箱根駅伝 駒澤大・藤田敦史監督が誓った「復路優勝」の決意と来季への布石
駒大の復路優勝のゴールテープを切った小山翔也を抱え、好走を労う主将の篠原 photo by Kishimoto Tsutomu
結果的には青山学院大の完勝に終わったが、箱根駅伝で2度目の采配となった駒澤大・藤田敦史監督は、それでも来季以降への手応えをつかんだ大会となった。
今季は4年生に主力が少なく、3年生エースの佐藤圭汰がケガで長期離脱するなか、箱根に向けては3年生以下の選手層を厚くしてきた。大会前は「次の一手」をさまざまな形で模索し、最終的には「復路勝負」を決心していた。
その目論見はどのようにレースに反映されたのか。藤田監督のコメントを元に、たどってみる。
【藤田監督が「7区・佐藤圭汰」を決断した理由】
往路4位から復路優勝で巻き返しての総合2位。
「また2番かよ、という感じですね」と苦笑する藤田敦史監督だが、往路4位という結果を受けて、「復路だけは絶対に獲りたかったんです、絶対に。大八木(弘明)さん(総監督)も(コーチ就任)2年目に大会新記録で復路優勝していたし、(過去2大会の復路で)2位、2位ときている選手たちに自信をつけさせるためにも」と続けた。
出雲駅伝と全日本大学駅伝は國學院大に次ぐ2位。その2校に対して選手層の厚さでは劣ると話していた藤田監督は、前回の箱根では1区から3区までエース級の選手を並べながら3区で逆転されて完敗してしまったことを受け、「次の一手」を打つことに注力していた。
12月10日のエントリーメンバー発表の会場では、近年の「箱根勝利の原則」として往路で先手を取ることに拍車がかかっている傾向に対して、「仮に往路で先行されたとしても、復路でしっかり追える展開に持っていけるだけの選手の状態や配置を、いろいろ戦略として考えていきたい部分もある」と話していた。
「次の一手」という面では、平地の走力や勝負強さが身についてきたことも考え、5区と6区の経験者である山川拓馬(3年)と伊藤蒼唯(3年)を平地で勝負させることも示唆していた。だが、12月29日の区間エントリーでは6区に伊藤を入れ、5区は1月2日の当日変更で山川を配置した。
「代わりの選手がいなかったですね。5区も前回大会の金子伊吹(1時間10分44秒の区間3位、現・JR東日本)のような存在がいれば山川を2区に回したけど、やっぱりいなかった。2区は篠原倖太朗にいってもらうしかなかった」
だが、3区は当日変更で大方が予想していた佐藤圭汰(3年)ではなく、谷中晴(1年)を使う勝負に出た。
「圭汰の状態が去年のように万全ではなかったので、使うなら3区か7区と思っていましたけど、当初は谷中を3区、圭汰を7区で、というのが私のなかにずっとありました。大八木総監督も『それがいいんじゃないか』と言っていたんです。
12月中旬ぐらいに谷中が背中に不調を訴えて少し練習を休んだので、『これで3区はちょっと厳しいかな』というのがあったんですけど、いろんなトレーナーの先生などに見ていただいてよくなったので、痛みを最小限で抑えることができました」
その時点で藤田監督は、佐藤を7区に置き、復路勝負を決心した。
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著者プロフィール
折山淑美 (おりやま・としみ)
スポーツジャーナリスト。1953年、長野県生まれ。1992年のバルセロナ大会から五輪取材を始め、夏季・冬季ともに多数の大会をリポートしている。フィギュアスケート取材は1994年リレハンメル五輪からスタートし、2010年代はシニアデビュー後の羽生結弦の歩みを丹念に追う。