今日もだらだら、読書日記。

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VTuberなんだが配信切り忘れたら伝説になってた10

 

そして伝説へ――
選ばれし輝く少女たちが所属する大手運営会社ライブオン。切り忘れから大人気となった三期生・心音淡雪は、五期生・チュリリをサポートし、不安定になっていた匡を救った。束の間の安寧を取り戻したライブオンだったが、なんと淡雪の飲酒企画が公式に実施されることになり!? 壮絶な飲酒企画の結果、あるものを一ヵ月禁じられた淡雪。そしてそれを再び解禁した衝撃によって淡雪は「あ、面接の時のこと思い出した!」唐突にライブオンの面接を受けた時のことを思い出して――衝撃のVTuberコメディ、伝説のフィナーレ!!

ライブオン公式企画でライブオンライバー達と「スト○○以外の色々なお酒」を飲むことになった心音淡雪は、お酒の種類ごとにバラエティ豊かな酔い方をした挙げ句に飲み過ぎで倒れてしまう!?生命に別状はなかったものの、一ヶ月の禁酒令を出されてしまい……大好きなスト○○のない生活にやきもきしながらも、様々な企画で過去の自分を振り返ることになり……。

最後の最後で本当にヤバい飲み方をするな

第一巻からいろいろな意味で健康面を心配していた(私が勝手に)本シリーズですが、最終巻で遂に酒の飲み過ぎで倒れるをやってしまった。そんな曰く付きの企画回「あの心音淡雪が色んなお酒飲んでみた」、飲む酒によってキャラクターが変わる淡雪の様子は面白くて大変良かったんですけど、酒チャンポンは健康に良くないって皆言ってるじゃないですかーーー!!!って感想が何よりも強すぎる。

これ、前の酒が抜けきらないまま次の酒行ってるのが悪い意味で頭おかしいしなんで最初から最後まで連続した生放送でイケるとおもったのか理解に苦しむ。企画シリーズにして回分けるとか、全部別撮りしておいてその様子を肴にスト○○飲む配信のほうが良くなかった?普通にライバー倒れるのわかるだろ。この企画を淡雪本人が出してきたとしても公式が止めるのがスジだとおもうのに公式側が振ってきた企画なのマジで悪い意味で頭おかしいんだよなあ……。この流れからのどさくさのましろ告白に持ち込みたかった&エピローグに繋げたかったという意図はわかるんだけども。

自分自身と向き合うエピローグがとても良かった

…………と初手でめちゃくちゃ駄目出ししてしまったけど、マジで残りの99%は最高に面白かったのでその話をしたい。まず全体の総まとめ回とも言うべき「ワルクラ配信4」、最近マイクラはじめたのでワルクラ回というだけでめちゃくちゃ嬉しかったし全ライバーが集まってワチャワチャするの楽しかった。5期生まで含めて相当な人数になってしまった現在、全員が結集してワチャワチャする企画ってこのくらいの規模じゃないともう出来ないんだろうなというのが若干さみしくもあり。そして後輩の有素ちゃんが過去の配信を分析して作った(普通に怖い)シュワちゃんAIと禁酒中の淡雪が対談する「あわシュワコラボ」、タイトルからして出落ちなのにあわちゃんがシュワちゃんと語り合うことで自分の方向性を再確認してシュワとしての自分を受け入れて綺麗に終わるの最高にズルくて面白い。

何より一番面白かったのが禁酒中の淡雪がユーザーの作った切り抜き動画から過去の印象的な配信を振り返る「切り抜き視聴配信」、切り抜きの言葉が示す通り過去配信の小ネタをつまみ食いできる回で大変楽しかった。光ちゃんにネットミームを教える配信とか良くも悪くもネタの鮮度が命なWeb小説感あって良かったですね。いくつかわからないネタあったしわからん読者も多そうだけど。

そして最後の最後に淡雪が自身のライブオン入社面接時のやりとりを思い出し、デビュー配信を見ながら新たな決意をする「そして伝説へ2」。予想以上に面接の時ただのシュワちゃんで笑ったし、そこからのデビュー配信のポンコツぶりでもう一回笑ってしまった。温度差が凄かった。このシリーズ、アニメやコミカライズでリスナーどころかライバー達の「中の人」すらVtuberのアバターそのままか顔や特徴のないピクトグラム人間として描かれるのがかなり印象深かったんですが、そんな所属ライバー達の個性以外が没個性化しているこの世界において心音淡雪の中の人こと田中雪その人のビジュアルが作中で描かれるのも、物語の終わりを感じさせて良かった。しかしこのシーン、同席していたはずのハレルンはアバターで描かれてるんだよな……徹底してるな本当に……。

ライブオンに所属する全ライバーの性癖と本心を暴き出して片っ端から覚醒させてきた心音淡雪が同期でありママであり不遇時代から支え続けてくれた一番の相棒である彩ましろとの関係性の進展を果たし(あの酒チャンポンの流れからその展開に!?という気持ちはそこそこあるものの、まあましろさんだしそんな事件でもないと素直になれなかったんだろうな感ある)、最後に自身と向き合って新たな決意をしていく構成、最終巻として最高に綺麗だったと思います。このシリーズ、一見繋がりのない短編集みたいな作りでありながら全体で振り返ると物語としてしっかりとした指向性があるの本当に凄かったな。

それはそれとして本編と関係ないところでちょっとした配信ネタとかで思いついたら続けてもらって完結後もじわじわ短編集とか出してほしい気持ちあるしWebでもいいからそのへんの展開には期待したいです。あとアニメの前後で立ち上がったライブオン公式切り抜きYoutubeチャンネルもまだまだ続いていくらしいので期待したい。

公式チャンネル、最近の投稿だと有素ちゃんの圧迫面接回が好きです。きがくるっとる。



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声優ラジオのウラオモテ #12 夕陽とやすみは夢を見たい?

 

夢は、諦めなければ絶対に叶う!……よね?プリティアオーディション開幕!
「獲りに行くぞ、由美子の夢を」 声優として経験を積んだ由美子は、遂にプリティアのオーディションへ。だが、 競争率は凄まじく高く、強力なライバルは大勢いて――。 「わたしも受けるわ、次回のプリティアを」 「今年は自信あるの。今までで、一番」  運命共同体の千佳、頼れる先輩の乙女。共に演じる仲間になるか、同じ役を争うか……。分からないけれど、今回だけは譲れない!  決意を胸に挑んだ由美子に待ち受ける結末は、意外なもので!? 「あなたの夢を――、我々にください」  シリーズ最大の夢へ挑戦する、青春声優ストーリー・第12弾!

出演作のヒットを受けて遅咲きながら声優として勢いを付けてきた歌種やすみ。マネージャーの加賀崎が次に持ってきた仕事は、やすみの長年の夢である「プリティア」シリーズのオーディションだった!人気声優の登竜門であり、競争率も凄まじく高いプリティア。しかもオーディションには最大のライバルであり相棒でもある夕暮夕陽や頼れる先輩・桜並木乙女も名乗りを上げると言う。絶対に負けたくないオーディションのその結末は、彼女にとって意外なもので……。

※ネタバレがいつもより多めに含まれますのでご注意ください。

“「あなたの夢を──、我々にください」”

いやこれ言っちゃうとネタバレかもしれないんですが人の心ォ!!!!!!!!!!
いろいろな意味で、彼女がプリティアの役をストレートで穫れたらこのシリーズ終わっちゃうでしょってレベルの大願なわけでそりゃそんな簡単にはいかないんだろうな……という予感はありましたし、そういう方向性の歌種やすみが見たいと思ってしまった気持ちは実際にあるんですけど……いやもうほんとうに容赦がない。ひとのこころがない。前半の大学生活の話とか、高校時代のクラスメイト達と行った卒業旅行の話とか卒業旅行の夜の由美子と千佳の百合百合なやりとりのこととかマジで吹き飛んだわ。

これ恐ろしいのは番組側が無作為で彼女を傷つけたわけではなくて、歌種やすみが憑依型の声優であることを理解して、ガチの演技を演ってもらうために作為的に絶望させたってことなんですよね。いやまあそれだけ自分の手掛ける作品を最高にしたいということなんでしょうけど、それで未成年の心を粉々にしていくの、マジで人の心ないかよ……もうちょっとなんかなかったのかよ……。

ひとのこころがなかっ…………やっぱりあっ……やっぱなかった。

いつか「プリティア声優」になるためにこの道を選んだのに、ぶち当たったのは声優を続けるかプリティアへの道を諦めるというかという選択。表面上はいつも通りを装う由美子にいつもの覇気を感じない千佳は彼女を立ち直らせるために不器用ながらも奔走していく。いやあ、喧嘩中にやすが本気で返してこなかったからやっぱり落ち込んでる!という流れで不調を確信する千佳ちゃん最高に良かったですね。それはケンカップルの文脈なんですが。

今回の当事者でもある千佳や桜並木乙女だけじゃなくてラジオ番組でそれとなく心配している描写が描かれる柚日咲めくる、そして初代プリティアである偉大な先輩達。プリティアの制作側だって彼女が最高の演技をしてくれることを信じてアレを突きつけてるわけだし、本当に「歌種やすみ」という声優は周囲から実力を認められいて、もっと大きくなってほしいと望まれているのだな……と胸が熱くなる物語でした。でも何より、周囲からの励ましを受けてなんとか立ち上がった彼女が望まれた通り(それ以上)の最高の演技をして、やっぱりどうしても絶望してしまうクライマックスが最高によかったし最高に人の心がなかった。

ところでファンの知らぬところでプリティアシリーズオーディションにまざってくる初代プリティアの森先輩男前すぎんか。いつかどっかで森&大野のスピンオフとかやりません?
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かりそめ聖女は今日も王太子(推し)に求婚される 私との結婚は【解釈違い】なのでお断りします!

 

聖女(オタク)が憧れの王子様と「薄い聖典(ほん)」で国を救います!?
優秀な神力を持つ聖女候補アリアセラ。 ある日呼び出しを受けるとそこには王太子ジークフリードがいて―― 「俺の婚約者になってもらえないだろうか」 「無理です」 何を隠そう彼は『薄い聖典(ほん)』で妄想のネタにしているその人で!?  国の危機を救うための政略婚約だと言われ承諾するが、なぜかジークの求愛は止まらず……結婚はしないって約束ですよね!?

「書」に聖なる力が宿る世界。優秀な神力を持ち次代の「聖女」候補とも名高いアリアセラは、神殿で巫女見習いとして聖典の転写作業に勤しかたわら正体を隠してこの国の王太子・ジークフリードを題材にした小説を書き、「名もなき様」として水面下で圧倒的な人気を獲得していた。ところがある日、小説の題材にしていた「推し」ことジークフリードその人から求婚されてしまう。何度断っても諦めてくれない王子にしぶしぶ彼を題材にした小説を書いていることを打ち明けたところ、とんでもない言葉が飛び出して……!?

「君が書いたものを含め俺について書かれた同人誌を200冊読んで、俺が君に幻滅しなかったら、俺と偽装婚約してくれ(意訳)」

プロローグでぶっこまれた王子からのプロポーズ↑が斬新すぎて初手で笑ってしまったし「他の作家の書いたものは勘弁して」と返すヒロインで追い打ちを喰らった。無表情だけど内心は顔面百変化でオタク特有の早口なヒロイン(でも推しとは絶対にゴールインしたくない同人作家の鑑)と、最初は彼女の実力を見込んで偽装婚約を求めてきて、しかしそのうちに彼女を一途に想うようになる王子の攻防戦(色々な意味)が大変良かったです。

とにかく偽装婚約を頑なに拒否されて、王太子とはいえ立場の弱い自分では嫌われても仕方ない……と諦めようとしたらものすごい早口で自分のことをめちゃくちゃ擁護してきてすぐさま好意すら示してくる少女(でも絶対に婚約にはノー)に困惑……もうこのやりとりの時点で面白かった。いやたしかに「推し」の概念を一切わからん「推し」対象(ヒロインにとっては雲の上の存在)からいきなり求婚されたらこう返すしかなくなるのかもしれない。でも「推し」本人の視点から見たら意味不明すぎて逆に追及が強くなるのもわからなくもない。そして追い詰められたヒロインが死なば諸共……と薄い本を差し出してきてという流れから飛び出すのが↑のプロポーズの発言です。王子がつよい。

色々な概念が現実の同人活動・推し活になぞらえられていて、ヒロインも現代で言うところの「ナマモノやってて公式から隠れたい同人女子オタク」であるんだけど、その一方で王子は自分を題材にした劇とか芝居とか全然ある中世ファンタジー世界に生きてるので自分を題材にした創作物への許容値が高く、そんな中で自分に対してめちゃくちゃ好意的で解像度の高い「物語」を描いてくれるヒロインの好感度が高くないわけ無くて……認識の違い、というか「生きてきた世界の違い」が良い意味でちぐはぐなやりとりを生んでいるのが印象的でした。あらすじを迂闊に説明するとナマモノ同人に御本尊が踏み込んでくる事/御本尊に読ませることへの良し悪しみたいな話に繋がりかねなくて日本語の難しさを感じるのですが……どちらかというとそのへんに対する忌憚意識をベースに認識の違いを楽しむお話になるのかなと。まああくまでヒロインのメンタルはナマモノ同人やってる女子であるので可哀想といえばかわいそうなんですが、王子も生命が掛かってるので……。

「うすいほん」 で せかいを すくう(※作者にとっては羞恥プレイ)

そんなこんなで(短いけど本当に色々あった)王国に巣食う魔女・王妃ルクレツィアによって支配された王宮に「浄化」の神力を見込まれてジークフリードの偽りの婚約者として乗り込むことになったアリアセラ。ジークフリード王子は最大の味方である王佐の大聖者を失い、王宮内で孤立してしまっていた。圧倒的な力を持つ王妃の魔力にはアリアセラが使う強力な神力でも刃が立たず、王太子はアリアセラを庇って大怪我をしてしまい絶体絶命の大ピンチ!!……というところから、まさかの大逆転劇でめちゃくちゃ笑ってしまった。アツい(けど薄い)展開が面白すぎる。いやあ、「薄い本」が世界を救った(マジで)

主人公が「ジークフリードもの」の大手同人作家だったことをはじめとしたすべてがこのクライマックスに繋がっていてめちゃくちゃ気持ちよかったし、圧倒的に不利な状況からの大逆転!!という展開でアツい展開なのにモノが「うすいほん」なせいで何もかも面白くなってしまうのバグだった。あとヒロインにとってはただただひたすら羞恥プレイなのめちゃくちゃ面白かったけど自分のことだと想像すると死ぬ。

オタク特有の「あまりにも原作が至高すぎていつまでも眺めていたいが自分の存在が許せないので壁になりたい」ジレンマとか、推し活ラブコメの定番である推しが恋愛対象になることで発生する「ひとりの男性として好きだけど推しと自分が両思いになるのは解釈違い」のジレンマとか、割と定番のジレンマは全部拾ってきて推し活・オタ活ラブコメとしても十分楽しかったけど、並行してめちゃくちゃシリアスで面白いファンタジーバトルをやっているのでほんとナマモノ同人……とか忌憚しないで読んでほしい。同人活動描写もそこそこ濃い目で、ファンタジー世界だけど装丁にこだわってる描写とか挿絵担当の友達とのやりとりとか印刷所とのやりとりとか出てくる。そして刷った本を王宮で回し読みさせることで立場の弱くなったジークフリードの立場を少しずつ回復させて時流の変化を促していく展開、シームレスに同人活動と状況の打開が繋がってて面白いんだよなあ。

あと「なんだかんだで押しが強く建前と本音を使い分けてくる、ヒロイン拗らせ気味ヒーロー」と「感情面とは違うところで両思いを拒否っている男前ヒロイン(感情的には完堕ち)」という組み合わせ、やっぱ最高なんですね…………好きなんですね…………。

1巻で綺麗にまとまってる話ではあるんだけど、いくらでも続ける余地のある話ではあったので続きが読みたい。

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川上稔短編集 パワーワードの尊い話が、ハッピーエンドで五本入り(1)

 

川上稔が贈る、最高にハッピーで尊い珠玉のラブコメ短編集! 書き下ろし含む5本の他に、BONUS TRACK『コガレ』を収録!

ちょっぴり不思議な世界観を匂わせつつ、タイトル通り「尊いふたりのハッピーエンド」に焦点を絞った、カクヨムやツイッターに掲載されたWEB短編に書き下ろしを加えた短編集。

「ジャンル:川上稔」をこんな手軽に摂取しちゃっていいんですか!?

いや〜面白かった。川上稔概念のファスト摂取というか美味しいとこどり感がすごいのですが、いつもの独特な世界観を匂わせつつも主人公ふたり以外の要素はほとんど削って、どちらかというと少ない描写で読者にふたりの関係性や行間のアレコレを想像させていくタイプのお話なので短くても全然物足りなさはなく、バラエティ豊かな世界観の数々や関係性の異なるふたりの物量で推してくる感じありました。短かくて軽く読めるのに物量を感じる不思議。(ジャンル・川上稔、御本人のカクヨムコラムのキャッチがそれになってましたがあまりにも「わかる」だったので引用させていただきました)

全体的にカップルがイチャコラして全力ハッピーでエンド!!!!というよりはふたりの出逢いから因縁・その行くすえをじっくりと描き、少し重いバックグラウンドを匂わせながらそれでも最後にはほんのり心が暖かくなるようなお話が多かったです。

どのお話も面白かったけど、個人的に一番好きなのは書き下ろしの短編「空と海を結ぶもの」かな。戦争をしている国同士のふたりが出会い、深夜の逢瀬を繰り返すお話。いや色々とネタバレになるので多くは語れないのですがこういうSF好きなんですよね……。最後の最後で明かされていく真実と、すべてが終わった後にやってきた少女が放つ一言がめちゃくちゃに刺さりました。

あと、ズルかったのはとある王国の聡明な王と彼の発言全てを記録する秘書官のやりとりを描く「ひめたるもの」。全部読み終わってからこの感想書くために公式のあらすじを見て「あらすじでバラしてくるのはズルいですよ!!!」ってなりましたよね……いや気付かないで読んでた自分も自分なのですが。

記憶のない男女のふたりだけの小さな世界から始まる「君が手を離さない」、化け物と呼ばれる少年と天使と呼ばれる少女が手紙を介して不器用なやり取りを繰り返す「化け物のはなし」、不安に思う僕とその不安に寄り添う私のやりとりが描かれるボーナストラック「コガレ」、会話劇の軽妙さとは裏腹な世界観の重さにひときわカワカミ成分を感じた「最後に見るもの」も大変良かったです。

とにかく手軽に手にとってなんとなく読めるのがとても楽しかったので、このシリーズもう3冊あるんですが、そちらもぼちぼち読んでいきたいと思います(というかタイトルが違うので普通に3巻目から手に取ってしまった……ありがち……)
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吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。2〜日光浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません〜

 

王都クエスト後、功績を認められた蓮華は多額の報酬ゲット! 知らぬ間にテイムした骸骨【あいぼう】アインと新装備を揃え、平穏な時を過ごしていた。 そこへ、ついに吸血鬼用コクーン試作機完成の知らせが! わくわくしてシステムメニューを初めて開くと、『配信』の項目が目に入る。 なんと、今までのプレイ内容がすべて全世界中に垂れ流されていたらしい! まぁ今更いいかと、配信者であるヴィオラのサポートの下、視聴者と会話したり、助言をもらったり、さらにゲームを満喫! そのまま新エリア東の森攻略へ三人で出発するが、探索中にどことなく違和感を覚えて……? 超初心者ゲーマー吸血鬼のドタバタVRMMO放浪記第二弾!

王都クエストを無事にクリアした蓮華はゲームログインもままならないまま吸血鬼用に改造してもらったコクーンの試作品完成の知らせを受け、息子・洋士に連れられて東京へ。いよいよNPC扱いから脱却する日がやってきたが……『配信』という見慣れないメニューを発見して!?

配信バレしても変わらない空気感が引き続き良かった

機械オンチな吸血鬼作家の主人公(鎌倉時代から生きてる)がアナログ原稿脱却のためにVRMMOを始める物語、シリーズ第二巻。王都クエストの報酬受取、スケルトンくんが正式に相棒に、念願のPC化→配信のアレコレバレ、東京での息子との同居、装備周り更新、ヴィオラさんとのリアル邂逅、そして初めてのダンジョン探索と……と、とにかくイベントが多い巻だった。いろいろな意味で配信の存在に気づいていない蓮華をコメント欄や周囲がなんだかんだで見守っていく展開が面白かったので配信バレでどうなる!?と思ったけど、コメント欄とのやりとりが増えたくらいで良くも悪くも配信の存在を気にせず進んでいくスタイルで良かった。蓮華に直接絡みに行く方向性になった配信のコメント欄/これまでと変わらず本人が居ない前提でこっそりとレスが進む掲示板……と切り分けられているのも上手いなあ。

ここにきて(というか蓮華がPC化したことで)浮上してきたゲーム本編シナリオに関する謎とそれに関する考察、遅れて始まった他国でのメインクエストの話も盛り上がり、更には吸血鬼以外の種族の存在、蓮華自身の過去も匂わせてきて……色々と気になるところで終わって、続きが気になりすぎる。

それにしても、最初の登場人物紹介を見ると蓮華やヴィオラだけじゃなくて他のゲーム内で知り合った面々もリアル人類であるとは確定してないんですよね。全員人外の可能性もあるわけなのか。というかナナさんとか自覚あるなしは解らないけどあの終わり方からして明らかに純粋な人類ではなさそうというか……ガンライズさんいろいろな意味でどうなってしまうんです。

洋士さんがお父さんのこと好きすぎる。

マイペースなお父さんに振り回されてやれやれしつつもほっとけない、苦労人の息子・洋士さん…………と思っていたら、序盤の東京に移動中のやりとりから少しずつ様子がおかしくなり、「あれひょっとしてこのひと蓮華の配信見てますよね?」「っていうかひょっとして父親のこと大好きでは?」とか思いつつ読み進めていたのですが…………「短編 . それぞれの一日」と電子書籍版特典SSの「洋士、散在する」を読んで無事ひっくり返りました。いやこの人、父親(蓮華)のこと大好きじゃないですかーーー知ってたけどここまでだとは知らなかったなぁ!!!!!?? この人予想以上にガチ勢だし予想以上にファザコンを拗らせてるし予想以上に父親のことしか考えてないぞ!?

いや、いろいろな意味でお互いに腹を割って話せずに遠慮しあった結果として感情を拗らせてしまった感が凄くて洋士さんも被害者……と思わなくもないし、蓮華の辛い時期(詳細不明)を見守ることしかできずに歯がゆい思いを抱いていた彼が配信で楽しくしている父親を見て「守りたい、この笑顔」になってしまったのも仕方ないといえば仕方ない気がするのですが……。

蓮華もそのへんの遠慮してた部分はちゃんと話すよみたいな終わり方だったので(というかあそこで次巻に続くするの結構鬼畜じゃないですか!?)、腹を割って話し合って遠慮しなくて良い関係性になれるといいね……と願わずにはいられない短編と書き下ろしでした。

いやこれどうせヴィオラさんのストーカーも洋士さん(もしくは洋士さんの手の者)なんでしょう!?とか一周回ってヴィオラさんとは蓮華好き仲間として通じ合えるのではないかとか色々思う所はあったんですが個人的にはクリスマスと年越しは絶対に親子水入らずのホームパーティーを楽しみにしてるとおもうのでお父さんなんとかしてあげてください。腹壊してでも父さんの作ったクリスマスディナーと年越しそばを食べる気満々だとおもうよ。というか洋士もうてっとり早くあっちにキャラ作ったほうがいいのでは!?

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吸血鬼作家、VRMMORPGをプレイする。〜日光浴と料理を満喫していたら、いつの間にか有名配信者になっていたけど、配信なんてした覚えがありません〜

 

九百年生きた吸血鬼【ヴァンパイア】なのに血は嫌い! 壊滅的な機械音痴で、メールを打つにも二時間かかる吸血鬼作家――蓮華はこのままではいけないと、“脱”アナログ原稿のため、VRMMO『GoW』を開始する。が、気付けば、数百年ぶりの日光浴と料理の虜に! おまけにNPC扱いされたことで、誰も知らないヒントを手に入れたり、うっかり国を揺るがす大事を招いたりと、次々と異常事態発生。いつの間にか注目の的になって……? 「有名になってるんですか? お恥ずかしい限りで……」 常識人の仲間・ヴィオラに手取り足取りされつつ、本人は何も気づかず大波乱を巻き起こしていく。超初心者ゲーマー吸血鬼のドタバタVRMMO放浪記スタート!

吸血鬼なのに血が苦手&作家なのに壊滅的なデジタルオンチである蓮華は担当編集からの頼みでVRMMO『GoW』をプレイすることに。このゲームの中であればアナログで作成した原稿がデジタルデータとして自動変換されるらしい。編集と落ち合うまでの間、吸血鬼という性質から現実では満喫しきれない趣味の料理や日光を堪能しようとゲームをはじめるが、チュートリアルが発生しない・システム画面が開かないなどの様々な「不具合」が発生して……!?

一見噛み合わなそうな設定が完璧に状況に噛み合ってて気持ちいい

面白かった〜〜!!アナログ原稿派の吸血鬼作家がVRMMOをする設定(※VR世界で執筆したらデジタルデータになるので編集者に懇願された)も、なぜかゲームにログインされたらNPC扱いされてしまう理由(※吸血鬼なので心音が判定できなかった)も、デジタルオンチな主人公が動画配信をする理由(※デフォルトで配信ONになってる上にNPC扱いされてるお陰でシステムメニューそのものが出ない)もしっかりと周囲の設定に噛み合う理由付けがされていて読んでいてストレスがない。一見無茶と思える設定を「ファンタジー」だからではなくしっかりと納得行く形で説明してくれる話って、それだけで本当に読んでいて気持ちいいですね。

リアルでの技能・経験がゲーム内の各種技能の「熟練度」へのとっかかりになる世界=それなら千年を生きる人外のものがやったら初手最強じゃん?という発想がまず強かった。鎌倉時代から生きているのでリアルの戦闘経験もガッツリある、睡眠もしないのでログイン時間も長いし魔術の鍛錬に必要な瞑想の時間もがっつり取れる……というチートぶりに笑ってしまう。

そしてその様子を本人のあずかり知らぬところで「配信」という形で見ているゲームユーザー達が時にザワつきながらも彼のプレイを邪魔しないように見守っている流れが楽しかった。ユーザー側の存在としてはおそらく突き抜けて強いであろうことを加味しても、メインクエストを予想外の形で動かしてしまったりもしたわけだしクレーム入れに行く人が居てもおかしくないとおもうのですが、そういう人がいないの優しい世界だ。

ゲームをやっている主人公の様子が楽しそうなの良かった

吸血鬼でありながら血液を摂取するのが苦手で、そのせいで他の吸血鬼よりもずば抜けて日光に弱く、しかも本来なら不要のはずの料理を趣味とする……という吸血鬼の中では変わり者な主人公・蓮華。不老不死の存在であるかわりに日常生活で制約の多い彼がVRMMOの世界に来て、リアルでは浴びることが出来ない日光を楽しみ、人間のように料理を楽しみ、寿命の違いで諦めかけていた他の知的生命体とのコミュニケーションをも楽しむ……という姿が印象的でした。どんな状況にあってもとにかく楽しそうなのが良かった。

どうみても人間としておかしいムーブをしていることも多かったり、普通のユーザーは取っ掛かりを得ることも難しい魔術を早々に習得したことも含めてかなり異彩を放っている反面、遭遇したアンデッドに慌てふためいたりその後武器を破損した代わりにスケルトンの手を「お借りした」り……と、どこかシリアスになりきれない感じが凄く良かったです。いや良い意味で配信者向けの人格してるよな……。

「息子」でありながら実質保護者みたいな吸血鬼の洋士、蓮華と同じく人間の世界にひとり隠れて暮らすエルフの少女でゲーム内では弓の達人であるヴィオラ、そして終盤の大規模レイドで知り合った一般ユーザー達……と、少しずつ広げられていく人間関係も魅力的で、今後どうなっていくのか気になる。

あと、ゲーム内にオフィスがあったりVRビジネス街がある……という設定がめちゃくちゃ面白そうだったんですが、今回は担当編集者とゲーム内で落ち合えないまま終わってしまったので次巻ではそのへんの設定の掘り下げが来るのも期待したいです。いやめちゃくちゃ面白そうだよねVRMMO世界の中にあるVRビジネス街……私もそういうところでリモートワークしてえ。
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VRゲームで攻略などせずに勉強だけしてたら伝説になった1

三阪
 

ゲーム内の体感時間は現実の3倍…… 「これで、みんなより長い時間勉強できる!!」 受験ガチ勢のプレイ?が、波乱を巻き起こす! 体感時間が増えるフルダイブ型VRMMO『new world』の登場は、全世界で注目された。 剣と魔法のファンタジーを舞台に数多のプレイヤーが心を躍らせるなか、受験ガチ勢の女子高生、伊奈野は体感時間に目をつけ、ゲーム内にデータを持ち込んで理想の勉強スタイルを実現させる。 しかし、彼女の勉強内容に興味を持つNPC、予期せぬイベントで想定外の活躍、 ──ただ受験勉強がしたいという思いとは裏腹に、彼女はゲーム内で伝説を作っていく。 「やるしかないね。私は、受験生なんだから」

新発売のフルダイブ型VRMMO『new world』を購入した受験生・画智是伊奈野(がちぜ・いなの)。その目的は「ゲーム内の体感時間が現実の3倍になる」ことを利用してゲーム内で受験勉強をすることだった!?早速静かな図書館をみつけてひたすら勉強に熱中するが、NPCが彼女のやっていることに興味をもちはじめ……。

「勉強オタク」な主人公による無自覚ゲーム無双

受験勉強するためにVRMMOをはじめた主人公がそのあまりにも特異なゲーム内ムーブで未発見の称号・ユニークスキルを次々と取得し、無自覚のままにゲーム世界の台風の目と化していく物語。とにかく主人公が初志貫徹でゲームに興味なさすぎて凄い。本来の彼女は結構なゲーマーだと言うので意識的にゲームに興味を持たないようにしている印象はあるんだけど、取得した称号くらいはチェックしてあげてよぉ!!

最近ちょくちょく見かける、VRMMO内でユーザーが特定のフラグを立てるとゲーム全体の方向性が変化していってしまう、ユニークNPC(このゲームの場合は「英雄」)が特定の手順を踏んだユーザーを固定の「相棒」と認識するタイプのゲームのようなんだけど(主人公がゲーム自体に興味がなさすぎるせいでゲームの全体像が正直ちゃんと掴めない)、ゲーム世界に変化を与えるトリガーが「NPCに知識を与える」で、そこが主人公の目的である「勉強」に結びついているの面白かったです。ゲームの内容について興味がない・干渉しない主人公ではあるけど、NPCに「勉強を教える」のは自身の学習理解を深める事ができるので拒まない。その行動が実はゲーム自体に重大な影響を与えていって……という設定、上手かった。

あと、海外鯖の存在とか、こまごまと仕込まれるMMORPGあるあるネタがアツかったです。自分が海外鯖プレイしてたわけじゃないけど鯖によってゲームの進行状況が違ったり独自のマップ・設定あるの面白いんですよね。予想外すぎる主人公の動きにわたわたしてる運営の姿にニヤニヤするんですが、主人公のせいで日本鯖だけめちゃくちゃ独自路線歩むことになったのご愁傷さますぎる。そして海外鯖だと英雄を監禁して奴隷化・経験値装置化してる云々の設定で笑ってしまった。マイ○ラの村人……というかアイアンゴーレムトラップ的なやつや……いやでも明らかにAI入ってるNPCにそれをやるのはなかなか鬼畜では……。

序盤からしばらくはマジでずっと勉強しているだけで、コンセプト的にも結構主人公自身の動きは少なくてこのままだとぐだるのでは!?とちょっとだけ不安にもなったんですが、サーバー混雑で海外鯖に逃げる羽目になる展開(※無自覚だが概ね主人公のやらかしが原因)辺りからはメインストーリーの進行で否応なしにゲーム内イベントに巻き込まれたり、今までの場所を追われて理想の勉強場所を求めて彷徨う羽目になったり……といい感じに展開にメリハリ利かせてきて飽きずに読めました。細かい部分は違うけど基本的には同じ世界観を持つ海外鯖での知識・経験がメインである日本鯖での行動に影響を与えていく、相乗効果的な展開も面白かった。次巻はまさかのダンジョン経営展開!?らしいし、例によって身近にいたユニーク持ちプレイヤーとの邂逅もありそうで、どうなっていくのか楽しみです。

余談ですが初回盤封入特典?の「ゲーム(ほぼギャンブル)ガチ勢伊奈野」でめちゃくちゃ笑ってしまった。本編内でもさりげなく触れられていたけど、主人公の本来のゲームスタイルヤバすぎる。ほぼほぼギャンブル中毒じゃん!!これ読むと、正直受験終わって真面目にこのゲームやろうとしたらいい感じにズッコケそうだし、称号通知全スルーとかは意図的に見ないようにしてるのかなってなるわな……(「ゲーム内環境ちょっと整えるだけ」で数時間飛んでしまうのがゲーマーであるからして)

面白かったけどちょっと荒削りにも感じた

ストーリーの方向性や設定自体はかなり好みなんだけど、細かい部分で色々引っかかってしまい、ノリきれない部分がありました。勉強の仕方が割とこう……大学受験生っぽくないなとか(そのへんは世代の違いかも)、VRゲーム買うのを許してくれる程度に娘の趣味に理解ある親なら素直にゲーム内で勉強してるって話せばいいのになーとか、そういう本当に細かいところなんですけど。あと「主人公がゲームに興味がなさすぎる」というこの作品の利点が一周回って悪い方にも作用してて、こちらに伝わってくるゲーム内の世界観がフワッフワで結構読む時に戸惑う。全体的なアイデアや展開は面白かったので、こういう細かい荒削りな部分に躓いてしまうの色々と勿体ないな……。

なにより、主人公の淡々としたムーブに対してなにかと「彼女は気づいていないが……これがまた後の伝説になるのである」のノリで逐一主人公のやったことを持ち上げてくる地文がちょっと苦手で、読みづらかった。まあ地文が解説してくれないとなにもわからないまま進んでいってしまう話ではあるのですが……。
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おたくの原稿どうですか? 池袋のでこぼこシェアハウス

 

アニメ化もされた大人気少年マンガ「超絶テニス燃くん」の熱烈なオタクである女子大生・美影は、訪れた原画展のメッセージコーナーで奇妙な付箋を見つける。池袋のシェアハウス入居者を募るメッセージの条件は、『「ちょテニ」の同人活動をしている人』というものだった。集まったのは、嗜好も性別も年齢もバラバラの4人。BL好きの美影、夢女子のOL・舞、コスプレイヤーの大学生・直輝、神絵師・メシウマ太郎ことヒデは、冬コミで「ちょテニ」合同アンソロジーを出すべく奮闘することに。友達ともただの同居人とも言えない奇妙な関係を通じて、それぞれの人生は少しずつ変化していく。オタクライフに青春を捧げる男女4人の群像劇。

「超絶テニス燃くん」の原画展のメッセージコーナーにこっそり貼られていたシェアハウス入居者募集のメッセージ。入居条件は「ちょテニ」の同人活動をしていて、なおかつ次のコミケでシェアハウスメンバーで出すアンソロジーに参加すること。集まったのは、個性も立場もぜんぜん違う4人で……。

同じ作品が好き同士の同居なんて上手く行かなくない!?と勝手に不安になりながら読んでいたのですが、同じ作品が好きでも楽しみ方が別な4人だからこそお互いの苦手な部分にはそれなりにスルーしたり配慮したりして相手の「好き」を尊重し、かといって遠慮しすぎることもない適度な距離感で付き合っていく。そのうちにお互いに作品を通してだけではない絆が生まれていって……という展開がとても良かったです。

シェアハウスの住民4人それぞれの視点から描かれていく群像劇なんだけど、大なり小なり同人活動やオタクをやっていれば感じたことがありそうな様々な葛藤やジレンマが印象的でした。普通の小説書きの腐女子である美影が同ジャンルの神作家であるヒデさんの正体を知って理由もなく尻込みする気持ちも、オタク活動に理解のない家族を持った直輝のジレンマも、夢女子OLの舞がオタク活動を楽しみながらも感じている将来への漠然とした不安も、そして商業作家を目指して一度は夢折れたヒデの作家としての葛藤も……完全に理解できるといえば嘘になるけど大なり小なり同じオタクとしては「わかる」部分がある。そして、根がありふれたものだからこそ、真正面からその悩みに直面して立ち向かおうとしている彼らを応援したくなる。そして、それぞれの悩みに対して、直接的に力になるというよりはそれとなく寄り添うことで力になっていく……という同居人達との距離感が心地よかった。(それはそれとして舞さんが騙されそうになった回、詐欺師との対峙に全員でついて行ってしまう彼らの仲の良さにはニヤリとしてしまったんですけど)

個人的に好きだったのは陽キャな初心者コスプレイヤー・直輝くんのエピソードで、尊敬している家族が自分の好きなコンテンツをバカにしてくるというジレンマに苦しみながらもコスプレすること/自らを着飾ることで好きな自分に近づいていくというマインドセットが印象的で。コスプレ周りの描写も良かったけど、父親から与えられたスーツに関する描写がすごく好きで、そこに自分を奮い立たせるためにこっそり同人グッズを忍ばせていくのにほっこりする。

あと、ラストのヒデさんのエピソードもめっちゃ良かったな……人間同士の心の機微がわからなくてそこが一次創作活動において欠点だといわれてしまった彼がシェアハウス生活を通して「絆」を感じたその瞬間に胸が熱くなってしまったし、商業作家時代の同期である現在は人気漫画家となった熊野とのやりとりが好き。

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2024年に読んで面白かったラノベ15選

2024年は大変お世話になりました。本年もよろしくお願いいたします。

そしてコミックマーケット105で当スペースに遊びに来てくださったかた、ありがとうございました!長年密かな目標にしてきたラノベ評論(?)の本を出すことが出来て満足です。新刊の方は準備が整い次第自家通販と、あとDL版の頒布を予定しておりますのでもしよかったらチェックしてみてください。(リンク先「入荷お知らせメールを受け取る」ボタンを押しておいていただけると通販開始時にBOOTHから通知が届きます。)

B5/60P/1100円 好きなラノベ100シリーズについて好き勝手無節操に語る本です。 収録作品一覧はサンプル2枚目をご確認ください。 評論・紹介というよりは感想・思い出語りの側面が強いと思います。 ▼ 詳しい説明はこちらから。 誤字脱字など修正したダウンロード版と同時頒布開始予定です。 今暫くお待ちいただけますと...
ラノベの同人誌、次はコミケか文フリかわかりませんがまた作れるなら今度はテーマを決めて2〜30作品紹介するくらいの形にしたいですね……何かやってほしいネタとかあったらこっそり教えてくれたら検討するかもしれません(予定は未定)(このままだとこの男同士のクソデカ感情が凄い2025とかになりそう)

そんなわけで、毎年恒例・年はまたぎましたが2024年に読んで面白かったラノベのまとめになります。今年も10作品くらいで綺麗にまとめようかと思ったんですが思った以上に面白かった新作が多く……最近は新作の生き残りも色々厳しいと聞くので敢えて絞らずに面白かったな〜とおもった作品まとめて紹介する形にしています(そのぶん、長編作品紹介を少し減らしています)

新作/今年1巻から読んで面白かったシリーズ

羊太郎「これが魔法使いの切り札 1.黎明の剣士」→感想
意味ありげな設定の数々に想像が掻き立てられる最新作
「ロクアカ」羊太郎先生が贈る新作魔法学園物。傭兵から平穏な暮らしを求めて魔法学院に入学したリクスが魔法ではなく物理や対話でトラブルを解決していくのが爽快で、彼らを取り巻く《宵闇の魔王》や《黎明の剣士》にまつわるエピソードが気になりすぎるお話でした。そしてロクアカのオタクとしてはいろんな用語に反応せざるをえなくて(スターシステムかもしれないけど)今後が楽しみ!
零余子「夏目漱石ファンタジア」→感想
TS夏目漱石と野口英世のバディめっちゃ推せる
瀕死の夏目漱石が死んだ許嫁・樋口一葉の身体に脳を移植されて蘇り、正体を隠しながら作家の自由を求めて闘うという文豪SFバトルもの。野口英世との急造バディぶりが大変に楽しく、明治の偉人・文豪要素とSF設定と歴史蘊蓄がカオスに混じり合う物語がめちゃくちゃ面白かったです!!
駄犬「悪の令嬢と十二の瞳 〜最強従者たちと伝説の悪女、人生二度目の華麗なる無双録〜」→感想
精神年齢で変化していく価値観の描写がリアル
処刑されて人生やり直す事になった令嬢が対抗できるだけの武力を整えなきゃ!!とハー◯マン軍曹のごとく孤児達を鍛える物語。やることなすこと微妙に思惑からズレていくセリーナの行動にニヤニヤしつつ、人生やりなおしても変わらなかった彼女の価値観が精神の加齢によって変わっていくのが良い意味でリアルでした。笑って、最後にはちゃんと泣かせてくる物語が最高に面白かった!
東崎惟子「少女星間漂流記」→感想
宇宙を放浪する少女ふたりのSF短編ロードノベル
地球を追われて安寧の地を求めて宇宙を旅する少女ふたりのロードノベル。一筋縄ではいかない各星々の生態が興味深く、タイプの違う二人の少女がトラブルに巻き込まれても上手いことなんとかしながら、でも時折年相応の若さをのぞかせるのが印象的でした。あと女女のクソデカ感情的な意味でも良かったですね。
としぞう「脇役に転生した俺でも、義妹を『攻略』していいですか?」→感想
妹の問題に家族として真摯に向き合っていく展開が超良かった
ギャルゲーのヒロインの義兄に転生した主人公がひとりの家族として彼女の傷を癒やしていく物語。下心でも生前の推し的なやつでもなくあくまで「家族」として真摯に彼女と向き合う主人公がとても好感度高かったし、転生前知識があくまで問題解決のヒント程度になっているのも丁寧で凄く良かったし、幼馴染ラブコメとしても良かった!兄妹物の不謹慎ラブコメに見えるタイトルで損してるな〜と思ったのでもっと読まれてほしい一冊。
せひらあやみ「異世界召喚されたVチューバーですが、皆様コメントで助けてください!」→感想
色々な意味でハードモードな巻き込まれ系異世界召喚ロマンス!
兄がやっていたVtuberのガワで異世界に召喚されてしまった主人公が問題児だらけの兄の動画視聴者達や信頼できない異世界の人々に翻弄されつつスパチャで兄の借金返済を目指すお話。兄の動画ジャンルが男性向けなので、異世界ロマンス始まると低評価の嵐になる展開に笑ってしまったし、誰も信頼できないハードモード異世界召喚展開が楽しかったです!
田口 仙年堂「この先、絆があるぞ」→感想
実在のゲームを題材にした高校生達の青春小説!
ゲーム実況が趣味の陰キャ高校生がクラスの陽キャ男子と「エルデンリング」のマルチプレイをすることに!?というお話。ふたりの関係性が少しずつ変わっていく展開、仲良くなるにつれ起きる変化や葛藤がとにかく心地よくて、原作ゲームは一切わからないんだけど面白かったです!田口先生の長編青春小説読みてえ〜〜〜と言い続けてはや10年(マジで!?)、最高の青春物語が出たので読んでほしい。
犬童灰舎「やさぐれ執事Vtuberとネガティブポンコツ令嬢Vtuberの虚実混在な配信生活」→感想
「芸術家肌Vtuber集団」というありそうでなかったスタイル、面白かった
歌い手、イラストレーター、役者……理由あって道半ばでVtuberに転身した主人公達が新しい場所で夢を追って歩き出す物語。いろいろな意味でこれまでのVtuberものとは違った方向に我が強いVtuberユニット「リバユニ」の在り方が面白く、次に彼らが何をするのかワクワクしながら読みました。2巻では更に外部にも活動の幅を広げてきて、今度どうなっていくのか楽しみだなあ。
わだくちろ「職業、仕立屋。淡々と、VRMMO実況。」→感想
台風の目の中でもマイペースにゲームを楽しむ主人公の姿が強すぎる
クラフトしたくてVRMMOをはじめた主人公が、知らないうちにゲーム内に様々な革命を巻き起こしていく物語。いつのまにやらゲーム内の台風の目と化しているのに、一切気にせず嫌な相手はブロックしてマイペースにゲームを進める主人公が強すぎて好きだし、それにガチ勢の皆がひたすら振り回されていくのが楽しい。本当のスローライフってこういう事言うんだな……。
服部 大河「はじめよう、ヒーロー不在の戦線を。」→感想
「主人公」とは何なのか、と考えさせられる物語
最強の「主人公」であり幼馴染の少女・小日向茜に未来を託された主人公が否応なしに宇宙怪獣との戦いに巻き込まれていく物語。主人公らしい行動を取ることで真価を発揮する人型兵器の設定が面白く、戦いで生命を落とした幼馴染・茜とそれを巡る少年少女達の様々な葛藤が印象的でした。あとこの主人公の親友がウマい2024。
賀東招二「フルメタル・パニック! Family」→感想
加齢の仕方がリアルな、あのキャラたちの「戦後」。
フルメタキャラ達の20年後の姿を描く物語。かっこよく終わったはずの物語が全然綺麗に片付いてないのが良くも悪くもリアルで、いまだ日常に順応できない宗介や加齢による衰えの描写など往年の彼らを知っていると衝撃的な部分も多いけど、それでも「日常」という戦いに前向きに挑み続ける彼ら家族の姿を見られるのは嬉しく感じました。あとアラフォー世代だと衰えの描写がリアルすぎてな……。
諸星悠「空戦魔導士候補生の教官」→感想
一筋縄ではいかない教官と伸びしろは高い問題児達の物語!
今更読んだ!!序盤は誤字脱字の多さやカナタ教官のわかりにくい真意、なかなか実力を認められない状況にもだもだすることが多かったけどその真意が明かされる度に面白さが増していく物語でした。特に終盤は全方向に安心できない要素ばかりで、手に汗握りながらも辿り着いた結末に胸が熱くなる思いでした。面白かった! 同年始まった諸星先生の新作の方も1巻面白かったし2巻は個人的に……だったけど多分また尻上がりに面白くなるやつだと思うので3巻が読みたい……よろしくお願いします。

今年2巻以降が出て特に面白かったシリーズ(こちらは厳選)

有象 利路「組織の宿敵と結婚したらめちゃ甘い2」→感想
現代異能バトルとイチャイチャラブコメの温度差が最高
かつて異能バトルで鎬を削りあう宿敵同士だったふたりが現在はイチャイチャバカップル新婚夫婦に……という物語。元々ギャグとシリアスの温度差で私の中で定評がある作者が章毎にすごい勢いで温度差出してくるのでもう屈服するしかないんですよね……ラブコメの横でちゃんと異能バトルやってるの点数高かったです。個人的に3巻の温度差が特にひどくて笑った。シリアスからシモの話題につなげるのは反則ではーー!!
紫大悟「魔王2099 4.終極防衛都市・ワシントン」
アニメも原作続巻もめちゃくちゃ良かった
『終世魔王ベルトール』によって支配された絶望の未来を変えるためベルトール達が奮闘する第四巻、かつての六魔侯のゆくえを探して悪魔はびこる渋谷に向かう第五巻、どちらも面白かった〜!レギュラーキャラ達の活躍もさることながら、どちらもゲストキャラ(新キャラ?)が良い味出してましたし、毎回舞台を変える度に方向性が変わってくの改めて面白いなこのシリーズ。そしてアニメもよかった……。
衣笠 彰梧「ようこそ実力至上主義の教室へ 2年生編」→感想
いろいろな意味で先が読めなさすぎる2年生編クライマックス
無事に2年生編が完結していよいよ最終学年に突入する「よう実」なんですけどその終盤での出来事が色々と凄すぎてもう…!!元々匂わされていた展開だらけではあったけど、本当にそこまでやるか!?の展開をしっかりやってくるのこのシリーズらしくて強すぎる。クラスポイント争奪戦も綾小路の真ヒロイン争奪戦もあらゆる意味で先が見えなくなってきた3年生編、楽しみです。
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【C105告知】好きなラノベを100作語る本できました

12/29〜30に開催される「コミックマーケット105」にて、好きなラノベを語る本を頒布します。
12/30(2日目) 東3ホール ウ-31b「CELESTE BLUE」となりますよろしくお願いします。


タイトル:「いまのわたしをつくっているラノベ100」
仕様・ページ数:B5/オンデマ印刷/60P
価格:1000円(会場頒布価格)

後日、通販を予定しています(書店委託はまだ未定)。また、ダウンロード版を出そうかなと思っています(誤字が酷くて修正したいので少し後になります……)

本の内容について

ラノベオールタイムベスト100の話題を見かけてからずっと「自分のオールタイムベスト100を作りたい」と思っていたのですがいつもの調子で紹介入りで記事化すると地獄のように長い記事にな...
今年の5月に公開した「私の好きな」ライトノベル・オールタイムベスト・75(草稿)」という記事でリストアップした75作品を追加・調整して100作品にしてその作品について無節操に語るというコンセプトの本です。もう少しライトノベルの歴史が見えるようなグループ分けとかテーマ切りぶぶんを作りたかったのですが色々と時間が足りず、無節操に語る感じになっています。一応古い作品〜新しい作品という形で紹介していますが、ジャンル分けの関係で前後したり、自分が読んだタイミングに準拠して後ろの方にズレたりします。紹介・評論……というよりは「感想」という感じの本です。なんなら思い出語りもあります。本文を推敲する時間が足りず、誤字脱字が大幅にありますが温かい目で見ていただけると嬉しいです(一応DL版を予定していますが、その時までに直せるものは直したいと思います)

だいぶ前に話題になった「#私を構成する5つのマンガ」からオマージュしたタイトルになってます。最初はオールタイムベストと言ってたんですが割と有名なライターさんが出したラノベの本とタイトルもろかぶりだし……

掲載作品一覧

元々が「私のライトノベルオールタイムベスト」なので、コンセプトとして敢えて下記の作品が入っています。紹介本なら出来れば入手可能な本・最新刊or完結済シリーズに絞るべきとも思ったのですが自分の「好き」を優先しています。

・打ち切り確定済み、未電子書籍化・現在入手困難の本があります。
・途中までしか読んでないけど好きというシリーズでも今読んだ時点でメッチャ好き!という観点で言及があります。

この辺は次回以降はあんま入れないようにしたいですね……今回はカオスを楽しんでいただけると嬉しいです。作品リストは続きを読むからどうぞ。
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