絵里「『賢い』って、何だろう?」 希「…え?」 【ラブライブ!】



2:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 00:47:57.28 ID:C8wke4jH.net
ーー生徒会室


ある晴れた日の放課後。

ウチと えりちは2人きりで、生徒会の仕事をしていた。

書類に目を通しつつペンでチェックを入れる…室内には、カリカリと、ペン先が走る音だけが響き渡っていた。


絵里「…ねえ、希」カリカリ

希「…んー?」カリカリ…


えりち の呼びかけに、ウチはペンを休め、彼女の方を向く。




5:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 00:59:18.11 ID:C8wke4jH.net
---

えりち は どこか遠い目をして、ゆっくりと語る。


絵里「私たちが μ'sに加入して、早数ヶ月」

絵里「穂乃果や にこ達ともすっかり打ち解けあって、毎日練習やおしゃべりに勤しんでいる…」

絵里「本当に、充実しているわよね」

希「せやなー。まさか、ウチらがスクールアイドルを始めるなんて、全く予想してなかったね」


ウチはここ最近の出来事を懐古し…思わず口元が緩んでしまう。


希「…って、急にどうしたん?」



6:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 01:08:00.60 ID:C8wke4jH.net
絵里「うん…まあ、その」


えりち はモゴモゴと呟き…意を決したように口を開く。


絵里「…私ね、最近思うのよ」

絵里「打ち解けあって、心の距離が縮まったはいいけど」

絵里「私の『生徒会長』として、そして上級生としての威厳が、それに反比例して小さくなっている気がするの」

希(うーん…そうかなあ)


まあ、言われてみればそうかも知れない…けど。



9:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 01:16:31.39 ID:C8wke4jH.net
ウチは考え考え言葉を選びながら、えりち に優しく諭す。


希「でも、『先輩禁止!』って決めたのは、えりち やん?」

希「そのおかげで、アイドル部内の空気が軽くなったのも事実やし」

希「それに、生徒会長としても恐れられるより慕われる方が、プラスやと思うよ」

絵里「…それはそうだけど」


でも…と、えりち は小さく息をはく。



10:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 01:26:58.74 ID:C8wke4jH.net
絵里「ここ数ヶ月で私は すっかり変わったと思う。希や生徒会以外の生徒とも積極的に関わるようになったし」

絵里「…自分で言うのも何だけど」


えりち の言葉に、ウチはうんうん、と頷く。


希「確かに、丸くなったというか、以前に比べたら話しかけやすい雰囲気にはなったな」

希(実際、生徒会役員に対する好感度調査でも えりち の評価は うなぎ昇りやし)

絵里「だけど…これでいいのかしらね?」

希「…え?」


えーと…どういう事かな。



12:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 01:38:30.99 ID:C8wke4jH.net
えりち はコホンと咳払いをし…改めて、別の言葉で言い変える。


絵里「そもそもね…今までの私の行動って、ほんとに『賢かった』のかしら?」

希「…はあ?」


突然、何を言い出すんだろう…と、ウチは言葉に詰まってしまった。


絵里「以前、私はこう言ったわ」

絵里「小さい頃は、『KKE』…賢い可愛いエリーチカ って呼ばれていたって」

希「うん…覚えとる」

絵里「でも、よくよく考えてみると『賢い』っていうのは あくまでも小さい頃の私であって」

絵里「今 現在も賢いかどうかは、果たして分からないじゃない?」


…なるほど。わからん。



14:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 01:47:39.45 ID:C8wke4jH.net
希「うーん…えりち は十分賢いと思うけどなあ」

絵里「例えば?」ズイッ


顔を近づける えりち…蒼い瞳に見つめられ、ウチの胸は何故だかドキッとする。


希「た、例えば… えーと」

希「…頭が良い、とか?」

絵里「…はあ」


ため息を吐き、えりち は首を横に振る。

そして、人差し指を顔の前に あてがい左右に振った。


絵里「チッチッチ…」



16:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 01:56:24.15 ID:C8wke4jH.net
希「…傷つくなあ」


ウチは ぶすっと唇を尖らせる。


絵里「ごめんごめん。だけどね…私は『賢い』って、そう言う事じゃないと思うの」

絵里「何て言えばいいのかな… ちょっと待ってね」


彼女はスクールバッグをゴソゴソと探り…取り出したのは電子辞書。

ぱかっと辞書の蓋を開け、チマチマと文字を打ち込む。



18:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 02:05:29.13 ID:C8wke4jH.net
絵里「あったあった…」

絵里「えっと、『賢い』とは…」

絵里「『才知・思慮・分別などが際立っている』、『抜け目がない、巧妙である』、『おそろしいほど明察の力がある』…エトセトラ」

希「…広辞苑やね」

絵里「当ったり~♪」パタン


えりち は嬉しそうに笑い、電子辞書の蓋を閉じる。

そして、再び顔をグッと近づけてきた。


絵里「…で、今の意味だけど…私に当てはまっていると思う?」



20:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 02:16:28.35 ID:C8wke4jH.net
希「う~んとね… どうなんかな~」

希(悪いけど、はっきり言うと…後ろの意味に行くほど、えりち のイメージから遠ざかっていたような気がする…)

希(特に、『明察の力がある』とか…一時はアイドル研を目の敵にしていたし)

希(でも、そんな事言えないやん…)


言い淀むウチを見て、えりち は小さく頷いた。


絵里「そう、答えづらいのね…」

希「いや、そんなこt…」


言いかけたウチの言葉を遮り、えりち が突如宣言する。


絵里「…決めたわ」

絵里「μ'sのみんなに、私が『賢い』かどうか、聞いて回りましょう」

希(…!?)



21:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 02:24:23.26 ID:C8wke4jH.net
あらら…これには驚いた。


希「いきなり、どうしたん?」

希「みんなに聞いて回るって…」

絵里「あら、別に いいじゃない」

絵里「他のμ'sのメンバーが 私をどう感じているかは直接聞いてみなくちゃ分からないし」

希「…まあ、そういえばそうかもしれないけど」

絵里「だったら、確認してみるまでの事よ!」ガタッ!


そう言って、えりち は椅子から勢いよく立ち上がった。



22:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 02:35:47.75 ID:C8wke4jH.net
希「え、えりち…落ち着いて」


えりち ったら…今日はいつになくハイテンションやなあ。

だけど、今日は…


希「忘れたん? 今日は練習がお休みの日やって」

絵里「大丈夫よ、多分、みんな残っているから」


そう言って、えりち はニコッと白い歯を見せる…この溢れんばかりの自信は、一体 何処から来るんやろ。


希「うーん、でもな…」

絵里「いいからいいから、行きましょ」グイグイ


えりち がウチの腕を取り、勢いよく引っ張る。



23:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 02:47:20.20 ID:C8wke4jH.net
---

希「ちょっ、ちょっと… 何で、ウチまで!?」

希「それにまだ、仕事残っとるやん?」


ウチは必死で えりち を止めようとしたが


絵里「えー…だって、1人だと寂しいし…」

絵里「それに、仕事なんてそんなの、後々!」

絵里「思い立ったら直ぐに行動よ~!」


1人で腕を掲げ、えいえいおー と勝ち鬨を上げる。


絵里「ほら、希も一緒に?」

希「…えいえいおー」


ウチも小さく腕を掲げた…しょうがないなあ、えりち は。


希(…大丈夫かな?)



24:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 02:55:35.01 ID:C8wke4jH.net
・・・

2人で廊下を並んで歩きながら、ウチは横目で えりち の姿を眺める。


希(…)


凛とした表情で闊歩するその様は、とても さっき自分が『賢い』かどうかでクダを巻いていたひと と同一人物には見えない。


絵里「…どうかした?」


えりち が視線に気付き、キョトンとした顔でウチを見る。


希「…ううん、何でも」


ウチは慌てて目線を外す。



26:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 03:05:56.34 ID:C8wke4jH.net
希(こうして見ると、えりち は賢いし、可愛いと思うけど)

希(もしかしたら…どこか、抜けとるのかもしれないなあ)


そっと携帯を取り出し、時間を見た…4時過ぎか。

μ'sのみんな、残っているとええけど。

一通り聞いて回ったら、えりち もきっと、満足するやろ。


希「最初は、誰の所に行くん?」

絵里「そうねえ… どうしましょうか」

絵里「そもそも、みんな練習がお休みの日は何処にいるのかしら?」


えりち は小首をかしげてウチの方を見た。


… って、何も考えてなかったんかい!



27:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 03:15:10.52 ID:C8wke4jH.net
ーーアルパカ小屋


遠目にも、小屋の前で作業をする制服姿の女の子の姿が見える。

近づくにつれ、その栗色の髪の毛が段々と、くっきりと分かってきた。


希「あっ…いたいた」

絵里「ほんとだ、流石ね…放課後もアルパカのお世話をするだなんて、偉いわ」


えりち が感心、感心と頷く。


あの子なら、絶対ここにいると思ったけど…読みが当たって良かった。

2人で顔を見合わせ、ふふっと笑う。


希「…おーい、花陽ちゃん!」



28:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 03:24:27.47 ID:C8wke4jH.net
ウチの呼び掛けに、花陽ちゃんがアルパカに餌を遣る手を止め、こちらを振り向いた。


花陽「あっ…! 希ちゃんに、絵里ちゃん!」


嬉しそうに顔を和らげる花陽ちゃん。

ウチらは柵の前まで歩き、花陽ちゃんに挨拶をした。


希「こんにちは、花陽ちゃん…今日もアルパカのお世話?」

花陽「こんにちは! …そうだよ、私は飼育委員だし」

花陽「それにね、私…アルパカさんが大好きだから…///」


後半は顔を赤らめ、モゴモゴと話す花陽ちゃん。

…平日から、妬けますなあ。


花陽「それで、今日はどうしたの? 練習は お休みだよね」



29:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 03:34:54.61 ID:C8wke4jH.net
希「うん、練習はお休みやけど」

希「えりち がね…ちょっと、聞きたい事があるんやって」

花陽「絵里ちゃんが?」


花陽ちゃんが不思議そうな顔で、目をパチクリとさせる。

…そういえば、さっきから えりち、やけに静かやな。


そう思って、えりち の方を見ると…

何故か、彼女は胸に手を当てつつ、 すーはー と ひたすら深呼吸を繰り返していた。

そして クワッと目を見開き、花陽ちゃんの顔を覗き込む。


絵里「あ、あああの、その…」

希(めっちゃ緊張しとるやん!)



30:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 03:44:28.14 ID:C8wke4jH.net
大丈夫かな、えりち…

ウチは、ハラハラしながら彼女を見る。


絵里「は、ははは…」

絵里「花陽はその…私の事、どう思ってる!?」


後半は 殆ど畳み掛けるように、花陽ちゃんに問う えりち。


花陽「…えーと」

花陽「どう思ってるって…つまり、絵里ちゃんの印象とか、性格とか についてっていう事?」



32:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 03:53:58.05 ID:C8wke4jH.net
えりち の勢いに一瞬ポカーンとしていたようだが、すぐに頭を切り替えて聞き返す花陽ちゃん。

ウチは慌てて補足説明をする。


希「えーとね… えりち は、μ'sのメンバーが自分の事をどう思っているか、気になっとるんや」

希「特に、『賢い』かどうか…それを今、こうして聞き回っている訳なんよ」

絵里「…!」

絵里「…そうなの、そういう事そういう事」


えりち は首をブンブンと頷かせ、思い切り賛同の意思を示す。

…やっぱり、ウチが付いてて良かったかも。



38:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/13(土) 23:55:24.45 ID:C8wke4jH.net
再開
---

花陽「…はあ、なるほど」


ようやく合点がいった素振りの花陽ちゃん。

口元に手を当てながら、ふむふむと頷いている。


絵里「…で、どうかしら?」

絵里「私って、賢い?」


ググッと近寄る えりち。



花陽「うわっと…」


思わず仰け反って、花陽ちゃんは うーん…と唸る。



39:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 00:06:08.36 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「そもそもーー」

花陽「『賢い』とは、どういう事かって事だよね」

花陽「ただ単に、頭がいいひと って意味なら絵里ちゃんは『賢い』と言えるけど」

花陽「他にも意味があるなら、ちょっと分からないです」

希(…なるほど)


さっきの えりち みたいな事を言うなあ。

ウチは、一応聞いてみる。


希「花陽ちゃんの考える『賢い』ひと っていうのは、どういうタイプやと思うん?」



40:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 00:15:58.08 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「そうですね… 」

花陽「様々な知識に長けていて…雑学とかが豊富なひと、かな?」


ほう…つまり?


花陽「例えば、今から私が問題を出すから、絵里ちゃんがそれに答えるとします」

花陽「もし、全部分かったら絵里ちゃんは『賢い』ひと だって言っていいと思います」

絵里「…分かったわ」

絵里「ようし、やってやろうじゃない!」フフン!


鼻息を粗くする えりち。



41:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 00:25:03.46 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「じゃあ、クイズ形式で…」


ウチは そっと、えりち に囁く。


希「えりち、大丈夫なん?」

絵里「まかせて頂戴! こう見えても私、雑学とか知識に関しては詳しいの」

絵里「最近は、毎晩 亜里沙とクイズゲームを一緒にやっているのよ」

絵里「だからね…このくらい、朝飯前よ!」


…まあ、それなら大丈夫かな。


花陽「…では、第1問。 家庭科から」



42:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 00:34:48.77 ID:hYEd/cvQ.net
おっ、家庭科か…料理の問題かな?


花陽「お米には、大きく分けて『ジャポニカ米』、『インディカ米』と2種類ありますが…」

花陽「さて、これらの大きな違いは何でしょう?」

絵里「…」

絵里「んん…!?」

アルパカ「フェッ!?」


目を白黒させる えりち…首を傾げ、えーと、えーと と繰り返す。


…なるほど、いきなり難問やん?

ウチも一緒になって考える。

確か、ジャポニカ米が日本のお米でインディカ米は ええと…?


絵里「…わかりません」



43:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 00:44:52.26 ID:hYEd/cvQ.net
ガックリと項垂れ、白旗を上げる えりち。


花陽「本当? 簡単なジョブなのに」

花陽「答えは、インディカ米はジャポニカ米に比べて粘り気が少なく、どちらかといえばパサパサとした感じがするんです」

花陽「ジャポニカ米は主に日本米の事で、蒸したり炊き込んだりするのが一般的ですが…インディカ米は中国南部や東南アジアという湿気の多い地域で生産される ゆえ、煮て食べるのが一般的なんだよ」


スラスラと滑らかに解説をする花陽ちゃん。


絵里「ハラショー…」

花陽「常識です!」



45:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 00:53:17.63 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「続いて第2問」

絵里「よ、ようし…次こそ!」

希(頑張れ、えりち!)


ウチは心の中で声援を送る。


花陽「1963年に、宮城県の古川農業試験場で誕生したのは…」


えりち がパアッと顔を輝かせ、勢いよく手を挙げた。


絵里「はいっ! ササニシキ!」

絵里「宮城県といえば、ササニシキよ!」

希(おおっ、正解?)



46:名無しで叶える物語(笑)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 00:54:16.22 ID:GFpMwbHb.net
宮城出身なのに分からん悔しい
支援



47:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 01:04:02.49 ID:hYEd/cvQ.net
>>46
ありがとう!
---

花陽「…ササニシキですが、さて掛け合わせた2種類のイネの品種は、何と何?」

希・絵里「「…」」


…そんなん、分かるもんか。


花陽「答えは『ササシグレ』、そして『ハツニシキ』」

花陽「ちなみに、ササニシキはアミロース(デンプン分子の一種)の含有量が多いために、どちらかといえば家庭よりもお寿司屋さんで好まれています」

絵里「うん…そうなの」


目をキラキラとさせながら饒舌に語る花陽ちゃん。

反して、瞳からどんどん光が失われてゆく えりち。



48:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 01:14:54.40 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「続いて、第3問!」

花陽「1989年から国内最高評価の『特A』を認定され続けている『魚沼産コシヒカリ』」

絵里「魚沼といえば、確か新潟県よね…」


ボソッと えりちが呟く。


花陽「…では、どうしてこのお米がそこまで評価されているんでしょうか?」

花陽「ヒントは、魚沼地方という場所柄です」


絵里「…」


あれ、えりち…? 何だか顔色がすこぶる悪い。


花陽「答えは… 希「ちょっ…ちょっとタンマや、花陽ちゃん!」


ウチは慌てて花陽ちゃんにストップをかける。



49:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 01:24:22.41 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「なあに? 希ちゃん」

希「さっきから、問題が お米に関するものばかりな気がするんやけど…」

花陽「あっ…本当ですか? 気が付かなかった」


テヘッと舌を出す花陽ちゃん。

…屈託のない、可愛らしい笑顔やなあ。


希「せやせや… もう少し、幅広いジャンルの問題にした方が ええやん?」

花陽「わかりました…ゴメンなさい」

絵里「ありがとう…助かるわ」


えりち はホッとした表情を見せる。


花陽「じゃあ、次は地理の問題にします」



50:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 01:33:27.58 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「現在、日本には『米』という字がつく都市が4つありますが」

花陽「さあ、それはどこでしょう?」

絵里「」


花陽「歴史…日本史から1問」

花陽「歴代唯一、名前に『米』の字がつく第37代首相は誰でしょう」

絵里「」


花陽「続いて、漢字」

花陽「2002年、静岡県東部を走る御殿場線に新駅が設置されました」

花陽「その駅は漢字では『納米里』と書きますが…さて、なんと読む?」

絵里「…ノウベイリ?」

花陽「ブッブー!」



51:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 01:44:06.10 ID:hYEd/cvQ.net
花陽「次、化学です」

花陽「お米や米粉に含まれているアミロース」

花陽「さて、その分子構造を簡単でいいので書いてください」

絵里「アミロースとスクロースの区別が付かないのよ…」


花陽「最後に、英語!」

花陽「お米…英語では『rice』と言いますが」

花陽「実は、動詞でも意味があるんです。さて、その意味とは?」

絵里「…経営する」

花陽「それは『run』の動詞だよ!」



52:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 01:53:04.31 ID:hYEd/cvQ.net
・・・


絵里「のぞみぃ~! 全然わかんないよ~!」ウワーン


ボッコボコに打ちのめされ、ウチに抱きついてくる えりち。

頭から、白い湯気が立っているみたい。


希「よしよし…大丈夫、大丈夫」

花陽「あれ? もう終わりですか?」

花陽「まだまだありますよ!」


花陽ちゃんは俄然張り切っている。


希「ごめん、花陽ちゃん。もう堪忍して…」



54:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 02:04:29.08 ID:hYEd/cvQ.net
希「花陽ちゃんの勝ちや…流石やん?」

花陽「えへへ…ありがとう!」


そう言って、嬉しそうに はにかむ花陽ちゃん。

ほんまにまあ、お米が好きなんやな…


絵里「ちなみに、花陽…」


えりち がチラッと花陽ちゃんの顔を窺う。


絵里「今の私って、賢かった?」

花陽「…ゴメンなさい」


申し訳なさそうに、花陽ちゃんは首を横に振る。

その顔は、どこか物悲しそうやった…



56:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 02:14:22.57 ID:hYEd/cvQ.net
絵里「うぅ…」


ショボンと落ち込んだ顔をして、歩く えりち。

ウチは慌てて彼女を励ます。


希「まあまあ…ウチも、あの問題は難しかったと思うんよ」


…結局最後まで、『米』に関する問題やったからな。


希「だから元気出して!」

絵里「うん、そうね…次こそ頑張る!」


彼女は両手をグッと握り、宣言をする。


希「さあ、次行くで」

絵里「そうね…やってやるわ!」


よしよし…その意気やで、えりち。



66:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 16:55:55.15 ID:hYEd/cvQ.net
ーー1年生の教室


花陽ちゃんに教えて貰った教室に行き、中を覗き込む。

そこには…机に座り、頭を抱えながらプリントに取り掛かっている1人の生徒がいた。


希「えりち…準備はいい?」


えりち がコクリと頷くのを見て、ウチは そっと呼び掛ける。


希「お~い、凛ちゃん!」

凛「にゃっ!?」


ビクッと身体を震わせ、飛び跳ねる。

あらら…勉強の邪魔してしまったかな?



67:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 17:07:50.60 ID:hYEd/cvQ.net
キョロキョロと首を振り、ウチらの方を見て再び「にゃっ!?」と叫ぶ。


凛「の、希ちゃん に絵里ちゃん…!?」

凛「びっくりした~」

凛「もう、脅かさないでよね!」


プンプンと怒った素振りを見せる凛ちゃん。


希「ごめんごめん」

凛「…まあ、いいよ」


そう言って、ニカっと白い歯を見せる。


凛「でも、驚いたな~。 どうしたの、一体?」



68:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 17:16:14.72 ID:hYEd/cvQ.net
ウチは簡単に、さっき花陽ちゃんに話したように事情を説明する。


凛「う~ん、絵里ちゃんが『賢い』かどうか、か~」

絵里「どうかしら? ねえ、どうかしら?」


…えりち、少しガッつきすぎやで。

ウチは気になっていた事を尋ねる。


希「ところで凛ちゃん は残って何をやっとるん?」

凛「!」

凛「よく聞いてくれたにゃ!」



69:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 17:25:48.99 ID:hYEd/cvQ.net
凛ちゃんはイソイソと、手元にあったプリントを持ち上げる…いや、1枚じゃない。何枚も何枚も束になっていた。

紙いっぱいに、アルファベットで書かれた問題がズラリと並んでいる。


絵里「…英語?」

希「みたいやね」


チラッとプリントを覗き込んで、えりち と確認しあう。

ははあ、なるほどな。


凛「そうなの… 凛、英語の宿題を溜めすぎちゃって」

凛「こうして今、補習を受けさせられてるんだにゃ…」



70:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 17:36:06.31 ID:hYEd/cvQ.net
絵里「じゃあ、このプリントの束は全部…」

凛「宿題だけど?」


凛ちゃんはあっけらかんと答える。


絵里「あのねー…凛」


えりち が腰に手を当て、毅然とした態度をとる。


絵里「ダメじゃない 今からそんな調子じゃ!」

絵里「このままだと、お先真っ暗になるわよ!」

凛「ふえぇ… ごめんにゃさい」


思わず涙目になる凛ちゃん。



71:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 17:45:31.82 ID:hYEd/cvQ.net
希「え、えりち 落ち着いて…な?」


ウチは慌てて2人の間に割って入る。


絵里「まあ、わかればいいのよ」

絵里「ごめんね、凛…少し言い過ぎちゃったわ」


凛ちゃんは下を向いて、小さく頷く。


凛「うん…でも、問題が難しくて、凛1人じゃ解けないんだにゃ」

凛「お願い絵里ちゃん、希ちゃん! ヒントだでいいから、手伝って欲しいにゃ~…」



72:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 17:56:47.52 ID:hYEd/cvQ.net
絵里「うーん…でも、宿題は1人でやるものじゃないかしら」

希(正論や。だけど…)


凛「おねがあい…」ウルウル


つぶらな瞳をする凛ちゃんを冷酷にあしらう何て事、出来る訳ないやん?

えりち も同じ事を思ったのか


絵里「しょうがないわね~…」

絵里「ま、この『KKE』こと絢瀬絵里がパパパッと解いてあげますか!」


溜息をつきながらも、なんやかんや言って見捨てずに世話を掛ける。


えりち のそういう所、好きやで。



73:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 18:04:28.98 ID:hYEd/cvQ.net
絵里「どれどれ…」


そう言って、えりち はプリントを持ち上げ中身を覗き込む。


絵里「…」


無言になる えりち…額から汗がダラダラ流れ落ちている。


絵里「これ、1年生の英語よね?」

凛「そうだけど?」

絵里「あ、案外難しいのやっているのね…」ボソッ


ウチも一緒になって覗き込む。

イディオムか…「be badly off」の意味って何やっけ?

うーん、忘れてしもた。



74:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 18:15:53.24 ID:hYEd/cvQ.net
絵里「…凛!」


えりち がプリントから目を離し、ビシッと凛ちゃんの名前を呼ぶ。


凛「はいにゃ!」

絵里「私ね…こう思うのよ」

絵里「今 他人に頼って楽をしてしまえば…それは結局目の前の問題から逃げたことになるのよ」

絵里「絶対に後で苦労する事になるし、何より賢くないわ」

絵里「だから…辛くても、自分の力で何とか頑張りなさい! 以上!」


そう言って、えりち はクルリと後ろを向いた。


絵里「さっ、行くわよ希!」



75:名無しさん@そうだ選挙に行こう(家)@\(^o^)/:2014/12/14(日) 18:24:07.96 ID:hYEd/cvQ.net
えりち はウチの腕をつかみ、スタスタと廊下に向かう。

ウチは慌てて凛ちゃんに手を振った。


希「凛ちゃん…バイバイ、また明日!」

凛「…ば、バイバイだにゃ…」


ポカーンとした顔をする凛ちゃん。

ウチらが教室から出て行ったあとも、暫く固まったままだった。

やがて我に返り、小さく呟く。


凛「やっぱり、かよちん が一番だにゃ…」



82:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/15(月) 01:14:11.53 ID:AaaShkaJ.net
再開
---

希「ちょっと えりち… どうしたん?」


廊下を飛び出し、教室から離れたところでやっとえりち は足を止めた。

ウチは恐る恐る彼女に尋ねる。


希「急に飛び出しちゃって…凛ちゃん、目え丸くしてたよ」


えりち は私の腕を離し、ごめん と呟く。


絵里「上級生なのに、答えられないなんて、恥ずかしかったから…つい」


えりち は肩を落とし、目をショボショボとさせる。



83:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/15(月) 01:24:41.83 ID:AaaShkaJ.net
そういう事やったんか。

…ん? おかしいな。


希「あれ? でも…えりち、英語得意そうやん?」

絵里「…どこが?」

希「えっと…見た目からして」

絵里「…」


えりち がクワッと目を見開く。


絵里「何、オバカな事言ってるの!」

希「ヒッ!?」



84:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/15(月) 01:34:33.90 ID:AaaShkaJ.net
絵里「私はロシアのクォーターよ! ロシア!」

絵里「どちらかと言えば、英語よりもロシア語の方が馴染み深いのよ!」

絵里「You,okay?」


ウチは慌てて えりちに謝る。


希「…ごめんごめん、堪忍してや」

絵里「分かればよろしい!」


…って、最後、英語やったし。

そこはロシア語でもええと思うけど。


えりち は ふうっと溜息を吐き、じっとウチの顔を見た。



85:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/15(月) 01:42:06.55 ID:AaaShkaJ.net
絵里「ところで、希… さっきの問題分かった?」

希「…」


ウチは微笑みを浮かべ、無言で首を横に振る。


絵里「最近の子って、賢いのね…」

希「…ウチらも負けてられないで」


来年は、受験やしな…と、顔を見合わせもう一度、溜息をつく。

お互い頑張ろうな、えりち。


希(そういえば、えりち は大学どこへ行くんかな)


…気になるけど、返事を聞くのが怖くて、聞き出せない。



92:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 12:41:52.00 ID:Ast9oEgW.net
ご無沙汰しています。
再開
---


絵里「…じゃあ、次行くわよ」

絵里「ほら、元気出して! 今は高校生活を謳歌するのよ」


えりち の言葉にウチは無理矢理笑みを 浮かべ、頷く。


希「おっけー。…ほな、次は あの子のところやね」

絵里「あの子?」

希「せや。μ'sの作曲担当の…」

絵里「…!」


ウチは えりち の手を取り ゆっくりと歩を進める。

あの子なら、今日も あそこに おるやろな。



93:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 12:53:39.70 ID:Ast9oEgW.net
ーー音楽室


入り口の扉の前に立ち、2人して耳を澄ませる。

中から微かに、鍵盤を奏でる音と歌声が響いてきた。

ウチは人差し指を唇に当て、ジェスチャーで伝える。


希(静かに入ろ?)


えりち は指でマルを作り、大きく頷く。

そっと扉を開け、静かに中に入った。


窓から射し込む陽の光を浴びながら、女の子がピアノを優雅に弾いている。

ウチらの姿には、全く気付いてないみたい。



94:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 13:04:16.46 ID:Ast9oEgW.net
「愛してる、バンザーイ…」


おっ、ちょうどサビのところやん。

ウチと えりち は邪魔にならないよう、静かに鑑賞する。

3人だけの、音楽祭…って、それは違うか。


「…ほら~ 前向いてぇ~」


ジャジャーンと鍵盤を叩き、ふうっと ひと息つく。


タイミングを伺い、ウチらは盛大なる拍手を送る。


希「いやー。良かったで、真姫ちゃん!」パチパチパチ

絵里「さすが真姫ね!」パチパチパチ

真姫「ヴェエエ!?」



95:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 13:16:51.33 ID:Ast9oEgW.net
ギョッとした表情をし、椅子から転び落ちそうになる真姫ちゃん。


真姫「…いつの間に!?」


ごめんごめん、やっぱり驚かせちゃったか。


絵里「改めまして…こんにちは、真姫」

希「こんにちは、真姫ちゃん!」

真姫「…こんにちは」


髪の毛を指でクルクル巻きながら挨拶を返す。

大分、動揺も治まってきたようだ。


希「相変わらず、真姫ちゃんのピアノはプロ顔負けやな~」

絵里「本当ね…歌も上手いし」

絵里「μ'sは、真姫がいなければ成り立たないわ!」


ウチらは ここぞとばかりに褒め上げる。



96:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 13:28:01.98 ID:Ast9oEgW.net
真姫「ま、まあ当然でしょ///!」

真姫「…って、褒めたって何も出ないわよ!」


真姫ちゃんは、顔を真っ赤にしながらも何処か嬉しそうに肯定する。

真姫ちゃんらしいなあ。


真姫「ところで、2人ともどうしたの?」

真姫「今日は、練習オフ日だったわよね?」

希「うん。実はね…」


ウチはまた、理由を えりち の代わりに説明をする。

この作業も、大分慣れてきたな。


真姫「エリー… あなた一体どうしたの?」


聴き終えた真姫ちゃんは、じいっと えりち の顔を見つめる。



97:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 13:36:53.44 ID:Ast9oEgW.net
真姫「いつものあなたらしくないわよ…そもそも」

真姫「そんな事を気にする時点で、既に賢くないわよ」

絵里「あう…」


真姫ちゃんの厳しい お言葉に、えりち はショボンと落ち込む。


希(あかん!)


ウチは慌てて、話題の切り口を変える。


希「真姫ちゃんの考える『賢い』ひと って、どういうタイプやと思うん?」

真姫「そうね…」


一瞬だけ考え込む真姫ちゃん。

すぐに思いついたのか、ニヤリと笑って教えてくれた。



99:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 13:46:15.71 ID:Ast9oEgW.net
真姫「頭の良さ…は勿論必要だと思うわ」

真姫「けれど…それだけじゃなくて、何事もソツなくこなすひと かしら?」


ほうほう。


真姫「例えば、楽器が弾けるひと…とか?」


真姫ちゃん…それって、自画自賛?


真姫「う、うるさいわね! 別にいいデショ///!」


真姫ちゃんは益々頬を赤らめ、えりち に向かって問いかける。


真姫「ほら…エリーはどうなの?」

絵里「…え?」



101:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/19(金) 14:02:20.18 ID:Ast9oEgW.net
真姫「今、ここにはこうしてピアノがある訳だけど」

真姫「エリーは、ピアノ弾けるのか、って聞いているのよ」

絵里「!」

絵里「ひ、弾けるわよ! ピアノくらい!」


ムッとした表情で答える えりち…ギュッと握った拳が小刻みに震えている。

まさか、ね…?

真姫ちゃんの口車に乗せらえてしまったかな?

見栄を張っていなければええんやけど。


希(大丈夫かな?)


ウチの心配をよそに真姫ちゃんと交代し、椅子に腰掛ける えりち。

まあ、こうして見ると、中々様になってるやん?


真姫ちゃんがテキパキと指示を出す。


真姫「準備はいいかしら?」

絵里「…いいわよ、掛かってきなさい!」



110:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 14:10:40.67 ID:4LtXR6xx.net
再開
---

真姫「…じゃあ、ワルツ第3番イ短調Op.34-2を弾いて貰えるかしら?」

絵里「ん?」


耳慣れぬ単語に、えりち も、そしてウチも目が点になってしまう。


真姫「…あ、初めは楽譜見てもいいわよ。 確か、準備室のファイルに…」

真姫「待ってて。今持ってくるから」

絵里「ちょっ、ちょっと待ちなさい!」


えりち が準備室へ動こうとした真姫ちゃんの袖を引っ張る。


真姫「何よ?」


怪訝そうな顔をする真姫ちゃん。


絵里「今のワルツ第3…?番…って、何かしら?」

真姫「…はあ!?」



111:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 14:23:09.31 ID:4LtXR6xx.net
真姫「ショパンの作品よ…」

真姫「エリー、まさか貴女、知らないの!?」

真姫「ピアノを齧った事のある人間なら、嗜んでいると思うけど…」

絵里「…私の勉強不足でした。申し訳ございません」


真姫ちゃんがヤレヤレと溜息をつきながら、髪の毛をクルクルと回す。

側から見ると、どっちが先輩だか分かったもんじゃないな。


希「さ、流石に一般の高校生でワルツを嗜んでいる子は少ないと思うんよ」

希「この学校でも、真姫ちゃんくらいやないかな…」

希「ウチも全く知らなかったし」

真姫「あら、そうなの?」



112:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 14:33:05.14 ID:4LtXR6xx.net
やっぱり、真姫ちゃんとは住む世界が違うというか…こうしたところからも生活環境の違いやらを感じさせるな。


真姫「知らないってことは…弾く事は 絵里「無理です無理です! 勘弁してください!」


手をブンブンと激しく真横に振りながら、真姫ちゃんの言葉を遮るように必死で答える えりち。


真姫「マッタクモー。じゃあ、どんな曲なら弾けるの?」

絵里「えーと、そうね…」


えりち は考えながら無意識に指先で机を叩き、リズムを取っている。



113:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 14:42:59.03 ID:4LtXR6xx.net
絵里「…そうだっ!」


ポンッと手を叩き、嬉しそうに真姫ちゃんの方を見た。


絵里「…『猫ふんじゃった』でいい?」

真姫「…?」


真姫ちゃんの頭に大きくはてなマークが浮かんだ。


真姫「なにそれ?」

希「ええっ!?」

絵里「 知らないの!?」


衝撃の事実にウチらは思わず大声をあげてしまう。

いやいや。真姫ちゃん、それ ほんま?

こっちの曲の方が、よっぽど嗜んでいるひと、多いと思うけどな。



114:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 14:53:50.65 ID:4LtXR6xx.net
絵里「あら、そう~。まさか、真姫が『猫ふんじゃった』を知らないなんてねえ」

絵里「へえ~。なるほどね~」


数分前までとは打って変わって、どこか嬉しそうな えりち。

当然、真姫ちゃんの自尊心に大きな傷を負わせたようで


真姫「なっ!? 」

真姫「イイでしょ、別に…。 私だって、知らない事くらいあるわよ…」


力なく萎れてしまう。

それを見て、「しまった!」とばかりに慌てふためく えりち。


希(えりち の あほー!)


確かに、真姫ちゃんよりも優っていた部分があった事は嬉しいけど…

幾らなんでも、調子に乗り過ぎやん?



115:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 15:05:31.85 ID:4LtXR6xx.net
真姫ちゃんを慰める為にも、ウチは慌ててフォローを入れる。


希「真姫ちゃん、ちょっとええ?」

真姫「…何よ」

希「今から、えりち が真姫ちゃんの為に『猫ふんじゃった』弾くんやって!」

希「是非、真姫ちゃんの感想を聞かせて欲しいな!」


ね? えりち。 と、ウチは そっと目配せをする。


絵里「…!」

絵里「そうそう、そうなのよ! 私が弾くのを聴いた後に是非、真姫の意見を聞かせて貰いたいな~って!」



116:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 15:20:36.60 ID:4LtXR6xx.net
ウチと えりち の必死のお願いに少しだけ気を許したのか


真姫「…仕方ないわね」

真姫「特別に、この真姫ちゃんが聴いてあげますか!」


…なんやかんや、機嫌が直ったみたいで良かった。


えりち は椅子に座りなおし、鍵盤に向き合う。


絵里「…それでは、改めまして」


すうっと深呼吸をし、静かに旋律を奏で始めた。


絵里「猫ふんじゃった~♪ 猫ふんじゃった~♪…」



117:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 15:33:31.45 ID:4LtXR6xx.net
約3分間、真姫ちゃんはずっと食い入るように えりち の手元を見つめていた。


…演奏が終わる。えりち が鍵盤から手を離し、ふうっとひと息ついた。


真姫「…凄い!」

真姫「凄い凄い!」


真姫ちゃんの目がキラキラと輝いている。


絵里「え?」

真姫「エリー、貴女最高よ! こんな楽しいピアノ曲があるなんて、私全く知らなかった!」

真姫「私にも弾き方を教えて!」


真姫ちゃん…この展開は、正直 意外やったわ。



118:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 15:42:04.78 ID:4LtXR6xx.net
えりち がウチに困った目を向けてきた。

ウチはその目に向かって小さく頷く。


希(折角やし、教えてあげたらええんやない?)


こんなチャンス、2度と来るかもわからんしな。

えりち も「わかった」と言わんばかり頷き返し…

真姫ちゃんの顔を見てにっこりと笑う。


絵里「いいわよ、是非!」

真姫「…やった!」


こうして、えりち のピアノ講習会が始まった。



119:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 15:54:31.27 ID:4LtXR6xx.net
絵里「えーと…まずは右手をミのシャープとレのシャープにおいて…」

真姫「こうかしら?」


隣で、えりち と同じ手の形を作る真姫ちゃん。


絵里「そうそう。そうしたら、後はこんな感じで…」

絵里「猫ふんじゃった♪ 猫ふんじゃった♪…」


ポロンポロロンと奏でる えりち。

真姫ちゃんは目をキラキラと輝かせながら

真姫「うわあ…!」

絵里「どう? 『賢い』でしょ?」



120:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 16:03:20.37 ID:4LtXR6xx.net
えりち がフフンとドヤ顔をする。


希(ん?)


それって、『賢い』って言うんかな…?


真姫「賢い賢い! 貴女、最高よ!」

絵里「やったあ♪」


まあ、えっか。真姫ちゃんも喜んでいるし、ウチが余計な事を言うのも無粋な話やからな。


希(何よりも、垣間見えた えりち の顔がとっても可愛かったし)


絵里「ふふ…じゃあ、次の小節行くわよ?」

真姫「はい、先生!」


今度こそ、紛れもなく えりち の方が先輩に見えた。



122:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 16:14:15.57 ID:4LtXR6xx.net
・・・

絵里「じゃあね、真姫!」

希「ばいばーい」

真姫「2人とも、またね!」

真姫「そして、今日はありがとう!」


音楽室の入り口で、ウチらはピアノに座っている真姫ちゃんと別れる。

どうやら、真姫ちゃんはもう少し居残って練習をしていくそうだ。


希(よっぽど『猫ふんじゃった』が気に入ったんやね…)


どうやら、いくつか作曲のヒントが浮かんだらしい。

一体、どんな曲になるんやろ?

出来たときの、お楽しみやな。



123:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 16:24:20.31 ID:4LtXR6xx.net
音楽室を出て、2人でまた並んで歩く。


絵里「るんるるるん♪」


えりち が嬉しそうに口ずさんでいる。

まるで、今にも小躍りかスキップを繰り出しそうな勢いだ。


希「えりち、良かったな」


ウチは えりち を労う。


希「真姫ちゃん、えらい喜んでたやん?」



124:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 16:36:46.18 ID:4LtXR6xx.net
絵里「ふふっ…やっと、この私が認められたのね」

希「…せやな。この調子でどんどん行こ、な?」


えりち と顔を見合わせ、ふふっと笑い合う。

ほんまに良かったな、えりち。

やっと、『賢い』って言って貰えて。


絵里「それで、次は誰のところに行く?」

希「う~ん、そうやねえ…」


よし、次は あの子のところに行こう。

多分、今日もあの教室に居るんじゃないかな?



125:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 19:45:26.04 ID:4LtXR6xx.net
ーー家庭科室


ガラッと扉を開け、えりち がニッコリと笑いながら挨拶をする。


絵里「やっほー! こっとりい!」

希「ことりちゃん、こんにちは!」


ほら、やっぱり。

ことりちゃんは、ちゃんとここにいた。


突然の来訪者に驚いた顔をして、チクチクと動かしていた手針を止める。


ことり「あっれ~?」

ことり「どうしたの? 絵里ちゃん、希ちゃん!」



126:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 19:56:33.92 ID:4LtXR6xx.net
首を傾げると同時に、チャームポイントのとさかがぴょこんと飛び跳ねる。

相変わらず可愛らしいなあ、ことりちゃんは。

なんだか、これぞ乙女って感じやね。


ウチはそんな事を考えながら、ことりちゃんに話し掛ける。


希「ごめんな、邪魔しちゃったかな?」

ことり「ううん、大丈夫だよ~。私は1人で寂しいな~って思っていたところだし!」


そう言って、ことりちゃんは手元に広げていた生地を折り畳む。



127:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 20:05:18.52 ID:4LtXR6xx.net
希「あっ…それって、もしかして」


ウチは思わず生地を指す。


ことり「うん! 次のライブに向けての衣装を何種類か作っているところです!」

絵里「ハラショー…」


机一杯に並べられた生地や布切れは、全部が衣装用のそれであった。


希(ことりちゃんにも、敵わんな…)

ことりちゃんが居てくれたおかげで、μ'sの衣装が滞りなく用意されるもんな。

ほんまに感謝しきれないな。


ことり「いえいえ…」

ことり「ところで、2人とも今日はどうしたの?」



128:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 20:15:38.21 ID:4LtXR6xx.net
希「実は…」


ウチはまたしても事情を説明する…大分スラスラと喋れるようになったな。


ことり「絵里ちゃんが賢いかどうか、か~。なるほど~」


ことりちゃん はフムフムと聞いている。

頷くと同時にとさかもぴょこぴょこと揺れる。


ことり「確かに絵里ちゃんは頭がいいよね~」

ことり「私、とっても羨ましい!」


ははは… この、天然にしか見えないところが、ある意味この子の怖いところやな。

それとも、ほんまに天然なのかな。



129:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 20:25:32.92 ID:4LtXR6xx.net
ウチは改めて問うてみる。


希「ことりちゃんの考える『賢い』ひと は、どういうものやと思うん?」

ことり「そうだな~」


う~ん、う~んと一生懸命考えることりちゃん。


ことり「家事とか、お仕事とか何事にもオールマイティなひと かな?」

希「ほうほう」

ことり「例えば、手先が器用なひと !」


そう言って、ことりちゃんは満面の笑みで針と糸を差し出してきた。


ことり「はい、絵里ちゃん! 一緒に
お裁縫をやろう!」



130:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 20:36:32.03 ID:4LtXR6xx.net
絵里「ええっ!?」


突然の展開に驚きを隠せない えりち。

そりゃそうや。何の脈絡も無かったもんな。

戸惑いつつも素直に針と糸を受け取る えりち。


ことり「勿論、希ちゃんもだよ!」

希「ウ、ウチもやるん?」

ことり「もっちろん!」


ことりちゃんの曇りひとつない笑顔を向けられて、ウチらは断れる筈がなかった。



131:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 20:45:04.66 ID:4LtXR6xx.net
希「まあ、普段はことりちゃんに任せっぱなしやったからな」

絵里「そうね。たまには、お手伝いしないとね」


そう言いながら、ことりちゃんを挟んで えりち と並んで座る。

そんなこんなで、3人での衣装作りが始まった。


ことり「じゃあ、まずは…希ちゃんはココをお願い」

希「はーい」


ことりちゃんの指示に従い、仮止め、本縫い、まつり縫い… ウチはさっさと縫い上げていく。


希「しかし、まあ…」


手元を見ながら、ウチはポツリと呟く。



132:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 20:55:38.14 ID:4LtXR6xx.net
希「いつもこうして、ことりちゃんが衣装を頑張って作ってくれてたんやな」

希「もしかしたら、今迄の衣装1着1着にことりちゃんの愛情が詰まっとるのかもしれないな」

絵里「本当ね…ありがとう、ことり」


2人して、改めて御礼を言う。


ことり「いいの! 私、衣装作りが大好きだから」

ことり「それに…私には こういう作業の方が」


そこまで言いかけたところで、ことりちゃんが ふと不思議そうに尋ねる。


ことり「絵里ちゃん、さっきからどうしたの?」



133:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 21:07:17.55 ID:4LtXR6xx.net
その言葉にウチも手を止め、隣に座る えりち の方を見る。

彼女は、片目をギュッと閉じながら針糸を見つめ、ひたすら悪戦苦闘していた。


絵里「は、針の穴に糸が通らないのよ」


えりち は糸を唾で濡らし、直接針穴に通そうとしていた…


希「えりち…」


ウチは思わず肩の力が抜けてしまう。


希「そういう時は、糸通しを使うんよ…」

絵里「そうなn… って、知ってたわよ!」

絵里「ちょっと度忘れしただけ!」



134:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 21:16:49.33 ID:4LtXR6xx.net
ほんまかなあ…と思いながら、ウチは糸通しを えりち に渡す。


希「使い方、大丈夫?」

絵里「希…貴女、ちょっとお裁縫が得意だからって調子に乗っちゃダメよ?」


えりち の視線がなんだか怖い。

まあ、案の定使い方には慣れていなかったようで


絵里「や、やっと通ったわ!」


既に、2個の糸通しが犠牲になっていた。


希「後で、壊した分の代金を計上しような…」

絵里「…そうね」



135:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 21:19:16.98 ID:4LtXR6xx.net
何はともあれ、ようやく えりち も糸を縫う作業が始まった。


ことり「いや~。みんなで作業するのって、楽しいね!」


ことりちゃんがニコニコしながら針を進める。


希「ほんま、ことりちゃん言うとおりやな~」

希「な、えりち?」

絵里「え…? そ、そうね」


あまり会話を聞いていなかったのか、どこか生返事で答える えりち。

よく見ると、手元も覚束ないような…



136:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 21:34:14.35 ID:4LtXR6xx.net
希「えりち、ちょっと…」

絵里「ん?」


ウチは えりち に断り、彼女の縫っている生地をひっくり返す。


希「ちょっとこれだと、あんま良くないような…」

ことり「どれどr…」


覗き込んだことりちゃんの笑顔が、一瞬でサーッと凍て付く。


ことり「…う~ん、そうだね~」

ことり「悪いんだけど、もう一回縫い直してもらった方がいいかな~…って」


申し訳なさそうな顔をすることりちゃん。



137:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 21:43:45.63 ID:4LtXR6xx.net
絵里「ええっ!? これじゃ、ダメなの?」


憮然とした表情をする えりち。


絵里「おかしいわね… 家では、亜里沙に褒められてばっかなのに」

希「…」


いや、ほんまに何て言えばええんかわからんよ。

亜里沙ちゃんは純粋にお姉ちゃんを尊敬しているしなあ…


希「ところで、えりち」

希「家庭科の成績って、いくつやったん?」

絵里「…家庭科?」



138:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 21:54:38.25 ID:4LtXR6xx.net
えりち は顔を赤らめ、ボソッと呟く。


絵里「…3」

希「え?」

絵里「3よ、3! 中学から今迄、3以上の評定取った事ないわ!」

絵里「わかってるわよ…だけど、しょうがないじゃない」

絵里「裁縫は、昔からどうも苦手なのよ…」


場の空気がずっしりと重くなる。

申し訳ない事を聞いてしまった…ごめんな…えりち。

ことりちゃんが慌てて、明るい声を出す。


ことり「まあまあ…元気出して、絵里ちゃん!」

ことり「ほら、私が縫い方とか教えてあげるから…ね?」



139:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 22:06:11.52 ID:4LtXR6xx.net
絵里「う、うん… じゃあ、お願いすr

希「こ、ことりちゃん!」


2人の会話を耳にし、ウチは思わず大声を出していた。


ことり「なあに? 希ちゃん」


ことりちゃんが じいっと見てきた。

その瞳は、何かを見透かしているようで…


希「いや、その…」


ウチはしどろもどろになって答える。

希「えりち に手解きを教えるの、ウチがやってもええかな…?」



140:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 22:15:46.69 ID:4LtXR6xx.net
希「べ、別に大した意味じゃないんよ?」

希「ほら、今もこうして えりち と並んで座っている訳やし」

希「ことりちゃんよりも、教えやすい位置に居ると思うんよ」


ことりちゃんの口元が微かに緩んだ…ような気がした。


ことり「じゃあ、希ちゃんにお任せします♪」

希(や、やった///!)


ウチは嬉しくて心の中で万歳をする。

あれ…でも、どうして今こんなに必死になったんやろう。

希(ようわからんけど…えりち が取られるのが嫌やった?)


うーん、なんだか頭の中がモヤモヤしてきた。



141:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 22:28:05.30 ID:4LtXR6xx.net
ウチは椅子をずらし、えりち のすぐ側まで寄せる。


希「よ、宜しくね…///?」


視線を泳がせながら、ウチはしおらしく挨拶する。

あかん、えりち が目の前にいる。

さっきまでは何ともなかったのに、急にえりち の事を意識してしまっている。


絵里「うん…/// お願いするわね」


えりち も えりち で頬っぺたの赤味が増している。


希「ほ、ほな…早速」


ウチは、震える手で針を動かした。



143:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 22:36:30.04 ID:4LtXR6xx.net
絵里「…」


えりち が無言で、ウチの手先をじいっと見つめている。

あかんあかん、そんな見つめられたら緊張しちゃって…


希「あいたっ!」


叫び声が室内に響く。


絵里「のぞみっ!」

ことり「希ちゃん!?」


同時に、2人がウチの名前を呼ぶ声も響き渡った。



144:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 22:45:43.61 ID:4LtXR6xx.net
指先が痛い…恐る恐る、見てみると。

ウチの左の人差し指が軽く捲れ上がり、血がポタポタと滴り落ちていた。

生地の上に、点々と血痕が付いていく。

そっか…指、針で刺しちゃったんやな。

えりち の事、もう笑えんなあ…


絵里「のぞみっ、大丈夫!?」

絵里「 すっごい血が出てるじゃない!」


えりち が不安そうにウチの顔と指先を交互に見る。

…泣かないで、えりち。



146:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 22:53:42.37 ID:4LtXR6xx.net
ウチは痛みに顔を顰めつつもコクリと頷く。


希「…大丈夫や。そんなに深くは刺してないから」

ことり「私、救急箱取って来るね!」


ことりちゃんがパタパタと教室を飛び出していった。


希「ありがとさん、ことりちゃん!」


ウチは、ことりちゃんの背中に御礼を言って、改めて えりち に微笑む。



147:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 23:04:30.81 ID:4LtXR6xx.net
希「大した事ないから、心配せんでも…」


ぱくっ


希(…えっ///?)


ちゅぱっちゅぱっ


希(ちょ、ちょっ…///)


我が目を疑うとは、この事だろうか。

なんと…えりち が、怪我をしたウチの指先を口に咥え、チュウチュウと吸い上げていた。


希「えっ…えりち///!?」



150:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/21(日) 23:15:22.94 ID:4LtXR6xx.net
希「な、何しとるん///!?」

希「ここ、学校やん!」


恥ずかしいやら、照れる(?)やらで…支離滅裂な事を口走ってしまう。

ウチは えりち の口を外そうとしたが…どうしたものか、全く力が入らなかった。

えりち も えりち で、上目遣いをしながら懸命に血を吸い続けている。


希「んあ…///」

絵里「…」ちゅぱっちゅぱっ


何も知らないひとが覗いたら、どう思うかな。

多分、想像やけど…普通の状況では無いと思うわな。


やがて、廊下の向こうからトタタタと、駆け足が聞こえてきた。



158:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/28(日) 11:36:35.44 ID:INPY0tgm.net
希「え、えりち!」

希「えりち ってば!」


ウチはユサユサとえりち の肩を揺さぶる。


希「ことりちゃん、戻ってきたで!」

希「あかんって、これじゃあ!」

えりち「んー、んー」


えりち は聞いているのか、いないのか…指を咥えたまま首をふるふると横に振る。


希(嫌がってるん…?)



159:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/28(日) 11:49:07.52 ID:INPY0tgm.net
扉がガチャリと開き、とさかが勢いよく飛び込んできた。

腕の中には救急箱を抱え込んでいる。

開口一番、ウチの方を見ることりちゃん。


ことり「希ちゃんっ、大丈b…って…」

ことり「…ハラショー」


部屋の中での出来事を理解(?)した ことりちゃん。

その腕の中から、救急箱が地面に落ちる。

衝撃で、蓋が開き中身が地面に飛び散った。


絵里「!」



161:名無しで叶える物語(庭)@\(^o^)/:2014/12/28(日) 15:13:29.56 ID:5aW2yrJe.net




163:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 16:53:42.33 ID:BAI6wIiv.net
年末はなかなか書けない。
---

響き渡った大きな落下音に、はっ と我に返る えりち。


絵里「ご…ごめん!」


慌ててウチの指から口を離した。

彼女の唇からは まるで糸のように、涎がダラリと垂れ下がる…

それを見て、えりち は益々赤面する。


絵里「わ…私ったら、一体何を///」


そう言いつつポケットからハンカチを取り出し、慌てて口元を拭っている。


希「まさか、無意識やったん?」

絵里「う、うん… 希が痛くないかと心配になったら、つい…///」

希「…///」


えりち の言葉にウチは照れくささも相まって、つい下を向いてしまう。

なんだか眩しくて、彼女の顔が真っ直ぐ見れない。



164:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 17:05:44.26 ID:BAI6wIiv.net
絵里「そ、それよりも…大丈夫? 痛みの方は」

希「あ…」


そう言えば、さっきから…正確に言えば、えりち が大胆な行動に出た瞬間、指の痛みはどこかへ飛んでいってしまった。


希「もう、全然痛くない…」

希「えりち のお陰や、ありがとさん///」

絵里「そんな…///」


ウチの言葉に、えりち も照れた顔になる。

いや、ほんまにそうなんよ。冗談抜きで。


ことり「あの~…」

希・絵里「「!?」」ビクッ


ことりちゃんの事も、すっかり忘れていた…ごめんな、ことりちゃん。


ことり「一応、応急手当てだけはしておいた方がいいと思うけどな♪」



165:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 17:16:53.11 ID:BAI6wIiv.net
そういう訳で、ウチは ことりちゃんに甲斐甲斐しく手当てをして貰った。

軽くといっても、消毒薬を塗り、包帯を巻き…と、結構念入りだったが。

どうやら ことりちゃん、幼い頃は看護師になりたかったらしくて、手当ての方法などを独学で勉強した事もあるらしい。


ことり「…これで良しっと」


一仕事終え、ことりちゃんはふうっと ひと息つく。


希「ありがとね、ことりちゃん」

ことり「いいのいいの!」


ことりちゃんの笑顔からは、曇り一つ感じさせない。

お役に立てて良かった…という気持ちが、ひしひしと伝わってくる。



166:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 17:35:20.36 ID:BAI6wIiv.net
ただし…と、ことりちゃんは えりち の顔をチラリと見て笑う。


ことり「指がシワシワで、少し消毒しづらかったけどね♪」

絵里「なっ…///」

ことり「冗談です♪」

絵里「…もう、ことり!」


えりち は騙された事に、プクッと頬を膨らませる。

ウチも、ことりちゃんの言葉に胸がドキドキしてしまう。

ことりちゃんが言うと、冗談には全く聞こえないんよ…


ことり「でも、怪我をしたのは事実だから…もう、作業はしない方がいいと思う」

絵里「そうね。それがいいわ」

絵里「ついでに、私も止めさせて貰おうかしら…?」


えりち も素直に賛同する。

どこか ほっとした表情をしているのは、気のせいやろか…



167:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 17:48:24.78 ID:BAI6wIiv.net
ウチは恐る恐る ことりちゃんに尋ねる。


希「ことりちゃん、この生地なんやけど…」

希「怪我した時に、血が垂れちゃって、汚してまったんよ」

希「ほんまにごめん…どうすればええかな…?」


そう言って、ウチは生地を拡げる。

点々と赤い痕跡が残ってしまっていた…このままだと洗っても落ちなくなってしまう。


ことり「気にしないで! 生地はいくらでもあるから」


ことりちゃんは、首をブンブンと振る。


ことり「それに…」


ことりちゃんはウチらの顔を交互に見遣る。


ことり「と~っても良いものを、見させて貰ったし♪」



168:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 18:02:13.92 ID:BAI6wIiv.net
ことり「ご馳走様でした」ちゅんちゅん


そう言って、ことりちゃんは嬉しそうに笑った。


希「こ、ことりちゃん…?」


ウチは一抹の不安を抱える。

ことりちゃんは、可愛いし頭も冴えている。

そして、裁縫の腕前もプロ級と、申し分ないのだが…ひとつだけ、欠点がある。

それは、お喋りが好きなのと…隠し事をしないというところ。


希(明日中には、学校全体に広まってそうやな…)


生徒会長と副会長、2人には秘密の関係が!?…って感じでな。

ははは…



170:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 21:53:58.87 ID:BAI6wIiv.net
希(ああ、もう!)


ウチは頭を掻き毟りたくなる…いや、決してやぶさかでは無いんやけど。


ことり「…ふふふ」

ことり「私、今日改めて思ったけど」

ことり「絵里ちゃんと希ちゃんって、本当にお似合いだよね~」

希・絵里「「なっ!?」」


ウチも えりち も、動揺してしまう。

一体なんなん!? この意味深な発言は…


ことり「冗談だよ~」


ほんまにもう…

なんか掴みどころがないなあ、ことりちゃんは。

そこも可愛いんやけどね。



171:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 22:06:11.34 ID:BAI6wIiv.net
ことり「じゃあ、後は私ひとりでやるから♪」

ことり「絵里ちゃん、希ちゃん…2人とも、手伝ってくれてありがとう!」

希「えっ…ほんまにお終いなん?」

ことり「うん、お疲れ様♪」


そうか…ウチ、手伝う意味あったんかな?

怪我をして、傷の手当てをして貰ったりと、却ってことりちゃんの邪魔ばかりしていた気がするけど。


・・・

片付けを終え、ウチらは被服室を後にする。


ことり「ばいば~い」


嬉しそうに手を振ることりちゃん。

頭のとさかも、同時にふわふわ揺れる。

その頭の中では、一体何を考えているんやろか…



172:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 22:15:37.71 ID:BAI6wIiv.net
ウチらは再び、廊下を歩く…今日はもう、かなり歩いているな。


絵里「…」

希「…」


2人して、無言のままだ。

何か喋ったほうがいいのかもしれないが…

さっきの事を思い出すと、顔が火照ってしまい、上手く言葉が出て来ない。

それに、別れ際のことりちゃんの言葉。


希(『お似合い』って…そんな///)


恥ずかしいけど…嬉しいな。



173:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 22:24:53.98 ID:BAI6wIiv.net
絵里「…希?」


ふいに、えりち が話し掛けてきた。

彼女の声を聞き、ウチの心臓がドキッと高鳴る。


絵里「…怪我の方は、どうなの?」

希「うん、もう大丈夫」

希「ありがとな…大分楽になったよ」

希(えりち のお陰で、な…)


最後のセリフだけは胸の内に秘めておく。

どうしてかって? …だって、口に出すと恥ずかしいやん。



175:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/29(月) 22:37:10.00 ID:BAI6wIiv.net
えりち も「良かった」とニッコリ笑う。

その笑顔が眩しくて眩しくて…

ああ、もう…ほんまに、えりち は罪な女やで?


絵里「…希、聞いてる?」

希「な、何?」


…あかん、意識が遠くに飛びかかっていた。

副会長やろ?しっかりしなくちゃ。

そうやって、自分自身を鼓舞する。


絵里「どうしたの…次は誰のところに行こうか、って聞いてるのよ」

希「ああ、うん…せやな」


1年生、2年生と回っているわけやし…次は、あの子のところに行ってみよっか。



178:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 00:31:47.15 ID:ReGNCINi.net
ーー弓道場

ウチと えりち は、入り口からこっそりと中を覗き込んでいた。

キリッとした表情の女の子が1人、道場内に佇んでいる。

その手の中には、大きな弓が握られている。

静かに弓を引き…

ばしゅっ! という音とともに、矢が的の中央に刺さるのが分かった…お見事!


海未「誰ですか…そこに居るのは」

海未「隠れても無駄ですよ…気配がします」


的の方を見たまま、女の子…海未ちゃんが静かに口を開いた。



179:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 00:40:25.40 ID:ReGNCINi.net
ばれたか…上手く、隠れていたつもりだったのに。

流石は海未ちゃんやな。


希・絵里「こんにちは、海未(ちゃん)」」


海未ちゃんの側に行き、2人して挨拶をする。

海未ちゃんは後ろを向き、ウチらの顔を見遣る。


海未「希に…絵里でしたか」

海未「こんにちは、今日もいい天気ですね」


うん、確かにいい天気やけど…もう、夕方やん?



180:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 00:51:47.87 ID:ReGNCINi.net
えりち が、キョロキョロと周りを見回す。


絵里「海未ひとりの ようだけど…他の部員はいないの?」

海未「さっきまでは居りましたが…練習時間が終わったので、皆、先に帰りました」


と、なると…海未ちゃんは自主練をしているって事なん?


海未「ええまあ…単なる日頃の稽古ですよ」


大した事では無い、と言いたげな海未ちゃん。


海未「それで、2人はどうしてここに?」

海未「今日の練習は お休みだと言った筈ですが…」

希「実はな…」



181:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 01:01:07.57 ID:ReGNCINi.net
海未「なるほど…」

海未「でも、絵里がそんな事を気にするなんて…ちょっと意外です」クスッ


ウチの説明を聞き、海未ちゃんは可笑しそうに口元を抑える。


絵里「わ、笑わないで///!」

海未「おっと…失礼しました」


慌てて真顔に戻る海未ちゃん。


海未「そうですね、『賢い』ひと ですか…」


目を瞑り、じっと考え込む海未ちゃん。

弓道着姿が、かなり様になっている。


海未「頭の良さだけではなく…運動の方も優れている」

海未「そう、文武両道です!」



182:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 01:13:13.26 ID:ReGNCINi.net
海未ちゃんが、パチリと目を開けて えりち に視線を向けた。


海未「絵里…あなた、弓道の方は」

絵里「な、何を言ってるの!?」

絵里「やった事あるわけないじゃない!」


びっくりした表情をする えりち。

確かに、部活にでも入らない限りは弓道なんて嗜まないけど…


海未「やってみますか?」


海未ちゃんが、棚に並べれていた弓を手に取り、渡そうとする。

その顔は、いたって大真面目。



183:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 01:26:15.33 ID:ReGNCINi.net
絵里「無理よ、無理無理!」

海未「大丈夫です! 初心者の方でも簡単に教える自信がありますので!」


気のせいか、海未ちゃんの瞳がキラキラと輝いている。

もしかして…海未ちゃんは、単に教えるのが好きなのかも。


絵里「えぇ~…怖いわ…」


えりち が嫌そうに顔を歪める。


海未「大丈夫ですよ! 少し、練習しましょうか」

絵里「そ、そうだ!」

絵里「希が一緒にやってくれるなら、私もやるわ!」

希「え、ウチも!?」


えりち が大きく頷く。



184:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 01:34:23.40 ID:ReGNCINi.net
絵里「勿論!」

絵里「私と希は一心同体じゃない!」

絵里「私がやる、イコール希もやる、なのよ!」


3年近くの付き合いがあるけど、一心同体だなんて、初めて聞いたで…


希(それに、ウチもやってみたい気もするけど)


ウチは黙って左手を掲げる。

それを見て、海未ちゃんが目を見開いた。


海未「希…その包帯はどうしたんですか?」

希「実は…」


ここで、ウチは はっと考え込む。



185:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 01:43:19.88 ID:ReGNCINi.net
さっきの被服室での出来事を、海未ちゃんにどう伝えたものか。

μ's の中でも、おそらく1、2を争う純真(ぴゅあぴゅあ)な心の持ち主である海未ちゃん。

それは、かなりの折り紙付きのようで…

・・・

以前、穂乃果ちゃんからこんな話を聞いたことがある。

穂乃果ちゃん、ことりちゃん、そして海未ちゃんが中学生だったとき。

英語担当の先生がかなりの映画ーー特に洋画がーー好きだったらしく、『授業』と称しては しょっちゅう洋画を上映していたらしい。

先生曰く、字幕が英語だからいいのだ、という事らしいが…

それは兎も角、その洋画の中にはかなり際どい系のものも混ざっていたそうな。



186:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 01:52:53.91 ID:ReGNCINi.net
穂乃果『いわゆる、ラブロマンスって奴だよね』

穂乃果『中学生にそういうのを見せる先生もどうかと思うけど…』

穂乃果『みんな、中学生だからさ。うわーっと言いながらもちゃんと観てるんだよね』

穂乃果『だけど、海未ちゃんだけは そういう映画になると居心地が悪そうになって…』


授業だから、休む訳にはいかない、と考えていたらしく…真面目な海未ちゃんらしいが。

結局、海未ちゃんも視聴する事にしたらしいが…本人よりも、周りが心配してしまう程の様子だったらしい。


穂乃果『キスシーンとかになると、手で顔を覆ってね…』

穂乃果『小さく、ブツブツ呟いているから、何だろうと思って聞いてみたらね…』



187:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:02:17.92 ID:ReGNCINi.net
ひたすら、お経のように呟く海未ちゃん。


海未『嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です嫌です…』

海未『これは夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です夢です…うわあああああ!』

穂乃果『遂に、泡吹いて倒れちゃった』


あっけらかんと話す穂乃果ちゃん。

海未ちゃんは即座に病院に運ばれ…可哀想なのは、良かれと思って上映していた英語教師。



188:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:13:35.22 ID:ReGNCINi.net
校長直々にこっぴどく怒られたらしい…まあ、生徒が倒れたから当然といえば当然だけど。

それ以来、その先生の授業から映画上映会は消え、いたって真面目な授業だけが行われるようになったらしい。

・・・

つまり、何が言いたいのかと言うと。


希(海未ちゃんの前では、恋愛関係の話題は禁句なんよね…)

海未「?」


男女問わず、学生の身分で恋愛は御法度!と、海未ちゃんは病室で固く誓ったらしい。

それどころか、必要以上の身体の触れ合いも禁止にしてしまった。

それは、高校生になった今でも続いているそうな。



189:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:21:19.55 ID:ReGNCINi.net
ウチは、オブラートに包んで簡単に、ゆるーく説明する。


希「実はな…さっき、ことりちゃんのところで裁縫の手伝いをしていたら、針で刺しちゃって…」

希「えりち と、ことりちゃんに手当てして貰ったんよ」

海未「ええっ! それはお気の毒に」


眉を潜める海未ちゃん。

その後ろでは、えりち が何かを言いたげな顔をしている…まるで、「もっとあるでしょ!」という感じで。



190:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:30:40.55 ID:ReGNCINi.net
ウチは心の中で彼女に念を送る。


希(えりち、余計な事を言ったらあかんで!)

海未「まあ、怪我をしたなら仕方ないですが…残念です」

海未「でも、希!」

海未「不注意にしろ、針で指を刺すなんて…少し弛んでいるのではないですか?」


そう言って、偉ぶる海未ちゃん。


…えりち、言っちゃってもええで。



191:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:40:10.06 ID:ReGNCINi.net
海未ちゃんが、えりち に向かって にっこりと微笑む。


海未「残念ながら、希は怪我をしているので今日は出来ませんよ」

海未「さあ、練習しましょう♪」

絵里「…わかったわ」


えりち はウチの方をチラリと見て、助けを求めるが…ごめんな、何も出来ないや。

観念し、海未ちゃんに従う えりち。


海未「それでは、早速始めましょう」

海未「本当は、弓を射る前に、基本動作として射法八節といった作法があるのですが」

海未「絵里は初心者ですので、取り敢えず弓を引く練習をしてみましょうか」

絵里「…は~い」



192:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:46:05.66 ID:ReGNCINi.net
幾分不安気な えりち。


海未「大丈夫ですよ。矢は外した状態での練習ですから」

絵里「それなら、大丈夫かしら…」


海未ちゃんは満面の笑みで道具を渡す。


海未「重いので、気を付けてくださいね…ちなみに、これの名前なんですが…」

絵里「知ってるわ! ワキュウって、言うのよね!」

海未「おっ…知ってましたか。流石ですね」

絵里「やったぁ♪」


海未ちゃんに褒められ、えりち は嬉しそうにする。

これは、賢さ1ポイントかな?



193:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:53:01.92 ID:ReGNCINi.net
海未ちゃんの指導で、えりち が弓を構えるポーズを取る。


海未「そうそう、なかなか筋が良いですよ…」

絵里「ほ、ほんと?」

海未「本当ですよ…それでは、1回引いてみましょうか」

絵里「わ、わかったわ!」


えりち が緊張した面持ちで頷く。


希(えりち、頑張れ!)


海未ちゃんが最初に立っていた場所に、今度は えりち が佇む。


海未「それでは…構えてください」


えりち がググッと弓を引く。



194:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 02:59:29.35 ID:ReGNCINi.net
海未「…放て!」


えりち が ぱっと右手を離し…自由になった弦は、勢いよく えりち の大きな胸を掠っていった。


絵里「…ゔっ!?」

絵里「いったあああああい!!」


涙目になって、うずくまる えりち。

胸部を押さえて うんうんと呻いている。

ウチは慌てて彼女の元へ駆け寄る。


希「えりち、大丈夫!?」

絵里「うう…すっごく痛い」



195:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:06:34.66 ID:ReGNCINi.net
海未ちゃんといえば…呆然とした顔で突っ立っていた。

かなり混乱しているのか、頭を押さえて今にも倒れそうになっている。


海未「私とした事が…! 胸当てをさせるのを忘れてしまいました!」

希「胸当て…」


ああ、海未ちゃん…その言葉で、ウチは全てを察知した。

えりち が胸をさすりながら、ゆっくりと立ち上がる。


絵里「…こんなに胸が揺さぶられたのは初めてよ…」



196:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:13:02.23 ID:ReGNCINi.net
海未「ちょっ…! その言葉、聞き捨てなりません!」

絵里「…えっ?」


海未ちゃんが顔を赤らめ、ぶるぶると震える指で えりち の胸部を指す。


海未「確かに、胸当てを忘れていた私にも責任はありますが…元はと言えば」

海未「え…絵里の胸が大きすぎるからいけないんです///!」

絵里「なっ…何を言い出すのよ///!」


えりち も突然の指摘に顔を赤らめる。

いや、海未ちゃん…幾らなんでも、それはないやん?


海未「希も同罪です///!」

希「えっ!? ウチも?」



197:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:19:26.55 ID:ReGNCINi.net
海未「当たり前です!」


海未ちゃんが、今度はウチの胸部を指す。


海未「こんな大きなモノをぶら下げて…///!」

希「モ、モノって…///」

希「む、胸の大きさには個人差があるから…」

海未「黙ってください///!」


ウチの言葉を遮り、海未ちゃんは益々声を荒げる。


海未「考えてみれば、ことりも、花陽も…」



198:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:24:30.11 ID:ReGNCINi.net
海未「真姫も私より大きいですし…」

海未「穂乃果だって、よくよく観察すれば…」

海未「私の周りには、どうしてコンプレックスの原因が集まっているのですか!」

希・絵里「「海未(ちゃん)…」」


あかん…海未ちゃんにスイッチが入ってまったようや。


海未「むっきー! もう嫌です、嫌です!」


海未ちゃんは、今迄に見たことのない、ギロリと鋭い視線を向ける。


海未「今日はもう終わりですっ! 終わりったら終わりです!」



199:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:30:03.94 ID:ReGNCINi.net
海未「2人とも、出てってくださーい!」

希・絵里「「は、はい!」」


おっそろしい形相の海未ちゃん…このまま留まってたら、命の危険まで感じてしまう。

ウチらは半ば追い出されるように弓道場を後にした。


そっと後ろを振り向くと…海未ちゃんは、見たこともないスピードでビシビシと矢を放っていた。

あかん、触らぬ神に祟りなしや…見なかった事にしよう。



200:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:35:16.21 ID:ReGNCINi.net
希「…海未ちゃん、かなり怒ってたね」


結局、『賢い』かどうか聞けずじまいやったけど…多分、ダメやろな。

何より、機嫌を損ねちゃったし。


えりち はそっと、制服の上から胸を触りながら答える…まだ痛むみたいやな。


絵里「そうね…だけど」

絵里「毎日牛乳飲んでいれば、きっと怒らなくなるわよ」


そう答えて、えりち はじっとウチの胸に目をやった。


希「え、えりち///!?」



201:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:43:21.28 ID:ReGNCINi.net
希「ウ、ウチはそこまで牛乳飲んでないよ!」

希「寧ろ、飲むヨーグルト派やし!」

絵里「はっは~ん! それが原因なのね!」


しまった…えりち に乗せられてしもた。

ウチとえりち は言い争いをしながら弓道場から遠ざかる。


ウチの頭に、ふと妙案が浮かんだ。

今度、海未ちゃんに飲むヨーグルトの差し入れをしよっかな…はい、冗談です。

スピリチュアル云々言わなくても、簡単に予想がつく。

そんな事したら、次は本気で殺されそうや…



202:名無しで叶える物語(家)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 03:44:28.41 ID:ReGNCINi.net
今年はこれでおしまいです。

見てる人いるかわからないけど、来年もどうかよろしく。



206:名無しで叶える物語(すだち)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 21:17:46.55 ID:bvNXrxkW.net
おもしろい



207:名無しで叶える物語(きしめん だぎゃー)@\(^o^)/:2014/12/30(火) 22:24:50.07 ID:B4t/+VSZ.net

弦で胸は下手したら胸が取れちゃうってどこかで聞いた







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10299: ゆり名無し

穂乃果とかにことの絡みも見たかった
次作期待してます

特Aは魚沼もそうだけど、島根の仁田米も忘れずにな!(島根県民によるすてま)
  • 2015/01/04 02:34

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