定するのはよくなさそうだったので前向きな相槌を打つことにした。
そしてそれがよくなかった。
「他のアイドルばっかり見てたってしょうがないよね。私だってアイドルなんだから、自分が一番だって嘘でも思わなきゃ」
「いや……嘘はよくないよ。ホント」
「そうだね! 心から私は可愛いんだって思わなきゃ」
「いやそういうことではなく……」
「やっぱり希ちゃんはすごいね!」
「あの…………うぅん! 当然。ウチを誰だと思ってるん?」
誰だよぉ……なんでみんな勝手に解釈してウチを神格化するんやぁ……。
そしてウチはどうしてそれを否定しないん?
なんもかんも……アイドルショーコーグンのせいや。SKGめ。滅びるがいい。
はぁ……胃薬飲も。
34:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:14:28.95 ID:GY+Ui9T+.net
「穂乃果ちゃん、アイドル症候群って知ってる?」
「お腹減ったなあ」
「いや聞けよ」
「希ちゃんお菓子持ってない?」
「んー? ないなあ」
「そうだ! この前凛ちゃんから聞いたよ。希ちゃんは食べられる草を知ってるって」
やばいなんか拡散されてる。この感じだとウチ本当に南極でペンギンさんとオーロラ見たことになってそうや。
「あと、南極でペンギンさんとオーロラ見たって」
ほらぁ! ああもう……ほらぁ!
「そ、そんなこと……どうでもいいやん?」
「すごいなあ。それを『そんなこと』って言っちゃうのかあ」
「ま、まあ……」
ひえー。本当はペンギンさんすらガラス越しにしか見たことないよぉ。
「そうそう。教えてよ。食べられる草」
「うん? そうやねぇ。あ、あそこに生えてるんはイケるよ」
まさか本当に食わんやろ。適当言っとこ。
「へえ。むしゃむしゃ」
「うっそやぁ……」
35:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:19:15.10 ID:GY+Ui9T+.net
神様お許しください。
なんかわかんないけどたぶん私のせいで友人が謎の草を頬張っています……。
「おえっ……」
散々適当なこと言ってきたしわ寄せがこれか……。
大切な友達が物理的に道草食ってるところ――口から緑色の汁垂らしてる――を見せられてウチの良心は心底いたんだ。
ウチはせめてもの罪滅ぼしに、穂乃果ちゃんと一緒に名前も知らない葉っぱを食べた。
36:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
09:27:02.15 ID:GY+Ui9T+.net
「なんか…………マズイね」
「食べられるとは言ったけど、うまいとは…………言ってないやん」
「たしかに……」
ホントに食べられるやつかもわからないんですが。
「じゃあなんで私たち食べてるの……?」
「それが……生きるってことや」
「生きるって……にがいんだね」
穂乃果ちゃんやべぇ。ウチが適当に言ったことを深い話風に拾ってくれる。
穂乃果ちゃんやべぇ。胸がいてえ。
「この草、なんて名前なの?」
「ど……ドクダミ」
ドクダミってその辺に生えてるの? よりによってなんでそんなのが頭に浮かぶんや。
「これがドクダミかぁ……」
それからウチは穂乃果ちゃんに胃薬を分けてあげた。
太陽のような笑顔でお礼を言われて、焼け死ぬかと思った。
41:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
12:10:02.77 ID:GY+Ui9T+.net
突然だけど、ウチ東條希は生徒会副会長である。
生徒会長不在の今、生徒会の業務はウチが中心になっているのだ。
正直ガラじゃないです。
ぶつくさ考えながら生徒会目安箱を開ける。一つ一つ回答するのがこの学校の生徒会のやりかたなのだ。
まあ目安箱と言っても、大半は生徒たちの日ごろ抱えているストレスや愚痴のはけ口となっている。
てきとーに答えておけばオーケーってことや。
42:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
12:10:59.92 ID:GY+Ui9T+.net
漆黒の白鳥
"力"に目覚めてから数年。私は"人じゃないもの"と戦い続けている。
"奴ら"の存在は公には明らかにされていない。これは機密事項だ。
「んなもん生徒会の目安箱なんかに投書すんなや」
だというのに、もしかしたらあの女は私の真の姿を知っているのかもしれない。
あの女は先日、私に意味深な言葉を投げかけたのだ。
「そのままじゃ……『本当の自分を失う』よ?」
戦慄が走った。あの女……もしかしたら"奴ら"の仲間かもしれない。
生徒会であの女に対する注意を喚起して欲しい。この町を守るためにも。
「アホかコイツ。通目からぶっ飛んでやがる。なんやこの中二野郎誰や」
43:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
12:11:54.44 ID:GY+Ui9T+.net
あの女は未来視に近いなにか……あるいはタイムリープしている可能性もある。
なんにせよやばいスピリチュアルパワーを持っていることは間違いない。
なにせこの私の逃亡を事前に予知してルートまで予測して待ち伏せていたこともあるのだ。間違いない。
しかしやつも生徒会だ。もしやつの圧力で生徒会が動けないときは理事長を使え。アレは私の母だ。
「ことりちゃんかい! そしてあの女ってウチかい!」
回答
安心しろ漆黒の白鳥よ。その女はお前の仲間だ。
共に協力して"奴ら"からこの町を守るのだ。今までたった一人でご苦労だった。
なお、このメッセージは燃やして処分すること。
44:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
12:12:59.76 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
二通目
SKG
この学校のスクールアイドル『μ’s』の名付け親は私のはずなんです。
ですが、グループ内ではある先輩が名づけたことになっています。
「なん……だと……?」
ついに現れたか本当の名付け親……まずい! うぅ胃が痛い。
しかもこの書き口……まさかメンバー内にいる!?
ウチを先輩というってことは一年生か二年生……だ、だれや。
ウチ、弱みを握られてる……!? ウチの正体を知ってて黙って面白がってるんか!?
45:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
12:13:25.45 ID:GY+Ui9T+.net
たしかに私は『μ’s』と書いた紙を投書した記憶があるのに……。
もしかしてこの記憶は偽りなのでしょうか?
しかもその先輩はこの私すら知りえないアイドルの情報を知っているのです。
私はアイドルに関しては隅々まで熟知しているはずなのに、その先輩のアイドル豆知識を知らなかったのです。
私の記憶が抜き取られている……ということはないでしょうか?
私の本当の記憶は抜き取られ、嘘の記憶が植えつけられているのでないでしょうか。それを否定できる要素がありません。
私誰でしょう。最近不安で夜も眠れません。
「この子やばいわ。どうやったら救ってあげられ……そうや」
回答
そのとおりです。本当はμ’sの名付け親はあなたではありません。その先輩なのです。
その偽りの記憶は"漆黒の白鳥"と呼ばれる存在によって植えつけられ、本当の記憶は抹消されました。
しかし安心してください。"漆黒の白鳥"はこの町を守る存在です。あなたは知ってはいけないことを知り、"奴ら"に狙われていました。
それを助けるために"漆黒の白鳥"はあなたの記憶を改ざんしたのです。
・・・・・
46:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
12:14:38.12 ID:GY+Ui9T+.net
三通目
ドクダミ
ドクダミって校庭に生えてるんですか?
回答
生えます。めっちゃ生えます。食べられます。
「ふぅ。今日はこんなところかな」
こうしてウチは生徒会会長代理として生徒の悩みを解決しつつ、みんなの東條希像を守っているのだ。
みんなアホだから目安箱の回答者が東條希だなんて微塵も思わないのだ。
54:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:17:07.07 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
東條希
病名 アイドル症候群
症状 本当の自分と実際みんなに見せる自分の姿の差異に悩む病。
・・・・・
55:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:17:48.69 ID:GY+Ui9T+.net
それから何日か経ったある日の放課後のことだ。
「かよちん、もしかして最近痩せた?」
凛ちゃんが唐突にそんなことを言い出した。
確かに、言われてみればなんとなく痩せた……ような?
「ええ!? き、気のせいだよ」
「そうかなあ」
肉眼ではほぼ判別不能なレベルの違い。しかも毎日会っているから余計気がつかない。
「痩せた」と言われてようやくそんなような気がしてくるような、そんな些細な差。
きっと気のせいだと普通なら思う……がしかし。あの凛ちゃんが言っているのだ。おそらく花陽ちゃんはごく僅かに減量したのだろう。
そうだとしたら、花陽ちゃんは痩せたのにそれをごまかそうとしている。なぜ?
56:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:19:12.18 ID:GY+Ui9T+.net
花陽ちゃん、最近ちゃんと寝てるん?」
「えっ……と、実はあんまり」
「やっぱり。それで少しげっそりして見えたんやない?」
「そうかも……ちょっと、心配事があって寝つきが悪いの」
「えー! かよちんは凛になんでも相談していいんだよ、どうしたの?」
「ううん。これは私の中の問題だから」
「それはナシだよかよちん。凛は話してくれるまでかよちんを放さないよ」
「えっ……じゃあ一生言わなかったらずっと……えへ」
その日、花陽ちゃんが凛ちゃんに相談することはなかった。
57:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:20:23.98 ID:GY+Ui9T+.net
次の日も凛ちゃんは花陽ちゃんに抱きついたまま二人で登校してきた。まるでコアラが木にしがみついているようだった。
マジでずっとこのままだったんなら帰宅後は一体……いや、考えまい。
「かよちん! 話してくれないと一生このままだよ!」
「えへへ、えぇー絶対話さないもん」
「じゃあ凛も絶対放さないもん!」
「えへへ困ったなあ」
逆効果だこれ。むしろ喜んでるやん。
「もう、離れてよぉ凛ちゃん」
「いーやかよちんが悩みを打ち明けてくれるまでは!」
「えへ、授業始まっちゃうよ」
「知らない知らない!」
「先生に怒られちゃうよ、えへ」
「むぅ……じゃあ話してよ!」
これはラチが明かないかなあ。仕方ない。またウチのにせスピリチュアルで解決してやるか。
「花陽ちゃん……記憶は戻った?」
うひょひょひょ! なんやこの台詞こっ恥ずかしい!
笑わないように真顔を必死に作ってウチはシリアスな空気を作り出す。
58:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:21:46.73 ID:GY+Ui9T+.net
もちろん花陽ちゃんはおもしろいようにそれに引っかかる。
「どうしてそれを……!?」
「ちょっと占わせてもらったよ……」
嘘です。生徒会目安箱で見かけました。
「何者かに偽りの記憶を刷り込まれているみたいやね……」
何者かっていうか主にウチです。
「の、希ちゃん……すごすぎます……」
一方凛ちゃんは「は?」みたいな顔をしていた。それが普通や。
「すべて……話してくれるね?」
「はい……希ちゃんには隠せそうにありません」
59:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:23:06.34 ID:GY+Ui9T+.net
そうして花陽ちゃんはすべてを打ち明けた。
「どうやら記憶を消される前の私は『知ってはいけないこと』を知ってしまったみたいなんです。
そしてそのせいで何者かに狙われていた……そしてさらに別の何者かが私のその記憶を消したんです。私を助けるために」
「それは……大変やったね」
クッソ純粋すぎんやろ! なんでそんなん信じてんねん! クッソ胃が痛い!
「その私の記憶を消したものの名は……『漆黒の白鳥』」
刹那、遠くにいたことりちゃんがものすごい顔でこちらを振り向いた。
まるで好きな男の子に告白したら「実は私、男装してる美少女なの」って言われたときみたいな顔だ。
つまり面食らった顔だ。
60:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:23:23.83 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
小泉花陽
病名 勘違い健忘症
症状
自分より他人を信じるあまり自分の記憶のほうを疑いだす悲劇の病。
・・・・・
64:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:27:25.00 ID:GY+Ui9T+.net
「いったいどういうこと……?」
ウチはことりちゃんに秘密文書(かわいく折られた手紙)でアルパカ小屋の裏に呼ばれていた。
「花陽ちゃんが『漆黒の白鳥』を知っていた件?」
「さすが同士。察しがいいね」
「あの話本当なん? ことりちゃんが花陽ちゃんの記憶を改ざんしたの?」
「え? うぉん……う、うんうん。まあね」
話合わせてきたぁ! いひひやばい笑いこらえるのに体震える。
「花陽ちゃんは知りすぎたんだよ……安全のために私が記憶を消去したの」
「そういうことやったんか」
どういうことやねん! 違うやろことりちゃんそんなことしてないやろ!
っひー! っひー! クッソ腹痛い。
「いったい花陽ちゃんは何を知ってしまったの?」
「それは言えない。知ったらあなたの記憶も改ざんしなくてはいけなくなるの」
既にあなたの中の設定が改ざんされているようですが?
65:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:29:06.63 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
南ことり
病名 中二病
症状
言うまでもない。程度はあるが人類の八割が一度は発病する病。ことりの場合結構重症。
・・・・・
66:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:30:53.79 ID:GY+Ui9T+.net
「最近調子どう? のぞみん」
「ん……びょーきなんはウチだけやないって気づいてからずいぶん楽よ」
「へえ?」
「にこっちは?」
「ニコは……」
にこっちの様子がなんだかおかしい。
なんていうか、いつもの『底知れなさ』を感じない。
「私は……今日は、希に、お礼を言おうかな……なんて」
「へ? ウチなんかしたっけ?」
「この間ね、穂乃果がちょっと」
「穂乃果ちゃん? 話がみえないんやけど」
「穂乃果があんたからもらったっていう『スピリチュアルなんたら』を持って私のところにきたのよ」
「……ていうか、アレ? にこっちってそんな話し方だったっけ?」
「だからお礼を言いにきたのよ」
「だからて、なにを言ってるのかよくわかんないんやけど」
「直ったのよ。アイドル症候群」
68:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:32:10.51 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
だいぶ前のことだったと思う。まだ絵里ちが学校に来ていたころ。
ウチは何の気なしに部室に自慢のスピリチュアルグッズを広げていて、そこににこっちがやってきた。
「さあさあさあ! 寄ってらっしゃい見てらっしゃい」
「なにしてるの? のぞみんっ」
最初こそ少し興味を示してくれたけど、にこっちはすぐに飽きてウチをほったらかし爪とぎを始めた。
暇で暇でかまって欲しいウチはあの手この手でにこっちの気を引いた。
そのなかで一番食いついたのがこの売り文句。
「なんと! アイドルの神さんが宿った品がここにあります!」
てきとーに手にとったボロい布切れにアイドルの神様が宿っていることにした。
その設定ににこっちは予想以上に食いついてきたのだ。
69:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:32:46.66 ID:GY+Ui9T+.net
「アイドルの神さま! このただの布切れが?」
「ただの布切れとは違うのだ! なんとこれはその昔……」
……と即興で考えたそれっぽい昔話を付け加えてみたりもした。
「……というありがたーい布切れなんよ」
「ふぅんすごいね」
「特別ににこっちにあげてもいいよ?」
「いらない」
いらないんかい! 興味津々やったのに! 頑張って設定考えたのに!
・・・・・
70:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:34:05.35 ID:GY+Ui9T+.net
「……ということがあったね。もしかしてにこっちのお礼ってそのこと?」
「そのどこに感謝する要素があるのよ……」
「いや、やっぱりあの布切れ欲しくなったんかなって」
「あの話……遠まわしに私のこと言ってたんでしょ?」
「えっ!?」
「あのころの私、アイドルのことで頭がいっぱいで周りが見えなくなってた」
「あ、あぁ。だと思ってたよ」
知らんかった。
「あのお話を通して、私に気づかせようとしてくれたのよね」
「うんうん。やっと気がついてくれたか」
わけわからん。あの作り話からにこっちは何を受けとったんや。もう内容も覚えとらん作り話から。
「ありがとう希。やっぱりあんたってすごいわ」
「お、おう」
「あ、でもでもぉ、これからもアイドルモードのときはこんな感じで行くからよろしくニコ!」
なんかよくわかんないけど、にこっちは少しだけ本当の自分を見せられるようになったらしい。
なにがあったのかは永遠の謎である。いまだにウチもよくわかってないから聞かないで欲しい。
71:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:34:36.67 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
矢澤にこ
病名 アイドル症候群
症状
自身の二面性を受け入れ、いくらか本性を現せるようになったため回復に向かっている。
・・・・・
72:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:35:32.28 ID:GY+Ui9T+.net
ピンポーン。インターホンを押す。
「はーい」
絵里ちに似た小さい女の子。妹の亜里沙ちゃんが出てきた。
「こんにちは亜里沙ちゃん。絵里ちの具合はどう?」
「ああ、希さん。にこさん。いつもありがとうございます」
「いいのよ。これくらい当たり前なんだから。それで絵里はどうなの?」
「……さあ。今日も部屋から出てこないのでなんとも」
「そう……はいこれ、お花」
「ありがとうございます」
「じゃあウチらはもう行くね」
「上がっていかないんですか?」
「うん。絵里ちのためにもそのほうがいい」
「……すみません」
「いいんよいいんよ。じゃ!」
73:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:36:08.49 ID:GY+Ui9T+.net
「お姉ちゃん、今日も希さんとにこさんがお花持ってきてくれたよ」
「…………」
「ドアの前においておくね」
「…………」
「きっと……みんな待ってるよ」
「嘘よ。誰も私なんか待ってない。μ’sに私なんか必要ないんだから」
74:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/26(日)
23:36:55.24 ID:GY+Ui9T+.net
・・・・・
絢瀬絵里
病名 ひきこもり
症状
学校にも行かないし部屋からも出ないかしこいかわいい自宅警備員。
・・・・・
87:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:36:00.72 ID:q3oAHrnx.net
オープンスクールのスピーチを一生懸命考えてる絵里ちに「そんなつまらんスピーチじゃ人は集まらないよ」なんて冗談混じりに言ったことがある。
絵里ちは「そんなのわかってる!」とか「私にはこんなやり方しかできない……」とかなんとか。
今思えば感情的になったかと思えば落ち込んだりと、とにかく不安定だった。
それから、ウチがμ'sに入って――仮面を被りだして――少し後。絵里ちは学校に来なくなった。
原因はわからない。わからないけど……。
もしかして、私のせいじゃないよね?
みんながみんなそんな後ろめたさを抱えている。
だから誰一人、絵里ちに「学校おいでよ」なんて無責任なことは言えなかった。
88:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:36:39.15 ID:q3oAHrnx.net
「真姫ちゃん、アイドル症候群って知ってる?」
「なにそれ。言っておくけどそんな病気この地球にはないわよ。今のところ」
しまったー! この子医者の子やった!
「ええー真姫ちゃん知らんのー? 今世間じゃ話題沸騰よ?」
「しっ……」
ええい。ヤケクソや。ウチはついにこれが存在しない病であると告げられてしまうんや。
ウチは病気だったからこそ今までのウチを肯定できていたというのに。
これからなにを支えに自分を保っていけばいいの……。
「しっ……てるわよ」
えーっ!
90:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:37:22.28 ID:q3oAHrnx.net
「もちろん知ってるわよ。アイドル症候群。アレでしょ、アレ」
「そうそうアレ」
あかん……まさか『アイドル症候群』て病名が本当にあったとは。
だとしたら迂闊なことを言うのはキケンや。どんな症状なのかわからない以上下手なことは言えん。
「で、それがなに?」
「あー、いやー、ど忘れしちゃってね。真姫ちゃんなら知ってると思って」
「もももちろん知ってるってば当たり前でっしょー。世間で話題沸騰だというのに忘れちゃうなんて案外希ちゃんも抜けてるナノネー」
「ど、どぉんな症状……が出るんだっけぇ?」
ここはどんな病気なのか探り探り話を合わせるしかない!
「え、症状……?」
しまったしくじったか!
「あーいやー、症状とか別にないんやっけ? あれー。いや、症状じゃなくてそのー……」
「し、症状はアレよ、アレ」
「あ、ああやっぱ症状あるよねー。どんなんだったっけかなー」
くっ……あるならあるって先に言わんかい!
91:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:38:10.53 ID:q3oAHrnx.net
「症状は……アレ……よね?」
「そうそうアレ」
「あのー、っね?」
「うんうんあの……アレね」
「わかるわよ。アレね。あの世間で話題沸騰な……」
「そ、そうそう。怖いよね」
「ね、熱……?」
「熱!?」
本当のアイドル症候群って熱が出るんか!
「熱……じゃないわね……」
違うんかーい!
「症状ね。怖いわよね。その……嘔吐が……」
「嘔吐!?」
「嘔吐でもなくてぇ、えっとぉ」
少なくとも発熱や嘔吐はないということか……。
それにしてもなんやこの真姫ちゃんの『知ったかぶりしちゃって後に引けなくなっちゃった』みたいな煮え切らない態度は。
「あの、アレよね。関節痛……」
「関節痛!?」
「つぅー。関節っ、つぅ……今日ちょっと膝の調子が悪いのよね。湿気多いのかしら」
「はよ言えや!」
92:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:39:26.99 ID:q3oAHrnx.net
「え……」
「はやく症状教えてよ!」
「あの……希?」
「はっ……」
しまった! どうやって誤魔化す……?
「は、はやく教えてよ! ひ、膝の症状。痛むんやろ。大事になるといけないやん」
膝痛いって聞いただけで声荒げて心配するとか気でも触れたんかウチは。
「いや……そんなに心配してくれなくても、あー治ったわ。もう治ったわ」
「ダメよ! 保健室行こう。そうしよう!」
もう勢いに任せてこの話題を終わらせるしかないっ!
「大丈夫もう治ったから。治った。ほらもうこんなに滑らかに動く。イヤ仮病じゃないわよ? さっきまではホントに痛かったの」
「膝は一生もんやから一応見た方がいいよ!」
「ホントにもういいから! そうだアイドル症候群の話はどうなったのよ!」
話蒸し返しやがったーっ!
93:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:43:10.02 ID:q3oAHrnx.net
万事休すに思われたそのとき。救世主が現る。助かった同士よ。
「二人とも何してるの? お相撲さんごっこ?」
「あっことり……違うのこれは」
「真姫ちゃんもずいぶん明るくなったよね。なんだか嬉しいなぁ」
「ち、違うんだったらぁ!」
「今や! 上手投げー」
「きゃあー」
「うふふ。楽しそう。あ、希ちゃん。後でお話があるからね」
「はいよ」
「…………」
「あっごめん真姫ちゃん、膝痛いんやったっけ」
「ありがとう」
「へ?」
「みんなに私が明るくなったって思ってもらうために私を投げ飛ばしてくれたんでしょ?」
「……まあね」
まあね。じゃねーよ! なになんで便乗しちゃうかな……。
しかしこの娘、曲解にも程がある。くるくるパーなのは髪の毛だけにしときや。
94:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:43:28.00 ID:q3oAHrnx.net
・・・・・
西木野真姫
病名 傷つき恐怖症
症状
自分の体や心が傷つくのを極端に恐れる病。プライドの高い高飛車お嬢様にのみ発症する奇病。
・・・・・
95:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:44:36.97 ID:q3oAHrnx.net
放課後。ウチは秘密基地(アルパカ小屋)に来ていた。
「……監視は撒いてきたか?」
「ねえことりちゃん」
「よし。合言葉を」
「ウチ、ずっと考えてるんやけど」
「『チーズケーキ』」
「あのね、にこっちはアイドル症候群は乙女なら誰でもかかりうるって言ってたん」
「…………『マカロン』でしょ、希ちゃん」
「『マカロン』。だからね、もしかしたらやけど……」
「よし。ではこれから"奴ら"の気配を探る」
「みんな、そうなのかなって」
「私が"術式"を組んでいる間同士は一般人に見られないよう"結界"を張ってくれ」
「ことりちゃんも、たぶんなりたい自分と求められている自分の狭間で悩んでる」
「っ……! この気配は――」
「そして……絵里ちも」
「さっきからうるさいよ希ちゃん!」
「ええーっ!」
96:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:45:36.18 ID:q3oAHrnx.net
「なんでそんな話するの! いま絵里ちゃん関係ないでしょ!」
「いつまでも逃げてちゃダメだよ。私たちがやらなきゃ……誰があの子を救ってやれるん!?」
「そうだ、絵里ちゃんは"奴ら"の化学兵器"コウモリ光子"を浴びてあんな姿にされちゃったんだ! だから"奴ら"を倒して……」
「どんなに妄想で良くないものを倒したって……絵里ちは」
「妄想じゃないもん! あれからことりは強くなった! だからいつかきっと絵里ちゃんを助けるもん!」
「ことりちゃん……"奴ら"をどれだけやっつけても絵里ちはよくならない」
「そんなことない! 『漆黒の白鳥』はいつか絵里ちゃんを助ける! 絶対!」
「ことりちゃん……」
「『漆黒の白鳥』はこの街のみんなの……正義の味方だもん!」
97:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:46:06.83 ID:q3oAHrnx.net
ウチ東條希はありもしない不思議な力を持っているとみんなに信じられている。
自分ではそんなものはないとわかっている。
でもその真偽はみんなにとって大した問題じゃあない。
なぜならみんなは、信じられる何かが欲しいだけだから。
南ことりはありもしない不思議な力を持っていると自分で信じこんでいる。
みんなはそんなものはないとわかっている。
でもその真偽は自分にとって大した問題じゃあない。
なぜなら自分に、信じられる何かが欲しいだけだから。
98:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:47:28.13 ID:q3oAHrnx.net
「これが私のやり方なんだよ……自分に自信を持てなかった私の……。だから私の支えを奪わないで」
「やっぱりことりちゃん……いや『漆黒の白鳥』も……」
ウチは手持ちの胃薬を全て『漆黒の白鳥』に渡した。
「これは……?」
「乙女の病の特効薬」
「くれるの?」
「ウチにはもう必要ない」
「……コホン。礼を言う。同士よ」
「……コホン。借り一つだ。同士よ」
だったら私は私のやり方で、やってやる。
私にはこの『にせスピリチュアル』がある。
信仰から生まれた『偶像の力』。
真偽は大した問題じゃあない。確かにその力はここにある。
もう悩むのはやめだ。使いこなしてやる。
ウチは東條希。スーパースピリチュアルガール東條希や。
99:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/27(月)
23:49:49.97 ID:q3oAHrnx.net
・・・・・
星空凛
病名 猫アレルギー
症状
猫が近くにいるだけでクシャミが出るレベル。
・・・・・
113:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
17:45:27.35 ID:0izv7i03.net
ピンポーン。インターホンが鳴る。
「こんにちは。亜里沙ちゃん」
「希さんにこさん。いつもいつも、すみません」
「いいんよ。本当に申し訳ないと思ってるなら絵里ち引っ張り出して謝らせなよ」
「ちょっと希なに言ってんのよ」
「だって亜里沙ちゃんは何にも悪くないやん」
「それじゃ絵里が悪いみたいじゃない……はいお花」
「ありがとうございます」
「ウチもうやめるよ。絵里ちを割れ物みたいに扱うの」
「ニコだってそんなつもりは……」
「ねえ亜里沙ちゃん。たまには絵里ちと遊んであげてね」
「無理ですよ……お姉ちゃん部屋から出てこないし」
「絵里ちきっと退屈してるよ。ゲームでも持ってってあげればいいやん」
「…………考えておきます」
114:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
17:46:04.05 ID:0izv7i03.net
・・・・・
「どうしてあんなこと言ったのよ」
絵里ちのお見舞いの帰り道。にこっちは不審がるような目でウチを見ていた。
「いろいろあったよねぇ。オープンスクール、合宿、文化祭……」
「質問に答えてよ」
「でももうすぐ、そんなことよりもっと大事なイベントがあるんよ」
「そんなことって、私たちの活動より大事なことってなによ」
「もうすぐね、絵里ちの誕生日なん」
「誕生日……?」
「ウチは、絵里ちに『生まれてきてくれてありがとう』って言いたい」
いや違うな。
ウチはなにを決心した? なにを見てきた?
115:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
17:55:37.87 ID:0izv7i03.net
ウチは絵里ちを救いたい。
ウチだけじゃない。きっとみんな本心はそう思ってるんだ。絶対そうだ。
それがことりちゃんみたいに歪な形で出てきてしまう子もいる。
みんなどうするればいいのかわからないんだ。
「絵里ちゃんはそんなこと望んでないかもしれない」
「逆効果になるかもしれない」
そんなことを考えてがんじがらめになっている。
どうすれば……どうすればそれを変えられる?
答えは、「信じられるなにか」があればいい。
「絵里ちゃんは助けを求めているんだ」とみんなに思い込ませればいい。
そんなことができるのは……。
μ’sの創始者で、強キャラで、黒幕で、支配者で未来視できてタイムリープできる預言者くらいだ。
さあ。始めようか!
117:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
18:10:04.50 ID:0izv7i03.net
「凛ちゃん、アイドル症候群って知ってる?」
「うん。知ってるよ。『なりたい自分』と『求められている自分』と『本当の自分』と『偽っている自分』。
みんな自分が思う自分と他人が思う自分の認識の違いに悩んでる。
『本当の自分』を観測しているのは自分だけ。『求められている自分を演じる自分』を観測しているのは自分以外のすべて。
いったい『本当の自分』ってなんなんだろう。だって、みんなが信じている以上それは存在するんだから。
この曖昧な世界で存在を確定されるのは信仰や認識でしかないんだからみんなに見えている自分こそ『真の自分』なんじゃないかな。
だとしたらこんなことを考えている自分ってなんなんだろう?」
なんかめっちゃ知ってるーっ!
119:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
18:16:22.13 ID:0izv7i03.net
「貴様……なにものだ?」
「凛は凛だよ希ちゃん」
「凛ちゃんがそんな難しいこと言うはずがない」
「まあね。今のは海未ちゃんの受け売りだよ。凛にはさっぱりにゃ」
「海未ちゃんが?」
「うん。『アイドルとは何か」みたいな話したときにそんなことを言ってたよ」
「へえ。なら話がはやい」
「どうしたの?」
「実は今……”奴ら”によってこの町に危機が迫っているのだ」
「や、”奴ら”ってだれ?」
「すべての元凶や」
「すべて?」
「そう。みんなが今悩んでいること、心に抱えていること、それは全部”奴ら”のせいなんや」
120:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
18:24:27.11 ID:0izv7i03.net
「へえ?」
凛ちゃんはあまり興味なさそうに生返事をする。
まだだ。まだ足りない。
なりきれ。みんなの中の東條希になりきれ。彼女ならなんだってできる。
「凛ちゃんの悩みも、全部”奴ら”のせいや。凛ちゃんのせいじゃないんよ」
「凛の悩み?」
少し興味を示した。そうだ。能天気に見える凛ちゃんにすら悩みはあるのだ。
「そう。凛ちゃんはそれを自分のせいだって責めてるけど実はそれは”奴ら”の陰謀なのだ」
「な、なんだって!?」
「今まで黙っててごめん。ウチの正体は”奴ら”を倒すために戦う『紫電の水晶』」
「え、え……?」
「凛ちゃん、”奴ら”を倒すために力を貸して」
121:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
18:26:23.30 ID:0izv7i03.net
・・・・・
東條希
病名 アイドル症候群 ・ 中二病
症状
偶像化した自分を受け入れた東條希第二形態。
・・・・・・
131:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
23:40:05.22 ID:0izv7i03.net
今日もウチは生徒会長代理として目安箱に回答する。
アイドル症候群
アイドル症候群ってなんですか?
今世間では大流行している病だと友達から聞いたのですが、テレビにも新聞にも載っていません。
医者の父に聞いてもそんな病気はないと言われました。
その友達が嘘をついているとも思えません。私は何を信じればいいのでしょう。
回答
その友達がどこで情報を得たのかはわかりませんがアイドル症候群は実在します。
しかしながら現在は国民の混乱を防ぐために報道規制がしかれています。そのため質問者さんの耳には入らないのでしょう。
さて、症状についてですが初期段階で自分が何者なのか、という悩みに侵され最悪アイデンティティが崩壊します。
重度になると心身が乖離していき自分の体が自分の意思とは別物のような違和感に襲われます。
この段階では多くの患者が「ひきこもり」と診断されます。
そして最悪の場合死に至ります。死因は外的要因による生命活動の停止。自殺、あるいは事故死がほとんどです。
現在多くの若者が「アイドル症候群」に苦しんでいます。
非公式のデータでは日本のアイドル症候群、及びその予備軍の割合は急速な増加傾向にあります。
132:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
23:40:29.74 ID:0izv7i03.net
・・・・・
二通目
本当の自分
普段の私は元気いっぱいで悩みやストレスとは無縁のような立ち振る舞いをしています。
でも私にだって悩みはあります。そのことを告げても「どうせ醤油と味噌、どっちのラーメンにしよう。とかでしょ」と言われます。
そして私も「バレたかー」なんておちゃらけます。
でもある日、ある人が「あなたの悩みはあなたのせいではない。"奴ら"が悪いんだ」と言いました。
奴らって誰のことか意味不明だけど、自分の悩みを人のせいにしていいのでしょうか?
凛は人のせいにするのは嫌いです。
回答
それこそ"奴ら"の思うツボです。
人類は"奴ら"から攻撃を受けていますが、そのことに気がつく人はごく一部です。
大半は質問者さんのように自分の中に原因があると思い込み悩み苦しみます。
本来悩む必要はないのです。自分を責める必要はないのです。
だからあなたは悪くない。
苦しまなくていい。
無理に笑わなくてもいい。
あなたは悪くないのよ。
133:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
23:40:49.68 ID:0izv7i03.net
・・・・・
三通目
匿名
最近よくないものを感じる。
何者かの介入……暗躍があるようだ。
目的はわからないがこれを読んでいるなら即刻撤退しろ。
私は既に足を洗った身だがこれ以上我々に混沌を招こうというつもりなら容赦はしない。
「相手してあげてたらこの手の手紙増えたなあ……」
回答
最近変な手紙を目安箱に入れるのが流行っているんですか?
面白いと思ってやっているならやめてください。
134:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
23:49:50.69 ID:0izv7i03.net
「さて。今日もこんなもんかな」
『仕込み』は終わった。『オペレーション・SKG」を開始する……!
ウチは生徒会室を後にして部室へと向かった。
大丈夫。段取りは頭の中で何度も繰り返した。
あとは自分を信じるだけだ。
ウチの思うウチじゃない。みんなが信じるウチを信じる。
みんなの東條希とウチの東條希との差が大きければ大きいほどいい。
ふはは。ウチは東條希やみんなの東條希や!
ウチはすっごいスペシャルなパワーを持ってるよ。
135:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/29(水)
23:56:48.81 ID:0izv7i03.net
これから始まるのは、ごく普通の女の子がありもしない超能力を武器に"奴ら"を倒すビッグショー。
さあご覧あれまずはにせ予言とにせ記憶操作でμ'sのみんなを一つにまとめて見せましょう。
タネと仕掛けしかございません!
136:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
00:01:38.78 ID:Xqnv8ZLu.net
・・・・・
部室には一年生が来ていた。
真姫ちゃんはケータイポチポチ。花陽ちゃんはパソコン、凛ちゃんは花陽ちゃんを見ている。
「ねえみんな。ウチの昔の予言、覚えてる?」
「なんだっけ? いっぱいありすぎてどれかわかんないにゃ」
「『九人が揃ったとき、道は開けるだろう』」
よく覚えてるけどこんな感じのことを言ったはずだ。大丈夫。あとは適当にみんなが拡大解釈してくれる。
「ああ、言ってた。言っていましたね!」
「あれには驚いたよ!」
「凛ちゃん、花陽ちゃん、今のμ'sを数えてみ?」
「え? いち、にい、さん……」
「よん、ご、……あれ」
「八人しかいないにゃああ!」
「そう! このままでは……」
「このままでは……?」
「なんかやばい!」
「えええええええぇ!」
「大変だ!」
137:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
00:04:16.17 ID:Xqnv8ZLu.net
「このままでは世界の人間が『アイドル症候群』に侵されてしまうのだ!」
「なんですかそれは!」
「『アイドル症候群』ですって!?」
「知ってるの真姫ちゃん!」
「ももももちろんよ」
「どんな病なの!」
「なんか……アレよ。ヤバイのよ」
「真姫ちゃんが言ってるだから相当ヤバイにゃ!」
「報道規制されてるから詳しくは言えないのごめんなさい。でもなんかヤバイの」
「とにかくヤバイんや!」
「どうすれば!」
「なんかよくわかんないけどμ'sが九人揃えばなんとかなるってカードが告げるんや!」
「なるほど!」
138:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
00:11:14.55 ID:Xqnv8ZLu.net
「九人揃うためにはやく絵里ちゃんを立ち直らせないと!」
計・算・通・り! ……なんちゃって!
「でも……絵里ちゃんの気持ちも考えないでそんなことしていいのかな……」
「大丈夫や!」
「でも、エリーはそんなの望んでないかもよ?」
「ウチを誰やと思ってる」
「数々の奇跡と超常現象を起こしてきた希ちゃんだにゃ」
「そう。ウチは絵里ちの心を読み取り、言動を予言できるのだ」
「なんだってー!」
「だから絵里ちの気持ちはわかる。いまからそれを証明しよう」
「そんな、いくら希でも人の心を読むなんてムリよ」
「全てのカギは花陽ちゃんの消えた記憶にあるのだ!」
「えぇ私ぃ!?」
「そう。今までのことを思い出してみて。花陽ちゃん」
「無理だよぉ、私の記憶は『漆黒の白鳥』って人に消されちゃってて」
「違う。そのあとや。ウチとスクールアイドル『ショーコーグン』略して『SKG』について話したとき」
「そうだ、私なぜかその略称を知らなくて……」
「それや! 花陽ちゃんの消された記憶とは『SKG』という三つのアルファベットだったんよ」
「ショーコーグンの略称『SKG』を記憶から消されていた?」
「それがなんで消さなきゃいけない記憶なの?」
139:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
00:13:35.25 ID:Xqnv8ZLu.net
「それはかつてウチが記した予言だったからや」
「どういうことなの……」
「そのアルファベットの意味するものそれは……」
S さすがにこね
K かしこいかわいいエリーチカ
G 学校の許可? 認められないわ
「う、嘘……まさか」
「全部絵里ちゃんの言葉だ!」
「ウチは『ショーコーグン』が結成されるとき既に絵里ちの言動を予言してグループ名に暗号として残していたのだ!」
「すげええええええええ!」
「ちょっと待って最後のは言ったの凛じゃ……」
「つまりぃ!」
「ウチは絵里ちが次にどう動くのかを知っている!」
「すげえええええええ!」
142:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
00:16:00.62 ID:Xqnv8ZLu.net
希、一年生組を「絵里引きずり出す派」に懐柔成功。
つづく。かもしれない。
147:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
21:22:44.66 ID:Xqnv8ZLu.net
・・・・・
「希、相談があります」
そう言われてウチは海未ちゃんと一緒にアルパカ小屋へと向かった。
なんでみんなウチを呼び出すときはアルパカ小屋を使うんや意味わからん。
……ていうかこのタイミングでもし『漆黒の白鳥』モードのことりちゃんがきたら面倒になるぞ。
「希はすごいです」
「なんや急に」
「あなたにはみんなにないものがある」
「ふふふまあね。ウチには特別な力があるのだ」
「私も、あなたのように特別な力をもって生まれたかった。でも私たちはあくまで普通の人間なのです」
「"力"を持つのもそれなりに苦労するんやけどね」
「私たちは普通の人間なんです」
私たちは、普通の人間。海未ちゃんはその言葉をなんども繰り返し強調しているようだった。
ウチには、私たちはあなたとは違うんです。と言っているようにも聞こえた。
148:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
21:24:41.14 ID:Xqnv8ZLu.net
「偉大な力。それだけにあなたの影響力は計り知れない。普通の人間が幻想を抱いた末路は悲惨ですよ」
「ウチがみんなに『自分にも特別な何かがあるのかもしれない』と思わせているって言いたいんやね」
「そう。最近みんなあなたに影響されています。私はそれをいい傾向だとは思いません」
「あまり力を見せ付けるな……ってこと?」
「調和のためです。大きな力は少なからず混沌をもたらす」
海未ちゃんの言っていることを簡単にまとめるとこうだ。
みんなはウチの起こす奇跡を目の当たりにして自分にもできるかもしれないと理想を抱くようになった。
でもみんなにはそんな力はない。その差異はいずれ自身を苦しめることになる。
ああ、まさにアイドル症候群。アイドル症候群の真の拡散元はこの私、東條希だったのだ。
でも病原ではない。
なぜなら東條希もまた、周りが勝手に作り出した幻想なのだから。
149:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
21:25:51.72 ID:Xqnv8ZLu.net
理想と現実の差異に悩むのがアイドル症候群なら、理想を信じるのが中二病。
そして現実を信じるのが高二病ってとこかな。
確かにその病は長い潜伏期間を経て当事者を苦しめる。
だがあえて偶像(アイドル)東條希は中二病菌を撒き散らす。
理想を信じられない現実で絶望するくらいなら、理想を信じて理想に生きろ!
『ドクでもってドクを制す』
嘘や理想の弊害なんてどこにでもある。
そんなものどこにだって生えている。校庭にだっていくらでも生えている。
いつかのウチはそれを迷わず食いつくす姿をみたんだ。
世の中食えないものなんていくらでもある。それでもなんでも無理やり食え!
おなかを壊したら胃薬を飲めばいいだけなんだから。
150:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
21:26:51.85 ID:Xqnv8ZLu.net
だからウチは海未ちゃんの忠告を……。
「断る」
「匿名の警告も直談判も取り合わないときましたか」
「あの匿名は海未ちゃんやったんか」
「このままではみんな……最後は絵里のようになってバラバラになってしまいますよ!」
「いいや逆や。ウチはこの力を使ってみんなをひとつにする」
「絵里は理想に破れ現実に絶望してしまったのです! かつての私のように!」
「だったらウチはもう一度絵里ちに理想を見せる。そしてみんなにも一生理想を見せ続ける」
「それができたとして……あなた自身はどうなりますか……」
「大きな力には、大きな代償がある」
偽りの大きな力でもって、大きな代償を背負う。
でもそれすら偽物。全部偽物。その偽物をウチは信じる。
どうや。今のウチさいっこうに中二病やろ。
・・・・・
151:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
21:27:54.12 ID:Xqnv8ZLu.net
・・・・・
園田海未
病名 高二病
症状
現実的で堅実的なやれやれ系主人公。理想を捨てることを理想とする矛盾系病。
・・・・・
153:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:19:19.17 ID:Xqnv8ZLu.net
海未ちゃんは「かつての私のように」と言った。
なるほどきっと『漆黒の白鳥』の原点は……。
それならもう簡単だ。
「ことり……」
「どうしたの海未ちゃん」
「どうして……今になって『漆黒の白鳥』なんて」
「だってこれは、海未ちゃんがくれた"力"だから」
「そんなものありません」
「海未ちゃん中学生のころ私に教えてくれたよね」
――ことり! ことり! なにを弱気になっているのですか!
154:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:19:48.25 ID:Xqnv8ZLu.net
『あなたは漆黒の白鳥! "奴ら"からこの町の平和を守っているのです!』
『そんなの無理だよ、私には何にもない……私にそんなことできないよ」
『そんなことでは"奴ら"に負けてしまいますよ!』
『"奴ら"って……?』
『"奴ら"は悩みや苦しみ、絶望、負の感情そのものです。今ことりは"奴ら"に攻撃を受けているのです!』
『違うよ、私が落ち込むのは私のせいで、私が悪いんだよ』
『断じて違います。間違っています。さあことり、いえ漆黒の白鳥。立ち上がるのです。あなたにはその"力"がある』
『無理だよぅ……』
『大丈夫。いつも私が、この蒼き疾風があなたと共に戦います。あなたが辛いときは私がいつも一緒に戦います』
『どんなに強くてかっこいい海未ちゃんでも、きっとこの気持ちはやっつけられないよ……」
『私は幾度となく"奴ら"と戦い勝利してきた正義の戦士です。ですがもし私ひとりでこころもとないなら……」
『ことりちゃん? 海未ちゃん? どうしたの?』
――そのときは私たち三人で戦いましょう。
155:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:22:41.09 ID:Xqnv8ZLu.net
「最近いろいろあったでしょ。辛くて苦しくて……だから私、海未ちゃんがくれた"力"を信じて」
「それで……今になって……」
「でも、この"力"は自分のために使うものじゃない。私は"奴ら"をやっつけるんだ」
「でもっ……でもやっぱり私たちにそんな力はない!」
「失ったんだよ海未ちゃんは。自分の力を信じる力を」
「現実を見てください……絵里はきっと私たちのせいでああなった……」
「海未ちゃん! なにを弱気になっているの! あなたは『蒼き疾風』! "奴ら"からこの町を守っているんだよ!」
「私には……もう無理です」
「そんなことじゃ"奴ら"に負けちゃうよ!」
「ああそうです……私はいつの間にか"奴ら"に負けてしまっていたのです……」
「海未ちゃんのバカ」
「ほ、穂乃果……いつから……!?」
156:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:23:41.57 ID:Xqnv8ZLu.net
「希ちゃんにアルパカ小屋に行けって言われてきてたんだよ」
「ずっと裏側にいたのですか……」
「約束したじゃん一緒に戦うって。なのに、一人でずっと戦ってたことりちゃんに手を貸さないの?」
「行こう海未ちゃん。"奴ら"を倒して絵里ちゃんを救おう?」
「私たちには特別な"力"がある」
「そんなのわかってますよ……! 約束はちょっぴり忘れていただけです。
私がひとりで戦っていることりを放っておくわけがないでしょう。ですが……」
「まだなにか言うの?」
「ですから、それを絵里が望んでいるんですか? 絵里を外に引きずりだすのは私たちのエゴではないんですか? 独善ではないんですか?」
「それは……」
「"奴ら"を倒すためにはその根本を解決しなければならない」
さて。そろそろ頃合いかな。会話だけじゃ三人の様子はようわからんし。
「おや三人とも、こんなところで奇遇やね」
157:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:25:48.44 ID:Xqnv8ZLu.net
あ、希ちゃん……ていうか私は希ちゃんに呼び出されたんだけど!」
「あははごめん。まさか『漆黒の白鳥』と『蒼き疾風』までいるとは」
「なあ! なぜその名前を!」
「違った?」
「……いいえ。そうです。私は封じられた記憶より蘇りし『蒼き疾風』」
「海未ちゃん!」
「ウチは『紫電の水晶』。共に"奴ら"と戦おう! 『漆黒の白鳥』、『蒼き疾風』、それから……」
「『夕日の閃光』高坂穂乃果だよ」
「私たちは三人で戦ってきました」
「よしじゃあ本部(部室)に戻ろう。今世界に何が起きているのか、すべて説明する」
「私たち四人で?」
「いや。本部には既に『紅蓮の輪廻』と『黄金の流星』と『深緑の泉』それから『桃源の双龍』がいる』
「そんなに仲間がいたなんて」
「いやまだ足りない。昔ウチらは九人そろわないとと言ったはずや」
「あと一人……」
「『露氷の賢者』ですね」
「みんな揃って『虹色の美渦』! ウチらは世界を救う正義のヒーローや!」
158:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:28:52.00 ID:Xqnv8ZLu.net
・・・・・
「本日はお集まりいただきありがとう」
ウチは手を後ろに組み、窓からさす西日を受けながら低い落ち着いた声で号令をかける。
「今回の我々の任務は"奴ら"から絢瀬絵里を救い出すことだ」
『オペレーション・DDM』
そうホワイトボードに書き込む。書記はにこっち。
「『ドクでもってドクを制す』。それが我々のやり方だ」
「はいはーい、希隊長。DDMってなんですかにゃ」
「D(ドク)D(で)M(もって)略してDDM! 『オペレーション・DDM』や!」
159:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:30:22.22 ID:Xqnv8ZLu.net
「はいはーい、希隊長。DDMってなんですかにゃ」
「D(ドク)D(で)M(もって)略してDDM! 『オペレーション・DDM』や!」
「具体的にはどうやって絵里を救うのですか?」
という海未ちゃんの発言に便乗して穂乃果ちゃんが手を挙げ、指名する前に勝手に話し始めた。
「私も絵里ちゃんには元気になって欲しいけど、でもやっぱり私たちに原因はあるっていうか。簡単に『戻っておいでよ』なんて言えるのかな?」
発言を制する前に今度は真姫ちゃんが髪の毛をいじりながら横槍を入れる。既にウチの立場がない。
「珍しく迷ってるのね。でもそんなに悠長に構えてる暇はないのよ」
「どういうこと?」
「私たちが全員そろわないと未知の病気によって世界がヤバイの」
「世界が……!?」
「"奴ら"は既にそこまで……」
「だから一刻も早くエリーを"奴ら"から開放しないと」
「つまりっ!」
乱れようとしていた会議を沈めることりちゃん。さすが我が同士。
「つまり、私たちは絵里ちゃんに『助けを求められる』必要がある。ということだね」
「ええ。彼女に求められない限り私たちは動けません」
160:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:31:06.68 ID:Xqnv8ZLu.net
そうだ。ウチらは絵里ちに助けを求められなければならない。
もともとわかっていたことだ。絵里ちがSOSを出しさえすれば、黙っているみんなではない。
ただ、助けていいものなのか、それが助けになるのか。みんなは迷っている。
最初からそうなのだ。最初から、すべての茶番はそのためにあった。
動機づけは済んだ。『世界がヤバイ』から絵里ちを救おう。
くすぶっていたみんなに動機は与えた。
あとは『絵里ちが助けを求める』だけだ。
「あっ」
花陽ちゃんが何かに気づく。
「ことりちゃん、『漆黒の白鳥』! 私の記憶を返してください」
「えっ、あ、……そういえばそういうことになってたんだっけ……」
小声で何か言うことりちゃん。ウチは聞き逃さなかったけどみんなには気にされてないようだ。
161:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:31:33.58 ID:Xqnv8ZLu.net
「私の消えた記憶には絵里ちゃんに関する予言が記されているんです!」
「そうだった、希ちゃんが昔した予言が暗号化されてるって言ってたにゃ!」
「そ、そうそう。"奴ら"に花陽ちゃんまでやられないように私は花陽ちゃんの記憶を消したのよ」
「そうか! 希の予言がわかれば今のエリーの言葉がわかるかも!」
「S(さすがにこね)K(かしこいかわいいエリーチカ)G(学校の許可? 認められないわ)」
「かよちんの大好きなスクールアイドルの記憶だったんだよね。SKGは」
「うん。忘れるはずのないことを忘れていたの」
「全部かつてのエリーの発言。つまり他の花陽の記憶を引き出していけば」
「今の絵里ちゃんの気持ちがわかるかもしれない! 絵里ちゃんが何を求めているのか!」
「ご、ごめんね。ことりの記憶を改ざんはもとには戻せないの……」
「都合のいい設定の能力やね」
「希ちゃんこそなんでそんな面倒な方法でしか予言できないの!」
「とにかく!」
乱れに乱れ誰が喋っているのかわからなくなっていた会議ににこっちの声が響く。
ずっと黙っていたにこっちもようやく腹をくくったようだ。こっち側にくる覚悟を。
162:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:34:27.67 ID:Xqnv8ZLu.net
「花陽ちゃんが知ってるはずの言葉や情報を忘れていたらそれがのぞみんの予言ってことニコ」
「そうね」
「最近、ずっと花陽ちゃんから聞いてない話題や言葉はなかったかしら。普段なら必ず言うはずの決まり文句とか……」
「それが消えた記憶ってわけか」
「かよちんが絶対言うはずなのに最近言ってないこと?」
「あっ……それって!」
「そのとおりや。ようみんなここまで自力でたどり着いたね」
他人から聞いたことよりも自分で気がついたことの方が人は情報を信じる。
そう。最初から、すべてはこの言葉のためにあった。
ウチのμ’s加入から始まった嘘とみんなの勘違いの応酬。それによる東條希の神格化。そして生徒会目安箱の意味不明な回答。
いままでのすべてはたったの『その一言』のためにあったのだ。
めちゃくちゃで何言ってるかわかんなくてもみんなアホだから勝手に解釈して納得してしまうのだ。
どうだこれがウチのスピリチュアルパワーや!
163:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:35:13.58 ID:Xqnv8ZLu.net
そう……その一言とは。
『誰か助けて』
ウチは絵里ちがそう言うことを遥か昔から予言していたことになった。
ウチは全身全霊すべてのカードを使い切って、『絢瀬絵里は助けを求めている』とみんなに思わせた。
ウチがみんなに見せたかったのは、たったのそれだけ。
大事なのはそれを信じ込ませる根拠と演出。
「絵里ちゃんが助けを求めてる!」
「助けなきゃ!」
そう。それだけ。あーあ、長かった。
それからみんなアホで助かった。
「作戦決行日は『絢瀬絵里の誕生日』当日!」
164:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/30(木)
22:36:22.71 ID:Xqnv8ZLu.net
希、中二病伝染により全員を「絵里引きずり出す派」に懐柔成功。
つづく。かもしれない。
170:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
14:33:47.61 ID:NJOyz4qb.net
・・・・・
ちょっぴりヘンな夢をみた。
ベッドに横になってる絵里ちがいて、横にウチが座っていて、それを上からもう一人の絵里ちがみている。
なんかよくわかんないけどウチは泣いていて、それからウチはタイムスリップして胃薬を飲もうとしている昔のウチに飛び膝蹴りをした。
あまりにも意味のわからない夢だったから熱でもあるのかと思ったけどそんなことはなかった。
余談ではあるが、のぞみんの夢占いの的中率はゼロパーセントである。
そもそも、人の夢の話がなにより退屈な余談ではあるが。
・・・・・
171:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
14:34:21.66 ID:NJOyz4qb.net
――絵里ちの誕生日がきた。
ウチらは今『穂むら』にて絵里ちのサプライズパーティの準備をしている。
準備ができたら絢瀬家にみんなで突入して無理やり連れ出す予定だ。
どんなに嫌がろうが、泣こうがわめこうが、誰も止まらない。
「本当は助けて欲しかったんでしょ? もー素直じゃないなー」
絵里ちの真意はどうにせよ、みんなはこう思うのだ。
ほんと、絵里ちがどう思ってるのかは知らないけど。
でも確かな自信がある。つれてきさえすれば絶対大丈夫だ。
今日は部活は休みにして、放課後からずっと準備をしている。日没には間に合うだろう。
そしたらみんなで絵里ちのところに押しかけるんだ。
ピンポーン。
「あら、誰かきたよ」
「私の家だし私が出るよ。みんなは準備よろしく!」
「はーい」
172:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
14:34:40.26 ID:NJOyz4qb.net
「さあ、最後の仕上げやっちゃいましょう」
「これで"奴ら"もいよいよおしまいですね!」
「そうよ。エリーを苦しめる悪い"奴ら"なんかぶっ飛ばしちゃいましょうね」
「そうそう……私たちは世界を救うんだ……」
「ええ……」
「…………ぷっ」
「あははははは……」
「ちょっと、みんななに笑ってるんやー!」
「ううん。希ちゃん、ありがとうね」
「なんのことかな?」
「なんでもなーい!」
ウチは知ってる。
本当はみんな、そこまでアホじゃないってことを。
173:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
14:36:22.72 ID:NJOyz4qb.net
そのときだった。ドタドタとあわてて穂乃果ちゃんが入ってくる。
「おかえり、お客さん誰だった……」
「みんな大変! 絵里ちゃんが!」
驚くことに、お客さんは絵里ちだった。
「でもまだ、パーティの準備中だったから入れるわけにもいかなくて……そしたら走ってどっかいっちゃった!」
「はあ!? ちょっと待ってよ、絵里って絵里!? どうなってんのよ」
「知らないよ! なんかよくわかんないけどきたんだよ!」
「なんで今日に限って!? このタイミングで!?」
「せっかく出てきたのに家に入れてもらえなくて……ってこと?」
「知らないよぉ! どうしよう希ちゃん!」
「希!」
「希ちゃん!」
「えっ……」
174:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
14:38:07.32 ID:NJOyz4qb.net
絵里ちがきた……? ここに?
じゃあなに、ウチのいままではすべて無駄やったってこと?
むしろ逆? ウチがなにもしなければ自然に……。
いまごろ絵里ちは穂乃果ちゃんの家に入れてもらって……そして……。
いや落ち着け過ぎたことより、今どうなっている?
絵里ちがどっかいった!? そ、そうだ探さなきゃ!
「あ、ああ……」
「希ちゃん!」
「希、あなたのスピリチュアルパワーでなんとかしてよ!」
「絵里ちゃんはどこに行ったの!? 予言は!」
「奇跡を起こしてよ希ちゃん!」
「そっれは……えと……」
どうする? どうするどうするどうするどうするどうする!
なんとかしてよ東條希! あなたのすごい力でなんとかして!
私には無理だよ! 私はだたの普通の女の子なんだから!
だからなんとかしてよ! みんなの理想の東條希っ!
181:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:27:29.33 ID:NJOyz4qb.net
もしかしたらすべては時間が解決してくれるのかもしれない。
そして、そのときは近いのかもしれない。
誰かが何をしようが、長い目で、広い視野でみれば結果は変わらないのかもしれない。
だったらもういいじゃないか――だからもういいんよ――。
「……心配せんでいいよ」
「でも!」
「大丈夫。大丈夫」
「でも!」
「ウチが大丈夫って言ってるんよ。大丈夫やって」
「でも……」
「ウチが探しといて説明するよ。パーティは明日に延期しよか」
「そ、そうだね……絵里ちゃんがどこか知らないところに行っちゃうわけじゃないもんね」
「希が見つけてくれるんですね、ではあせらずパーティは延期にしましょう」
「希ちゃんなら絶対見つけられるもんね!」
182:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:33:58.50 ID:NJOyz4qb.net
わからない。絵里ちがどこにいるのかまったくわからない。
きっとウチは絵里ちを見つけられない。だってウチにそんな力ないんだから。
「じゃあウチ……探しにいってくるから……」
ドクン。鼓動が高まる。息が速くなる。
はあ、はあ、はあ、はあ。まるでヘンタイのようだ。
視界が狭い。まるで盗撮カメラの映像のようだ。
ウチの偽物で絵里ちを探し出せるのか?
いや、大丈夫や。ウチはウチの力を信じることにしたんだった。これは偽物なんかじゃない。
ウチは絵里ちの場所を知ってる。探し出せる。
そうだ。大丈夫、大丈夫。
「いってくるね……」
183:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:35:22.74 ID:NJOyz4qb.net
おなかの辺りがきゅう、と痛む。久しぶりに胃薬を一錠、バッグから箱を取り出して震える手で錠剤をだす。
大丈夫……これを飲めば、いつものみんなの東條希が帰ってくる。
きゅう。きりきり。
「スピリチュアル望遠鏡のぞみんパワー注入バージョン」
少し目を閉じる。
もしも、もしもウチに未来視が備わっていたなら――。
いやきっとある! 自分を信じて、ウチはぎゅっと目を閉じる。
184:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:38:41.53 ID:NJOyz4qb.net
閉じた目の前に広がっているのは、ただの暗闇だった。
もしも……もしもなんて考えることもできない。
今は――。
・・・・・
185:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:39:16.05 ID:NJOyz4qb.net
・・・・・
希「バカやろう」
希「ぶへっ!」
希「時空を超えて飛び膝蹴りしにきてやったで」
希『ウチが探しといて説明するよ。パーティは明日に延期しよか』
希「アホウ! なんでそんなこと言ったんや!」
希「べ、別にいいやん……明日しきり直せばいいやん」
希「タイムリープ!」
希「え……?」
希「今の自分は未来からやり直しにきた自分だと思え!」
希「そんなん……」
希「今まで何回後悔してきたと思ってるん!」
希「そんなん……ウチが一番わかってるわ!」
希「そらそうやん。ウチはウチなんやから」
今は、時にはくじけそうな悲しみに胸がふるえても――守りたい。
・・・・・
186:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:40:56.61 ID:NJOyz4qb.net
目を開く。私が今見るべきものはなにか。
「希ちゃん!」
「希、あなたのスピリチュアルパワーでなんとかしてよ!」
「絵里ちゃんはどこに行ったの!? 予言は!」
「奇跡を起こしてよ希ちゃん!」
久しぶりに胃薬を一錠。
バッグから箱を取り出して、震える手で錠剤をだす。
ポロリ。指先からこぼれる胃薬。
――今の自分は未来からやり直しにきた自分だと思え!
「行こう! みんなで探しに!」
「え……?」
「なんとなく……明日はもう絵里ちはこない気がする」
「どういう意味?」
「わっかんないけど! けど! 今しかないんよ!」
「希ちゃん……?」
187:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:41:55.34 ID:NJOyz4qb.net
このままじゃダメだ。このままじゃみんなは動かない。
なぜならみんなは「あの東條希ならなんとかしてくれる」と思っているんだから。
なら、どうする?
「誰か助けて」
同じ理屈だ。私がSOSを出せば、黙っているみんなではない。
「誰か助けて! ウチひとりじゃダメなの! ウチじゃ見つけられないの!」
「希……ちゃん?」
「私にそんな力……ないのよ。全部嘘なんだよ……東條希は……嘘なんだよ」
「ちょっと待ってよ」
「今まで騙しててごめんなさい! 私の名前は東條希。何の変哲もないごく普通の高校生」
「待ちなさいって言ってんでしょ!」
「私はどうなってもいい絵里ちを助けて!」
私は落とした錠剤を拾い胸のポケットに入れて部屋を飛び出した。
この痛みを抑える必要なんて……ないんだから!
188:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:42:44.14 ID:NJOyz4qb.net
・・・・・
東條希
病名 傷つき恐怖症・アイドル症候群・中二病・高二病
症状
傷つくのを恐れて求められる自分を演じ続けていたごく普通の少女。
偶像化した自分を受け入れつつそれを完全否定してありのままの自分をさらけ出した東條希最終形態。。
・・・・・
189:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:43:43.44 ID:NJOyz4qb.net
「絵里ちゃーん!」
「エリー、どこっ!」
「絵里ちゃん、でてきてー!」
絵里ちを手分けして探すみんな。もちろん私も必死に目でみて探す。
「絵里ーっ!」
「絵里ちゃんお願い話を聞いて!」
「絵里ちゃん返事して!」
公園、コンビニ、ゴミ箱、自販機の下、みんなで探し回る。
「絵里ちゃーん!」
毎日ダンスで鍛えているんだ。ひきこもりなんかに追いつけないはずがない。
穂むらから絵里ちの家の最短ルートを無心で走り、勘で大通りにでる。
運よくタイミングが合えばどこかで絵里ちにぶつかるかもしれない。
「えりちぃーっ!」
191:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:45:10.36 ID:NJOyz4qb.net
・・・・・
「私の話を聞いてくれないのは――穂乃果のほうでしょ!」
悲しみと憎しみと苦しみと……絶望に震える声が響き渡る。
その人は橋の上を歩いていた。 少し冷たい風が吹いていた。
その人……絢瀬絵里が右手に握っていた、何かが風に吹かれて掌から離れる。
絢瀬絵里は身を乗り出してそれを掴もうとして――橋から転落した。
・・・・・
192:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:48:20.14 ID:NJOyz4qb.net
それが自分の意思なのか、あるいは事故だったのか。
そんなことはどうでもいい。"私"はその手を掴む。
私は未来なんて見えないけど、けどきっとこの手は未来を変えるためにある!
「絵里ち!」
「誰か……助けて……」
「今引き上げるから!」
「の……希!?」
「動かないで!」
「い……やだっ! 離して」
「今『誰か助けて』って言ったやろぉ!」
「パ――が川に落ちてっ」
「うるさい! 引き……あげるから……暴れるな!」
193:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:52:26.12 ID:NJOyz4qb.net
まずい、力が足りない。
ああ、やっぱり私には"力"なんてないのか。人一人引き上げる力もなしに、なにが『スピリチュアルパワー』なのか。
腕が震える、感覚が消えていく……でも離すもんか。一緒に落ちてでも離さない。
「離して! 離してよ! 私なんかどうでもいいんだから!」
「お願い……暴れないで……手がっ」
「離して! 離せっ! このっこのっ!」
「もう……限界……」
「はなせぇ! うわあああ!」
大口を開ける絵里ち。
そこめがけて、私の胸ポケットから小さな錠剤が零れ落ちた。
さっき出して飲まなかった胃薬。それが絵里ちの口へホールインワン。
「うえっ……にがぁ」
絵里ちの動きがおとなしくなる。
「それが……生きるってことや。生きるって……にがいんよ」
我ながら意味不明。そのまま私たちはづるづると橋から落ちていった。
194:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/07/31(金)
23:54:15.70 ID:NJOyz4qb.net
――。
「……コホン。借りを返しにきたぞ。同士よ」
ことりちゃんが私の体をつかむ。その後ろにはみんながならんでいて、最後尾の海未ちゃんは反対側の橋の柵にしがみついている。
「久しぶりに九人揃いましたね……ぐぅ……早く引き上げてください」
「せぇーのっ!」
「ど、どうして……どうしてみんなここがわかったの……?」
私を掴んで離さないことりちゃんは、やさしい笑みでこう答える。
――――たまには、本物の奇跡が起きてもいいんじゃないかな。
・・・・・
197:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:24:04.01 ID:D33O0hZN.net
息を切らしてみんなは橋の上に寝転がる。
「どうして助けたのよ……みんな私のこと嫌いなんでしょ……?」
「それは絵里ちの勘違いだよ」
「そんなはずないわ。私はたしかに記憶している! 私は頼まれたからダンスのレッスンをみてあげたのにみんなして私を目の敵にした!」
「実はそれは偽りの記憶だったのだ」
「え!?」
「絵里ちは記憶を改ざんされてひきこもりにされてしまったのだ」
「なにわけのわからないことを……」
「冷静に考えてみ? ひきこもりの自分とスーパースピリチュアルガールのぞみんの言うこと、どっちが信じられる?」
「一体誰がそんなことをしたって言うのよ……?」
「絵里ちは"奴ら"の陰謀によってそんな体にされてしまっただけなんよ。ね、ことりちゃん」
「そうだよ絵里ちゃん。絵里ちゃんは"奴ら"の科学兵器"コウモリ光子"を受けてひきこもりにされてしまったの」
「しかしもう大丈夫です! "奴ら"は我々『虹色の美渦』が撃退しました」
「にじいろのみうず……?」
「虹色のμ’s。ウチら九人やん」
「九人でいいの……?」
「最初からずっと九人やったやん。もう、絵里ちは忘れんぼさんやね」
「いや、虹なのに九でいいの?」
「そっちかよ」
198:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:24:50.20 ID:D33O0hZN.net
・・・・・
絢瀬絵里
病名 ひきこもり・勘違い健忘症
症状
ひきこもりの「自分に自信がない」点につけこんで都合の悪い記憶は勘違いの忘却の彼方へ。
・・・・・
200:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:31:34.24 ID:D33O0hZN.net
「さて改めまして絵里ちゃん、お誕生日おめでとう」
作りかけのぐちゃぐちゃのパーティ会場で絵里ち生誕18周年祭が行われた。
ま、こういうのもウチららしいんやないかな。
「なによ……どうせ私を説得するために急ごしらえでつくったんでしょ。こんなぐちゃぐちゃで」
「違うよずっと前から計画してて、本当はもっとすごかったのに絵里ちゃん勝手に走って行っちゃうんだもん」
「本当かしら……」
絵里ちは無事に保護され、今は穂乃果ちゃんが用意してくれた夕食を待っているところだ。
よかった。本当によかった。
……あとは。
201:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:32:33.97 ID:D33O0hZN.net
「その、みんな……ごめんなさい。ウチ……」
「いやー! さすが希ね!」
「そうそう。やっぱり希はエリーを見つけたじゃない!」
「えっ……えっ……」
「やっぱり希ちゃんのスピリチュアルパワーは本物だね!」
「えっ……?」
「これからもいろいろよろしくね! 希ちゃん」
「お、おうウチにまかせとき! わはははは! はは、はぁ……」
どうやらまだ胃薬を卒業させてはくれないようだ。
202:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:33:42.87 ID:D33O0hZN.net
「さあさあ、みなさんお待ちかね。夕飯は穂むら特性天ぷらだよーっ!」
「おお! おいしそ……う?」
「なにこの葉っぱ……」
「野草の天ぷらだよー! ちゃんと食べられるんだよー!」
「穂乃果……そういえば最近校庭の除草作業に没頭してましたけど……」
「ま、まさかね……」
「さあじゃあまず主役の絵里ちゃん。はい、あーん」
「あ、え……あ……んぐぅ!?」
「どう? 頑張って採ったんだよ」
「うえっ……にがぁ」
「うんうん。それが人生の味なんだよ。道草を食うのが、人生なんだよ」
「うん……そっかぁ……ヴんっ……おえぇ」
ついで穂乃果ちゃんも意味不明なことを言う。まったく誰に影響されたんだか。
一方絵里ちは理由は定かではないが、涙を流して謎の草の天ぷらを食べた。
主におえつが理由だと思う。
204:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:35:31.31 ID:D33O0hZN.net
「絵里、学校きなさいよ。今すぐとは言わない。すぐひきこもりやめろとも言わない。でも、またきなさいよ」
「にこ……うん……考えとく。おえっ」
まだ完全に絵里ちを苦しめる"奴ら"は倒せていないかもしれない。
それでもこれから、ゆっくりと時間をかけて、みんなで克服していけばいい。
絵里ちも、ウチも、他のみんなも、誰でも、毎日"奴ら"と戦っているのだ。きっと誰もが『アイドル症候群』なのだ。
「はい! じゃあみんなも天ぷら食べようか!」
「ええーっ!?」
「ほ、本当にそれ大丈夫なの?」
「大丈夫大丈夫。ちゃんと食べられるって希ちゃんが言ってたから。ね、これなんて草だったっけ」
忘れてたーっ! これウチのせいやぁ!
「ねえ、なんて名前だったっけ?」
届けて このくさには 名前をつけようか
「ど……ドクダミ」
205:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:36:43.30 ID:D33O0hZN.net
『オペレーション・D(ドク)D(ダ)M(ミ)』
完遂。
209:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:39:15.96 ID:D33O0hZN.net
・・・・・
東條希
病名 傷つき恐怖症・アイドル症候群・中二病・高二病・勘違い健忘症
症状
それが人として正常。いたって健康。
・・・・・
210:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:41:46.55 ID:D33O0hZN.net
あれから数週間が過ぎた。
絵里ちはときどきだけど学校に顔を出すようになった。
みんなも相変わらずアホをやっている。
ウチはというと……。
「人生はにがい。にがい雑草を食べた後に飲む胃薬もにがい」
「希ちゃんの格言いただきましたー!」
「なるほど。これは深いです」
「ま、まあね」
「うんうん。希ちゃんの生き様あってこその言葉の重みを感じるよ!」
「そ、そう。実はこれまでのすべてはこの教訓をみんなに伝えるためにあったのだー! ふ、ふはは」
「すげええええええええ!」
「すげえじゃないでしょ凛ちゃん! こういうときに言うお決まりがあるやん」
「え、なんて言うの?」
「ふふ。それはね、『漆黒の白鳥』によって記憶を消してもらったからウチもわからん」
「そ、そうなのー。希ちゃんがどうしてもって言うから記憶改ざんしちゃった!」
「意味わかんないんだけど。なんでそんなメンドクサイことしたのよ」
「自分で気がついたほうが説得力あるやろー」
211:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:42:08.38 ID:D33O0hZN.net
「最近のぞみんが言っていない決まり文句があったら、それが消えた記憶ってことニコ」
「それが『すげえ』に変わる言葉なのか」
「最近希ちゃんが一回も言っていない決まり文句……」
「あっ……!」
というわけでウチ東條希が経験した、ちょっぴり現実的でちょっぴり理想的な物語はこれにて閉幕。
『スピリチュアルやね』
お後がよろしいようで。
212:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:43:47.36 ID:D33O0hZN.net
希「胃薬が手放せなくなった」
終劇
213:名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:47:01.37 ID:riFLbYSX.net
乙
話のつくりが上手いしおもしろかった
215:名無しで叶える物語(やわらか銀行)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
00:49:30.02 ID:TBxk5OPB.net
おつ
めちゃくちゃ楽しませてもらった
繋がると見せかけての分岐はすごかった
222:名無しで叶える物語(茸)@\(^o^)/:2015/08/01(土)
01:01:09.78 ID:S/vfx5EN.net
文才ビンビンでくっそ面白かった
おつ
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