SLPY

389名無しさん:2013/08/19(月) 23:08:06 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「……」

翠星石「な~まむ~ぎ、な~まご~め、な~また~まご~」ポクポク

雛苺「な~まむ~ぎ、な~まご~め、な~また~まご~っ」チーン

逆真紅「翠星石、雛苺。情熱が足りないわよ。もっと激しく、もっと雅に!」

翠星石「では、木魚をスピードアップするです」ポクポクポクポク

雛苺「うぃ! ヒナも8ビートを刻むのよ!」チンチンチンチン


390名無しさん:2013/08/19(月) 23:10:11 ID:uI5uGoqk0
ジュン「朝っぱらから僕の部屋で何やってるんだ三馬鹿。新手の呪いの儀式か?」

逆真紅「邪魔しないでジュン。これがお盆の正しい姿でしょ?」

ジュン「はぁ? 百歩譲って翠星石の木魚はいいとして雛苺のトライアングルと真紅の逆さ吊りはどういうこった?」

逆真紅「ネットで調べたのよ。お盆すなわち盂蘭盆会とはサンスクリット語の『ウランバナ』が語源であり、その意味は『逆さ吊り』」

ジュン「……そうなの?」

雛苺「うぃ! だからヒナ達は真紅を逆さ吊りにして、お経をあげているの」

翠星石「西洋人形である翠星石達がここまで日本文化に従うだなん、すげー慎ましやかじゃねーですか」

ジュン「……」

翠星石「感心する他ねーじゃねーですか。褒めてくれですぅ」

ジュン「生麦生米生卵はお経じゃねぇよ。あと語源が逆さ吊りだからって自分が逆さ吊りになる意味はあるのか真紅?」

逆真紅「ちょっと説明を端折りすぎたわね。さらに詳しく説明してあげるわジュン」

ジュン「ありがとよ」

真紅「死後に逆さ吊りされているような苦しみを負う死者を慰める祭儀の為に、器(盆)に山海の珍味を盛って供養するのがお盆」

ジュン「へー」


391名無しさん:2013/08/19(月) 23:11:17 ID:uI5uGoqk0
翠星石「真紅はその死者と同じ苦しみを受けるために自ら逆さ吊りを申し出たのですぅ」

逆真紅「凄い献身的かつ自己犠牲的博愛に満ちた行いでしょ? 惚れてもいいわよジュン」

ジュン「誰が惚れるか」

雛苺「ヒナ達は頑張ってお経をあげているからジュンはお供え物を用意してなの!」

ジュン「……」

翠星石「山の幸、海の幸をたーくさん持ってこいですぅ」

逆真紅「逆さ吊りにされた私が死者と共感した結果、死者はウナギを食べたがってるわ」

ジュン「ふざけんな。結局は食べ物をせびるための茶番じゃねーか」

翠星石「茶番ですとー!?」

雛苺「ヒナ達はお遊びでやってるんじゃないのーっ!」

逆真紅「そうよ! そんな死者を冒涜するような真似はしなくてよ。これは真面目にお盆に則って霊達を慰めるための儀式!」

ジュン「逆さまになって言うことか」


392名無しさん:2013/08/19(月) 23:12:36 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「ええい、こうなったらジュンはほっときましょう。翠星石、雛苺、お経を続けて頂戴!」

翠星石「合点です!」

雛苺「うぃ!」

ジュン「やれやれ……」

翠星石「な~まむ~ぎ、な~まご~め、な~また~まご~」ポクポク

雛苺「な~まむ~ぎ、な~まご~め、な~また~まご~っ」チーン

逆真紅「いいわよ二人とも! 祖先の霊が喜んでいるのを感じるわ!」

ジュン「……祖先の霊ってどういうこったよ? お前達に祖先とか……」

逆真紅「ジュンの祖先に決まっているでしょ? 特にあなたのお父様とお母様の霊からは『この家を頼む』と」

ジュン「勝手に殺すな」

翠星石「あるぇ? チビ人間の親はまだ生きていたですか?」

ジュン「バリバリ現役だよ、馬鹿」

逆真紅「バリバリって事はあれ? ジュンに弟か妹ができるくらいバリバリって事?」

ジュン「うるさい」


393名無しさん:2013/08/19(月) 23:13:21 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「それじゃ、仕方ない。次は私達のお父様への祈祷よ!」

ジュン「ローゼンも生きてるだろ」

翠星石「けど、お父様がnのフィールドに引き込もっている現状では、こうして祈るぐらいしか出来ることはないのです」

雛苺「うぃ。せつないのーっ」

ジュン「……アリスゲームやれよ。最近サボりっぱなしじゃねーか」

逆真紅「さ、サボってなんかいないわよ! ちゃんと……」

ジュン「ちゃんと?」

逆真紅「ちゃんとアリスゲームの解決策を考えて……ごにょごにょ」

ジュン「なぜ、後半になるにつれ声が小さくなる。まさかノープラン……?」

翠星石「な~まむ~ぎ、な~まご~め、な~また~まご~!!」ポクポク

雛苺「な~まむ~ぎ、な~まご~め、な~また~まご~っ!!」チーン

ジュン「うぐっ!? 急にお経をボリュームアップさせて誤魔化した?」


394名無しさん:2013/08/19(月) 23:13:53 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「よし! それでは引き続き今年(?)お世話になった霊達を慰めるわよ!」

雛苺「うぃー!」チーンチ-ン

翠星石「よっしゃー! 翠星石達は去ってしまった者達への感謝の心を忘れない、よく訓練されたドールだって証明するです!」

ジュン「これでいいのか、お盆……」

逆真紅「では先ず結菱二葉への祈りを!」

翠星石「おー、いぇー!!」ポクポクポクポク

雛苺「のってきたのー!」チンチンチーン

ジュン「あの人、お盆とか関係なく薔薇屋敷の地縛霊みたいになってるけどな」

逆真紅「二葉は好き勝手に動けるから地縛霊ではないわね」

翠星石「浮遊霊ですぅ」


395名無しさん:2013/08/19(月) 23:14:30 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「続いてコリンヌ・フォッセー!」

雛苺「うぃ! その節はお世話になりましたなのよー!」

ジュン「え? 死んでたっけ? その人?」

翠星石「さあ? 死んでる可能性もあるから念のため祈っとくですぅ」ポクポク

ジュン「生きてたらどうすんだ」


396名無しさん:2013/08/19(月) 23:16:27 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「引き続きまして、nのフィールドで乱獲したスーパーど根性大根達へ、お祈り!」

雛苺「大根おろしご飯、おいしかったのよー!」チーン

翠星石「また食べてーですから、近いうちにもう一度、狩りに行こうですぅ」ポクポク

ジュン「……」


蒼星石とスーパーど根性大根参照


397名無しさん:2013/08/19(月) 23:16:54 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「何だかんだでよく犠牲になってしまう野薔薇達へも!」

翠星石「今後も、ことある毎に不幸に見舞われるでしょうけど勘弁ですぅ!」ポクポク

雛苺「ヒナ達も業が深いの~っ!」チーン

逆真紅「メメントリオン、ロゼリオン達とレイキにも、祈りを」

翠星石「nのフィールドに届け、この想い!」ポクポク

雛苺「安らかに眠ってなの!」チンチーン

ジュン「眠れないだろ、これだと」


薔薇乙女のうた『王樹の夢』参照


398名無しさん:2013/08/19(月) 23:19:27 ID:uI5uGoqk0
翠星石「あと、テンプラにして食べてしまったブサ綺晶達にも祈っとくですぅ」

逆真紅「あ! そ、そうね……」

雛苺「ヒナ達の血肉になってくれて感謝なのー!」チーン

ジュン(途中ですり替えた事を知らなかったな、翠星石と雛苺は)

翠星石「蒼星石が調子こいたせいで死んだメカ真紅にも祈りを!」ポクポク

逆真紅「私達のニセお母様も安らかに!」

雛苺「皆のことは忘れるまで忘れないの~っ」チンチーン


翠雛残酷クッキング・ブサ綺晶の天ぷら 参照
蒼星石とメカ真紅と薔薇水晶とベス 参照
J( 'ー`)し「初めまして。ローゼンの妻です」 参照


399名無しさん:2013/08/19(月) 23:20:44 ID:uI5uGoqk0
逆真紅「私の海釣り趣味に付き合ってくれたお陰で非業の死を遂げたエヌマグロのギョージ1世、さらにその息子のギョナサン!」

ジュン「……」

真紅「盆に祈ることぐらいしか私達にはできなくて、ごめんなさい!」

翠星石「ギョージ3世も、恨まないでくれでぇーす」ポクポク

雛苺「親子三代、やっちゃったのよね真紅は……」チーン

逆真紅「あ、ギョージ3世はまだ生きてるわよ。しかもロゼリオン化して」

ジュン「え? マジで!?」


真紅VSギョージ・サーカナー その2参照


400名無しさん:2013/08/19(月) 23:22:03 ID:uI5uGoqk0
翠星石「……翠星石が金に目がくらんで非道を行ったガンプラ達! 今でもたまに夢に見るくらい反省しているです」

雛苺「ヒナも! ヒナもなのよー!」ポクチーン

逆真紅「他にも何か色々あったかもしれないけど、まとめて黙祷!」

翠星石「……」ポクポクポク

雛苺「……」チーン

ジュン(振り返ってみると、かなり多方面に迷惑かけてるな薔薇乙女)


薔薇乙女のうた『こんにちは赤ちゃん』参照


401名無しさん:2013/08/19(月) 23:22:43 ID:uI5uGoqk0
§後日・ドールショップ槐

水銀燈「……」カランコローン

薔薇水晶「お待ちしてました水銀燈」

水銀燈「……末妹、雪華綺晶は?」

薔薇水晶「雪華綺晶もお父様と一緒に奥でお待ちです」

水銀燈「私が最後か。ひょっとして遅れた?」

薔薇水晶「いえ、約束通りの時間です」


402名無しさん:2013/08/19(月) 23:25:38 ID:uI5uGoqk0
§槐のアトリエ

雪華綺晶「……第3世代ロゼリオン」

水銀燈「?」

雪華綺晶「紅薔薇のお姉様が私達に知らせてくれたところのギョージ3世。それをオズ残党軍は『第3世代』としています」

水銀燈「何でアンタがそんなことまで知ってるのかは、問わないでおいてあげるわ末妹」

雪華綺晶「……」

薔薇水晶「真紅の話では、エヌマグロが変な注射を打ってロゼリオン化したとのことですが」

槐「その注射器の中にロゼリオンの素(もと)が入っていたんだろう」

雪華綺晶「それは『野茨の聖釘』と言うそうです」

水銀燈「呼び名なんかどうでもいいわよ。しかし注射器とは、バイオハザードじゃあるまいに」


403名無しさん:2013/08/19(月) 23:35:49 ID:uI5uGoqk0
雪華綺晶「メメントリオンを繋ぎに野薔薇とその他の存在を等価に融合させた。これだけなら、そう脅威ではないと言えます」

水銀燈「へえ? 余裕ね」

雪華綺晶「懸念すべきは、この先『第4世代』とも言うべき存在が現れること」

薔薇水晶「それは随分と気の早い心配では? 雪華綺晶?」

槐「いや、雪華綺晶の言うことももっともだ。ロゼリオンの素が量産化されれば、その先はまさに『恐竜的』になるやも」

水銀燈「……野薔薇同士、ロゼリオン同士の融合?」

雪華綺晶「そう。今はせいぜい二つ、三つの存在が混ざり合っただけのロゼリオンが等価な融合を繰り返したとしたら……」

槐「……」

雪華綺晶「ただ一つの存在がいくつもの精神、いくつもの魂を備えたとしたら」

水銀燈「あんたの『苗床』だって似たようなもんでしょうに」

雪華綺晶「……」

水銀燈「ああ、そうか。オズ残党の馬鹿麻呂があんたと同じ土俵に上がってくるのが怖いんだぁ?」

雪華綺晶「否定はしません」


404名無しさん:2013/08/19(月) 23:41:18 ID:uI5uGoqk0
雪華綺晶「ですが、黒薔薇のお姉様にだって怖いものが迫って来ていますわ」

水銀燈「はん。私を怖がらせたいのなら……お父様でも引っ張り出してみなさいよ」

雪華綺晶「それは流石に無理でしょうが、真の恐怖とは過去からやってくるもの」

薔薇水晶「?」

雪華綺晶「過去とはバラバラにしてやっても瓦礫の下から這い出てくる」

水銀燈「……」

雪華綺晶「紅薔薇のお姉様にとってはサーカナーの血統が、そうであるように……」

槐「水銀燈に対する復讐者がオズ残党側にいると?」

雪華綺晶「はい」

水銀燈「そりゃ、いくらでもいるでしょうよ。馬鹿麻呂自体がそうなんだし。水銀燈、心当たりがありすぎて逆に分かんなぁい」

雪華綺晶「おふざけも程々に。馬鹿麻呂はお姉様の『恋し繭玉』を発掘したのですよ?」

水銀燈「繭玉……? まさか! ∀(ターンエー)のこと!? いつ? どこで?」

薔薇水晶「たーんえー……?」

雪華綺晶「ようやく目の色が変わりましたね水銀燈」


405名無しさん:2013/08/19(月) 23:48:42 ID:uI5uGoqk0
水銀燈「ありえない。どうして? ∀はこの手で私がバラバラに」

雪華綺晶「……ナノスキン装甲」

水銀燈「ッ!?」

雪華綺晶「ガンプラを作る時に説明書を見たでしょう? ∀ガンダムの装甲はナノマシン」

槐「……」

雪華綺晶「∀は中核であるコアファイターさえ残っていれば、復元する可能性がある……と」

水銀燈「馬鹿な。そんな機能まで、あのガンプラで再現されていたとは」

雪華綺晶「関連性は不明、いえ、おそらく偶然ですが庭師連盟の『庭師の傀儡』にも……」

水銀燈「?」

雪華綺晶「そう、庭師の傀儡にも同様に時間はかかるが完全再生する能力がありました。しかし見落とされていた」

薔薇水晶「……」

雪華綺晶「∀とは再生原理は異なるでしょうが、見落とされていた理由は同じ。あまりに時間がかかるから気付かなかった」

薔薇水晶「歴史は繰り返す……というわけですか」

雪華綺晶「ええ。そして馬鹿麻呂はその黒歴史すら味方につけた。繭玉自体はまだ再生途中の∀だったと思われますが」

槐「先ほどからの∀というのは、ガンプラに擬似アリスゲームをさせた際の最後の一体、∀ガンダムのことか?」

雪華綺晶「はい。永い眠りについたはずの∀が馬鹿麻呂の手に落ちた。まず間違いなく彼もロゼリオン化している」

薔薇水晶「……」

雪華綺晶「そしてガンプラとは言え、そのボディは桜田ジュンと薔薇乙女達が拵えた。ある意味で、野薔薇です」

水銀燈「ちぃっ……」

雪華綺晶「それが野茨の聖釘でロゼリオン化したとあれば野薔薇同士、ロゼリオン同士の融合も可能である証左」

水銀燈「あの馬鹿麻呂っ! ふざけた真似を。やることなすこと私の癪に障る」

薔薇水晶「……水銀燈」

水銀燈「ただ私達に関わったことがあるというだけで、あの子の眠りをも暴くだなんて!」


406名無しさん:2013/08/19(月) 23:52:25 ID:uI5uGoqk0
雪華綺晶「先日、真紅達はお盆に過去の死霊に祈りをささげたそうですが……」

薔薇水晶「……」

雪華綺晶「私達も過去を振り返り、第3世代ロゼリオンになりそうな芽を摘まなければいけない」

水銀燈「昔、斃した相手の屍までも磨り潰しに行こうってわけ?」

雪華綺晶「∀の場合は磨り潰しても無意味だったかもしれませんがね」

水銀燈「……」

雪華綺晶「兎も角、そこまでしなくとも、それらの確認や封印ぐらいはしておいて損は無い」

槐「……気の滅入る話だな」

雪華綺晶「蒼薔薇のお姉様はメカ真紅にレンピカで結界を張りました」

薔薇水晶「メカ真紅……、あの子」

雪華綺晶「金のお姉様は殴ってへこませたヤカン(※)のリサイクル先を追っています」


大掃除する薔薇乙女達参照


407名無しさん:2013/08/19(月) 23:53:54 ID:uI5uGoqk0
雪華綺晶「敵方の野茨の聖釘はまだ数も少ないはず」

槐「……」

雪華綺晶「おそらくは私達一体ずつに対応させて第3世代ロゼリオンを用意しようとしているものと考えられます」

水銀燈「私や真紅はもう、どうしようもないわね。覚悟を決めて相手、∀とギョージを完全に再起不能にするしか……」

槐「翠星石と雛苺は?」

雪華綺晶「その二人のお姉様達は∀以外でオズ残党に利用されかねないガンプラが残っていないか捜索中です」

薔薇水晶「……」

雪華綺晶「ただし∀以外のガンプラは復元能力が無いはずなので本当に念のためですわ」

薔薇水晶「では、あなたは? 雪華綺晶?」

雪華綺晶「……」

水銀燈「……?」


408名無しさん:2013/08/19(月) 23:55:21 ID:uI5uGoqk0
薔薇水晶「やはり、『私』……ですか?」

雪華綺晶「はい。色々と過去を思い返してみるに、私にとっては薔薇水晶、あなたほど恨みを抱かれた存在はない」

槐「そのために、今日の会議をここで……」

水銀燈「なるほどねぇ」

薔薇水晶「……」

雪華綺晶「薔薇水晶には既に何度か手を噛まれてもいますし」

水銀燈「あんたがネチネチといじめたからでしょう」

雪華綺晶「ふふ、ついつい薔薇水晶が可愛らしいものですから」

薔薇水晶「……」


409名無しさん:2013/08/19(月) 23:56:56 ID:uI5uGoqk0
薔薇水晶「わ、私は……もう雪華綺晶や水銀燈達には恨みなど」

雪華綺晶「そう簡単に気持ちは整理できない。表面上はそうであったとしても、常に無意識下で火種は燻っている」

槐「理屈では恨みは消せない、か」

雪華綺晶「薔薇水晶がロゼリオン化すれば、その火は大きく燃え上がりかねない。もし、そうなれば……」

水銀燈「……」

雪華綺晶「私やお姉様達全てが仮に束になっても抗えずに燃やし尽くされるでしょう。それだけの力があなたには眠っている」

薔薇水晶「……」


410名無しさん:2013/08/19(月) 23:58:04 ID:uI5uGoqk0
薔薇水晶「だったら私はどうすれば……」

雪華綺晶「薔薇水晶にはどうしようもない。落ち度も非もありません。全ては私の責。どうにかできるのは私だけ」

槐「雪華綺晶! まさか薔薇水晶を……っ!?」

雪華綺晶「壊すつもりなら長々と会議を続けていませんわ」

水銀燈「……」


411名無しさん:2013/08/20(火) 00:00:45 ID:JpJ8Nm1Y0
雪華綺晶「ここから先お話することは槐先生を見込んでのお願いです」

薔薇水晶「お願い……? お父様に」

槐「?」

雪華綺晶「可愛い娘を救いたいのであれば、薔薇水晶に抗体を」

槐「抗体? 人形にか?」

雪華綺晶「抗体とはあくまで表現上のこと。要するに薔薇水晶がロゼリオン化しないよう手を打ってほしいのです」

槐「そんなこと、僕に」

雪華綺晶「メメントリオンの感染さえ防げられれば薔薇水晶はロゼリオン化しない」

槐「む……」

雪華綺晶「私は槐先生に、野茨の聖釘を無効化する物を作れと言っているわけではありません。今は」

水銀燈「今は、ってことはゆくゆくは作らせるつもり?」

雪華綺晶「ええまあ、それは時間の余裕がある時にでも。しかし今は時間が無い」

水銀燈「……」

雪華綺晶「∀まで調べ上げて発掘したオズ残党が、薔薇水晶をロゼリオン化の標的にしていないわけが無い」

薔薇水晶「……」


412名無しさん:2013/08/20(火) 00:02:05 ID:JpJ8Nm1Y0
雪華綺晶「私のこれからお伝えする期限内に槐先生、あなたが薔薇水晶を改良できなければ……」

槐「……」

雪華綺晶「私は薔薇水晶をロゼリオン化させないために、前言撤回して彼女を壊さなければならない」

槐「選択の余地はないということか」

雪華綺晶「そういうことです」

薔薇水晶「お父様……っ! わ、私は……」

槐「心配しなくていい。雪華綺晶は僕のケツを叩いているだけだ」

雪華綺晶「……」

槐「今後もロゼリオンの脅威がある限り、君にはいずれ必要な処置だった。それが今というだけのこと」

薔薇水晶「……」

槐「問題ない。やってみせるさ」

雪華綺晶「それでこそローゼンの弟子ですわ、槐先生」


413名無しさん:2013/08/20(火) 00:08:22 ID:JpJ8Nm1Y0
§柿崎めぐの家への帰り道

水銀燈「私だけを会議に同席させて他の姉妹は遠ざけたのも全ては槐へ脅しをかけるためだったってこと?」

雪華綺晶「そんなところです。他のお姉様方がいたら薔薇水晶の肩を持つでしょうし、それに……」

水銀燈「それに?」

雪華綺晶「逆に、私だけではついつい私自身が『先走ってしまう』かもしれない」

水銀燈「ふん……」

雪華綺晶「それにロゼリオン化防止、メメントリオン感染防御は私達も何らかの対策がいる」

水銀燈「薔薇水晶を実験台に使うってことね」

雪華綺晶「その通り」

水銀燈「ほぉんと、あんたって……えげつないわぁ。真紅を同席させていたら、ぶん殴られていたわよ、きっと」

雪華綺晶「ふふ、そうかもしれません。そうそう、同席者については金のお姉様でもよかったのですが」

水銀燈「金糸雀でもよかった……?」

雪華綺晶「ちょうど黒薔薇のお姉様が暇そうでしたので。それに∀ロゼリオンの事を伝える良い機会でもありました」

水銀燈「伝えるだけなら、以前から他にいくらでも機会はあったでしょうが……。まったく」


419名無しさん:2013/08/22(木) 22:43:29 ID:B33zHgT60
§数日後・nのフィールド・廃墟の町

残党A「∀、起動しました」

覆面「今回こそ立てそうでおじゃるか?」

∀「マ……マ……」ぐいーん

残党B「おお、立った! 歩いた! ついに!」

∀「……」キュルルル

残党C「あ、頭がぐるぐる回って?」

覆面「うろたえるでない。彼奴が現状を確認しているだけじゃ」

残党B「∀の復元率は?」

残党A「50%です。その他の部位は野茨の聖釘から供給されたロゼリオンとしてのボディ成分で補完されています」

残党B「そのせいかは分かりませんが、全体的にサイズが大型化していますね」

残党C「だよな。このガンプラ、もとはMGだって聞いていたのに、どう見てもPGサイズだもの。俺の錯覚じゃなかったか」

覆面「多少のサイズ違いはナノマシンによる復元ではよくあることでおじゃる。それに大きい方が強いじゃろう、多分」

残党A「そんなものですか。しかし50%で動かしてもよいので? 教皇?」

覆面「是非も無い。100%になるのを待ってはおられぬからの。ローゼンメイデン側の動きが早くなってきているでおじゃる」

残党B「……」

覆面「まろらが狙っていたロゼリオン候補者を、次々と隠し始めた」

残党C「薔薇屋敷からメカ真紅を奪おうとした同志達も、ことごとく蒼星石に返り討ちにされましたしね」


420名無しさん:2013/08/22(木) 22:45:12 ID:B33zHgT60
∀「あ、頭の中で蛇がのたうつような……。こ、これは?」

覆面「それが痛みでおじゃるよ、∀」

∀「痛み? あ……なたは?」

覆面「まろは通りすがりの足長おじさんじゃ」

∀「……う、ううう。気持ち悪い。蛇? 蛇……が僕の頭の中に二匹いる!」

残党A「……二匹?」

残党B(ギョージと似た症状だ。きっと野茨の聖釘由来の野薔薇とメメントリオンの意思が)ヒソヒソ

∀「頭が……割れそうだ。胸が……詰まる。足が重い……」

覆面「……」

残党C「教皇、やはりこれでは……。今の∀ではいくらロゼリオン化したと言っても、何の役にも……」

覆面「まあまあ。∀はただ寝起きが悪いだけでおじゃるよ。低血圧、低血圧」

残党A「低血圧て……、そんなメチャクチャ言わないでください」

覆面「そして、∀の血圧を上げる者がやってきたぞよ」

残党C「え?」

覆面「なんとか∀ロゼリオンの起動だけは間に合ったのが不幸中の幸いでおじゃるな」

残党B「教皇、何のことを言ってるんです? 誰が来たんです!?」

残党A「そ、空を見ろ! あれだ! 間違いない。かなり高いところを飛んでいるが」

残党C「まさか……っ!」


421名無しさん:2013/08/22(木) 22:45:53 ID:B33zHgT60
水銀燈「……」コオオオオ



残党A「水銀燈だ! もう見つかったのか、ここが!?」

残党B「に、逃げろ! 上空から突っ込んでくるぞ! 早く! 教皇も……っ!」

残党C「……て、あれ? 教皇? どこです?」

教皇「ほっほっほ!」スタコラサ

残党A「ああーっ! ちょ、ちょっと!?」

残党C「ずるいですよ、自分だけさっさと!」

残党B「お、俺達も連れてってくださいよ!」


422名無しさん:2013/08/22(木) 22:46:19 ID:B33zHgT60
水銀燈「……追ってメイメイ」

メイメイ「……」

水銀燈「可能であればオズ残党はあなたの裁量で始末していい。無理であれば彼らのアジトを突き止めなさい」

メイメイ「!」ばひゅっ

水銀燈「よし、いい子。また、あとでね」


423名無しさん:2013/08/22(木) 22:49:25 ID:B33zHgT60
∀「……?」キョロキョロ

水銀燈「結果として、二人きりになったのは都合が良かったかもね」スタッ

∀「……マ……マ?」

水銀燈「あぁら∀? しばらく見ないうちにアンタちょっと背ぇ伸びた? ママ、嬉しいわよぉ」

∀「ママ……!?」

水銀燈「けれど、成長する人形だなんて気色悪い。大人しく寝ていれば良かったのに、私の可愛い∀……」

∀「ママ……っ! いや、違う。水銀燈……水銀燈はローゼンメイデン。ローゼンメイデンは……敵ッッ!!」

水銀燈「おまけに疳の虫まで患っちゃって。可哀想に、今、楽にしてあげる」

∀「ローゼンは敵……! 水銀燈は倒すべき……敵!!」

水銀燈「生意気を言う。それともあなたの中の野薔薇がそう囁くの? でも、まだまだ反抗期には早い」

∀「敵……! ママ……」

水銀燈「また、眠りに戻りなさい! これでね! いけっ 黒羽根ッ!!」

∀「ッ!?」

水銀燈「ごめんなさいねぇ? 子守唄の一つも歌えなくって」シュババババッ

∀「ぼ、防御しなくては! シールド……っ! 無い!? ビームサーベルも無い! Iフィールドバリヤー……出ない!?」

水銀燈(装備までは全然、復元できていないようね。けど、容赦しない)

∀「な、何か武器は? 何か武器はないのか……?」パカッ

水銀燈「∀の胸部が開いた? 確かあそこは設定では武器庫(サイロ)……!?」

∀「何これ? 勝手に!? 何かが出て……!」ドギュルッ

水銀燈「バッカルコーン(口円錐触手)! ロゼリオン、メメントリオンのお家芸!」

∀「あううっ? 何これ、蛇? 気持ち悪いけど、ママの黒羽根を落としてくれてる。守ってくれる? これは僕がやっていること?」

水銀燈「ちぃっ……」


424名無しさん:2013/08/22(木) 22:50:13 ID:B33zHgT60
∀「そうとも∀……。けれど一つ間違いがある。水銀燈はママじゃあない。水銀燈は敵。あなたの、そして私達の敵ッ!」

水銀燈「……あまり時間をかけてられないようね」

∀「声? 僕の中から? 誰かが僕の中に居る?」

水銀燈「∀にロゼリオンとしての自覚や経験を積ませるのは避けなくては。私が勝つためにも……∀のためにも!」

∀「僕の中で喋るあなたは誰? 胸の中に蛇が一杯いたから、頭の中にもやっぱり蛇が」

水銀燈「よそ見してくれるとはありがたいわねェ! お願いだから、そのまま眠って!」ズギャッ

∀「ああっ!?」ゲシッ


425名無しさん:2013/08/22(木) 22:52:45 ID:B33zHgT60
∀「私はあなた。胸の蛇のようなものもあなた。全てはあなた、全ては∀……」ウィィン

水銀燈「力いっぱい殴ってやったのに、すぐ立ち上がる? タフになったのか……それとも鈍くなっただけなのか」

∀「……分かった。僕の中の誰か! 君が僕のママなんだね!!」ブワッ

水銀燈「飛んだ!?」

∀「僕とママが安心して眠るためには……」キイイイ

水銀燈「ちっ! 月光蝶システムは使えるのか!?」

∀「あの黒いのを倒せばいいんだ!」カッ


426名無しさん:2013/08/22(木) 22:54:30 ID:B33zHgT60
§nのフィールド・カーバンクルの火山

蒼星石「よいしょっ」

翠星石「こらしょっ」

雛苺「どっこいしょ」

蒼星石「ふー……、ちょっとメカ真紅を担ぎっぱなしで疲れた。休憩しようか」

翠星石「ま、待ってましたですぅ……」ゼーハー

雛苺「ヒナはもう、くたくたなのよ」グテェ

蒼星石「歩き尽くめだったからね。しかし、ここまでくればあと少しだ」

翠星石「今更ですが、本当にこれしか方法は無いのですか?」

雛苺「うぃ。やっぱりメカ真紅が可哀想なのよね。ここの火山の火口に捨てるだなんて」

蒼星石「僕なりに考えた結果だ。人工精霊の結界では常に守りきれない」

翠星石「……」

蒼星石「メカ真紅と再び戦うのは僕だって絶対に嫌だ。だから……彼女をここの火山で完全に消滅させる」

翠星石「理屈は分からないことはないですぅ。今のメカ真紅は既に死体。ただの置物であって、心や精神があるわけではない」

蒼星石「……」

翠星石「そして、そのせいで万一ロゼリオン化した時に予想外の事態がおきかねないことも」

蒼星石「うん。何かが起きてからじゃ遅いんだ。オズ残党が残らず掃討されたとしても、ロゼリオン技術は無くなるわけじゃあない」

雛苺「でもね、それでも! メカ真紅が溶けてなくなっちゃうのは悲しいの!」

翠星石「そうですぅ! 生きてないから、もう動かないから捨ててもいいって感じみたいで! 翠星石はすげぇ嫌ですよ!」

蒼星石「翠星石」

翠星石「だったら、翠星石達は!? 翠星石達が動かなくなったら人間に捨てられても……!」


427名無しさん:2013/08/22(木) 22:56:04 ID:B33zHgT60
蒼星石「僕は、そうやって僕が捨てられたとしても何とも思わない」

翠星石「蒼星石!?」

蒼星石「君だって知っているはずだ。人はやがてお人形遊びを卒業する」

雛苺「そ、そんな淋しいこと言わないでなのよ蒼星石!」

蒼星石「人は死んだら灰になって消えていく。それが摂理。人形だけが、死んでもその姿を残そうというのはエゴだよ」

翠星石「う……」

雛苺「にゅにゅ」

蒼星石「このメカ真紅の置物が無くなっても、彼女は僕達の心の中で生き続けている」

翠星石「そんなの! そんなのだってエゴじゃあないんですか?」

雛苺「そうなのよ! 心って言われたって、それだけじゃよく分からないの!」

蒼星石「気持ち」

雛苺「きもち?」

蒼星石「心っていうのは気持ちだ。僕達のメカ真紅への気持ち」

翠星石「む……」

雛苺「むぅ……」

蒼星石「……このやり取り、もう5回目だよ」

翠星石「わ、分かっているです。でも何回でも……言い続けてもらわないと」

雛苺「ヒナ達の気持ち……心も足も折れそうになっちゃうの」

蒼星石「……」

翠星石「情けない姉で、すまないですぅ蒼星石」

蒼星石「いや、きっと僕もだ」

雛苺「うぇ?」

蒼星石「僕だけでも、きっと火口へは辿り着けない。きっと途中で心が折れて引き返してしまう」

雛苺「……」

蒼星石「君達に何度も言っていることは僕自身が自分に言い聞かせていることでもあるんだ」

翠星石「蒼星石……」

蒼星石「休憩は終わりだ。行こう。この時期のカーバンクルは大人しいとはいえ、僕らはあくまで余所者で侵入者だ」

翠星石「長居は得策じゃあねえってことですね。行くですよチビ苺」

雛苺「うぃ! それじゃ今度はヒナがメカ真紅の前を持つぅ!」


428名無しさん:2013/08/22(木) 22:57:41 ID:B33zHgT60
§nのフィールド・記憶の海・第五真紅丸・船上

ホーリエ「……!」

ダニー「大丈夫! 真紅船長は……! 真紅船長は海の女なんだ! 負けない! 絶対に!」

ホーリエ「……」

ダニー「海中であろうと! 今度の決闘でこそ船長はギョージの心を救ってみせるはずだ!」

ホーリエ「ッ!」

ダニー「そうとも! 『夢の漁師』が魚に負けるわけない……っ!」


429名無しさん:2013/08/22(木) 23:00:59 ID:B33zHgT60
§記憶の海中

ギョージ「くっくっく! ようこそ俺の世界へ……てところかぁ? 真紅」

真紅「……」ゴポポ

ギョージ「海中だが、お互い会話は通じるよな。なんてったって何でもありのnフィーだ」

真紅「確かに最終決戦において、これ以上にふさわしいフィールドはないかもね。漁師と魚が決着をつけるには」

ギョージ「分かってないようだな。笑わせる。人形が水中で魚に勝てるとでも? 呼吸とか関係なく、記憶の海は精神に悪い」

真紅「分かってないのはあなたよギョージ・サーカナー3世。あなただって今は人形でしょうに」

ギョージ「……」

真紅「それも、とても水中生活に適したとは言えないアンバランスな姿(もともとのエヌマグロの図体からして、そうだけど)。」

ギョージ「いちいち、こまっしゃくれたことを! 今日こそは俺の本気を見せてやるぜぇーーーーっ!」

真紅「ああ、そう。それじゃ今までは本気も見せずにちんたらしてたってわけ?」

ギョージ「ッ!?」ビキビキ

真紅「親の敵を目の前にして、のんびりしたこと。ギョセフや1世が泣くわね」

ギョージ「父や祖父を死なせたキサマが言うなぁーーーーっ!!」ドバッ

真紅「来なさいっ! ギョージ!!」


430名無しさん:2013/08/22(木) 23:01:25 ID:B33zHgT60
§海上・第五真紅丸

ダニー「本格的に戦闘が始まったか」

ホーリエ「……っ」

ダニー「この船上からじゃあ、細かいところまではよく分からない……けど!」

ホーリエ「?」

ダニー「縦横無尽に泳ぎ回るギョージに一方的に真紅船長がなぶられているように見える」

ホーリエ「!」

ダニー「わ、分かってるさ! ここは我慢だホーリエ。真紅船長の『合図』を見逃さないためにも……」


431名無しさん:2013/08/22(木) 23:02:58 ID:B33zHgT60
§海中

ギョージ「受けよ我が必殺のぉおおお! オーバードライブ(※)!!」ズバシャア


※波紋疾走ではなく単なる超スピードの体当たり


真紅「……くっ」ズキズキ

ギョージ「はははっ。思うように動けぬだろう! 大口を叩きおって!」

真紅「……」

ギョージ「母なる海の偉大さの前に、木っ端と崩れ落ちる自らの貧弱さを思い知れ!」バビュッ

真紅「あああっ」ドガッ

ギョージ「思い知れ! 思い知れ! 思い知れ! 俺の、私の……僕の恨みをっ!」

真紅「……うう」グッタリ

ギョージ「さっきからずっとグッタリしてるわりにはしぶとい奴め。敢えて動かないことで俺のスタミナ切れを狙っているのかな」

真紅「!?」

ギョージ「そんな小細工は無駄だぞ。エヌマグロの……赤味肉の魚の、サーカナー家の血の力をなめるなぁ!」

真紅「なめて……なんかいないわ」

ギョージ「!?」

真紅「サーカナーの血統には敬意を払う。でもね……」

ギョージ「……」

真紅「今のあなたにそれは無い! 血も肉も捨て、人形の体に逃げたあなたには!」

ギョージ「ほざけ! テメーだってそうだろうが!!」

真紅「……ダニーーーーーーッッ!!」

ギョージ「!?」


432名無しさん:2013/08/22(木) 23:05:16 ID:B33zHgT60
§第五真紅丸・船上

ダニー「聞こえた! 船長の合図だ」

ホーリエ「!」

ダニー「真紅船長の声だ! 間違いない! 約束どおり『骨銛』投下! ちゃんと受け取ってくださいよーーっ!!」


433名無しさん:2013/08/22(木) 23:06:56 ID:B33zHgT60
§海中

ギョージ「ちっ! 熱くなりすぎたせいで目測が狂っちまった! 今のオーバードライブ、真紅をかすっただけ……」スィー

真紅「……ギョージ!」すちゃっ

ギョージ「む! いつのまに武器を? 今、上のダニーが投げ入れたのか?」

真紅「ええ、そうよ」

ギョージ「くだらん。だが、いいだろう。漁師など道具が無ければ魚と対等に戦えやしない。で、それは槍か? 水中銃か?」

真紅「銛よ。でも、ただの銛じゃあない! 『骨銛』!」

ギョージ「……? おい、まさか……!」

真紅「そう! これの材料は骨! 偉大なエヌマグロたるギョナサン・サーカナーの背骨を削り、強酸で整えた『骨銛』よ」

ギョージ「……やめろよ。何の冗談だ!! そんな嫌がらせを俺にして、何か楽しいのかよ!!」

真紅「楽しいわけない! できれば使いたくなかった! しかし! 血と肉を捨てたあなたに、本当の力というものを……!」

ギョージ「ふざけるなぁーーーーーーーーーっ!!」


434名無しさん:2013/08/22(木) 23:08:10 ID:B33zHgT60
§ドールショップ槐

金糸雀「♪~~」

雪華綺晶「……また、音程がずれてますよ金のお姉様」

金糸雀「うっ……」

雪華綺晶「心を静めるための楽曲で、逆に自らの心を乱す。本末転倒」

金糸雀「空気を乱す物の怪はあなたかしら雪華綺晶。どうして今頃になって薔薇水晶にそこまで執着を……」

雪華綺晶「今頃? 私は最初から彼女にこだわってました。今回はベクトルが生かす方にではなく、壊す方に向いただけ」

金糸雀「……」

雪華綺晶「金のお姉様こそ何のこだわりがあって、ここにいるのです」

金糸雀「だって雪華綺晶、このまま約束の時間になったら奥のアトリエで更新中の薔薇水晶を壊しに行くのでしょう?」

雪華綺晶「約束は約束です。『間に合わない』は『できない』と同じこと」

金糸雀「そんなこと、カナが許さないかしら」

雪華綺晶「……お姉様の許しなど欲しいとは思っていません」

金糸雀「うぬぬぬ……! 本当にもう、ああ言えばこう言う妹かしら」


435名無しさん:2013/08/22(木) 23:14:21 ID:B33zHgT60
雪華綺晶「ところでお姉様」

金糸雀「?」

雪華綺晶「例のヤカンはどうなったのです?」

金糸雀「ヤカンさんなら、他の金属と一緒に砕かれて溶かされて混ぜられて今はマンホールの蓋になっていたわ」

雪華綺晶「……そこまで原形をとどめていなければロゼリオン化もしないでしょうね」

金糸雀「でも、カナの心の中にはヤカンさんが残っている」

雪華綺晶「ただの妄想ですね、人形らしくもない」

金糸雀「雪華綺晶、薔薇水晶の恨みを指摘したあなたがカナのこの気持ちを今度は妄想だと言う。それっておかしくない?」

雪華綺晶「……なるほど、そういう見方もありますか。賢いですわね金糸雀は」

金糸雀「でへへ、それほどでも……、ってお姉ちゃんを、からかわないで!」

雪華綺晶「では、東果重工の掃除人さんは? 恨みという点では彼がお姉様にもつ恨みも相当のはず」

金糸雀「ふっふっふー。このレディ・カナに抜かりはないかしら。そちらの対応も万全よ」

雪華綺晶「と、言いますと」

金糸雀「銘菓カナリアサブレを手土産に詫びをキッチリかっちり入れてきたわ」

雪華綺晶「……」

金糸雀「これで彼とカナのわだかまりも解決。恨みなんて綺麗さっぱりかしら~」


436名無しさん:2013/08/22(木) 23:17:54 ID:B33zHgT60
金糸雀「それに雪華綺晶、カナはもう一つ分かっちゃっているのかしら。あなたの矛盾に」

雪華綺晶「矛盾?」

金糸雀「聞きたい? ねぇ、聞きたいでしょ?」

雪華綺晶「いえ……別に」

金糸雀「おーほっほっほっほ! 目はそう言ってないかしら。強がらずにカナの話を聞いて頂戴、雪華綺晶」

雪華綺晶「……」

金糸雀「あなたがここにいる理由。時間が迫っているからだなんて借金取りのように居座っている、だーけーどっ!」

雪華綺晶「だけど、何なのです?」

金糸雀「本当は薔薇水晶と槐を守るためでしょ? オズ残党が薔薇水晶をロゼリオンに仕立てに来ないように」

雪華綺晶「……」

金糸雀「でしょ? 図星でしょ? や~っぱりカナの目は慧眼かしら~っ!」

雪華綺晶「確かに、そうですわ。槐と薔薇水晶は惜しい」

金糸雀「あら、素直じゃない」

雪華綺晶「特に現時点ではまだ、『槐先生が約束を守り薔薇水晶に抗体を備える』という可能性があるのですから」

金糸雀「そうそう!」

雪華綺晶「ですから特に矛盾はありませんよね。今は期待しているから守る。けれども……」

金糸雀「え?」

雪華綺晶「あと数時間で私の希望は裏切られるかもしれない。そうなれば私は絶望をもって薔薇水晶を壊す」

金糸雀「ううっ?」

雪華綺晶「お姉様は矛盾だなんておっしゃりましたが……」

金糸雀「そ、そんなことカナ言ったかしら?」

雪華綺晶「言いました」


437名無しさん:2013/08/22(木) 23:20:51 ID:B33zHgT60
§nのフィールド・廃墟の町

∀「こ、これ……は?」ブオオオオ

水銀燈「なんてこと……! まるで悪い夢でも見てるみたい。あの∀が放出しているのは月光蝶の羽根じゃあない!」

∀「黒……羽根? なんで、あの黒い人形と同じ羽根が僕の背から……!?」

水銀燈「以前、∀を討った時に、∀は私の翼の一部をもぎ取る抵抗をみせていた」

∀「……?」

水銀燈「それが∀復元時にナノマシンに取り込まれ、複製……てところぉ?」

∀「ッ!?」

水銀燈「便利なツールよねぇ! ナノマシンって! でも、今回ばかりは本当に残念……!」

∀「どうして? 僕の羽根が黒い……何で?」

水銀燈「私の可愛い∀、アンタのキラキラした無限の翅模様はけっこう好きだったのよ?」

∀「お、落ち着いて∀……。月光蝶はなくとも、この羽根も立派な武器。フェザーファンネルとは、こういうもの……」

水銀燈「それがさぁ、こんな私みたいにどす黒い羽根に変わっちゃって! 見てらんなぁい!」

∀「い、行け! ファンネル!」ばひゅひゅっ

水銀燈「あっははははぁ! どこ狙ってるのぉ? 全然、使い方を分かってないじゃない」

∀「うう……」

水銀燈「ほらほら。アンヨは上手、アンヨは上手。頑張ってママを捕まえてぇ」

∀「……あなたなんか、お前なんか!」

水銀燈「?」

∀「ママじゃない! 僕のママは……っ、私だ!」


438名無しさん:2013/08/22(木) 23:23:39 ID:B33zHgT60
§記憶の海中

ギョージ「ローズスケイル(薔薇の鱗)!!」

真紅「ぐっ? 何という威力? 水の中で渦巻くまるで魚群! ギョージの言葉もハッタリではない。水中で全く威力が減衰しない」

ギョージ「当然! お前の猫の尻尾みたいなローズテイルとは違う!」

真紅「くっ?」グルグルグル

ギョージ「ふふふ、気付いたようだな! ローズスケイルは水中に渦を作っている。その渦はお前に逆らい、俺に味方する」

真紅「うううっ! か、体の自由が!」

ギョージ「さあ、これで最早お前は今までみたいに俺のオーバードライブ(突撃)を紙一重でも、かわすことはできなくなった!」

真紅「!」

ギョージ「正真正銘これが最後の一撃! これでサーカナー家も、野薔薇も救われる! くらえっ、オーバードライブ!」


439名無しさん:2013/08/22(木) 23:26:35 ID:B33zHgT60
真紅「ロ、ローズテイル!」びしゅしゅ

ギョージ「今更そんなのが効くかよ! ボケェッ!」ぺしっ

真紅「高速突撃するギョージに全て弾かれる!? こ、こうなったら!」スチャッ

ギョージ「そうだ! その骨銛を使えよ真紅!」グオオオオ

真紅「しかし、高速で向かってくるギョージに、これを投げ刺すのは至難の業!」

ギョージ「うおおおおおおおおっ! 真紅ー!」

真紅「下手に打ち込めばローズテイル同様に弾かれる。やはり、ここは両手で銛を保持したまま迎えて突き刺す!」

ギョージ「やってみやがれ、真紅! 俺の覚悟は親父より固いってことを証明してやる!」

真紅「ギョージッ!!」

ギョージ「親父を乗り越えて、真紅お前を倒す!!」

真紅(エヌマグロの肉体、骨格はギョナサンを解体した時にきちんと覚えている! ギョージの頭の骨と骨の隙間を狙えば!)

ギョージ「ギョギョギョギョギョーーーー!!!」ゴオオオ

真紅(……やれるはず! けど、今のギョージは人形。見た目はマグロそのままでも、頭部構造がギョナサンと同じとは限らない)

ギョージ「ギョギョギョーーーーーーーーーー!」ゴオオオ

真紅「今は賭けるしかない! ギョナサン! 私に力をーーーっ」グンッ

ギョージ「ギョギョギョーーーーーーーン!」



ドグシャア



真紅「……手応え、ありよ!」

ギョージ「ギョギョーーーッ! お、俺の頭に銛ッ!? 銛がぁああ! 痛ぇー、痛ぇえええ!」

真紅「けど、この手応えは……」ビリビリ

ギョージ「はなせっ!」ドカッ

真紅「ああっ!」

ギョージ「や、やってくれたなテメー! だがっ」

真紅「浅かった! ギョナサンとやはり頭部の構造が変わっている! 銛は打ち込めたけど、致命傷じゃない!」

ギョージ「これで手詰まりだな! 今度こそ! やるっ」シュゴオオオ

真紅「……っ! ダニーーーーーーーーーーー!!」


440名無しさん:2013/08/22(木) 23:26:55 ID:B33zHgT60
§第五真紅丸・船上

ダニー「二度目の合図だ! よし、ホーリエ」

ホーリエ「!」

ダニー「今度もちゃんと受け取ってくださいよ! 真紅船長!」


441名無しさん:2013/08/22(木) 23:28:48 ID:B33zHgT60
真紅「来たっ! これを待っていた! 流石ねダニー!」ぱしっ

ギョージ「なっ! また『骨銛』だとぉおおお!?」

真紅「銛は二本あった! ギョナサンは骨太だったし……」ジャキーン

ギョージ「そ、それがどうした! 何本打ち込まれようと、俺は……」

真紅「せいっ!!」ドォス

ギョージ「ごばっ!?」

真紅「再び手応えあり! しかも今度は! クリティカル(致命傷)!」

ギョージ「うああ……っ? 馬鹿な! ど、胴体の真ん中をやられた?」

真紅「……」

ギョージ「な、んで? 俺……、私の体が?」ズブブ

真紅「簡単なこと。私はエヌマグロの構造よりも人形の構造に詳しかった。当然のことでしょう?」

ギョージ「!?」

真紅「私はあなたを最初、エヌマグロとして倒したかった。でも、やはりあなたはもうエヌマグロではなく、ただのお人形」

ギョージ「あ、ああ……うう……」ズブズブ

真紅「さよならギョージ。許してだなんてとても言えない。私を恨んで」

ギョージ「し……んく……」ゴボボボ


442名無しさん:2013/08/22(木) 23:29:18 ID:B33zHgT60
§カーバンクルの火山・火口

蒼星石「いっせーの……」

翠星石「せっ!」

雛苺「ポイなのーっ」


ドボーン


翠星石「……メカ真紅がマグマに沈んでいくですぅ」

蒼星石「そうだね」

雛苺「ドロドロに溶けていってる……、熱そうなのよ」

蒼星石「そう……だろうね」


443名無しさん:2013/08/22(木) 23:30:08 ID:B33zHgT60
翠星石「結局、翠星石達はメカ真紅を捨てることでしか事態を解決できなかったですか」

雛苺「ヒナは真紅や蒼星石の決めたことに従うことしかできなかったの」

蒼星石「……」

雛苺「こうして、ただ付いてきて、ちょっとだけお手伝いして、後は見てるだけ……」

蒼星石「雛苺……」

雛苺「ヒナ、見てるだけだなんて……くやしい」

翠星石「チビ苺」

蒼星石「見てることしかできないんだったら、雛苺……」

雛苺「?」

蒼星石「最後まで見ていてやるんだメカ真紅を」

雛苺「蒼星石」

蒼星石「目を逸らしちゃいけない、メカ真紅の最後のひとかけらが溶けてなくなるまで」

雛苺「うぃ」


444名無しさん:2013/08/22(木) 23:33:13 ID:B33zHgT60
翠星石「あっ! う、動いた!? メカ真紅が動いたですよ!」

蒼星石「えっ!?」

翠星石「ほら! 手だけ動いて、振っているです」

雛苺「ば、バイバイしているのよ!?」

蒼星石「違う、あれは多分、マグマで腕間接が溶けて……。いや、どうでもいいか。そんなことは……今は」

雛苺「ばいばーい! ヒナ、メカ真紅のこと忘れないの~!」フリフリ

翠星石「翠星石も! 翠星石だって忘れないですぅ」ブンブン

蒼星石「……」フリフリ


445名無しさん:2013/08/22(木) 23:34:58 ID:B33zHgT60
§ドールショップ・槐

金糸雀「ぐーすぴー! くか~」zzZ

雪華綺晶「……何故、この雰囲気の中で眠れるのやら」

薔薇水晶「雪華綺晶」ガチャリ

雪華綺晶「!」

薔薇水晶「予定の時間より……早く終わりました」

雪華綺晶「見た目は何も変わっていないようですわね。本当に目的の抗体が組み込まれたので?」

槐「君なら見た目が変わっていなくとも薔薇水晶の本質が、中身が少し変化していることは見抜けているだろう」

雪華綺晶「……混ざったのですか」

槐「ほんのちょっとだけどね」

金糸雀「……ふぁ」パチクリ

雪華綺晶「あ、起きました? 金のお姉様?」

金糸雀「な、何事かしら? どうしてかしら? 何でもう槐と薔薇水晶が出てきているのかしら?」

槐「別に時間ぴったりでなくともいいだろう。早く終わったんだから」

金糸雀「終わったってことは、施術は成功ってことかしら!?」

薔薇水晶「そうです。私はメメントリオンに冒されることはない」

雪華綺晶「……」


446名無しさん:2013/08/22(木) 23:38:16 ID:B33zHgT60
金糸雀「そりゃ、めでたいかしら! ものども祭りの準備じゃ! 男衆はお湯をジャンジャン沸かすかしらーっ!!」

雪華綺晶「落ち着いてくださいお姉様。薔薇水晶はある意味、反則技を使っています」

金糸雀「反則?」

槐「……」

金糸雀「反則ってどういう?」

雪華綺晶「彼女はロゼリオン化しています」

薔薇水晶「……」

金糸雀「えええええええ~~っ! それじゃ、背中から触手がニュルニュル出るようになっちゃったのかしら薔薇水晶!?」

薔薇水晶「……」

金糸雀「……と言うか何でロゼリオンになっちゃってるの? そうならないための抗体作りのはずじゃあ?」

槐「これは今までのロゼリオン化とは少し違う。言うなれば第2.5世代もしくは第1.5世代ロゼリオンに薔薇水晶は変化した」

金糸雀「え? え? どゆこと?」

雪華綺晶「私にも説明を、槐先生」

槐「早い話がワクチンと同じだ。不活化したメメントリオンの一部のみを薔薇水晶に移植した」

雪華綺晶「……」

槐「第3世代ロゼリオンになるには、素体に対して野薔薇とメメントリオンの同時融合が必要……だが」

金糸雀「だが?」

槐「既に素体側がロゼリオンに変質していれば、後食いによる進化、強化は難しい。それを逆手に取った」

金糸雀「つ、つまり既に薔薇水晶はちょびっとだけロゼリオンになったってわけだから……?」

雪華綺晶「……」

金糸雀「薔薇水晶が今後に第3世代ロゼリオンになってカナたちに襲い掛かることはないってこと……よね?」

薔薇水晶「そのとおりです」

雪華綺晶「……質問があります」

薔薇水晶「どうぞ」

雪華綺晶「不活化したメメントリオンを移植したそうですが、それはどこから手に入れたので?」

薔薇水晶「……かつての同志、オズメからメメントリオンだけは受け取っていました」

金糸雀「!?」

薔薇水晶「もしもの時はこれを使って、ロゼリオン化すればいいと託されたものです」

雪華綺晶「第2次ロゼリオン崩しの時に……? なら何故、私との闘いの時に使わずに?」

薔薇水晶「私はただ、私として闘っていたかった。それだけです」

雪華綺晶「……」

薔薇水晶「メメントリオンを受け容れてしまえば、私が私でなくなる恐怖があった」

槐「けれど、今回は不活化したメメントリオンだ。薔薇水晶自体に精神的な影響はない……はず、多分」

薔薇水晶「お、お父様!? 今ちょっと小さな声で多分って言いませんでした?」

槐「だ、大丈夫、大丈夫だって。きっと」

薔薇水晶「き、きっと……?」


447名無しさん:2013/08/22(木) 23:40:48 ID:B33zHgT60
槐「ま、冗談はさておき。何しろ薔薇水晶が持ち返ったメメントリオンは既に死んでいた」

金糸雀「へ?」

槐「このままじゃあメメントリオンを腐らせるだけだし、お墓でも作ろうかとしていたら……」

金糸雀「していたら?」

槐「真紅がいきなりやって来て、何かの役に立つかもしれないからミイラにしましょう……て」

金糸雀「し、真紅が!? メメントリオンを! ミイラに!?」

雪華綺晶「紅薔薇のお姉様は何を考えて、そんなことを? まさか、ここまで先を見据えて?」

槐「いや、あれは完全に興味本位だったと思うよ。何でもいいからミイラ作りの技術を磨きたいとか言ってたし」

薔薇水晶「おかげさまで、不活化したメメントリオンを長期保存できていたわけです」

槐「そう。不活化していたからロゼリオン化しても特にパワーアップしてないし、背中にバッカルコーンも出ない」

金糸雀「ほへぇ~」

槐「薔薇水晶が頑張れば、スルメのゲソみたいなのは出るかもしれないけど」

薔薇水晶「ためしにやってみましょうか、金糸雀?」

金糸雀「いやいやいやいやいや、いいかしら。結構かしら。薔薇水晶が出すのは水晶だけで充分だわ」

薔薇水晶「あら、それは残念」

金糸雀「けれども、うぅーむ、人生何があるか分からないわ。ともあれ結果オーライよね雪華綺晶。これでもまだ薔薇水晶を?」

雪華綺晶「今回は、これでいいでしょう。しかしまた新たな問題が生まれたら、その時はその時です」

金糸雀「……雪華綺晶も案外、素直じゃないかしら」


448名無しさん:2013/08/22(木) 23:43:38 ID:B33zHgT60
§nのフィールド・廃墟の町

∀「動け……ない、もう。パワーが……」ボロロッ

水銀燈「私の可愛い∀……、まだ昔のあなたの方が強かったわね」

∀「そんなことない、私は昔の記憶もある。力もスピードも、今の方が」

水銀燈「野薔薇に私と∀の何が分かる。ただ、同情はするわぁ。望んでガンプラと合体したかったわけでもあるまいに」

∀「僕は? これから一体どうなる……の?」

水銀燈「あなたを弱くしてしまったのは私の心の弱さ。∀、今度こそあなたに清らかな眠りを……」

∀「?」

水銀燈「もう二度と誰もあなたを傷つけない。私を恨んで頂戴。私はこれからあなたのコアを潰す。復元できないように」

∀「が……」

水銀燈「さよなら∀……、私がママよ」

∀「ま……」

水銀燈「コアを完全に破壊。後は念のためボディもナノスキンごと焼き払って終了……か」

∀「……」

水銀燈「あの時は、この子を眠らせるために翼の一部を失った。そして今回もわりとボロボロになっちゃって、私ってば」

∀「……」

水銀燈「夜泣きする子にまた眠ってもらうだけで、この体たらくとは。相変わらず、寝かしつけるのが下手よね」


449名無しさん:2013/08/22(木) 23:45:36 ID:B33zHgT60
§第五真紅丸・船上

真紅「……いいわ、引っぱり上げて頂戴」

ダニー「無事で? 真紅船長!?」

真紅「元気いっぱいというわけにはいかないけどね。腐っても鯛、いえ鮪だったということかしら」

ダニー「本当にギョージ3世を倒したんですね真紅船長。また見逃したとかでは」

真紅「いえ、この真紅に三度目は無い。この手で確実にギョージの……ロゼリオンとしてのコアを貫いた」

ホーリエ「……」

真紅「後悔? 当然してるわよ。ギョージ3世と、こんな形でしか決着を……」


ガグンッ


ダニー「うおっ?」

真紅「な、何この揺れ? 座礁!?」

ダニー「まさか! 周りには何も……」


450名無しさん:2013/08/22(木) 23:47:11 ID:B33zHgT60
ギョージ「クアアアアアアアーーーーーッ」ばしゃあっ

ダニー「なにぃいい!? ギョージ! お前まだ生きて!? どこから船に乗こみりやがった」

ギョージ「ひひ……ひ、一人では……レなねぇ……!! お前ら……も道連れに」

ホーリエ「!」

真紅「何ですってホーリエ!? 船のあちこちから浸水!?」

ギョージ「はは……は!」

ダニー「ぐっ! 船を沈める気か!」

ギョージ「そうとも。そして、それだけじゃあ……ない! 船が沈む前に、俺の命が消える前に、せめて、この手で……!」

真紅「ッ!?」

ダニー「あ、危ない! 奴は手に真紅船長が打ち込んだ骨銛を持っている!」

ギョージ「ギョギョギョー! この銛はっ! この銛はぁあああ! 真紅、テメーが親父を削って作った銛だぁあああああ!」


451名無しさん:2013/08/22(木) 23:49:33 ID:B33zHgT60
真紅「くっ!?」

ダニー「し、真紅船長ぉー! 逃げて!!」

ギョージ「死にさらせーーーー!!」ブオッ

ダニー「させるかー!」ドスッ

真紅「ダ、ダニーーーーーーーーーーーッ!? 私の身代わりに!? な、なんで!? ああ、どうして、こんなことに!?」

ギョージ「くっ! は、離せ! 銛を」グイッ

ダニー「離さん……よ!」

真紅「ダニー……、そんな! 私を守るために!?」

ダニー「俺、副船長ですから……っ」

ギョージ「く……そぉ! 離せ! 離せよ」グイグイ

ダニー「もう、やめろやギョージ」

ギョージ「やめられるか! 真紅は……真紅はぁあああっ!! 親父の、祖父の……! 私の……、僕の!!」

ダニー「俺が一緒に死んでやる」

ギョージ「うるせぇ! お前なんか! お前なんかいるかぁっ!」

ダニー「お前を見てると、結局、昔のまま成長しちまった俺自身に思えてしょうがねぇ」

ギョージ「やめろよ! そんなお節介! 俺は……お前なんか殺したってちっとも嬉しくなんか……!」

ダニー「むしろ気持ち悪いってか。真紅船長も……同じ気分だろうぜ」

ギョージ「……!」


452名無しさん:2013/08/22(木) 23:51:03 ID:B33zHgT60
真紅「ダニー……! ギョージ……!」

ダニー「真紅船長! 脱出を……っ! 鞄を一緒に持ってきていたでしょう。あれなら水に浮くはず! ホーリエ、後を頼む」

ホーリエ「!」

ダニー「急いで! 第五真紅丸はもう……もたない!」

真紅「そ、そんな残酷なこと! 副船長としてのお給料だって先々月から未払いで……!」

ダニー「じゃあ、この船……をもらっていきますわ。給料3か月分じゃあ足りませんか?」

真紅「……全然、足りないわよ……馬鹿っ!!」

ダニー「そりゃ、どうも……すいません……」ガグッ

真紅「ダニー!」


453名無しさん:2013/08/22(木) 23:52:52 ID:B33zHgT60
ギョージ「行け、真紅……」

真紅「ギョ、ギョージまで!?」

ギョージ「勘違い……するなよ。おれはこのイグアナみたいにセンチになったからじゃあない」

真紅「?」

ギョージ「こう……するのが一番お前に『きく』って分かったんだよ」

真紅「なっ!?」

ギョージ「お前は今後も……俺とダニーを殺した感触を覚えて、ずっと生きていくんだ」

真紅「……ッ!」

ギョージ「心に消えない傷を抱いてな。それがっ! 俺がお前に託す……魂だ」

ダニー「……ギョージ!」

ギョージ「ダメだ、もう力が入らない。真紅、ダニー、俺は死ぬ……だが、勝ったなどと思うな」

真紅「ギョージ」

ダニー「お前は一生苦しむことになるんだ。祖父と父と俺を抹殺したんだからな。一生後悔して生きていくんだ……ハッハッハッハ」

真紅「……!」

ダニー「真紅船長! 早く、早く行ってください! ホーリエ! 無理やりでもいい! 真紅船長を鞄に!」

ホーリエ「ッ!」

真紅「忘れないわダニエル・ラングゼン! そして……ギョージ・サーカナー3世」


454名無しさん:2013/08/22(木) 23:56:00 ID:B33zHgT60
ダニー「そうです……行ってください。あなたはジュン君のところに帰らなくては」

ギョージ「ダニー、てめぇ」

真紅「真紅船長、そうです。走って……転ばないように。泣かないで、あなたならでき……ます、船長」

ギョージ「……ふぅー、最後の最後でやられたよダニー。もう、恨み節も出ねぇ。俺の中の野薔薇もメメントリオンも同意見だ」

ダニー「……」

ギョージ「ダニー?」

ダニー「……」

ギョージ「なんだ……先に逝っちまいやんの……」


455名無しさん:2013/08/23(金) 00:17:40 ID:WGI7VjhY0
こうして第3世代ロゼリオンもイレギュラー的な二つの事例を出したのみで事件は収束してくこととなる。
総じて薔薇乙女達の勝利で終わったが彼女達、特に真紅と水銀燈は身体だけでなく心に少なからぬ傷を負う。

オズ残党のアジトの所在はメイメイにより明らかになり
後日、庭師連盟等による残党狩りが行われ、壊滅させられる。教皇も捕縛され、後に極刑に処されたらしい。

アジトが発覚した時点で、真紅と水銀燈、雪華綺晶、薔薇水晶は野薔薇や知己を弄ぶ教皇ら不届きものに
自らの手で制裁を加えることを望んだが、それを制止したのは意外にも金糸雀であった。

ローゼンメイデンが出張って復讐の連鎖を繰り返せばロゼリオンの進化も加速する。
薔薇乙女だけで解決しなくてはいけない問題とも限らないのだから、同じnのフィールドの住人達に任せてもいいだろう、と。

翠星石、蒼星石、雛苺が金糸雀の案に同調したことで、水銀燈達も自らの疲労を癒すため、結果として継戦を見送った。


∀ロゼリオン → 復元能力も絶たれて完全消滅

ギョージ・サーカナー3世 → 死亡

ダニエル・ラングゼン → 死亡

第五真紅丸 → 沈没

メカ真紅 → 火口に捨てられる

東果重工の掃除人 → カナリアサブレを喉に詰まらせて死にかける



薔薇乙女のうた『月に繭 海には魚影』  完



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2013/08/23 21:13:04 コメント24 ユーザータグ ローゼンメイデン

コメント

※102106:No name:2013/08/23 21:43:09
∀……
悲しいなあ……
※102107:No name:2013/08/23 21:45:37
カナだけ何気にテロってない?
※102110:No name:2013/08/23 22:32:45
東果重工の掃除人だけなんで落とすんだよww
※102111:No name:2013/08/23 22:39:43
やはりオチはカナリアか・・・
※102112:No name:2013/08/23 22:55:12
ギョージの最後の言葉がシャドームーン・・・(´Д⊂グスン
しかし麻呂はまさかターンAまで利用するとは・・・・ゆ゛る゛さ゛ん゛
※102113:No name:2013/08/23 23:01:56
作者もツッコまれるのが わかっていたからミイラの話をいれたのだろうが…
 
それでも 言わせてもらうと ばらしーをネチネチ虐めたドールは他にいるぜ?
イカゲソを出すばらしーには笑ってしまった
※102115:No name:2013/08/23 23:21:49
∀の話を聞いた時銀ちゃんはもっと、発散させる場所と行き場のない何かしらの感情を表に出すと思ったけどなあ…
でもまあ土台としては自分がそういう風に思っただけなんですけどね。私利私欲と罵られようと麻呂を(殺すのではなく)裁きたい、と

最期を見守るってのは1つのものに基本的に1度しかないけど、2度目は前回以上に受け止める強さをもとめられるなってぼくおもいました
※102120:No name:2013/08/23 23:51:56
このシリーズどこまで行くんだ…?

なんかもう原作とは関係なしに、ローゼンメイデン完になりそうな勢いなんだが
※102121:No name:2013/08/23 23:53:27
今更ながら、ガンプラ事件を経ているから水銀燈は強くなってしまったんだってこと、理解した
結構珍しいキャラだなぁと思う
※102124:No name:2013/08/24 00:17:56
今回はシリアス分が多めだな…なんて思ってたのに、オチwwwwwwwwwwww
カナマジ策士
※102125:No name:2013/08/24 00:30:49
メカ真紅の第2のプロテクターは「あわ状」だったのだ!
※102126:No name:2013/08/24 00:36:45
メカ真紅の最期にシュワルツェネッガーを見た
そしてミイラがここにからんでくるとは思わなかったw

あと安定のオチ要員カナwww

※102125
究極生命体メカ真紅やめいwww
※102129:No name:2013/08/24 01:16:26
生い立ちや経験的にどうしても暴走しがちな薔薇乙女の中で金糸雀と翠星石は最後の一歩は抑えられる貴重なキャラだと思う。そこがこのバカ二人にいいところ
※102131:No name:2013/08/24 01:54:25
海の漁師真紅ちゃんまさかの第一部完!なBADEND
でもこのやるせなさを抱えながら進む感じは漫画(アニメ)本編の真紅の物語に近いな
これまでの海の漁師真紅ちゃんならジョージと和解してヒートエンドで麻呂はっ倒してた所
※102132:No name:2013/08/24 07:46:41
あれだけ暗躍しておいて随分あっさりと、それこそ断末魔の台詞すらなく麻呂が処刑されたが
これが最後の麻呂とは思えな…いや、やめておこう。俺の予感だけで皆を混乱させたくない…

あと普段ド外道で自堕落で逆さ吊りに定評があって乙女力マイナスぶっちぎりな分、尻ASSな展開になると
かっこよさと儚さと美しさと愛しさと切なさが一層際立つ真紅ちゃんはやっぱり主人公だと思いましたのだわ
※102133:No name:2013/08/24 08:06:18
第五真紅丸がロゼリオン化して復活する可能性が微レ存
それこそ、マンキンの天使みたいに
※102134:No name:2013/08/24 09:02:22
他にロゼリオン化の可能性があるのは……タケノッコーンか?
あとカナマジプリティ
※102144:No name:2013/08/24 18:50:32
恐ろしいほどの過去を清算したなぁ…
で、この後はNフィー士山からマグマを泳いできたメカ真紅復活、
海底に沈んでいたギョージの目がかっと見開く、
複製機能でみんな麻呂になるNフィー、が展開されるんですねw
※102147: :2013/08/24 20:58:56
ネット復活したら真紅さんの男前で救われてた二人がーーー

第五真紅丸が無くなったら真紅さんがまともになる機会が やばい
アリスゲームから著しく逸脱してる漁師で比較的まともになるというのもアレだが
※102148:No name:2013/08/24 21:03:44
ダニー……
※102154: :2013/08/25 05:38:02
気道制止カナリア ~抜かりないカナ
※102157:No name:2013/08/25 09:51:40
シリアス回だと言うのに、序盤のコントと豆知識とオチまで付けてくれるとは
しかし供養したってことは今回話で出た全キャラ第3世代化はありませんって明言してるのかな?
もしかしたら、SSだけど新シリーズにでも入るのかな?
※102158:No name:2013/08/25 13:35:04
このシリーズのばらしーはこう、ひたむきさがあってかわいいうえに色気があるというか…。最高。

メカ真紅は名作中の名作。

※102160:No name:2013/08/25 20:37:25
それよりもジュンの乙女力を下げた方が良いんじゃないか?
最後に計測したときに125、三馬鹿が金儲けのために監禁してるって嘘を吹き込めばユニコーンが利用出来るかもしれん
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