今回の地震のエネルギーは1923年の関東大震災の約45倍、95年の阪神大震災の約1450倍。1900年以降に起きた地震では、60年のチリ地震(M9.5)、64年のアラスカ地震(M9.2)、2004年のスマトラ沖地震(M9.1)に次ぎ、1952年のカムチャツカ地震(M9.0)と並ぶ第4位の規模になります。(「東日本大震災はM9.0 M7級の余震、発生確率70%」(asahi.com:2011年3月13日17時11分)。
1.報道記事を幾つか。
(1) 朝日新聞平成23年3月12日付朝刊1面
「東日本大震災 M8.8世界最大級、沿岸に大津波
2011年3月12日2時35分
11日午後2時46分ごろ、三陸沖を震源とする大地震があり、宮城県栗原市で震度7を観測した。北海道から九州にかけての広い範囲で震度6強~1の揺れと、津波に見舞われ、死者・行方不明者は東北を中心に850人を超えた。地震の規模を示すマグニチュード(M)は8.8で、記録が残る1923年以降国内で最大。昨年2月のチリ大地震(M8.8)に匹敵する世界最大級の地震になった。
震源は宮城県・牡鹿(おしか)半島の東南東約130キロ、深さ約24キロ。専門家によると、今回の地震エネルギーは関東大震災の約30倍、阪神大震災の約1千倍に相当するという。
警察庁によると、この地震による死者は12日午前1時現在、宮城、福島、東京などの1都8県で133人、行方不明者は530人。これとは別に、仙台市若林区で津波による200~300人の水死とみられる遺体が見つかっている。
気象庁は地震発生から約4分後の午後2時50分ごろ、岩手、宮城、福島県に大津波警報(高さ3メートル以上)を発令した。各沿岸での最大波は、福島県相馬市で7.3メートル以上(午後3時50分)、茨城県大洗町で4.2メートル(同4時52分)、岩手県釜石市で4.1メートル以上(同3時21分)だった。宮城県気仙沼市では、沿岸での高さは不明だが、沖合では6メートル(同3時14分)の波が観測された。
気象庁によると、12日午前0時現在、北海道から高知県の太平洋側を中心に18地域で大津波警報が出ている。同庁は今回の地震を「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」と命名した。
11日午後3時15分ごろには、茨城県沖を震源とするM7.3の地震も発生。政府の地震調査委員会は同日夜、「震源域は岩手県沖から茨城県沖までの広範囲にわたる。これらすべてが連動して発生する地震は想定外だった」との見解を発表した。
総務省消防庁や警察庁によると、津波の被害は、岩手、宮城、福島、茨城、青森の5県に及び、多数の死者、行方不明者が出ている。
仙台市では、津波で海岸線の多数の民家が流された。水死と見られる200~300の遺体が発見された仙台市若林区では、海岸から10キロ離れた区役所まで津波が襲来。石巻市でも住宅10棟が流出。気仙沼市では、JR気仙沼駅周辺など市中心部が広い範囲で燃えている。防衛省によると、東西4.5キロ、南北2.5キロの範囲に及び、午後11時55分現在でさらに拡大している模様だという。
岩手県大船渡市の末崎町細浦地区は、津波で地区全体が流され、壊滅状態だという。同市三陸町の綾里地区と越喜来浦浜地区でも、計300棟以上が崩壊または流出。綾里地区では48人の行方が分からないという。JR東日本によると、同市内を走っていた大船渡線の列車(2両編成)と、津波後に連絡が取れなくなっている。宮古市周辺では10カ所以上の集落が全壊した。陸前高田市も四つの地域が水没した。
福島県相馬市では、海岸線で土砂崩れがあり、行方不明者が多く出ている。防衛省によると、南相馬市では約1800世帯が壊滅状態。宮城県に接する新地町でも住宅414棟が全壊。富岡町でも、海沿いの数百戸やJR富岡駅も津波で倒壊。青森県八戸市では津波被害が甚大で、詳細が把握できない状態だという。茨城県大洗町では町中心まで津波が達した。
このほか、宮城県利府町ではジャスコ利府店で天井の空調設備が崩落し、子どもが下敷きになり死亡。福島県では、老人ホームで5人が死亡したという情報がある。」
「地震:東北で巨大地震 大津波、死者・不明多数 M8.8、国内空前
◇宮城震度7
11日午後2時46分ごろ、東北地方で非常に強い地震があり、宮城県栗原市で震度7、仙台市や宇都宮市で6強、東京都心でも5強など、北海道から九州の広い範囲で震度6弱~1の揺れを記録した。気象庁によると、震源地は宮城県・牡鹿半島の東南東約130キロで、震源の深さは約24キロ、地震の規模を示すマグニチュード(M)は国内の観測史上最大の8・8と推定される。津波は福島県・相馬港で7メートル以上を観測するなど、全国の太平洋側のほぼ全域に襲来、最大で10メートル以上に達したとみられる。死者は数百人に上る可能性がある。気象庁は「三陸沖でこれほどの地震が起きるとは想定外だった」と説明している。
政府は緊急災害対策本部を設置し、自衛隊などの派遣を決定。菅直人首相は記者会見し「政府として総力を挙げて取り組んでいく」と表明した。気象庁は「平成23(2011)年東北地方太平洋沖地震」と命名した。
余震も相次ぎ、午後3時15分ごろに茨城県沖でM7・4の地震が発生し同県鉾田市で震度6弱、北海道から九州南部で震度5強~1を観測。有感の余震は12日午前0時現在、100回を超えた。
気象庁によると、12日午前0時現在、各地で観測された津波は岩手県釜石市沖6・8メートルなどだが、観測機器の故障で最大の津波が観測できていない可能性が高い。
気象庁の横山博文・地震津波監視課長は記者会見し、「震度6弱程度の余震が1週間以上続くとみられる。津波も警報解除までに1日程度はかかる可能性がある」と警戒を続けるよう呼びかけた。
◇仙台沿岸300人遺体 気仙沼市内全域で火災
毎日新聞のまとめによると、12日午前0時半現在で、死者は少なくとも138人、行方不明者は531人に上る。重軽傷者は627人。都県別の死者は岩手57人▽福島42人▽宮城20人▽茨城、千葉5人▽東京4人▽青森2人▽神奈川、栃木、群馬1人。福島県内の消防によると、津波によって沿岸部の住宅密集地で約300人が安否不明になっているという。宮城県警によると、仙台市若林区荒浜で200~300人の水死体が見つかった。名取市消防本部によると、市内の沿岸部でも遺体が見つかっている。
宮城県気仙沼市などによると、市内では午後6時半ごろから火災が発生し市内全域に延焼。JR気仙沼駅と島部の大島地区で火災の規模が大きいとの連絡があり、陸上自衛隊員を派遣している。岩手県災害対策本部などによると、大船渡市三陸町の福祉施設「三陸の園」では30人が流された。宮城県石巻市では住宅10棟が流された。
茨城県鉾田市と行方市を結ぶ国道354号の鹿行大橋は津波で倒壊し、走行中の乗用車が川に転落した。
福島県南相馬市では老人ホーム1棟が倒壊した。職員と入所者計約200人のうち多数ががれきの下敷きになり、十数人が生き埋めになった。同県・白河では土砂崩れが起き、5世帯8人が生き埋め。仙台市内では4人が生き埋めになった。
◇原子炉圧力上昇--福島第1
東京電力によると、今回の地震の影響で、福島第1原発1号機の原子炉圧力が上昇していることが分かった。原因を調べている。
炉内の圧力が高まると格納容器が損傷を受ける。このため、同社は炉内の圧力を外部に逃がす操作の実施を検討している。
実施すると、放射性物質が外部に出る恐れがある。
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毎日新聞 2011年3月12日 東京朝刊」
(3) 東京新聞平成23年3月12日付朝刊
「東北・関東大地震 仙台で10メートル津波 首都圏の機能マヒ
2011年3月12日 朝刊
首都圏では茨城、栃木両県で最大震度6強を観測し、十一日午後十一時五十分現在の本紙のまとめでは、崩落した建物の下敷きになったり、津波に巻き込まれたりするなどして一都六県で十六人が死亡、十一人が行方不明、四百七十人以上がけがをした。停電や断水が大規模に発生。一時、JRや私鉄、地下鉄が全面的に運転を中止し、高速道路も全面通行止め、羽田、成田の両空港も全面閉鎖した。
夜にかけて一部が復旧したが、首都圏の交通はほぼマヒ。関東周辺の主要駅に約二万五千人が一時足止めされた。
各都県や警察庁などのまとめでは、死亡は千葉で五人、東京、茨城で各四人、神奈川、栃木、群馬で各一人が確認された。行方不明は茨城で六人、千葉で三人、栃木で二人で、津波に巻き込まれるなどした。建物は七百十戸以上が全半壊したり、一部が損壊したりした。
津波は、茨城県大洗で午後四時五十二分に四・二メートル、千葉県銚子で同三時三十七分に二・二メートルを記録。茨城県ひたちなか市では、海岸から二百五十メートル内陸の県立海洋高校が水没し、沿岸線が液状化状態になっている。
茨城県東海村の常陸那珂火力発電所では、周辺道路の多数の車両火災のため、従業員ら約六百人が敷地内に取り残されている。
東京都千代田区の九段会館では天井が崩落し、五十代の女性二人が死亡、約三十人がけがをした。茨城県高萩市では接骨院が倒壊、三人が下敷きとなり、女性(86)が死亡。千葉県山武市では男性(80)が津波に巻き込まれ死亡し、旭市でも高齢女性が屋外で水死しているのが見つかった。
千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所で大規模な火災が発生。一人が全身やけどで重傷となり、消火活動が依然続いている。
栃木県下野市の国分寺中学では、体育館の天井から石こうの板がはがれ落ち、館内の生徒二十六人が頭などに軽傷。
茨城県内では家屋の八割以上が停電した。県内の原子力施設では、原子炉二基が安全に自動停止。十七事業所で異常がないことを確認した。
羽田空港は午後四時過ぎに復旧、成田空港は同七時半に出発便に限って再開した。夜に入り、鉄道は東京駅発の東海道新幹線が本数を減らして運行し、京王や東急など私鉄、地下鉄の一部も再開された。」
2.東北・関東大地震は、福島第一原子力発電所にも影響を与えており、原子炉内の冷却機能が失われた結果、1号機、3号機と次々と爆発を起こしています。
(1) 毎日新聞 2011年3月13日 東京朝刊1面
「東日本大震災:福島原発で爆発 国内初の炉心溶融 半径20キロ避難指示
◇「第1」1号機
国内観測史上最大のマグニチュード(M)8・8の東日本大震災に見舞われた東京電力福島第1原発1号機の原子炉建屋(たてや)で12日午後3時36分ごろ、爆発音とともに白煙が上がり、建屋の壁と天井部分が失われた。この事故で東電社員ら4人が負傷、敷地では通常と異なる放射線量が検出された。同日午前には1号機から放射性物質の漏えいが確認され、さらに国内初の炉心溶融も発覚した。巨大地震に遭った原発で、未曽有の事態が次々と発生した。地震大国で最も恐れられる「原発震災」。同日夜、炉心溶融を食い止めるため海水が炉心に注入されたが、純水の代わりに塩分を含んだ海水を使うため施設への打撃は大きく、廃炉の可能性もある。
◇官房長官「格納容器損傷なし」
今回の事態を踏まえ、周辺の住民は、福島第1原発から半径20キロ圏、福島第2原発から半径10キロ圏からの避難を求められた。該当する市町村は富岡町、大熊町、双葉町、広野町、楢葉町、浪江町、田村市、南相馬市、葛尾村、川内村で、約2万5000世帯の約7万人が住んでいる。
福島第1原発1号機では、原子炉を覆う鋼鉄製の格納容器は鉄筋コンクリートでできた原子炉建屋内にある。
爆発の原因について、経済産業省原子力安全・保安院は「炉心で発生した水素が格納容器の配管から漏れ出て、水素爆発を起こした」との見方を示した。その結果、建屋は壊れたが、格納容器は損傷していないという。
放射性物質は大量には漏れ出ていない。放射性物質を測定するモニタリングデータによると、爆発直前の放射線量は1015マイクロシーベルトで、これは1年間に一般人が浴びる許容量を1時間で超える値だった。だが爆発後は、午後3時40分で860マイクロシーベルト、同6時58分で70・5マイクロシーベルトと減少。保安院は「炉心溶融が進行しているとは考えていない」との見方を示した。枝野幸男官房長官は「格納容器は破損していない。冷静に対応してほしい」としている。
一方、今回の爆発は、炉心の水位が低下、燃料棒が露出して起きる炉心溶融によって、燃料棒が高熱になったことでもたらされた。海江田万里・経済産業相は東京電力に1号機の原子炉を海水で満たすよう指示。東電は午後8時20分に着手した。純水ではなく塩分を含む海水を原子炉に使うと、さびやすくなることなどが理由となって廃炉になる可能性も出てくる。また、万が一、再臨界が起きるのを防ぐため、中性子を吸収して核分裂反応を抑えるホウ酸を用いた。
これに対し、東電の小森明生常務(原子力・立地副本部長)は12日夜の記者会見で「通常と異なる過程で原子炉建屋の上方が開放された。言葉として爆発だった」と認めたが、原因については「会社として水素爆発だったと言えるだけの議論はしていない」と述べるにとどめた。
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■ことば
◇福島第1原発
東京電力初の原発として計画され、1号機が1971年3月、営業運転を始めた。福島県大熊町と双葉町にまたがる約350万平方メートルの敷地に、現在6基の原子炉が稼働する。燃料の核分裂反応によって生じた熱で水を沸騰させ、そこから生じた高温の蒸気でタービンを回して発電する「沸騰水型原子炉」で、総発電量は約470万キロワット。1号機は今年、営業運転開始からちょうど40年を迎える「高経年化原発」だ。
◇炉心溶融
原子炉内の温度が上がりすぎ、冷却機能が失われた結果、燃料が融解、破損すること。想定される事故では最悪の事象で、重大な原子力事故につながる危険がある。米国では1979年のスリーマイル島原発事故で大規模な炉心溶融が発生した。
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毎日新聞 2011年3月13日 東京朝刊」
(2) 毎日新聞 2011年3月14日 東京夕刊
「東日本大震災:福島第1原発また爆発 3号機、建屋吹き飛ぶ 6人けが
◇住民屋内退避指示
東日本大震災の被災地では14日も、被災者の救出作業が続いている。毎日新聞のまとめでは、14日正午現在、死者は2900人超に上り、行方不明は2万人。東京電力福島第1原発3号機では午前11時ごろ、1号機と同様の水素爆発が発生し、6人がけがをした。東京電力が実施すると発表していた計画停電は、供給能力が想定より増えたことや需要が低く抑えられたなどの理由で、午後0時半現在実施されていない。ただ、東電の説明が途中で変更されるなど、対応は混乱している。
経済産業省原子力安全・保安院は14日、東日本大震災で緊急停止した東京電力福島第1原発3号機で午前11時1分、1号機と同様に水素爆発が起きたと発表した。原子炉建屋(たてや)の上部外壁が吹き飛んだとみられる。東電によると、社員4人、協力会社2人の計6人がけがをした。いずれも意識はあるという。保安院によると、原子炉内の水位低下で露出した燃料棒が過熱して溶け、大量の水素が発生し、空気中の酸素が反応するなどして爆発したとみられる。現場には西ないし南西から風が吹いている。原発の半径20キロ以内には住民約500人が病院などに残っているとみられる。被ばくを避けるため、保安院は屋内退避を呼び掛けた。
東電によると、爆発後の午前11時44分、第1原発正門で、1時間あたり20マイクロシーベルトの放射線量が計測された。枝野幸男官房長官は爆発後に記者会見し、「現地の(原発)所長と直接電話で話をしたが、(原子炉のある)格納容器は健全という認識で、放射性物質が大量に飛び散っている可能性は低い。注水は継続され、圧力も一定の範囲内にある」と格納容器に異常はないとの認識を示した。
保安院によると、原子炉格納容器の圧力は14日午前5時ごろ、365キロパスカルアブソルート(耐圧の単位)だったが、同6時50分に530まで高まった。地震後最高値で、設計上の最高圧力をわずかに超過した。保安院は「設計値には余裕があり、直ちに爆発の危険はない」と説明。その後、圧力も約500に下がったとしていた。一方で、建屋内の水素圧力も高まったため壁の一部を外す検討を始め、作業員を一時退避させていた。
3号機の燃料は上部約2メートルが冷却水から露出し、燃料棒が溶ける「炉心溶融」が続いたとみられ、注水の方法に問題があったことが危機的な状況を招いたという。【山田大輔】
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毎日新聞 2011年3月14日 東京夕刊」
(3) asahi.com:2011年3月14日13時22分
「福島第一原発3号機で水素爆発 屋内待避呼びかけ
2011年3月14日13時22分
東日本大震災で被害を受けた東京電力の福島第一原子力発電所(福島県大熊町)の3号機で14日午前11時ごろ、大きな爆発が起きた。経済産業省原子力安全・保安院によると、水素爆発が起きたことを確認した。保安院は、原子炉が入っている圧力容器、それを覆う鋼鉄製の格納容器のいずれも、損傷した可能性は低いとみている。保安院は、20キロ圏内にいる住民に建物内に避難するよう要請した。東電によると、少なくとも11人が負傷しているという。
今回の爆発は、12日に1号機で建屋が吹き飛んだ爆発と同種とみられる。枝野幸男官房長官は14日午後0時40分からの記者会見で「格納容器の健全性は維持されていると思われる」とした上で、周辺の放射線量のデータに大きな変化は確認されておらず、「放射性物質が大量に飛び散っている可能性は低い」と述べた。
同原発で運転中だった1~3号機は地震後、原子炉を冷やす緊急炉心冷却システムが停止。3号機では、炉内の圧力や水位が不安定な状態が続き、燃料棒が一時露出するなどして爆発をしやすい水素が発生していたとみられる。13日午後からは、炉内に海水を注入して冷却を試みていたが、その最中に爆発は起きた。
12日に1号機で起きた爆発では、損壊は原子炉建屋にとどまり、格納容器と圧力容器に異常は確認されていない。保安院は、今回の爆発も原子炉建屋にとどまっているとみている。
保安院によると、20キロ圏には、少なくとも約600人の住民がいるとみており、屋内への避難を要請した。
東電によると、圧力容器、格納容器とも壊れていないことを確認しているという。周辺で中性子線は確認されていないとしている。
原子炉は、内側から圧力容器、格納容器、原子炉建屋の「壁」で守られている。ただ、圧力容器や、格納容器が壊れると、チェルノブイリ事故に匹敵する重大事故となる。」
3.東北での被害とは比べものにはならないのですが、今回、関東に住む立場としては、同じく被害を受けた立場であり、こうした被害の事実に対しては、何か論評する気にはなれません。日々、余震が続いており、朝起きた時、何か船酔いした気分です。ですので、記事を記録として引用しておくにとどめたいと思います。ただ、制御しきれずに原子力発電所の爆発が生じてしまったことからすれば、地震国日本では原子力発電所は無理なのだろうと漠然と感じます。
今回の大地震により、被災地は表現しえないほどの悲惨な結果をもたらしています。3月14日現在で警察庁の発表によると地震による死者は4000人を超えています。しかも報道によると安否が分からない人は2万人を超えています。今現在、多様な救いの道を必要としているのです。
こうした状況に対して必要としているのが政府の対応です。しかしながら、菅直人は、連日、記者会見していましたが、一体、何をしたいのでしょうか?
「今回の地震で、呆れあきれ返ったのが政府の対応の遅さだ。菅首相が国民向けメッセージを発したのは発生から30時間以上たった12日の夜8時半すぎ。昨夜もTVで国民に節電を訴えたが、いずれも質疑応答はなく、「国民の力で乗り切る」など精神論に終始した。具体的な対応、スケジュール、そのための決意を聞きたかった国民は唖然だった……。」(日刊ゲンダイ平成23年3月15日(14日発行)2面)
「地震を延命に利用する首相の視察パフォーマンス
スッカラ菅首相は、この未曽有の危機さえも支持率アップの材料にしようと考えているのだから許しがたい。
12日朝のヘリコプターを使った現地視察も、首相が突然言い出して決まったという。しかし菅の視察が、現場の作業を遅らせる一因になったというのだから、とんでもない話だ。
「福島第1原発の1号機は、すでに圧力上昇を抑えるために空気を放出しなければならない状態でした。しかし、菅首相が来たので現場は対応に追われ、空気の放出作業を遅らせたというのです。その結果、爆発したのだから最悪です」(霞が関関係者)
与野党党首会談も、菅のパフォーマンス以外の何ものでもない。会談が設定されたのは、原発1号機が高温となり危機的な状況の真っただ中。それなのに菅は与野党党首に「原発は大丈夫」と繰り返していた。
2度行った記者会見もひどい内容だった。現地では、まだ人命救出が最優先で行われている時なのに、スッカラ菅首相は、「あの時の苦難を乗り越えて、こうした日本が生まれたと言えるよう頑張っていただきたい」と自己陶酔していた。
揚げ句の果てには、蓮舫を節電啓発担当大臣に、辻元清美をボランティア担当の首相補佐官に任命。いつもの広告塔戦略である。政治ジャーナリストの鈴木哲夫氏がこう言う。
「この危機でも『お友だち人事』なのかと呆れました。民主党内には官邸を経験した松井孝治氏や古川元久氏もいるし、与野党会談で協力を呼びかけるなら、阪神大震災や中越地震を経験した自公に助言を求めてもいい。今、必要なのは広告塔ではなく実践力です。自分に酔っているような記者会見もそうですが、危機管理は瞬間的にその人のホンネや性格が出る。菅さんの人間性がハッキリしました」
この男の卑しさは、どうにもならない。」(日刊ゲンダイ平成23年3月15日(14日発行)3面」
無能な菅直人ですから諦めているとはいえ、菅直人は、自己陶酔したかのように精神論を鼓舞しており、ほとほと疲れます。いま被災地が必要としているのは、精神論ではなく、もちろん広告塔でもありません。いかにして人命を救うか、いかにして飲食を確保するか、いかにして住居を確保するかという、効果的で具体的な救済策なのです。一人で勝手に自己陶酔している菅直人は、声さえもききたくありません。
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1.京都大などの入試問題が試験時間中にインターネット上の掲示板に投稿された問題で、京都大は3月3日午前、京都府警に被害届を提出しています。早大では2月12日にあった英語の試験中、掲示板のヤフー知恵袋に「aicezuki」のハンドルネームで問題文が投稿され、警視庁は3月4日、早稲田大から提出された被害届を受理し、同11日の立教大の英語でも同様の投稿があり、警視庁は立大からの被害届を既に受理しています。これら大学側は、被害届を出している以上、カンニングは犯罪に当たるという意図であることが明らかです。
しかし、他方で、今回のカンニングは古典的な手法(股の下に隠して不正行為を行う)にすぎず、試験監督の不手際があったと言わざるを得なかった実態が明らかになりました。そのため、今回のカンニングを業務妨害と評価してよいのか、疑問も生じます。
「府警内部でも京大の対応に違和感を覚えるという声が出ている。監督の不備の可能性に目をつぶり、内部調査もしないまま警察に丸投げした形になったためだ。
事件発覚から6日目の3日、初めて記者会見した松本紘学長は「監督はちゃんとやっている」と時に声を荒らげて強調。「(京大の監督の)範囲の外で起こるようなネット犯罪であれば、対策を取らなければいけない」とまで述べた。
ところが、予備校生は府警の調べに、試験会場の自席に着き「机の下で携帯電話を操作した」と説明。会場の隅の席は試験監督から死角になるので何回もやったとも話し、一夜にして「監督は万全」との大学側主張に疑問符がついた。
「試験監督の不手際を棚に上げ、すぐに警察に持ってくるのはどうか。自ら検証もせず、批判や追及を受けないよう逃げているだけのように思える」。府警幹部の一人はこうつぶやいた。【広瀬登、太田裕之、林哲平】」(毎日新聞 2011年3月5日 大阪朝刊)
では、カンニングは犯罪になるのでしょうか? 幾つかの記事を紹介しておきます。
(1) 毎日新聞 2011年3月4日 東京朝刊
「質問なるほドリ:カンニングって罪になるの?=回答・山本太一
<NEWS NAVIGATOR>
◆カンニングって罪になるの?
◇行為を罰する法はない 今回は「入試業務を妨害」容疑
なるほドリ 京都大などの入試問題投稿事件で、男子予備校生が逮捕されたけど、カンニングって罪になるの?
記者 試験が失格になる例はありますが、逮捕は極めてまれです。カンニングそのものを罰する法律はありません。今回の容疑は偽計業務妨害です。
Q 聞き慣れない言葉だけど、どんな罪なの?
A 業務妨害罪には偽計業務妨害(刑法233条)と威力業務妨害(同234条)があります。偽計業務妨害は根拠のない風説を流したり、偽計を用いて、人や会社の普段の仕事などを妨害する行為です。
Q 偽計ってどういう意味?
A 策略を講じて相手をだますという意味ですが、法律上は厳密でなく悪意を伴った行為という程度に解釈しています。威力は脅迫など直接的、有形的な方法で、偽計は間接的、無形的な方法で妨害します。偽計は会社に嫌がらせ電話を多数回かけて逮捕されるケースが多いです。罰則は3年以下の懲役または50万円以下の罰金です。
Q 今回の事件ではどんな妨害をしたということになるの?
A 京大では2月25日(数学)、26日(英語)の試験時間中、ネットの「ヤフー知恵袋」に計8回、問題への解答を求める投稿があり、実際に回答がありました。事件が発覚した試験終了直後から、職員が投稿した受験生を特定するためにネット上の回答と答案用紙の解答を照合したり、不審な人物がいなかったかなどを確認しています。本来は不必要な業務をさせ、公明正大であるべき入試そのものを妨害したとされています。また、京大は今月10日に合格発表予定で影響は大きかったのです。
Q 他の大学3校に対しても同じ容疑が掛けられるの?
A これからの捜査ですが、早稲田、立教、同志社大でも、京大と同じように投稿された回答と実際の解答との照合作業や不審者の洗い出しをしています。警察は妨害の程度が大きい京大を優先して立件しました。
Q 今回のような事件で逮捕するのは厳しいとも感じるけど。
A 一部の専門家からは、大学の内部調査で投稿者を特定して合格を取り消せば十分ではないかという意見も出ています。既に大きな騒ぎとなって社会的制裁を受けたという見方もあります。警察も入試の不正行為にこの容疑を適用するのは初めてで、慎重に捜査しています。(社会部)
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◇最近の主な偽計業務妨害事件◇
09年 3月 日本テレビ系列の報道番組で岐阜県が裏金作りをしているなどと虚偽の証言をしたとして、岐阜県警が元会社役員を逮捕
09年 9月 元女優の酒井法子さんを「保釈しなければ警察署が火の海になる」とテレビ局にメールを送った無職の男を警視庁が逮捕
10年12月 国際テロに関する資料がネットに流出した事件で警視庁の業務を妨害したとして捜査
11年2月 ネット掲示板に「新大阪駅で無差別通り魔事件を起こす」と書き込んだ高校3年の少年を大阪府警が逮捕
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質問をお寄せください。〒100-8051毎日新聞「質問なるほドリ」係 [email protected]
毎日新聞 2011年3月4日 東京朝刊」
「入試問題ネット投稿:予備校生逮捕 逮捕の是非巡って両論 不起訴の可能性も
今回の事件は「カンニング」行為を偽計業務妨害容疑で逮捕する初めてのケースとなった。逮捕の是非を巡っては、行為の悪質性から「必要だ」とする声がある一方、「保護の意味からやむを得なかった」という意見も聞かれた。
ネット犯罪に詳しい園田寿・甲南大法科大学院教授(情報犯罪)は「隣席の答案をのぞき見るカンニング行為とは性質が違う。公平に学力を競う試験制度の根幹を揺るがすネット犯罪と見るべきだ」と悪質性を指摘。「投稿の手口など、京都府警は逮捕して事情を聴く必要があったのだろう」と述べた。
ネット問題が専門の岡村久道弁護士(大阪弁護士会)は「少年は行方が分からなくなり、家族から捜索願も出ている。自殺という最悪の展開を想定すれば、逮捕はやむを得なかったのでは」と語った。
こうした経緯から、起訴の可能性については疑問の声も出ている。岡村弁護士は「入試が混乱するのを少年がどこまで予測していたかが問われる」とした上で、「合格取り消しなど社会的制裁を受け、身にしみて懲りたと判断されれば、不起訴になる可能性もある」と見通しを語った。
一方、一橋大の葛野尋之教授(刑事法)は共同通信の取材に対し、「(偽計業務妨害罪に)該当するとは思うが、騒ぎが大きくなったために逮捕したとしたら問題。社会が納得するようなストーリーで供述調書が作られる可能性がある」と懸念する。【村松洋】
毎日新聞 2011年3月4日 東京朝刊」
(3) 東京新聞平成23年3月4日付超過【核心】
「刑事罰適用、賛否分かれる
▼カンニング
多くの法曹関係者は、予備校生の行為に偽計業務妨害罪を適用することは可能との見方で一致するが、刑事罰を適用すべきかどうかをめぐっては意見が分かれる。
刑法は偽計業務妨害を、人をだましたり、策略を講じたりする不正行為で業務を妨害する罪と規定しているが、大学入試での「カンニング」が刑事事件として摘発された例は、過去にもないとみられる。
ある検察幹部は「隣の席の答案を見るようなカンニングは犯罪に当たらない」と指摘。予備校生の行為については問題を流出させた点に注目し、「抽象的な意味での公正な入試の実施だけではなく、流出の発覚が合格発表前の採点作業に支障を与えたのは明らかだ」として、偽計業務妨害罪が成立するとみる。
その場合、カンニングに刑事処分で対処する必要があるのか。園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法)は「大学の情報管理の隙を突いた犯罪。今後の入試試験の運営に大きな影響を及ぼすもので、起訴に相当する」と厳しい。
一方、検察幹部は「予備校生には今後、合格取り消しなどの社会的制裁が考えられ、刑事罰まで科す必要はない」と話す。」
(4) NHKニュース(3月3日 19時38分)
「“逮捕はやむをえない”
3月3日 19時38分
19歳の男子予備校生が偽計業務妨害の疑いで逮捕されたことについて、元検事でインターネットを使った犯罪に詳しい落合洋司弁護士は「今回の事件は大学側の入試という業務を妨害したうえに、本来の業務ではない調査を行わせていることから、偽計業務妨害の罪にあたる」と指摘しました。
また、少年を逮捕したことについては、「単純なカンニングと違って、インターネットを使って多くの人を巻き込んでおり、社会に与えた影響は大きい。投稿した手口や共犯者がいるかどうかなどの真相を明らかにするためには、逮捕はやむをえない」と述べました。
さらに、今後の見通しについては、「少年なので、家庭裁判所で審判を受けることになる。重大な事件の場合、起訴されて通常の刑事裁判を受けることになるが、今回のケースはそれほど重大とまでは言えないのではないか」と話していました。」
2.カンニング行為については、業務妨害罪に当たるのかどうかが問題となっています。
(信用毀損及び業務妨害)
刑法第二百三十三条 虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(威力業務妨害)
刑法第二百三十四条 威力を用いて人の業務を妨害した者も、前条の例による。
偽計業務妨害罪が成立ための要件は、<1>偽計を使用して、<2>その業務を、<3>妨害することが必要です。
業務とは、職業その他社会生活上の地位に基づき継続して行う事務または事業をいいます(大判大正10・10・24)。大学入試は、大学で学ぶ者を選抜する制度ですので、「業務」に当たることには異論がないでしょう。
(1) 多少検討を要するのは、<1>の要件です。
「3 偽計の使用
1 意義
偽計を用いるとは、人を欺罔し、または人の不知、錯誤を利用することをいう。詐欺罪における「人を欺く」より広い。直接被害者に向けられていることは必要ない。人の意思に直接働きかけるのではなく、物に向けて非公然になされる行為、たとえば、有線放送会社が放送送信に使用している電線を密かに切断して、顧客への送信を不能にすること(大阪高判昭和49・2・14判例時報752号111頁)、電話の応答信号の送出を妨害するマジックホンとうい機械を取り付けて、電話料金の課金装置の作動を不能にすること(最決昭和59・4・27刑集35巻6号2584頁)も偽計を用いたものとされている。」(佐久間ほか「刑法基本講義 総論・各論」(有斐閣、2009年)329頁)
カンニング[cunning]とは、「試験のとき、他人の答案や隠し持った本・メモなどを見るなどの不正行為をすること 」を言います(三省堂「大辞林 第二版」より)。この事件での予備校生は、インタ-ネットに問題を投稿し、不特定多数の者による回答を見たという行為をしたのですから、いわゆるカンニングに当たる行為です。
この予備校生が行ったカンニング行為は、インターネットという公の場所への投稿によるカンニングであったことから、「人の不知」を利用したとは言えない面はあるため、「偽計」に当たるのか若干疑問はあろます。しかし、少なくとも試験会場においては、試験監督に見つからないように行ったものですから、「人の不知、錯誤を利用」して行ったと判断できます。
(2) 問題になるのは、<3>の要件です。すなわち、カンニング行為が業務を「妨害」したと言えるのかです。この点については2つほど文献を引用しておきます。
「5 妨害
業務妨害罪の成立には、業務を妨害したことが必要である(未遂犯を処罰する規定はない)。判例は、危険犯であるとする(大判昭和11・5・7刑集15巻573頁、最判昭和28・1・30刑集7巻1号128頁)。しかし、名誉毀損罪や信用毀損罪における毀損と比べて、業務の妨害はより具体的に認定することができるから、侵害犯であるとする見解が有力である。業務に支障を生じさせることが必要である。
発展学習:外形的支障
業務を妨害したというためには、業務に外形的混乱・支障を生じさせることが必要であり、替え玉受験やカンニングのように、個別的な業務における判断の誤りを生じさせ、業務内容を実質的に不適切なものにしたにすぎない場合は除外されるとする見解が有力である。このような見解によれば、3(→329頁)に挙げたマジックホンの事例は、料金の計算を誤らせたものにすぎず、業務妨害にあたらないとの理解が可能であろうが、最高裁(前掲最決昭和59・4・27)は、「課金装置の作動を不能にした」としており、この点に着目すれば、外形的な支障が生じたとおいうことも不可能ではないであろう。」(佐久間ほか「刑法基本講義 総論・各論」(有斐閣、2009年)330頁)
「4 妨害の意義
「妨害した」の意義について、判例は信用毀損罪との均衡から、妨害の危険を生ずれば足りるとして本罪を危険犯とする(大判昭和11・5・7刑集15巻573頁、同旨、団藤520頁、大塚159頁・160頁)。しかし、文言どおり侵害犯と解すべきであろう(平野188頁、大谷144頁、曽根80頁、中森70頁)。したがって、業務遂行に多少とも外形的混乱・支障を生じたことを必要とし、たとえば替え玉受験やカンニングのように、単に個別的な業務における判断の誤りを生ぜしめたにすぎない場合は除外される。業務の外形的妨害があればよく、その具体的な被害額等を明らかにする必要はない。」(西田典之「刑法各論(第4版)」(弘文堂、平成19年)121頁)
これらの文献にあるように、業務を妨害したというためには、業務に外形的混乱・支障を生じさせることが必要であるとして、単に個別的な業務における判断の誤りを生ぜしめたにすぎない「カンニング」行為は、「妨害」に当たらないとするのが、一般的と思われます。
確かに、偽計業務妨害罪について、妨害の危険を生ずれば足りるとして危険犯とする考えもあります。しかし、「危険を生ずれば足りる」という点を強調すればあらゆる行為が「妨害」に該当してしまうため、このように「危険性」を拡大して過度に処罰を広げることは、「謙抑性の原則」から許されません。
裁判例としても、承諾を得た他人の名前で私立大学の入試答案を作成する行為(東京高判平成5・4・5判例タイムズ828号275頁。最決平成6・11・29刑集48巻7号453頁参照)(いわゆる替え玉入試)は、入学選抜試験の答案は「事実証明に関する文書に当たる」として私文書偽造罪(159条1項)に該当するとしてはいるものの、偽計業務妨害罪で起訴さえしてないのです。
試験におけるカンニングは、昔からたびたびなされる行為ですから、試験ではカンニングがあることは当然に予測しているものです。ですから、、試験を実施する側はカンニング防止対策(試験監督による監視など)を行うことも試験業務の内容となっており、他方で、カンニングをした受験生の対応は、最高でも合格取り消しのみでそれ以上の制裁をしないのが一般的です。また、大学での学部の定期試験においては、建前上は、停学、受験していた試験は無効となり、それ以降の試験を受けることができない(受験資格喪失)にするのが一般的です。
ですから、カンニングをした者がいたとしても、それは通常の(予測された)業務の範囲内であり、カンニングが業務妨害にならないのです。単に個別的な業務における判断の誤りを生ぜしめたにすぎないからという説明も可能でしょうが、どう説明しようとも、法律上、「カンニング」行為は、「(業務)妨害」に当たらないとするのが、一般的なのです。
もっとも、大学の定期試験・入学試験での実情は、カンニングに対する対応は、厳重注意かあるいは「見逃し」が一般的でしょう。それは、大学では、学生や受験生は「お客様」だからです。このように、大学側が、カンニング防止対策を怠っている場合は、大学側が通常行うべき業務を身勝手に怠っただけなのですから、その結果、カンニングが横行したとしても、それは大学側の自己責任であって、カンニングを行った者が処罰されるのは不合理です。やはり通常の業務を前提として、カンニングの妨害該当性を判断するべきです。
(3) このように、学説・裁判例はもちろん、現実の運用としてもカンニング行為は(不合格などの内部的な制裁はあるとしても)法律上は不可罰とされてきました。
イ:ところが、今回、カンニングは偽計業務妨害罪に該当するという記事が並んでいるのです。
「多くの法曹関係者は、予備校生の行為に偽計業務妨害罪を適用することは可能との見方で一致するが、刑事罰を適用すべきかどうかをめぐっては意見が分かれる。(中略)
ある検察幹部は「隣の席の答案を見るようなカンニングは犯罪に当たらない」と指摘。予備校生の行為については問題を流出させた点に注目し、「抽象的な意味での公正な入試の実施だけではなく、流出の発覚が合格発表前の採点作業に支障を与えたのは明らかだ」として、偽計業務妨害罪が成立するとみる。」(東京新聞)
「19歳の男子予備校生が偽計業務妨害の疑いで逮捕されたことについて、元検事でインターネットを使った犯罪に詳しい落合洋司弁護士は「今回の事件は大学側の入試という業務を妨害したうえに、本来の業務ではない調査を行わせていることから、偽計業務妨害の罪にあたる」と指摘しました。」(NHK)
すでに述べたようにカンニングについては、カンニング防止策を行うのが通常の業務であり、試験会場はもちろん、試験後も発覚すればそれへの対応をするのが通常の業務の範囲内です。ですから、「流出の発覚が合格発表前の採点作業に支障を与えた」というのは、通常の業務にすぎない行為を「妨害」と評価するものであって、妥当ではありません。
検察幹部は「予備校生の行為については問題を流出させた点に注目し、『抽象的な意味での公正な入試の実施』」を妨害した」とも述べているようです。しかし、これは過度に妨害への危険性して処罰するものであって、妥当ではありません。
また、ある弁護士は、「本来の業務ではない調査を行わせていることから、偽計業務『妨害』の罪にあたる」としています。しかし、すでに述べたようにカンニング防止策を行うことも通常の業務であるのですから、それを「本来の業務ではない調査」と間違った事実認識で判断している以上、妥当ではありません。
この検察幹部や落合洋司弁護士は、一体、学説・裁判例はもちろん、現実の運用をきちんと調べた上で発言しているのでしょうか。学説・裁判例はもちろん、現実の運用とも一致していないのに、過度の処罰を肯定することは極めて疑問です。
ロ:処罰に値しないのが従来の一般的な評価である以上、起訴はあり得ないのが論理的な帰結です。ところが、ある学者は処罰を当然視するのです。
「ネット犯罪に詳しい園田寿・甲南大法科大学院教授(情報犯罪)は「隣席の答案をのぞき見るカンニング行為とは性質が違う。公平に学力を競う試験制度の根幹を揺るがすネット犯罪と見るべきだ」と悪質性を指摘。「投稿の手口など、京都府警は逮捕して事情を聴く必要があったのだろう」と述べた。
ネット問題が専門の岡村久道弁護士(大阪弁護士会)は「少年は行方が分からなくなり、家族から捜索願も出ている。自殺という最悪の展開を想定すれば、逮捕はやむを得なかったのでは」と語った。
こうした経緯から、起訴の可能性については疑問の声も出ている。岡村弁護士は「入試が混乱するのを少年がどこまで予測していたかが問われる」とした上で、「合格取り消しなど社会的制裁を受け、身にしみて懲りたと判断されれば、不起訴になる可能性もある」と見通しを語った。」(毎日新聞)
「その場合、カンニングに刑事処分で対処する必要があるのか。園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法)は「大学の情報管理の隙を突いた犯罪。今後の入試試験の運営に大きな影響を及ぼすもので、起訴に相当する」と厳しい。
一方、検察幹部は「予備校生には今後、合格取り消しなどの社会的制裁が考えられ、刑事罰まで科す必要はない」と話す。」(東京新聞)
「今後の見通しについては、「少年なので、家庭裁判所で審判を受けることになる。重大な事件の場合、起訴されて通常の刑事裁判を受けることになるが、今回のケースはそれほど重大とまでは言えないのではないか」と話していました。」(NHK)
「府警内部でも京大の対応に違和感を覚えるという声が出ている。監督の不備の可能性に目をつぶり、内部調査もしないまま警察に丸投げした形になったためだ。
事件発覚から6日目の3日、初めて記者会見した松本紘学長は「監督はちゃんとやっている」と時に声を荒らげて強調。「(京大の監督の)範囲の外で起こるようなネット犯罪であれば、対策を取らなければいけない」とまで述べた。
ところが、予備校生は府警の調べに、試験会場の自席に着き「机の下で携帯電話を操作した」と説明。会場の隅の席は試験監督から死角になるので何回もやったとも話し、一夜にして「監督は万全」との大学側主張に疑問符がついた。
「試験監督の不手際を棚に上げ、すぐに警察に持ってくるのはどうか。自ら検証もせず、批判や追及を受けないよう逃げているだけのように思える」。府警幹部の一人はこうつぶやいた。」(毎日新聞 2011年3月5日 大阪朝刊)
こうして引用すると、現実の運用を知っている捜査機関や弁護士は、「予備校生には今後、合格取り消しなどの社会的制裁が考えられ、刑事罰まで科す必要はない」「試験監督の不手際を棚に上げ、すぐに警察に持ってくるのはどうか。自ら検証もせず、批判や追及を受けないよう逃げているだけ」「今回のケースはそれほど重大とまでは言えない」と判断して、不起訴処分となるとの見通しを述べています。
ところが、園田寿・甲南大法科大学院教授(刑法)だけは、「大学の情報管理の隙を突いた犯罪。今後の入試試験の運営に大きな影響を及ぼすもので、起訴に相当する」と指摘しています。
しかし、今回の事件では、インターネットを利用した点で目新しいとはいえ、「受験した座席は試験監督から見えにくい場所で、机の下に隠し持っていた携帯電話を操作して問題を投稿した」のですから、<1>試験監督の死角を狙って行うという極めて古典的なカンニング方法であり、<2>股下・机の下にカンニング-ペーパー(カンニング用に隠し持つ紙片)を隠して答えを写したのと殆ど変わりがなく、これまた、古典的なカンニング方法にすぎないのです。
それなのに、園田教授は、「大学の情報管理の隙を突いた犯罪」などと大層な言い回しをしてしまうのです。dせうが、それは現実離れしたものであって、妥当ではありません。古典的なカンニング方法を摘発できないほどのお粗末な試験監督を行っている大学側こそが問題なのです。したがって、園田教授の見解は妥当ではありません。園田教授はもっと現実を知るべきでしょう。
3.今回の問題は、たかがカンニングであり、しかも古典的なカンニングの方法にすぎません。
(1) それなのに、全国紙(朝日、読売、毎日)は、重大犯罪のごとく大騒ぎしてしまいました。世論もそうした報道に影響され、熱狂させられた面があります。特に、朝日新聞は、連日大きく報道して国家の一大事のごとく散々煽って大問題にしておきながら、今になって平然と次のように言い放つのです。
「予備校生逮捕―若者の失敗、どうみる
京都大などの入試問題が試験中にネットに投稿された問題で、仙台市の男子予備校生が逮捕された。偽計業務妨害容疑である。
カンニングは、一緒に勉強してきた多くの仲間を裏切る行いだ。社会的影響も大きかった。ただ、日本ではカンニング行為そのものを罰する法律もない。まだ19歳。処分は慎重に判断すべきだろう。
予備校生は「携帯を股の間に隠して操作した」と話しているという。捕まってみれば、器用だが幼い手口にも思える。世間の大騒動との落差に、ネット社会の今が浮かびあがるようだ。(中略)
大学が最初にこの問題をつかんだ段階で、「不心得者よ、名乗り出よ」と呼びかけるような手立てはなかったか。今思うと、ネットの進化についてゆけない大人社会が、過剰に反応した面はないだろうか。
冷静に考えよう。ネットや携帯のなかった昔から、若者はときにとんでもない失敗をしでかすものだから。」(朝日新聞平成23年3月5日付「社説」)
カンニングは犯罪でもないのですから、大騒ぎする必要はなく、最初から「冷静に考え」ればよかったのです。「今思うと、ネットの進化についてゆけない大人社会が、過剰に反応した面はないだろうか」などという部分は、自己批判のつもりなのでしょうが、だったら、素直に「騒ぎすぎました。謝罪します。」と紙面に謝罪文を掲載するべきでしょう。
戦前からの問題となっていることですが、日本のマスコミは、やたらと感情的すぎて、冷静に判断できないのです。戦前は、それが世論を熱狂させ、第2次世界大戦の開戦へつながり、当時の政府も破滅の道と分かっていながら戦争へと突き進んでしまったのです。
特に、マスコミはインターネットが絡むとすぐに大騒ぎすることも、こうした感情的な報道を助長してしまっています。そのため、園田教授も含めて、いまだに日本の世論が感情的な報道に左右され、気がふれたように「処罰、処罰」と喚き立ててしまうのです。
(2) 他方、被害者を装っている大学側も、すぐに警察に頼ってしまいました。警察の介入を避けようとする気概ともいえる「大学の自治」の精神(憲法23条)は一体どこへ行ってしまったのでしょうか。
「3 大学の自治
学問研究の自主性の要請は、とくに大学について、「大学の自治」を認めることになる。大学の自治の観念は、ヨーロッパ中世以来の伝統に由来し、大学における研究教育の自由を十分に保障するために、大学の内部行政に関しては大学の自主的な決定に任せ、大学内の問題に外部勢力が干渉することを排除しようとするものである。それは、学問の自由の保障の中に当然のコロラリーとして含まれており、いわゆる「制度的保障」の一つと言うこともできる。
大学の自治の内容としてとくに重要なものは、学長・教授その他の研究者の人事の自治と、施設・学生の管理の自由の二つである。ほかに、近時、予算管理の自治(財政自治権)をも自治の内容として重視する説が有力である。(中略)
(二) 施設・学生の管理の自由
大学の施設および学生の管理もまた、大学の自主的判断に基づいてなされなければならない。この点に関してとくに問題となるのが、大学の自治と警察権との関係である。
警察権が大学内部の問題に関与する場合はさまざまである。まず、犯罪捜査のために大学構内に立ち入る場合がある。大学といえども治外法権の場ではないので、正規の令状に基づく捜査を大学が拒否できないこと、むしろ必要と事情に応じて積極的に協力することは、言うまでもない。しかし、捜査に名をかりて警備公安活動が行われるおそれなしとしないので、捜査は大学関係者の立ち会いの下で行われるべきである。次に、大学構内で予想外の不法行為が発生し、そのためにやむを得ず大学が警察力の援助を求める場合がある。この場合には、原則として、警察力を学内に出勤させるかどうかの判断は大学側の責任ある決断によるべきである。したがって、警察が独自の判断に基づいて大学内へ入構することは、大学の自治の保障の趣旨に反するとみるべきであろう。」(芦部信喜「憲法(第4版)」(岩波書店、2007年)162頁以下)
明治憲法下において、学問の自由が直接的に国家権力によって侵害された歴史を踏まえて、あえて諸外国と異なり、学問の自由が憲法の明文で規定され、大学の自治が憲法の保障の下に認められているのです。それなのに、なぜ、入学試験という学問研究の場に参加する者を選択する行為を、自ら調査・検証することなく、安易に警察に委ねてしまったのでしょうか。
こうした安易に捜査機関に協力を求める行為は、京都大学に限ったことではありません。例えば、早稲田大学で中国の江沢民国家主席の講演会が開催された際に、警備に当たった警察の要請に応えて大学は、参加希望学生が氏名・学籍番号・住所・電話番号を記入した名簿の写しを学生に無断で警察に提出したため、学生が大学に対しプライバシー侵害を理由に損害賠償を求めた事件がありました(江沢民講演会参加者名簿提出事件)。最高裁は、本件の個人情報につき、「本人が、自己が欲しない他者にはみだりにこれを開示されなくないと考えることは自然なことであり、そのことへの期待は保護されるべきものであるから、本件個人情報は、上告人らのプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる」と述べ、本件においては学生の承認を求めることも容易であったと認定してプライバシー侵害を認めています(最判平成15・9・12民集57巻8号973頁)(芦部信喜「憲法(第4版)」(岩波書店、2007年)120頁)。こうした事件も、大学側が「大学の自治」を遵守していれば、およそ名簿の写しを学生に無断で警察に提出することはなかったはずなのです。
このように、安易に捜査機関に委ねてしまう今回の大学側の態度をみると、大学側が自ら大学の自治を学問の自由を放棄したに等しく、過去の歴史的経緯を踏まえて制定された日本国権憲法の趣旨が損なわれてしまったのです。東大ポポロ事件(最大判昭和38・5・22刑集17巻4号370頁)において、大学構内において行っていた警備公安活動に対して、大学側が行った抵抗は、昔を懐かしむだけの遠い過去の出来事になってしまったようです。
いまや大学にとっては、学生は単に金を出してくれる顧客にすぎず、邪魔と思えばあっさり警察に情報を提供し介入を認めるだけの存在であって、大学の意義は、就職活動の便宜や就職前の「遊び場」でしかないことを自ら認めてしまったように思えるのです。
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1.報道記事を幾つか。
(1) 時事通信(2011/03/03-22:11)
「19歳予備校生逮捕=「1人でやった」、偽計業務妨害容疑-入試問題投稿・京都府警
京都大など4大学の入試問題が試験中にインターネットの掲示板「ヤフー知恵袋」に投稿された事件で、京都府警は3日午後、投稿に使われた携帯電話の契約者の息子で、仙台市の予備校生(19)を偽計業務妨害容疑で逮捕した。
府警によると、予備校生は「間違いありません」と逮捕容疑を認めた上で、動機を「合格したかった」と説明。掲示板には「aicezuki」のハンドルネームで書き込み、投稿は「1人でやった」と供述しているという。
逮捕容疑は、先月26日に行われた京大入試の英語の試験中に、携帯電話でヤフー知恵袋に試験問題を投稿。閲覧者から解答を得るなどし、入試の公正さを害して混乱させ、同大の業務を妨害した疑い。
府警によると、京大の調査の結果、予備校生の答案用紙の英語の解答と、掲示板に記載された問題への回答内容は似ていたという。投稿方法について、府警は「トイレも含めた試験会場から送信した」としている。
予備校生は一時所在不明になっていたが、府警などの捜査員が3日午前、仙台市内の路上にいるところを発見、同市内の警察署に任意同行した。この際、携帯電話1台を所持しており、府警が押収した。スマートフォンではないという。(2011/03/03-22:11)」
(2) NHKニュース(3月4日 18時22分)
「“机の下で携帯操作”と供述
3月4日 18時22分
大学入試の問題が試験中にインターネットの質問サイトに投稿された事件で、京都大学の業務を妨害した疑いで逮捕された男子予備校生は「受験した座席は試験監督から見えにくい場所で、机の下に隠し持っていた携帯電話を操作して問題を投稿した」と供述していることが、捜査関係者への取材で新たに分かりました。
仙台市に住む19歳の男子予備校生は、先月26日に行われた京都大学の入学試験で携帯電話を使ってインターネットの質問サイトに英語の問題の一部を投稿し、大学の業務を妨害したとして3日、偽計業務妨害の疑いで京都府警察本部に逮捕されました。警察は、4日から予備校生の本格的な取り調べを始めています。
調べに対して予備校生は「受験した座席は教室の前方の左隅で、試験監督からは見えにくい場所だった。机の下で股の間に隠し持った携帯電話を操作して質問サイトに投稿した」と供述していることが捜査関係者への取材で新たに分かりました。
予備校生の携帯電話からは、京都大学の英語の試験の際、開始から7分後と15分後に日本語の文章の英訳問題が1問ずつ投稿されています。また、前日に行われた文系の数学の試験の際には5分から10分ほどの間隔で質問サイトにあわせて6回の投稿があり、記号なども含めてほぼ正確に問題が打ち込まれていました。
警察は、具体的な投稿方法について解明を進めるとともに、大学側からも話を聞いて予備校生がいた教室の監督態勢についても調べることにしています。」
カンニング[cunning]とは、「試験のとき、他人の答案や隠し持った本・メモなどを見るなどの不正行為をすること 」を言います(三省堂「大辞林 第二版」より)。この事件での予備校生は、インタ-ネットに問題を投稿し、不特定多数の者による回答を見たという行為をしたのですから、いわゆるカンニングに当たる行為です。
インターネットを利用した点で目新しいとはいえ、「受験した座席は試験監督から見えにくい場所で、机の下に隠し持っていた携帯電話を操作して問題を投稿した」のですから、<1>試験監督の死角を狙って行うという極めて古典的なカンニング方法であり、<2>股下・机の下にカンニング-ペーパー(カンニング用に隠し持つ紙片)を隠して答えを写したのと殆ど変わりがなく、これまた、古典的なカンニング方法にすぎないのです。
カンニングは昔からある行為であり、「万引き」よりも多くの人が行っており、身近な人にも必ずいるものです。何年か真面目に試験監督をしてみれば、カンニングをする者が多数いることはよく分かるはずです。
それなのに、全国紙(朝日、読売、毎日)は、国家の一大事かのように連日一面に掲載するなど大騒ぎでした。しかも、今回の事件は、単なる古典的なカンニング方法にすぎないのです。ですから、これほどまでに大々的に騒ぐ必要はなかったのです。マスコミはインターネットが絡むとすぐに大騒ぎしますが、それは「ネットが苦手なおっさんがオロオロして喚き立てている醜態を晒している」だけのことです。
たかがカンニングなのですから、インターネットが絡んだくらいで一々騒ぐのは、いい加減に止めにしてほしいものです。全くマスコミはなんて馬鹿なのだろうかと呆れてしまいます。(これだけ馬鹿騒ぎをしているマスコミを見ると、カンニングをしていた記者様、官僚様、弁護士様、検察官様、裁判官様の実名を暴露したくなります。)
(1) スポーツ報知:2011年3月5日10時57分
「京大に「大騒ぎするな」批判殺到149件…入試投稿問題
京大には批判電話が相次いだ。予備校生が逮捕された3日以降、「被害届を取り下げて予備校生を釈放すべき」「たかがカンニングで大騒ぎするな。本人を不合格にすればいいだけ」など大学の対応を批判する電話やメールが、4日夕までに計149件あった。
大学側を非難する意見は全体の約9割。中には「あんな問題だからカンニングする。もっと、自分で考えるような問題を作るべき」と設問方式自体への批判もあった。予備校生が出身の東北地方からの電話も多いという。
京大広報課は「対応は万全だった」と強調。「基本的に受験生を信頼している。机の下をのぞき込むなど、プレッシャーを与える行動はしていない」と説明したが、ある公立大職員は「あそこまで何度も投稿されていると、(試験監督官が)寝ていたと言われても仕方ない」と指摘する。京大は、投稿が確認された英語の試験で、受験者約8000人に対し、監督官約400、数学は約2500人に対し、約120人を配置していた。
(2011年3月5日10時57分 スポーツ報知)」
(2) 日経新聞平成23年3月4日付朝刊39面
「“古典的”手口に関係者戸惑いも 「普通気付くと思うが…」
携帯電話を股の間に隠して手で打った――。入試問題の投稿問題で逮捕された予備校生(19)が京都府警に供述したとされる手口は“古典的”だった。試験官の目を盗んだとみられるが京都大は「対応は万全だった」と強調。他大学の入試担当者からは「普通は気付くと思うのだが……」と戸惑いの声も上がった。
トイレから送信説、外部に中継役がいたとする説、眼鏡型などの小型カメラ説。発覚後さまざまな方法が取りざたされたが、ある大学の入試担当者は「ふたを開ければカンニングペーパーを持ち込むこれまでの手口と何も変わらない」と話す。
京大の数学では6問が投稿された。ある公立大職員は「あそこまで何度も投稿されていると(試験官が)寝ていたと言われても仕方ない」と手厳しい。
大阪大の入試担当者は「携帯電話を使えば、行動が不自然になり受験生の中ではかなり目立つのではないか」と指摘する。大阪市立大の担当者は「少なくとも周りの受験生は気付いていたのでは」。
一方、学内の試験で「カンニングをした」と後に卒業生から告白されたことがある中国地方の大学の准教授は「見破る自信はあったが……。試験官は難しい」と打ち明けた。」
(3) 東京新聞平成23年3月5日付朝刊31面
「未来ある子どもに逃げ道を
「夜回り先生」元定時制高校教諭 水谷修さん
京都大が今回のカンニングで、業務妨害を受けたと警察に届けたのはあまりにも感情的だった。受験生が関与していると考えれば、悪人扱いはできない。子どもには逃げ道をつくってあげてほしい。
一呼吸置いて、「やった人は名乗り出てください。警察には言いません」と呼び掛けるべきだった。名乗り出ないなら、一人多く合格させればいい。カンニングで合格した少年が自分の不正行為に苦しむだけだから。
大学側は被害届を取り下げてほしい。カンニングは許せない行為だが、少年は反省している。子どもは不完全な存在だから、「君にも未来はある」と諭すことが教育者の態度。愛こそが必要だ。
携帯電話を使ったカンニングは韓国でもあったし、日本の大学でも試験中に起きているが、警察に訴えることはしていない。京都大の対応は「名門で社会的影響が大きい」からだろうし、警察の逮捕は少年の命を守るためだったと思う。起訴はされないでほしい。
カンニングをされたのは試験官のミス。大学側が不正を誘発しない環境をつくれなかった非を認めず、少年に全ての責任を押しつけるのはあまりにも自己保身。少年を犯罪者にしたのは私たち大人で、少年を社会から追放するような仕打ちは絶対に避けるべきだ。」
イ:試験監督の任務は、<1>試験のスムーズな運営(試験問題と解答用紙の速やかな配布・回収)とともに、<2>試験の公平性を図るために、不正行為を未然に防ぎ、不正行為を摘発することにもあります。
「トイレから送信説、外部に中継役がいたとする説、眼鏡型などの小型カメラ説。発覚後さまざまな方法が取りざたされたが、ある大学の入試担当者は「ふたを開ければカンニングペーパーを持ち込むこれまでの手口と何も変わらない」と話す。
京大の数学では6問が投稿された。ある公立大職員は「あそこまで何度も投稿されていると(試験官が)寝ていたと言われても仕方ない」と手厳しい。」(日経新聞)
カンニングの方法には、色々ありますが、特に、カンニングペーパーや類似の行為だけは阻止するよう、気を配るのが、一般的な試験監督でしょう。カンニングペーパーは、不正行為であることが証拠上明らかであり、また、正解であることが可能性が高いことから、参考書の持ち込みに等しいからです。
特に、試験監督からみて死角にあると思われる受験生に対しては、その受験生がカンニングの誘惑にかられやすいことから、特に気を配り、カンニングを刺せないように注意をするが「試験監督の鉄則」といえます。
ところが、今回の事件では、、「受験した座席は試験監督から見えにくい場所で、机の下に隠し持っていた携帯電話を操作して問題を投稿した」のであり、しかも何度も投稿していたのですから、試験監督は明らかに任務を怠っていたと言わざるを得ず、試験監督の責任は重く、試験監督もまた大学内部において厳しい処分に値するといえます。
不正を行ったという受験生が一番悪いことは確かですが、大学側の試験監督の無責任さにも問題があったのです。それなのに、大学側はすぐに警察に被害届を出すなど被害者を装うのは、まったく無責任だと呆れます。
ロ:「夜回り先生」と言われる水谷さんは、次のように述べています。
「カンニングをされたのは試験官のミス。大学側が不正を誘発しない環境をつくれなかった非を認めず、少年に全ての責任を押しつけるのはあまりにも自己保身。少年を犯罪者にしたのは私たち大人で、少年を社会から追放するような仕打ちは絶対に避けるべきだ。」(東京新聞)
カンニングをした受験生の対応は、合格取り消しのみでそれ以上の行為をしないのが一般的です。また、大学での学部の定期試験においては、建前上は、停学、受験していた試験は無効となり、それ以降の試験を受けることができない(受験資格喪失)にするのが一般的です。
ただし、大学の定期試験での実情は、カンニングに対する対応は、厳重注意かあるいは「見逃し」が一般的でしょう。それは、大学では、学生や受験生は「お客様」だからなのです。ですから、暗に、カンニングの摘発はしないようにしているのです。
何年も試験監督をしていれば分かることですが、カンニングの摘発も、それなりの技術を必要とします。ですから、真剣に取り組むという意欲とともに技術がなければ、カンニングの摘発はできません。しかし、大学側は、カンニングを摘発する気がないので、カンニング摘発の技術を磨くことをせず、(経費節減のため)多数の受験生に対して少人数の試験監督で対応してしまうのです。
そうしただらしない対応をしている大学が、なぜか、今回の事件については、警察に被害届を出し、「万全を対応委をしていた」などと言うのですから、呆れてしまいます。「あまりにも自己保身」だと言わざるを得ないのです。(マスコミが、大学でのこうしたカンニングへの対応の実情を知らないことも、馬鹿騒ぎの一因でしょうが。) (カンニングをした受験生の対応は、合格取り消しのみでそれ以上の行為をしないのが一般的なのに、逮捕にまで至ったのも驚きです。まさか起訴はしないでしょうが。)
<3月7日付追記>
2つの記事を追記します。2つとも、「業務妨害」だと声高に叫んでいる大学自体を批判している記事です。
(1) 読売新聞:2011年3月4日15時02分
「居眠り・私語・「雑用」公言…試験監督に問題も
京都大や早稲田大など4大学の入試問題がインターネット掲示板「ヤフー知恵袋」に投稿された事件で、入試会場での監督態勢の甘さを問う声が出ている。
逮捕された男子予備校生(19)は「一人でやった」と供述しており、試験会場で断続的に携帯電話を操作していたとみられるが、試験監督らがこうした不審な動きを見逃していた可能性があるからだ。大学側は「不正防止に万全の態勢をとってきた」とするが、試験監督態勢の不十分さや、先端電子機器への対応の遅れを指摘する声もある。
京都府警の調べでは、予備校生は2月26日、京都大の英語の試験中に携帯電話で掲示板に投稿した上、寄せられた回答も閲覧していた疑いが持たれている。
京大によると当時、受験生約8000人に対し、監督約400人を配置。受験生も椅子を一つずつ空けて座らせるなどしており、京大幹部は不正発覚直後の会見で「十分な数の監督を置いていた」としていた。
しかし、長年、センター試験の大学責任者を務めていた60歳代の国立大学の元教授は、「監督の数が多ければいいというわけではない。試験監督を『雑用』と呼んではばからず、いいかげんにやる教員も多い」と証言する。
センター試験では会場に2人以上の教授を試験監督として配置。しかし、元教授によると、試験中に自分の講義のテスト採点を行ったり、いびきをかいて眠ったりする教授もおり、試験後、「試験監督のおしゃべりがうるさかった」と、苦情を寄せられたこともあった、という。
(2011年3月4日15時02分 読売新聞)」
(2) 毎日新聞 2011年3月5日 大阪朝刊
「入試問題ネット投稿:京大対応、強まる批判 抗議殺到、「監督は万全」に疑問符
入試問題投稿事件で逮捕された仙台市の予備校生(19)の“幼稚”ともいえるカンニングの手口が明らかになるにつれ、京都大への批判が強まっている。不正行為を防げなかったばかりか、声高に「被害者」の立場を強調したとの見方からだ。
事件に関し、京大へ4日までに寄せられた電話は170件を超え、ほとんどが苦情や抗議。捜査を進める京都府警内部にも大学の対応を疑問視する声がある。京大広報課によると、電話は3日夕までに約30件、4日は午後5時半までに144件に上った。
うち十数本は激励だったが、その他は「監視が甘かったのではないか」「被害届を出して逮捕させたのは間違い」「カンニングで逮捕はやりすぎ」といった意見。「予備校生がかわいそう」という同情の声もあった。
一方、府警内部でも京大の対応に違和感を覚えるという声が出ている。監督の不備の可能性に目をつぶり、内部調査もしないまま警察に丸投げした形になったためだ。
事件発覚から6日目の3日、初めて記者会見した松本紘学長は「監督はちゃんとやっている」と時に声を荒らげて強調。「(京大の監督の)範囲の外で起こるようなネット犯罪であれば、対策を取らなければいけない」とまで述べた。
ところが、予備校生は府警の調べに、試験会場の自席に着き「机の下で携帯電話を操作した」と説明。会場の隅の席は試験監督から死角になるので何回もやったとも話し、一夜にして「監督は万全」との大学側主張に疑問符がついた。
「試験監督の不手際を棚に上げ、すぐに警察に持ってくるのはどうか。自ら検証もせず、批判や追及を受けないよう逃げているだけのように思える」。府警幹部の一人はこうつぶやいた。【広瀬登、太田裕之、林哲平】
毎日新聞 2011年3月5日 大阪朝刊」
読売新聞の記事は、「業務妨害」だと声高に叫んでいる大学教員自体が、カンニングを防止すべき試験監督の任務をさぼっている実態がはびこっていることを指摘しています。ある元教授は、「試験監督を『雑用』と呼んではばからず、いいかげんにやる教員も多い」とか、「試験中に自分の講義のテスト採点を行ったり、いびきをかいて眠ったりする教授もおり、試験後、『試験監督のおしゃべりがうるさかった』と、苦情を寄せられたこともあった」と証言しています。試験監督を長年行っていれば、誰でも知っている内容でしょう。
毎日新聞の記事は、警察による京大への批判的な評価を内容としています。 「試験監督の不手際を棚に上げ、すぐに警察に持ってくるのはどうか。自ら検証もせず、批判や追及を受けないよう逃げているだけのように思える」と府警幹部は述べているようです。「監督の不備の可能性に目をつぶり、内部調査もしないまま警察に丸投げした」点からすれば、大学自ら試験監督業務を怠っていた以上、業務「妨害」に値しないのではないか、と言えるわけです。
試験監督業務をいい加減にやっている教員の存在があり、京大の場合も試験監督としての不手際が明白です。このように自ら業務を怠っている以上、業務の妨害を受けたと批判する資格はないと評価できることから、捜査機関側、警察の方としては、業務妨害罪で起訴する行為には値しないと評価できそうです。
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<1>「大相撲・八百長問題~八百長を処罰する規定はあるのか?」(2011/02/04 21:27)
<2>「大相撲八百長疑惑問題:相撲はスポーツか興行か? 八百長は日本の文化なのか?(東京新聞平成23年2月5日付「こちら特報部」より)」(2011/02/06 17:07)
<3>「大相撲・八百長疑惑問題:海外新聞の評価~八百長疑惑は騒ぎすぎでは?」(2011/02/11 22:28)
日本の全国紙、特に、朝日新聞と毎日新聞だけは、いまだに興奮して八百長疑惑を非難し続けています。大相撲・八百長疑惑問題については、全国紙(朝日、毎日、読売)の基調は、「徹底的な八百長根絶を行うべき」というものばかりです。
1.3つほど引用しておきます。
(1) 朝日新聞平成23年2月10日付朝刊16面「記者有論」
「大相撲と八百長 スポーツなら全力士の調査を――編集委員・西村欣也(にしむら・きんや)
それならば、どうぞ、八百長をしてください、と思う。大相撲の話だ。メールでの八百長疑惑が発覚してから、様々な意見がファンや識者の間で飛び交っている。その中に「大相撲は日本の伝統文化でファンは八百長があることを薄々知っていて、それも承知の上で楽しんでいる」という言説がある。ならば、どうぞ、だ。
大相撲は三層構造になっている難しい存在だ。古来の神事であり、興行であり、現代スポーツという三面を持っている。これをどういう順序でピラミッド構造にしていくか。興行を屋台骨にし、その上に神事、スポーツが載っているのならば、今回の問題も論じるに値しない。相撲は、元々興行なのだから。新公益法人移行など、目指すべくもない。
しかし、私は大相撲の屋台骨はスポーツであると思っている。その上に興行と神事が積み重なった国技だという認識に立ってきた。
ここを、まず、議論する必要があるだろう。神事を兼ねた興行なのだとすれば、大相撲は八百長の解明など無駄な努力をせず、伝統芸能として生きていけばよい。
仮にスポーツであることを屋台骨にするなら、今回の八百長問題は大相撲の根幹を揺るがす大問題だ。八百長の疑念が少しでも入ってしまえば、それはスポーツとして認められない。(中略)
大相撲という伝統的な国民の財産をつぶすのか、という声も聞こえる。しかし、大相撲が再生し、発展していくためにはスポーツという根幹が必要なはずだ。それがなければ、大相撲は古来行われてきた日本独自の筋書きのある興行で神事と位置づけるしかない。
時間がかかっても全力士の全容解明を進める。プロセスをファンは厳しく見つめ続ける。そのことでしかスポーツとしての大相撲再生はできないと考える。」
西村欣也・朝日新聞編集委員は、「八百長解明ができなければ、大相撲という伝統的な国民の財産をつぶしてもよい」と言わんばかりのことまで述べています。「大相撲はスポーツなのだから、八百長は絶対にいけない」という執念があるようですが、なぜ、そこまで八百長疑惑解明に固執するのでしょうか。固執するだけの根拠は「大相撲の根幹を揺るがす大問題」と述べるだけで、なぜ、大問題なのかの理由も、何も示していないのです。単なる感情論による論説であって、とても正気の沙汰とは思えません。
西村・編集委員は、最初の論説では、根拠なく「大相撲は、興行ではなくスポーツだ」と断言していました。ところが、今回は一転して、「(実は)大相撲は三層構造になっている難しい存在だ。古来の神事であり、興行であり、現代スポーツという三面を持っている」などと述べているのです。あれほど、スポーツだと断言していたのに、謝罪をすることなく、「実は三層構造だった」などと自説の間違いの訂正を図るのですから、ずいぶんといい加減な人物です。
だいたい、「三層構造だ」なんて、一体、いつから誰が言っているのでしょうか? 急に「三層構造」などと言ったところで単なる感情論にすぎません。「私は大相撲の屋台骨はスポーツであると思っている」とも言っていますが、その理由さえも何も示していないのです。
「三層構造」「屋台骨はスポーツ」などに限らず、西村・編集委員の文章は、何の理由も示していないまま独自の論理を展開しているのですから、これでは単なる個人の感想文・感情論であって何の説得力もありません。おそらく西村・編集委員は、論理的に物事を考えたり、深く物事を考える癖がないのでしょう。だから、こうした感情論だけの文章になってしまうのです。
「(興行ならば)それならば、どうぞ、八百長をしてください、と思う」という文章は、まさに、ふてくされた感情そのものです。常識ある人物であれば、スポーツだろうと興行だろうと、ルールがある以上、八百長ばかりではいけないことは誰にでもわかるはずなのです。西村・編集委員は、無能なのでしょう。
(2) asahi.com:2011年2月20日18時30分
「八百長調査 私なら…「告訴を」「内部告発促す方策を」
2011年2月20日18時30分
「ウミを出し切る」と日本相撲協会の放駒理事長が言い切った八百長問題。だが弁護士ら外部識者を集めた特別調査委員会によっても新事実はなかなか見えず、真相解明は遠い印象だ。「徹底調査」をいうのなら、ほかの手段も考えた方がよくないか。
「相撲協会は『偽計業務妨害』容疑で警視庁に告訴し、捜査に委ねた方がいい」。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士はこう提案する。
八百長問題は力士らの野球賭博事件を警視庁が捜査する中で発覚した。しかし「合法的な賭け事」の対象ではない相撲は、八百長を取り締まる法律がない。警視庁が立件できないのはこのためだ。
だが「八百長という不正行為で相撲協会の業務が妨害された」ととらえれば、被害を受けた協会から警察に捜査を求めることができる――これが若狭氏の指摘だ。(以下、省略)」
「大相撲・八百長問題~八百長を処罰する規定はあるのか?」(2011/02/04 21:27)でも触れたことですが、朝日新聞も、八百長については、警察としては業務妨害罪の立件は困難だと判断して、マスコミにリークしたことは知っているはずです。
ところが、元検事の若狭氏に「相撲協会は『偽計業務妨害』容疑で警視庁に告訴し、捜査に委ねた方がいい」などと言わせ、それを記事にするのです。いくら警視庁に告訴しようとも、八百長について捜査をするわけがないと分かっているのに、わざとこうした記事を掲載するのです。これは、読者に誤解を与えるものであって、妥当性を欠く記事です。
八百長は犯罪ではないのですから、捜査機関の性質上、捜査機関がこの問題で捜査を行うこと自体、許されない行為です。報道機関は権力の監視の役目があるからこそ、報道の自由が保障されているのですから、捜査機関による捜査を奨励するような記事は、報道機関としての役割を放棄するものです。
(3) 毎日新聞 2011年2月20日 東京朝刊
「社説:相撲界組織改革 八百長根絶が前提だ
大相撲が野球賭博事件で大揺れしていた昨年7月、日本相撲協会の改革を目指して設置された「ガバナンス(組織の統治)の整備に関する独立委員会」(奥島孝康座長)が17日、協会改革案を答申した。
A4判で50ページ近くに及ぶ答申書につけられたタイトルは「日本相撲協会の公益法人化へ向けての改善策」。2年後の11月に申請期限が迫った新しい公益法人制度への移行をにらみ、認可に不可欠な組織改革を盛り込んだ。(中略)
八百長相撲は大相撲の根幹を揺るがす不正行為だ。八百長相撲に対する厳罰規定を作り、その徹底的な排除と具体的な再発防止策を協会が示さない限り、相撲協会の「公益法人化」は絵空事に終わる。(中略)
一握りの力士出身者が協会を切り盛りし、外部の声を遮断している間に八百長相撲が巣くってしまった。大相撲も時代の要請に応える組織に変わらなければ生き残ることはできない。それこそが全国の相撲ファンの期待に応える唯一の道だ。
毎日新聞 2011年2月20日 東京朝刊」
「八百長相撲は大相撲の根幹を揺るがす不正行為だ」としていますが、その根拠は何なのでしょう。どんな事柄にも不正行為はつきものです。ですから、不正行為があるからといって、「根幹を揺るがす」ことにはならないのです。
「八百長相撲に対する厳罰規定を作り、その徹底的な排除と具体的な再発防止策を協会が示さない限り、」は「相撲協会の『公益法人化』は絵空事に終わる」としています。しかし、その論理からすれば、「公益法人」にならないのであれば、八百長相撲は許されるということになってしまいます。ですが、それで本当にいいのでしょうか? 毎日新聞は、もう少し論理的に考えるべきでした。
確かに、公益法人という点がなければ、マスコミが相撲協会に対して文句をつける根拠を失ってしまいます。だから、公益法人化の問題と八百長問題を結び付けているのでしょう。しかし、公益法人化は法律上の要件を備えているかの問題(法律論)ですが、八百長問題は大相撲のルールに関わる問題(非法律論)ですから、公益法人化と八百長問題は別問題なのです。ですから、毎日新聞の社説は単なる言いがかりにすぎないのです。
「一握りの力士出身者が協会を切り盛りし、外部の声を遮断している間に八百長相撲が巣くってしまった」といいます。しかし、古来から、大相撲では八百長がありました。ですから、「一握りの力士出身者が協会を切り盛り」しているか否かを問わず、「外部の声を遮断している」かどうかを問わず、八百長はあったのです。これも、根拠のない単なる言いがかりにすぎないのです。
(1) 毎日新聞平成23年2月19日付(土)朝刊「野坂昭如の『七転び八起き』」
「連載98回・八百長問題 場所を休んではいけない
政治は党利党略に明け暮れ、世間の関心は薄れる一方。それは当然の成り行きとしても、現在目の離せない国際情勢、例えばエジプトは30年の独裁政権が終わり、変わろうとしている。しばらく混乱は続くだろう。
日本に対する影響はどうか。あるいは列島の住人を苦しめる大雪、噴火の自然災害の経過よりも、なお、世間の関心事として話題になっているのは大相撲八百長問題であろう。日本は平和だというより他ないのか、考えてしまう。
*
元来相撲は芸能である。日本に伝わる他の芸能と同様に古来五穀豊穣(ほうじょう)を願い、神に捧(ささ)げる儀式に始まる。四股は、大地が揺らがぬよう力士の頑丈な足で固めんとする所作。せり上がりは大地から命の萌(も)え出す姿。力士は土俵に足踏み入れる前、口を濯(すす)ぎ柏手(かしわで)を打って塩を撒(ま)く。神の宿る場所に穢(けが)れ多き身を運ぶ前の所作。常に浄(きよめ)を心がけるのだ。つまり相撲は日本列島固有の神事に属する。
かつて、五穀豊穣こそ万人の願い。太陽と水の恵みを有り難いとする気持ちとともにあった。次第にその気持ちは薄れ、この薄れとともに相撲が神事から離れていったのはごく自然なことなのだろう。角界は角界で伝統の上にあぐらをかき続けてきた。
ぼくの知る相撲と今のそれはまるで違う。子供の頃は神戸で育った。場所を観(み)られるのは地方巡業だけ。普段はもっぱらラジオである。アナウンサーの声、客席の歓声、どよめきに手に汗を握りながら聴いていた。
記憶に残るのは、初場所後寒い時期に、神戸三ノ宮駅前で開かれた場所である。戦争の色濃くなりはじめた頃だった。義父につれられて行ったのだが、ムシロで囲まれた観客席は、子供心に粗末に見えた。
もちろん暖をとる設備もない。寒い中、身をこごめて待っていると、土俵に力士が上がった。見ればまわし姿の力士の体全体から湯気が立っている。実に勇ましい。自分とはかけ離れた存在、大きく立派な体つき、立ち昇る湯気、ぼくは、ただただ見惚(みほ)れていた。取り組みは迫力そのもの。しかし佇(たたず)まいにはおっとりのんびりとした雰囲気があった。
相撲の職業化が進むにつれ、醜名(しこな)も変わった。山や川、土地の名前があたり前だった昔にくらべ、突拍子もない類(たぐい)が増えた。外国人力士が登場、これに対し今も賛否あるが、角界の現状をみればこの存在抜きに語れない。日本の子供たちが取っ組み合いさえしなくなった現在、ぼくらの側に日本人横綱の不在を嘆く資格はない。子供たちから原っぱを取り上げ、喧嘩(けんか)ひとつさせない。そういう世の中にした大人がいる。
相撲が勝負を争うようになって、興行化した。五穀豊穣の気持ちが日常から薄れ、相撲を神事から遠ざけたのは我々である。勝ち負けを争うのは格闘技として当然。1年6場所、そこへ巡業が入る。365日稽古(けいこ)ずくめ。このすべてを本気で取り組めば体が壊れてしまうだろうことは想像がつく。力士には自分の体と土俵を守るための心づかいがあって当然。それをインチキとはいわない。
しかし八百長めいたことは昔からいわれる。同時に観る側にそれを楽しむゆとりもあった。八百長以上に力士の佇まいに敬意を表していたのだ。日本には文化、芸能を楽しみ育てる成熟した土壌があったはず。風情を味わう気持ちを誰もが持ち合わせていた。
この度のお粗末な八百長は、やる方も攻撃する側にも子供っぽさが目立つ。相撲協会、親方、力士はいわずもがな。こっちはもともと成熟していなかった。成熟していたはずの世間はいつの頃からか、穏やかで和を尊ぶ気風が薄れ、ある日突然、ヒステリックに一つの事について激しく糾弾する気運が目立つようになったと思う。
マスコミというものは世間を騒がせる事件なり事故が起きた場合、すぐさま正義の味方、警世家を気取るもの。つれて、各方面の諸賢人、評論家がご登場。名論卓説の雨あられ。御託を述べる。次第に世間様も「そうだ、そうだ」と同意。ぼくにしても悪者を作って自分を棚に上げる癖がついている。その上、日々平穏無事を願う。しかしそれが人間の常だろう。
*
それにしても、成熟したはずの日本人の良さはどうなってしまったのか。神事、国技、伝統、興行、スポーツ。ぼくたちは相撲をいろんな角度で見ながら相撲と上手につき合ってきたのだ。日本人はいい意味であいまいさを大事にしてきた。
島国であるということは、海に囲まれ外に逃げられない。農業、漁業の営みは個人も大事だが、村ごとにまとまって生きなければ成り立たない。何事も決めつけず、大らかに構えて、おっとりと世の中を眺める仕組みをうまく利用してきた。そこで、ゆとりや風情を楽しむ気風が生まれた。
ぼくはこれまで、相撲にずいぶん楽しませてもらった。双葉山にはじまって、いい時代のいい相撲とつき合えた。場所を休んではいけない。続けるべきだと思っている。
この際、徹底的に膿(うみ)を出せ、相撲界累年の悪弊を根こそぎ浄化せよとの声が広がる。果ては相撲界消滅、ご破算となってめでたしめでたしと、それで世間の気持ちはすっきり収まるのだろうか。いったん国技も伝統も打ち棄(す)てて、それこそ裸一貫昔ながらのおっとり相撲が蘇(よみがえ)るのなら結構だが、それには相撲界にも世間にも成熟さが求められる。 (企画・構成/信原彰夫)」
(2) 東京新聞平成23年2月22日付夕刊5面
「八百長は他人ごとか? 至る所 ムラ社会の名残――星野智幸
大相撲の八百長が発覚したとき、かつて熱烈な相撲ファンだった私も含め、おおかたの反応は「やっぱり」であった。「まさか!」という青天の霹靂(へきれき)のような驚きは、あまりなかったように思う。それを裏づけるように、共同通信が行った世論調査では、じつに76%の人が「八百長はあると思っていた」と答えている。
私が相撲ファンになったのはもう30年以上前のことである。高校生のときにはすでに、プロレスファンの友だちと、相撲とプロレスのどちらがより八百長度が高いか、議論をした記憶があるので、相撲には八百長がつきものだとそのころから普通に言われていたのだろう。ちなみに、貴乃花の引退とともに、私は相撲ファンを辞めた。
なぜこんなに長きにわたって、八百長はあるとみんなに思われながら、曖昧なまま八百長が続いてきたのだろうか。そのような不正が、そのにおいははっきりと感じるのにずっと放置されるということが、はたして他のプロの競技で起こりうるだろうか?
相撲界の体質がその根本の要因であることは当然なのだが、私はそれだけではないと思っている。
面白いことに、八百長発覚の直後、相撲が八百長ならこれも八百長だ、とさまざまな業界で指摘が相次ぐのをちらりと目にした。あるブログでは、通信周波数帯をめぐる総務省と通信業者のやりとりが八百長みたいなものだ、とたとえているのを読んだ。東京新聞の特報面には、「八百長は日本の文化?」という記事が現れた。
同感である。八百長はじつは日本社会のいたる所に蔓延(まんえん)していると思う。この場合の「八百長」とは、例えば金の掛かった競技で心付けをもらってわざと負ける、といったケースは当てはまらない。そのような、外側の利益のために便宜を供与する取引ではなく、内側の利益のために内輪で便宜をはかりあう場合を指す。ひと言でいえば、「談合」である。
まさに、公共事業の入札をめぐる「談合」は、日本の文化とも言えるほど、各地で普通に見られた。「天下り」などをはじめとする、官僚の人事も同じである。検察の調書や証拠偽造も、「八百長」と言って差し支えあるまい。タテマエでは公正な競争や評価によって行われているはずのことが、内輪のホンネでは、誰もが手を染めている不正の産物となっているのだ。
相撲界を見てわかるとおり、そんなことをしても組織の利益になるどころか、むしろ命取りになる行為なのに、どこでも行われ延々と続くのはなぜなのか。それは、もはや組織の現状維持が至上命令になっているからだ。その道を取れば滅びるとわかっていても、築きあげられた慣習と今現在の自分たちの利益を守ることが優先され、そのために内輪で協力しあう。だから、内輪では分け合うけれど、新参者は締め出す傾向が強い。
これはいわゆるムラ社会の論理である。日本社会は、そのような小さなムラ社会がたくさん集まって構成されていた。だが、バブル期以降、ムラ社会は次々と崩壊している。ムラ社会のボスだった自民党の政治が崩れ落ちたのは、その象徴だろう。
以降、もはや談合的な不正は許されなくなった。政権交代で期待されたのも、そのような古くから惰性で続いている無意味で益のない不透明な馴(な)れあいを排して、新しい公正さを打ち立てることだっただろう。ひいてはそれが、ムラ社会を近代市民社会へ再編することにつながるはずだったろう。
そのような変化を察知できず、自ら手を打つことができなかった相撲界は、自壊しつつある。だが、それでも何十年にもわたって八百長疑惑が曖昧であり続けられたのは、日本社会自体が八百長体質を持っていたからではないのか。そして、民主党政権が透明な公正さの体制を実現できずにいるのも、当の民主党を含め、この社会にはまだまだ八百長体質が残っているからではないのだろうか。
(ほしの・ともゆき=作家)」
3.(1) 大相撲では昔から八百長はありました。ですが、八百長は大相撲に限らず、日本社会自体が八百長をしてきた体質があったのです。
「八百長はじつは日本社会のいたる所に蔓延(まんえん)していると思う。この場合の「八百長」とは、例えば金の掛かった競技で心付けをもらってわざと負ける、といったケースは当てはまらない。そのような、外側の利益のために便宜を供与する取引ではなく、内側の利益のために内輪で便宜をはかりあう場合を指す。ひと言でいえば、「談合」である。(中略)
何十年にもわたって八百長疑惑が曖昧であり続けられたのは、日本社会自体が八百長体質を持っていたからではないのか。そして、民主党政権が透明な公正さの体制を実現できずにいるのも、当の民主党を含め、この社会にはまだまだ八百長体質が残っているからではないのだろうか。」(東京新聞平成23年2月22日付夕刊5面)
「日本には昔から、こうした出来レース的な文化が潜んでいる。裏口入学、入札談合、縁故採用、強いて言えば就職試験の際の指定校制度なども、八百長と言えるだろう。公正な競争とは言えないからだ。こうしたことが厳然と存在しながら、見過ごされているのが日本の社会である。なんでいまさら大相撲の八百長程度で騒がれなくてはいけないのか。」(サンパウロ新聞)
マスコミだって、八百長と無関係ではありません。いくら無実であろうとも、そして、捜査官しか知らない情報であってもなぜか報道され、また、否認しているのに、なぜか、自白したような報道が流されたりするのです。被疑者や弁護人にとっては、こうした虚偽報道による世論の処罰感情を煽る行為は、絶対に許しがたいのです。
捜査機関による捜査情報のリークがあり、それを記事にしていることは、刑事弁護を知る者であれば、誰もが実体験として知っていることです。全国紙(朝日、毎日、読売)は否定していますが、そんな戯言を信じる者は、よほどの馬鹿だけです。これも、捜査機関とマスコミが一体となった「八百長」というしかありません。
(2) こうした八百長体質の日本社会を許容してきたことも関係あるのでしょうが、「成熟していた世間」があったからこそ、大相撲での八百長を許してきたのです。
「この度のお粗末な八百長は、やる方も攻撃する側にも子供っぽさが目立つ。相撲協会、親方、力士はいわずもがな。こっちはもともと成熟していなかった。成熟していたはずの世間はいつの頃からか、穏やかで和を尊ぶ気風が薄れ、ある日突然、ヒステリックに一つの事について激しく糾弾する気運が目立つようになったと思う。
マスコミというものは世間を騒がせる事件なり事故が起きた場合、すぐさま正義の味方、警世家を気取るもの。つれて、各方面の諸賢人、評論家がご登場。名論卓説の雨あられ。御託を述べる。次第に世間様も「そうだ、そうだ」と同意。ぼくにしても悪者を作って自分を棚に上げる癖がついている。その上、日々平穏無事を願う。しかしそれが人間の常だろう。
*
それにしても、成熟したはずの日本人の良さはどうなってしまったのか。神事、国技、伝統、興行、スポーツ。ぼくたちは相撲をいろんな角度で見ながら相撲と上手につき合ってきたのだ。日本人はいい意味であいまいさを大事にしてきた。
島国であるということは、海に囲まれ外に逃げられない。農業、漁業の営みは個人も大事だが、村ごとにまとまって生きなければ成り立たない。何事も決めつけず、大らかに構えて、おっとりと世の中を眺める仕組みをうまく利用してきた。そこで、ゆとりや風情を楽しむ気風が生まれた。
ぼくはこれまで、相撲にずいぶん楽しませてもらった。双葉山にはじまって、いい時代のいい相撲とつき合えた。場所を休んではいけない。続けるべきだと思っている。
この際、徹底的に膿(うみ)を出せ、相撲界累年の悪弊を根こそぎ浄化せよとの声が広がる。果ては相撲界消滅、ご破算となってめでたしめでたしと、それで世間の気持ちはすっきり収まるのだろうか。いったん国技も伝統も打ち棄(す)てて、それこそ裸一貫昔ながらのおっとり相撲が蘇(よみがえ)るのなら結構だが、それには相撲界にも世間にも成熟さが求められる。」(毎日新聞平成23年2月19日付朝刊「野坂昭如の『七転び八起き』」)
八百長が犯罪であれば、問題視することにも十分な理由があるでしょう。しかし、大相撲では八百長は昔からあることであって、八百長は犯罪ではないのです。それをなぜか、ある日突然、ヒステリックに(八百長問題を)激しく糾弾し始め、言いがかりのような屁理屈を連ねるのです。まったく不思議でなりません。
(3) 最後に。
「「本場所無期限中止」に娘、涙――60代・福島県須賀川市
34歳のダウン症の娘は小さい頃から大相撲が大好きです。
小学生の頃、力士の「しこ名」に興味を持ってから漢字にも関心を持ち、難しい「しこ名」を書いたり、出身地、生年月日なども覚えてびっくりさせられたものでした。相撲の巡業や催し物があれば一緒に必ず見に行ったり、両国国技館にも行きました。
最近は体力の衰えが出てきたせいか、出掛けたりはできませんが、鉛筆を片手に、新聞に勝ち負けを書き込みながら、テレビ中継を楽しんでします。
しかし、今回の「本場所無期限中止」のニュースに、多くの言葉を語れない娘は「お相撲」と書いてポロポロ涙を流して泣いています。(以下、省略)」(毎日新聞平成23年2月22日付朝刊15面「みんなの広場」)
「大相撲八百長問題でコロニアにも衝撃
11/02/09 (10:12)
「春場所中止は厳しすぎる」 残念な結果に落胆・不満の声
日本の報道によると、大相撲の八百長問題で日本相撲協会が6日に開いた臨時理事会で、3月13日から大阪府立体育会館で予定されていた春場所の中止を正式に決定したという。このニュースは、日系社会にも大きなショックを与え、特にNHK国際放送での相撲観戦を楽しみにしているファンからは「八百長はいけないことだが、ちょっと、厳しすぎるのでは」と不満の声も上がっている。」(サンパウロ新聞)
何度も書きますが、大相撲では八百長は犯罪ではなく、八百長が蔓延しているとの確たる証拠はないのです。それなのに、マスコミは、相撲協会に対して本場所中止を強要し、本場所開催についてのめどが立っていません。
そうした無責任なマスコミの対応により、大相撲により生計を営んでいる多くの市民、大相撲を楽しみにしている国内外の多くの市民に害を与えたのです。マスコミは、「『お相撲』と書いてポロポロ涙を流して泣いて」いる女性に対して、どのように責任をとるのでしょうか。本場所中止に落胆している海外の相撲ファンに対して、どのように責任をとるのでしょうか。マスコミは、こうした市民に対して、どのように(金銭的な)責任を取るのでしょうか。
無実を叫ぶ者であろうとも有罪視した報道を行い、後に無罪となっても、言い訳をするばかりの全国紙は、今回も、相撲協会の責任であると責任転嫁を行い、ただ、「八百長はいけない、徹底解明を」と感情的に叫ぶだけなのです。
私たち市民は、大相撲とは何かについて正しい認識を行い、相撲協会への批判よりも、多くの害を撒き散らしている全国紙への批判を行うべきなのです。そうでないと、「相撲界消滅、ご破算となってめでたしめでたし」ということになりかねないのですから。
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rice_shower http://www.videonews.com/interviews/001999/001673.php
こういう視座の提供こそが、ジャーナリズムの役割なのですがね。
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この後、2回生の渡辺浩一郎氏(66)=比例東京=らは衆院議員会館で記者会見し、「無原則に政策修正を繰り返す菅政権に正統性はない」と述べ、事実上菅政権の退陣を求めています(時事通信:2011/02/17-13:21)。
特例公債法案など2011年度予算関連法案の参院での否決が確実視される中、16人が倒閣も辞さず会派離脱の動きに出たことで、衆議院で3分の2以上の勢力を確保して再可決・成立させるのは絶望的となり、菅直人首相は、とうとう政権維持が絶望的になってきました。
1.報道記事を幾つか。
(1) 東京新聞平成23年2月17日付夕刊1面
「小沢系16人会派離脱届 民主分裂の兆し
2011年2月17日 夕刊
民主党の小沢一郎元代表に近い衆院比例代表選出の若手議員十六人は十七日午前、元代表の処分に反発し、衆院の新会派結成届を衆院事務局に提出した。十六人は離党せず、党内で執行部批判を強める意向だが、元代表の処分問題で反党的な行動が表面化したのは初めて。執行部が元代表の処分に踏み切った場合、さらに反発を強めるのは必至で、民主党は分裂含みの局面を迎えた。ただ、会派離脱には代表者である岡田克也幹事長の了承が必要。岡田氏は「規約上できない。理解に苦しむ」と認めない方針だ。
若手は渡辺浩一郎、川島智太郎両氏ら比例単独で当選した議員。会派離脱届を提出し、新会派名は「民主党政権交代に責任を持つ会」とし、代表に渡辺氏が就任。新会派結成宣言では、元代表の処分問題や衆院選マニフェストの見直し方針などを踏まえ、「菅政権は国民との約束、マニフェストを捨てた。マニフェストの実現に取り組むわれわれこそが、真の民主党だ」と強調した。
渡辺氏は離脱届提出後、国会内で記者会見し、二〇一一年度予算案や関連法案への対応に関し「マニフェストに照らして判断したい」と述べ、反対することもあり得るとの考えを示した。
一方、岡田氏は記者団に「どういう思いでやったのか、確認する必要はある。あまりに一方的で、少し戸惑っている」と述べた。また、枝野幸男官房長官は十七日午前の記者会見で、「同じ党で会派が別というのは常識的に考えられない」と不快感を示した。」
(2) 日刊ゲンダイ平成23年2月18日付(17日発行)3面
「菅政権退陣秒読み 小沢系議員16人が会派離脱
2011年2月17日 掲載
衆院再可決は絶望
国民の期待を裏切り続ける菅・民主党に対して、ついに身内から“クーデター”の火の手が上がった。17日午前、小沢系の衆院議員16人が岡田幹事長宛てに会派離脱届を提出したのである。
行動を起こしたのは2009年の衆院選で比例ブロックから当選した議員らで、16人はただちに横路衆院議長に対し、新会派「民主党政権交代に責任を持つ会」の届け出も行った。新会派は渡辺浩一郎衆院議員(前列左から3人目)が会長に就任、豊田潤多郎氏が会長代行、幹事長には笠原多見子氏が就いた。16人は〈本来の民主党の姿とはかけ離れた今の菅政権にはもう黙ってはいられない。みすみす旧来からのしがらみにはまり込み、無原則に政策の修正を繰り返す菅政権に正当性はない。我々は今こそ、「国民生活が第一」の政策を発信し、国民の信頼を取り戻していかなければならない〉とのペーパーを配ったあと、記者会見に応じた。
質疑では予算案への対応などの質問が飛んだが、「現時点では未定」「党と別の判断もありうる」(渡辺会長)とし、造反をにおわせた。
新会派は民主党は「マニフェストの実行が目的」とし、「離党は国民のためにならない」としているが、ここまで言い切った以上、除名覚悟の確信的行動と見るべきだ。
16人が離脱すれば、民主党はたとえ社民党の協力を得られても衆院で3分の2の勢力を確保できなくなる。ねじれ国会で衆院再可決の道は閉ざされ、菅政権は完全に追い詰められることになる。
岡田幹事長は「驚いている。党の所属議員だけに会派離脱できないのは明白であり、理解に苦しむ」と言うのが精いっぱい。会派離脱は認めず、説得作業に乗り出すつもりだが、永田町では「ついにサイは投げられた」「菅はオシマイ」「執行部が突っ張れば、党分裂」との見方が飛び交っている。
折しも小沢元代表は地域政党「減税日本」を立ち上げた河村たかし名古屋市長らと面談するなど、動きが急。親小沢の原口一博前総務相は橋下大阪府知事、河村名古屋市長らと連携、「日本維新の会」の設立を表明した。
民主党内ではここ数日、にわかに分裂含みの動きが広がっており、そんな中、16人が離脱を宣言したのである。永田町は一気に液状化してきており、菅首相の退陣が秒読みになってきた。
●約束を果たす民主党への回帰宣言(要旨)
「今の菅政権は、国民との約束を果たす本来の民主党政権ではない」
今、民主党議員の多くがそう感じている。総選挙では「国民生活が第一」の政治理念、「予算のムダを徹底的に削り、新たな政策の財源に充てる」としたマニフェストを掲げ政権交代を実現した。
しかし菅政権は消費税に関し「来年度末までに法的な対応をしなければいけない」と増税の意欲をあらわにし、国民との約束、マニフェストを捨てた。政治主導で日本を立て直すはずが、国家戦略局の設置法案も実現せず、公務員制度改革も反古にし、政治主導の御旗も捨てた。
我々は国民との約束の上に存在する比例代表の議員だからこそ、衆議院での民主党・無所属クラブとは分かれ、新たに院内会派を設立する。「国民の生活が第一」の政策を実行すべく今後、行動を展開していくこととする。
▽会長
渡辺浩一郎/比例東京(2)
▽会長代行
豊田潤多郎/比例近畿(2)
▽副会長
三輪 信昭/比例東海(1)
熊谷 貞俊/比例近畿(1)
菊池長右ェ門/比例東北(1)
高松 和夫/比例東北(1)
▽幹事長
笠原多見子/比例東海(1)
▽幹事長補佐
水野 智彦/比例南関東(1)
▽副幹事長
渡辺 義彦/比例近畿(1)
石田 三示/比例南関東(1)
川口 浩/比例北関東(1)
▽事務局長
石井 章/比例北関東(1)
▽事務局次長
大山 昌宏/比例東海(1)
小林 正枝/比例東海(1)
相原 史乃/比例南関東(1)
▽事務局補佐
川島智太郎/比例東京(1)」
「小沢氏に近い議員 会派離脱届
2月17日 19時32分
民主党の小沢元代表に近い16人の衆議院議員は、今の菅政権は国民との約束を果たしていないなどとして、岡田幹事長宛てに民主党の会派の離脱を届け出ましたが、岡田幹事長ら党執行部は、会派離脱は認められないとしています。
民主党の小沢元代表に近い議員の間で、小沢氏の処分を巡る党執行部の対応への反発が強まるなか、比例代表選出で当選1回と2回の小沢氏に近い衆議院議員は、17日午前、国会内の民主党の控え室を訪れ、岡田幹事長宛てに16人が衆議院の会派「民主党・無所属クラブ」を離脱することを届け出ました。続いて、横路衆議院議長宛てに、比例代表東京ブロック選出の渡辺浩一郎氏を会長とする新しい会派の結成届を提出しました。
渡辺氏は記者会見で、「菅政権は国民との約束を果たす本来の民主党政権ではない。今こそ、『国民の生活が第一』の政策を発信し、国民の信頼を取り戻さなければならず、民主党の信頼が地に落ちても党を捨てるつもりはない。今回のわれわれの行動は、菅政権の党運営や政権公約の見直しに対するもので、小沢氏の処分の問題に対するものではない。今後、党内に会派への参加を呼びかけたい」と述べました。また、渡辺氏は、平成23年度予算案と関連法案への対応について、反対することもありうるという認識を示しました。衆議院の事務局によりますと、前例では、議員が会派を離脱する際は会派の代表者の了承が必要だということで、今回のようなケースは過去に例がなく、会派の代表者である岡田幹事長への確認が必要だとしています。
一方、岡田氏ら党執行部は、16人が離党する考えはないとしていることから、1つの政党が2つの会派に分かれることはありえず、会派離脱は認められないとしています。岡田氏は記者会見で「民主党に所属しながら会派を離脱することはできず、ありえない。意味のないパフォーマンスだと言われてもしかたない行為だ。執行部や政策に不満があるなら、直接言ってもらえばいい。この期に及んで、おととしの衆議院選挙のマニフェストを全部やらなければならないと言っているとしたら、国民の意思からかけ離れていると言わざるをえない」と述べました。また、岡田氏は、予算関連法案の成立への影響について、「離脱届は無効であり、特に影響があるとは考えていない。党の議員であるかぎり、党の決めたことに従ってもらうのは当然だ」と述べました。
一方、岡田氏は、16人が処分の対象になるかどうかについて、「離脱届が無効だと承知のうえでやっていることだと思うので、あまり目くじらを立てなくていいのではないかと思う。しかし、軽率な行為だとは言えるので、よく話を聞いてみたい」と述べました。
民主党の小沢元代表は、17日朝、鳩山前総理大臣に電話し、「きょう聞いた。私も知らなかったが、自分のところから、こういう動きが出ていることを伝えておこうと思った。原点を忘れた民主党に対して、こういう動きが出たということだろう」と述べ、一定の理解を示したということです。」
2.(1) 政党政治や選挙制度の本来のあり方からすれば、政権を託された与党は、政権公約を遵守すべきです。有権者は政権公約を掲げる政党に票を投じて、与党として政策を実行することを託すのですから。
そうだとすると、政権公約を無視する行動に出ている菅直人を批判するのは正当性のある言動ですし、その結果、会派離脱をすることもまた正当性のある行動といえます。「約束を果たす民主党への回帰宣言」にはその正当性がある言葉が含まれています。
「●約束を果たす民主党への回帰宣言(要旨)
「今の菅政権は、国民との約束を果たす本来の民主党政権ではない」
今、民主党議員の多くがそう感じている。総選挙では「国民生活が第一」の政治理念、「予算のムダを徹底的に削り、新たな政策の財源に充てる」としたマニフェストを掲げ政権交代を実現した。
しかし菅政権は消費税に関し「来年度末までに法的な対応をしなければいけない」と増税の意欲をあらわにし、国民との約束、マニフェストを捨てた。政治主導で日本を立て直すはずが、国家戦略局の設置法案も実現せず、公務員制度改革も反古にし、政治主導の御旗も捨てた。
我々は国民との約束の上に存在する比例代表の議員だからこそ、衆議院での民主党・無所属クラブとは分かれ、新たに院内会派を設立する。「国民の生活が第一」の政策を実行すべく今後、行動を展開していくこととする。」
(2) ところが、驚くべきことに、岡田幹事長は、「この期に及んで、おととしの衆議院選挙のマニフェストを全部やらなければならないと言っているとしたら、国民の意思からかけ離れていると言わざるをえない」と述べています。
しかし、いつ有権者が、参院選の政権公約を承認したというのでしょうか? その後の選挙も民主党はずっと地方選挙で大敗を続けているという「選挙における民意」をなぜ、無視するのでしょうか? 菅一派は、4年間で政権公約を実行するという衆院選での政権公約を安易に変更していることこそ、民意に反することがなぜ、分からないのでしょうか?
先の参議院選挙において、衆議院での政権公約を無視した政策に変えたために、有権者は、民主党大敗という選択をしたのです。ですから、岡田幹事長の言い分こそ、「国民の意思からかけ離れている」言い分であって、全く間違っているのです。
菅直人一派は、その参院選での大敗の責任をとることなく、居座るという民意に反する行動に出ているだけなのに、岡田幹事長らは国民から承認されたなどと勝って言いつのるのは、頭がおかしくなっているとしか思えないのです。
(3) 確かに菅直人自身は、認知症なのでしょう。何も分からなくなってしまった菅直人が、政権という金にたかる銀蠅(朝日新聞の星浩編集委員、毎日新聞の岩見隆夫客員編集委員、読売新聞の橋本五郎特別編集委員銀)の言いなりなるのは、あり得ることです。
しかし、そればかりか岡田幹事長まで公然と「民意」を無視するとは……。ここまで菅一派が無知無能で、恥知らずだとは思いませんでした。これでいよいよ、菅政権は、総辞職が目前に迫ってきたようです。
ほかにも、岡田幹事長は「意味のないパフォーマンスだと言われてもしかたない行為だ」と強がりを言っています。しかし、そんなことを行ったところで16人を処分することはないのです。もし、16人を処分すれば、それこそ予算関連法案に反対するでしょうから、16人を処分することはできず、傍観とお願いをするしかないのです。岡田氏の発言の方が「意味のないパフォーマンス」なのです。岡田氏は頭がおかしいのではないでしょうか?
3.(1) それにしても、銀蠅(朝日新聞の星浩編集委員、毎日新聞の岩見隆夫客員編集委員、読売新聞の橋本五郎特別編集委員)は、この事態に至ったことをどう言い訳するのでしょうか?
おそらくこれらの銀蠅どもは、
などと、菅直人に悪魔のささやきをしてきたはずなのです。「社民党や公明党は、いくらかアメを与えれば、予算関連法案に賛成する。我々マスコミも小沢に対する集団リンチに参加するから、小沢を必ず離党に追い込め。小沢を離党させても、誰も付いていかないから、余裕で予算関連法案は成立する。小沢切りをすれば、国民はバカだからきっとまた支持率が上がってくる。」
ところが、社民党や公明党は予算関連法案に反対していますし、さらには、小沢氏に近い議員らが会派の離脱という形で予算関連法案に対する反対表明をしてしまいました。これでは、もはや予算関連法案の成立は絶望的です。このように、銀蠅どもの予想は、全く間違ってしまったのです。
連合赤軍のように仲間内で「殺し合い」をすれば、賛同者が減ってしまうことは明らかですから(小沢氏と無所属になった石川知裕議員の2人が賛成しないと、元々衆議院で3分の2を占めることができない)、予算菅関連法案の成立が不可能になっていくとすぐに分かるのです。それなのに、なぜか、バカな銀蠅どもは、菅直人に連合赤軍ばりの「殺し合い」を奨励したため、結局は、このような結果に至ってしまったのです。
所詮は、銀蠅どもが考えることは、その程度なのです。(小沢氏憎しの私怨で判断しているから、冷静な判断ができず、間違ってしまうのでしょう。)
(2) 4年間でマニフェストを実行する、情報公開をする、政治主導の政治を行う、予算のムダを徹底的に削り、新たな政策の財源に充てる、国民の生活が第一を実現する――。いまだ、この民主党のマニフェストは、何一つ実行できてないのです。それを、菅一派は、今の段階で公然と捨て去ろうとしているのですから、有権者はもちろん、民主党に批判が殺到していますし、誠実な民主党議員であれば、猛反発して倒閣に動くのは、当然に予想できる行動です。(「銀蠅」どもは、なぜか、予想できなかったようですが。)
また、無罪推定の原則(憲法31条)があるのにもかかわらず、そして無罪となることが確実な事件であるのに、小沢氏を処分する行動にでるというのは、根拠のない言いがかりでの処分であって全く合理性がありません。こうした点は、当然ながら国民の支持もあるのです。となれば、小沢氏への処分があれば、小沢氏に近い議員による反発がでるのは、誰もが当然に予測できる行動です。(「銀蠅」どもは、なぜか、予想できなかったようですが。)
このように、誰もが当然に予測できる行動であるのに、なぜか、銀蠅(朝日新聞の星浩編集委員、毎日新聞の岩見隆夫客員編集委員、読売新聞の橋本五郎特別編集委員)どもには、分かりませんでした。
銀蠅どもは、頭のおかしくなった菅直人を擁護するために、社説でこの16人に対して猛烈に批判をしているようです。しかし、銀蠅どもは、菅直人に対して、「自らの間違い」をどうやって言い訳するのでしょうか?
菅直人は早期に総辞職するべきあり、菅直人とともに、これら銀蠅(朝日新聞の星浩編集委員、毎日新聞の岩見隆夫客員編集委員、読売新聞の橋本五郎特別編集委員)どもも、無意味に日本の政治・社会に混乱と御悪影響を与えた責任をとって新聞社を退社し、ジャーナリストという立場も辞めるべきです。
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