カテゴリ:鉄道:建設・工事(終了したもの) > 東横線・副都心線直通
東急東横線・東京メトロ副都心線直通工事(2012年9月16日取材)
公開日:2012年10月08日23:13
来年3月よりいよいよ東急東横線と東京メトロ副都心線の直通運転が開始されます。当ブログではこの直通運転に向けて行われている東横線渋谷~代官山間の地下化工事について2006年より調査を行っています。今回は未使用だった線路の使用開始に向けた準備が本格化している副都心線渋谷駅と地下化切替に向けた準備が行われている東横線代官山駅付近の状況をお伝えします。
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■東急東横線渋谷~代官山間の地下化工事の概要
東横線地下化前後の断面図(平面図はこちら)
現在の渋谷駅は東急東横線が地上2階、東京メトロ副都心線が地下5階にホームがあります。東横線と副都心線の直通にあたっては東横線渋谷~代官山間の全線(約1.5km)を地下化し、双方の線路を接続します。東横線と副都心線の直通は副都心線の着工後に決まったため、2008年の同時開業とはならず、来年3月までずれ込むこととなりました。
地下化後のトンネルは副都心線渋谷駅を出た後、明治通りの下を200mほど進み、そこから先はシールドトンネルとなります。そして並木橋手前で民有地・渋谷側を斜めに横断し、そこから先は代官山駅まで現在の東横線高架下を進みます。このうち、シールドトンネルとなる中間の508mの区間は長方形に近い円形の断面が2個組み合わさった特殊な形状のトンネルとなっており、この部分の掘削には前面に高速回転(最大50回転/分)する円錐状のカッターが装着されたシールドマシンを使用する「アポロカッター工法」と呼ばれる方法が採用されています。このような特殊な方法が用いられたのは、明治通りの地下にある下水道幹線を露出させずに掘削することや、民有地(区分地上権)の買収面積を最小限に抑えるためです。なお、渋谷駅と代官山駅の間にはかなりの高低差があるため、渋谷側から先の区間は25~35パーミルの急勾配となる予定です。トンネル出口は代官山駅手前の渋谷1号踏切付近にできる予定で、代官山駅ホームの中央付近まで上り勾配となるため、代官山駅のホームは地下化時に現在よりも低い位置に付け替えられる予定です。
なお、この工事は次回お伝えする予定の東横線10両編成対応化工事とともに特定都市鉄道整備事業の対象となっており、2005年度から半期ごとに運賃収入の2%を事業費として積み立てています。2011年度下期までの累積積立額は176億1000万円となっており、社団法人日本民営鉄道協会に積み立てを行い、今後は工事費として充当される予定となっています。
■各地点の状況(2012年9月16日取材)
●副都心線渋谷駅
中央2線の使用開始に向けた準備が進む副都心線渋谷駅(同じ場所の2008年6月14日の様子)
2008年に開業した副都心線渋谷駅は当初島式ホーム1面2線とする計画でしたが、着工後に東横線との直通が決まったため、2面4線に計画を変更しその形で完成済みとなっています。現在まは列車本数が少ないことから、外側2線のみを使用しており、開業時は内側2線の線路上に仮設の渡り板を置いて両ホームを連絡していました。昨年秋以降は東横線との直通に向けた準備が本格化し、この渡り板は順次撤去され、今年7月1日以降は両ホームが完全に分離されました。
ホームの分離後は未使用だった内側2線の使用開始に向けた準備が進められており、9月16日の訪問時は前回途中だったホームドア取り付けがホーム全長に渡り完了しました。
左:天井に取り付けられた剛体架線。吹き抜け部分はこれを見越して当初からI形の鋼材が設置されていた。
右:新4番線中央付近に新設された絶縁継目。脇の黄色い標識には「6場」と書かれている。
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ホームドア取り付けと並行して軌道内の電気設備・信号設備の設置も進められており、天井には剛体架線が新設されました。内側2線の天井には上階まで貫通する換気用の吹き抜けが数か所設けられていますが、この部分には開業当初より将来の架線設置を見越してI形の鋼材が設置されており、剛体架線は碍子(がいし)を挟んでこの鋼材に固定されています。なお、今回取り付けられたのは剛体架線の枠(アルミ製)のみで、パンタグラフが接触するトロリー線は未設置の状態となっています。
一方、軌道側は2008年の開業時にレールまで敷設が完了していますが、今回信号設備の設置に伴い、その一部を切断して軌道回路の絶縁継目が挿入されました。新4番線側に設置された絶縁継目の脇にある標識には「6場」(第6場内)という標識があることから、直通開始後は相当な高密度運転が予定されていることが伺えます。(なお、参考までに副都心線の既開業区間の設計上の最短運転間隔は1分50秒となっている。)
上段:中央2線の横浜方はホームドアの取り付けが完了し、架線の整備が行われている。(同じ場所の2009年3月21日の様子)
下段左:3番線の終端側も壁が取り外され、横浜方面に向かい線路が姿を現した。
下段右:4番線は終端側が非常用の避難通路となっている。
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内側2線の横浜方は今年7月に完成した部分と未完成の部分を仕切っていた幕が取り払われ、代官山駅へ続く線路が姿を現しました。幕の撤去時点で列車種別表示器や手信号代用器などの信号設備は設置済みとなっており、現在はホームドアの整備や架線の取り付けが行われています。また、前回は仮設の壁が残されていた外側2線も今回壁が取り払われ、東横線へ続く線路が見えるようになりました。
なお、副都心線の渋谷駅は2008年の開業から現在まで横浜方が未完成であるため、池袋方に2両分程度仮設のホームを設置し、10両編成分のホーム長を確保しています。このため、東横線直通時は停止位置を横浜方に移動し、池袋方の仮設ホームは撤去する予定です。外側2線の横浜方の未完成部分は3番線がホームドアの取り付け工事中、4番線(新6番線)がホームドアの取り付けが完了し、非常用の避難通路として使用されています。
池袋方は使用開始に向けた準備がほぼ完了している。(同じ場所の2008年6月14日の様子)
内側2線の池袋過多は7月調査時にわずかに残っていた仮設ホームが完全に無くなり、架線や信号設備の取り付けも完了して使用開始に向けた準備が完了しました。ホームから先は完全に営業線のエリアとなるため、仕切りが置かれ工事の安全を確保しています。
●東横線代官山駅
左:代官山駅構内は軌道・ホームが全て仮設構造となっている。
右:仮設ホームの下に出現した新ホームの一部と思われるコンクリート。
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渋谷駅を出て現在線の高架の地下を進んできた線路は代官山駅手前の渋谷1号踏切で地上に出て代官山駅構内で現在線と合流します。現在の代官山駅は渋谷駅へ向かって10パーミルの上り勾配となっていますが、地下線接続時はホームの途中から10パーミルの下り勾配に変更されます。代官山駅構内では2009年頃から軌道・ホームを仮設構造に変更したうえで、線路下を掘削して地下へ入るU字形よう壁を造る工事が続けられており、ホームからは見えないものの軌道敷設まで既に完了しています。
また、今回調査時に新たに仮設ホームの下に逆L字形のコンクリート製の物体ができつつあるのを確認しました。この構造物はホーム中央から始まった後渋谷駅方面に向けて徐々に高度を下げて線路下に潜り込んでいることから、地下化後に使用する新ホームの床面の一部であると考えられます。
左:代官山駅の地下化切替工事のイメージ。軌道桁を降下・上昇させ、地下線と接続する。
右:参考までに同様の工法で切替が行われた京王線調布駅付近の地下化工事。2012年8月19日撮影
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代官山駅構内の地下化切替工事は現在線が載っている桁を降下または上昇させることにより、一晩で完了させる予定となっています。同様の工法は東急電鉄では2006(平成18)年に地下化された目黒線不動前~武蔵小山間・西小山~洗足間で実績があるほか、直近では今年8月19日に地下化された京王電鉄の京王線調布駅付近の地下化工事でも採用されています。
■副都心線直通開始は2013年3月16日に決定・日比谷線直通は廃止に
東横線と副都心線の直通開始時期はこれまで「2012年度」という大まかな数字が発表されていましたが、今年7月24日(火)のニュースリリースで直通開始時期が2013(平成25)年3月16日(土)であることが正式に発表されました。直通運転が行われる範囲は現行の副都心線の直通運転の範囲(東武東上線森林公園駅・西武池袋線飯能駅)+東急東横線・みなとみらい線の全線(渋谷~元町・中華街間)です。主な区間の所要時間と運行本数は以下のとおりとなっています。
●所要時間(いずれも最上位種別の列車の標準時分)
東京メトロ副都心線池袋駅~みなとみらい線元町・中華街駅:47分
東武東上線川越駅~みなとみらい線元町・中華街駅:87分
西武池袋線飯能駅~みなとみらい線元町・中華街駅:104分
●運行本数(東横線~副都心線・1時間当たり)
平日朝ラッシュ時:20本
平日昼:14本
平日夕ラッシュ時:16本
土休日(終日):14本
このほか、渋谷駅からの着席利用にも配慮し、各時間帯とも渋谷駅折り返しの列車が4本ずつ残される予定です。また、横浜駅側は平日ラッシュ時に4本、平日昼・土休日に2本菊名駅始発の上り列車が設定される予定です。
左:日比谷線直通は副都心線直通と同時に廃止される。南北線9000系との並びを見られるのもあと5カ月。2007年9月8日、多摩川駅で撮影
右:日比谷線直通列車に使用されている東急1000系
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なお、ホームドアが設置されている渋谷駅に入れない18m車を使用しているため、その動向が注目されていた日比谷線直通列車ですが、残念ながら今回の副都心線直通開始に伴い廃止されることが合わせて発表されました。このため、来年3月16日以降日比谷線から横浜方面に向かうには中目黒駅での乗り換えが必須となります。ただし、中目黒駅はホーム対面での乗り換えが可能であることや、日比谷線直通列車自体が東横線の特急運転開始時に30分間隔へ大幅に削減されており、既にその使命を終えた存在となっていたことから、大幅な利便性の低下はない見込みです。
渋谷駅に設置された直通運転のカウントダウンボードと新キャラクターのぬいぐるみ。ぬいぐるみは左側の空間から中に入って口から顔を出すこともでき、お子様たちに人気。
この発表から1カ月後の8月20日(月)、東急電鉄より東横線・副都心線直通運転開始のPRに使用するマスコットキャラクターのデザインが発表され、あわせて渋谷駅改札口前にこのキャラクターの等身大ぬいぐるみと東横線・副都心線直通運転開始までの日数を表示するカウントダウンボードが設置されました。キャラクターは東急5000系電車をモチーフにしたもので、名称は一般からの公募で決められることになり、8月28日から1ヶ月間募集が行われました。どのような命名がなされるのか注目です。
次回は副都心線直通に伴う、東横線・みなとみらい線の10両編成対応化工事の状況をお伝えします。
▼参考
東京メトロ副都心線との相互直通運転に伴う東横線渋谷~横浜間改良工事 - 東急電鉄
特定都市鉄道整備事業実施状況(2012/5/15)|ニュースリース|東急電鉄
東急東横線と東京メトロ副都心線 相互直通運転の開始日が2013年3月16日に決定!(2012/7/24)|ニュースリース|東急電鉄
東急線のマスコットキャラクターが誕生!8月28日(火)から愛称を募集します(2012/8/20)|ニュースリース|東急電鉄
平成 25 年 3 月 16 日(土)から相互直通運転開始副都心線と東急東横線・横浜高速みなとみらい線がつながります - 東京メトロ(PDF/245KB)
池袋線が東急東横線、横浜高速みなとみらい線との相互直通運転を開始します。 - 西武鉄道(PDF/236KB)
東武東上線がより便利に!自由が丘、横浜、元町・中華街方面とつながります! - 東武鉄道(PDF/294KB)
鹿島:KAJIMAダイジェスト:ザ・サイト:(13号相直)東横線渋谷~代官山間地下化工事(土木工事第1工区)
April 2012:特集「都市と鉄道の昨日,今日,そして明日」| KAJIMAダイジェスト | 鹿島建設株式会社
円形・矩形・馬蹄形など多様な断面を掘れるシールド掘進機が完成 - 川崎重工PR誌「Kawasaki News」(PDF/819KB)
津守,永持,関,山崎 - 東急東横線渋谷駅~代官山駅間地下化工事の概要 - 地下空間シンポジウム論文・報告集第14巻 - 土木学会2009年1月(リンク先:CiNii)
▼関連記事
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