文科省『私たちの道徳 中学校』160頁 http://t.co/bvePtiZRIa では世界人権宣言まで持ち出して「人権」が扱われておるが,ありがちな「人権に配慮していじめをなくしましょう。」という話に終始しておしまい,となっておるの。
2014-02-20 22:31:48これを書いた者は,世界人権宣言は専ら国家ではなく国民への訓示で,わらわの国っぽくいうと国民に「和を尊ばせる」ための権威だ,くらいにしか思っておらんのではないか?(もちろんわらわはそれでよいがの。)世界人権宣言はどちらかというと,国民の人権を保障せよと加盟国に求める決議じゃぞよ。
2014-02-20 22:32:02例えば,世界人権宣言11条(適正な法と証拠に基づく公開裁判によらなければ有罪判決を下してはならず,どんな行為が罪であるかは法律であらかじめ決まっていなければならない,という規定)をどうやって国民が守れと言うのじゃ? これを守れるのは司法制度を担っておる国家だけであろ。
2014-02-20 22:32:10どうも人権という言葉が「みんなで人権を守って,いじめをなくしましょう。」というイメージだけで漠然と使われておるようなのじゃ。人権について説明するには,まず権利と義務とは何であるのかから説明するのが得策だの。
2014-02-20 22:32:29権利とは他人に対して「○○をしろ」「○○をするな」という一定の行為を請求し得る法的地位のことじゃ。権利者からの請求を受けた義務者の側は,権利に応じて「○○をしなければならない」「○○をしてはならない」という義務を負うのじゃ。全ての権利は反対側から見ると義務なのだぞよ。
2014-02-20 22:32:38例えば,AさんがB社から300万の新車を買う契約をして,Aさんは300万振り込んだがB社が車を用意していないとする。この場合Aさんは,B社に対し,「あの新車なんだけど早く用意して渡してくれよ。」と請求する権利がある。これは,B社はAさんに納車する義務を負う,ということと同じじゃ。
2014-02-20 22:32:54では,人権とは誰さんが誰さんに対し何を請求する権利なのか? 考えてみよ。答えは簡単じゃぞ。個人が,国家に対し,「自由を侵害するな。」と請求する権利が,人権なのじゃ。人権とは国家からの侵害を防ぐ言わば盾,「対国家防御権」と呼ばれておる。
2014-02-20 22:33:15現行憲法では,「人間が国家を作る前から持っていた(これを『天賦の』という)生命や自由を守るために,これを『侵害してはならない』という義務を国家に課した法が,憲法である。」というモデルを採用したのじゃ。国家の義務は,反対側の国民から見ると権利であろ? この権利が人権じゃ。
2014-02-20 22:33:42例えば,薬局を経営しているXさんが,国が決めた薬事法に紛れ込んでいる変な規制のせいで,開店したい地域で薬局を開店できなくて困っておるとする。これは職業遂行の自由(現行憲法22条1項)を国が侵害しておるのだから,Xさんは国を訴えて「職業遂行の自由を侵害するな。」と請求したい。
2014-02-20 22:34:05つまり,国民が,国に対して,「職業遂行の自由を侵害するな。」と主張するのじゃ。国家に「人権侵害をしてはならない」という義務を課するのが人権じゃ。人権侵害は憲法違反だぞよ。この例は薬局距離制限違憲判決(最大判昭和50年4月30日民集29巻4号572頁)という判例で有名なのじゃ。
2014-02-20 22:34:13人権とは,「①国民が,②国に対して,③侵害の不作為を求める権利」なのじゃ(小山剛『「憲法上の権利」の作法』(尚学社,2009)11頁)。人権は権利だから反対側におる者(義務者)から見ると義務じゃが,この義務者は常に国家なのじゃ。国民は憲法の人権規定によって義務を負いはせぬぞよ。
2014-02-20 22:34:30ではいじめは人権侵害,すなわち憲法違反ではないのかというと,そのとおりじゃ。憲法違反ではない。いじめは,具体的な事例にもよろうが,民法という法律では故意に他人に損害を加える不法行為が成立し,刑法という法律では犯罪が成立する場合が多かろうの。憲法違反ではなく,法律違反じゃ。
2014-02-20 22:34:39国家も個人に「他人の人権に配慮し,いじめはやめましょう。」などと呑気に言うのではなく,映画泥棒的なキャラでも作って「いじめは他者に危害を加える犯罪です。現行憲法も他者加害の自由は保障しません。タバコを押し付けるのは傷害罪,村八分は脅迫罪…」と粛々と罪名を挙げたほうがましなのじゃ。
2014-02-20 22:35:02↓あっもちろんこれは現行憲法がそうなっておる,というだけの謂じゃぞよ! こんな悪しき人権思想はわらわに改憲すれば一掃じゃ。わらわの国には国民に天賦の人権などない。国家がその時々で決める「公益及び公の秩序」の枠内でのみ,国民は人権を与えられるにすぎぬ。秩序に反した者は憲法違反じゃ!
2014-02-20 22:35:13