真紅VSギョージ・サーカナー2
- 245 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:11:09 ID:sNUlTRDw0
- 今回に関係のある前回までのお話
真紅VSギョージ・サーカナー 桜田ジュンの肖像『逆襲の教皇』 - 246 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:13:31 ID:sNUlTRDw0
- §柿崎めぐの部屋
雪華綺晶「はい、ワンツー、ワンツー」
ブサ綺晶達『♪きっききっ』クルクル
雪華綺晶「ワンツー、ワンツー。クルッと回って、にっこりスマイル」
ブサ綺晶達『♪きーきっ』
水銀燈「……何やってんの? アンタ? ブサ綺晶どもをこんなに並べて」
雪華綺晶「盆踊りの練習ですわ黒薔薇のお姉様」
水銀燈「……なんで?」 - 247 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:16:15 ID:sNUlTRDw0
- 雪華綺晶「聞いていないのですか? 紅薔薇のお姉様がローゼン音頭の作詞作曲を近々に完成させるそうで
それを機に薔薇乙女で三日三晩、踊り続けるという祭りを計画中です」
水銀燈「知らないわよ、そんな話」
雪華綺晶「まあ。私にすらお声が掛かったというのに本当にお姉様は真紅に嫌われているのですね……」
水銀燈「誘われても参加する気なんて毛頭ないわぁ。と言うか末妹アンタ、真紅の誘いにホイホイついていくと殺されるわよ?」
雪華綺晶「何故です?」
水銀燈「……盆踊りって元は念仏踊り、死者を弔ったりだとか、魔除けの行事じゃない」
雪華綺晶「ッッ!?」
水銀燈「アンタ、そういう悪霊祓い的な事されると、すぐ弱るでしょうが。なのに盆踊りの特訓て。暢気な自殺の練習ね」
雪華綺晶「……」しおしおしお
水銀燈「って言ってるそばから、しおれ始めてるーッ!?」
雪華綺晶「ハァハァ……、ぼ、盆踊りにそのような力があったとは知りませんでしたわ。雪華綺晶、一生の不覚……」
ブサ綺晶達『きーっ!?』オロオロ
水銀燈「めぐ! めぐーーっ! 水持ってきて水ーー!!」 - 248 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:19:49 ID:sNUlTRDw0
- §桜田ジュンの部屋
ホーリエ「ッッ!」ひゅいーん
真紅「あらホーリエ? どうしたの? え? 手紙? 私に? 白薔薇から?」
雛苺「♪白薔薇さんからお手紙ついた」
翠星石「♪紅薔薇さんたら読まずに食べた」
真紅「お腹減っても私は紙なんて食べないわよ。ヤギじゃないんだから」
翠星石「でも蒼星石はこの間言っていたですよ。人間でも腸内細菌さえ整っていれば
紙を食べてエネルギー源にできるんですぅ。効率はめちゃ悪いそうですが」
雛苺「ふぉおおお! すごいのよー! ジュン、ねぇねぇこの画用紙食べてみてぇ~」
ジュン「食べません。と言うか雪華綺晶からの手紙って珍しくないか? 用件は?」
真紅「どれどれ? 『盆踊り大会には一身上の都合で参加できなくなりました』?」
翠星石「なんとぉー!?」
雛苺「うぇえええ!? 雪華綺晶、盆踊りに来ないのよ?」 - 249 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:20:43 ID:sNUlTRDw0
- 真紅「……どうやら私達の目論見がばれたようね」
ジュン「目論見?」
真紅「雪華綺晶を囲んで盆踊りを行い、その霊的プァワーで
彼女をしこたま弱らせたところで……キュッ! という作戦を練っていたのだわ」
ジュン「……」
翠星石「うまいこと騙せていたはずですのに、ここに来て勘付かれてしまうとは」
雛苺「今度こそ雪華綺晶を倒せると思ったのに残念なの!」
真紅「やれやれ。逃がした魚は大きいわね……」
ホーリエ「ッ! ッッ」ふよふよ
真紅「え? もう一つ手紙を預かっている? 今度は別の人物から?」
ジュン「誰だ?」 - 250 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:22:52 ID:sNUlTRDw0
- 真紅「こ、この手紙は……ッ」プルプル
翠星石「今度は誰からですぅ? ひょっとしてラブレターですか?」
雛苺「もしかしたら水銀燈の人からの結婚申込かもしれないのよね」
ジュン「それを言うなら決闘申込だろ」
真紅「ええ、雛苺の言うとおり決闘申込だわ。けれど差出人は水銀燈ではない。
白薔薇とはまた別の、この間逃がしてあげた魚からの果たし状よ」
ジュン「逃がしてあげた魚……って、まさか!?」
真紅「そう。ギョージ・サーカナー3世から決闘の呼び出し」
雛苺「さかなクン3世と勝負なの!?」
翠星石「あのヤロー! せっかく真紅が情をかけてやったというですのに!
恩を仇で返すとはこのことです! 寝言は寝て待てーいですぅ!!」 - 251 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:25:43 ID:sNUlTRDw0
- 真紅「……」
ジュン「だ、大丈夫か真紅?」
雛苺「真紅、さかなクン3世と本当に戦っちゃうの?」
真紅「向こうがそれをお望みなのだからしょうがないわ。私とて覚悟していた。
こうも早く、その時が来るとは思っていなかったけど」
翠星石「真紅……」
真紅「けれど、ギリギリまで私は……この戦いが回避できるように
言葉で彼の心に訴えかけるつもりよ。サーカナー家の名誉のためにも」
ジュン「……」
真紅「決闘は正々堂々、一対一。悪いけど、私一人で行かせてもらうわ。約束の場所は、記憶の海のとある小島。
そう沖合でもないし、ホーリエだけでも充分に第五真紅丸を操舵できる」
ジュン「そんな! 前みたいに3世が罠をしかけていたりしたら……!」
真紅「私しか行かなければ人質の取りようも無いでしょ。それ以外の罠は、全て戦術として私は受け容れる」
翠星石「真紅……」 - 252 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:29:25 ID:sNUlTRDw0
- 真紅「これは3世の肉体をうちのめす決闘ではなく、彼の心を救うための決闘。
彼の全てを受け容れた上で、私の覚悟がそれを上回ることを見せつけなくてはならない」
翠星石「なんという立派な気迫。これは間違いなく黄金の精神……」
ジュン「そこまで考えているなら、僕達は真紅の無事を祈るのみだ」
雛苺「真紅、あいと! あいとー!」
真紅「ふ、ありがとう皆」 - 253 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:34:35 ID:sNUlTRDw0
- §そんなこんなで約束の日時・決闘の小島
3世「……」
真紅「どうしても戦うしか道はないの? ギョージ……」
3世「そうだ。俺の恨みを晴らさせろ」
真紅「しかし!」
3世「正直、あの時、お前に見逃された時、俺はホッとした」
真紅「っ?」
3世「自分は殺されなくて済む、食われずに済む。このまま逃げ続けて
復讐という甘い毒に冒されたまま天寿を全うするのも悪くないとな」
真紅「ギョージ!」
3世「そんな自分が許せねぇ。俺が父に、祖父に! 一族に誓った誇りと復讐心は
決して臆病者の感情ではない! なのに、俺は……俺って奴は……ッッ!」
真紅「……」 - 254 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:36:24 ID:sNUlTRDw0
- 3世「真紅、お前を倒すために、乗り越えるために先ず俺は俺自身を超越しなくてはいけないってことが分かった」
真紅「な、何を言っているの? ギョージ?」
3世「もう、後には引けないのさ。俺も、お前も……」スチャッ
真紅「その手(胸鰭)に持っているのは、注射器!? 貴方、何を!?」
3世「……我が心に一点の迷いなし」
真紅「ギョージ!!」
3世「俺はマグロをやめるぞーーーーッッ! 真紅ぅうううう!!」ドスゥッ
真紅「ッ!? ギョ、ギョージが手に持っていたのは確かに注射器だった!
中身は何かの薬物? そ、それをギョージは自分の体内に……ッ!?」
3世「うわっははっははははーーーーっ」パアアアア
真紅「ギョージの体が光に包まれいてく!? な、何が起きているというの!?」 - 255 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:41:04 ID:sNUlTRDw0
- §決闘より遡ること数日前・nのフィールド・記憶の海・深海居酒屋『竜宮城』
3世「オラァッ! 酒が足んねーぞコラァ!」
店員「お客様、これ以上は体に毒です」
3世「んだとぉ!? テメーは客に文句言うのが仕事かよー!? ちげーだろ! 黙って酒を持ってきて注ぎゃいいんだよ!」
店員「お、お客様……」
覆面「……ほっほっほ、荒れているでおじゃるの」ヒョコッ
3世「あん?」
店員「え? あ、えと」
覆面「店員さん、この御仁はまろの連れでおじゃる。騒いで申し訳ない。彼にはまろから、よく言って聞かせるゆえ許してほしい」
店員「は、はあ」
覆面「それでは、お冷やを二つお頼みするでの」
店員「は、はい。ありがとうございます」 - 256 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:46:50 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「探したでおじゃるよ、サーカナー殿」
3世「うるせぇ。てめー、今さら何の用だ。あと、その覆面は何だ? 前はそんなの付けてなかっただろうが」
覆面「ほっほ。ちょいと素顔でうろつきまわったせいで面倒が起きたでおじゃる。まろもなかなかのウッカリさんじゃったの」
3世「はぁ?」
覆面「ともかく、前回は話の途中でいきなり飛び出して以降、姿をくらませ長い間何をやっていたかと思えば
ダニー副船長と文通の果て、陳腐な人質作戦を真紅相手にかましたそうではないか」
3世「!」
覆面「そして情けなくも真紅の温情で生きのび、このような場所で酒びたりとは
サーカナー家も地に落ちたものよの。あ、この残っている卵焼き食べてもいいかの?」
3世「……何でもお見通しか、お前は」 - 257 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:52:13 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「ほっほっほ。エヌマグロと言えば、一尾あたりローゼンメイデン2~3体にも匹敵するほどの
幻の高級珍味であったのに、そのように酒びたりでは肉質もグズグズじゃ。たとえネコでも跨いで歩こうぞ」
3世「……俺を食材扱いするな」
覆面「失礼。さて、それでは前回しそびれた話の続きとまいろうの」
3世「続き?」
覆面「そうじゃ。全く、そちは祖父と父の非業の最期だけ聞いて 『マジかよ! 真紅に復讐してくる!』と
飛び出したのじゃ。そちのような魚類の力と知恵で勝てるわけがなかろうものを」
3世「……」
覆面「理由は、じかに真紅と会った、そちなら既によく心得ておるな」
3世「ああ、こう見えて俺も広大な海の食物連鎖を生きのびてきた魚類だ。
稚魚から成長するために、兄弟を何人食べたかすら覚えちゃいねぇ(※)。
その俺が、あの真紅の紺碧の瞳に見据えられた時、動けなかった。
しびれた。生きたまま蛇に飲まれる蛙の気持ちが分かった気がした」
※天然マグロは孵化直後、同時期に生まれた兄弟同士で共食いをする。これはエヌマグロに限った話ではなく
クロマグロなど現実のマグロでもガチ。そのためにも親マグロは、やたらと沢山の卵を一箇所で産むらしい。 - 258 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:53:20 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「ふむ、先走りは褒められたものではないが、得たものは大きいようじゃな。
では、まろの話も今度は最後までちゃぁんと聞いてもらえるでおじゃるの」
3世「ああ。真紅に勝てるのならな」
覆面「それは重畳でおじゃる。では、お冷やを飲んだら場所をかえようぞ」 - 259 :名無しさん:2013/07/26(金) 21:59:56 ID:sNUlTRDw0
- §nのフィールド・廃墟の街
覆面「ここならば、静かに話ができそうでおじゃるな」
3世「……お前の目的は何だ?」
覆面「まろの目的はもちろん、そちの復讐を成さしめる事よ。それがまろの復讐にもなるでの」
3世「薔薇乙女はあちこちから恨みを買っているというわけか。真紅が自分で言っていたとおりだな」
覆面「当然じゃの。nフィーの空を割り、地を砕き、人の生命を爪裂き食らうほどの
力を持ち、幼い女子の如き精神でそれを行使する。コンフリクトは後を絶たぬでおじゃる」
3世「こんふりくと? ……横文字はよく分からん。お前、雰囲気は古風なくせに、変な言葉を使うんだな」
覆面「コンフリクトとは衝突や軋轢と言う意味でおじゃる。ま、簡単に言うとトラブルと同じことぞ。
と言うか、そちこそハイカラな名であるのに横文字が苦手とはの」
3世「……」 - 260 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:02:18 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「ま、それも些末なことよの。何よりも重要なことは……そちが何を成したいかということでおじゃる」
3世「それなら、さんざ言っているだろ。復讐だ、真紅への」
覆面「その後は?」
3世「知らん。今はただ、真紅を砕いて食い殺してやることしか俺の頭にはない。奴が俺の父にそうしたように」
覆面「ほっほっほ」
3世「答えとして不足か?」
覆面「いやいや、充分よ。それでこそ『ロゼリオン』になる資格はある」
3世「ろぜりおん? だから横文字は……」
覆面「ふむ、敢えて言い換えるなら『薔薇喰み』とでもするかの。格好良いし」
3世「ばらはみ……?」
覆面「そう。ロゼとは薔薇、薔薇乙女、そしてローゼンを意味する。リオンとはライオン、肉食獣、天敵、喰らう者という意味じゃ」
3世「それでロゼリオンが薔薇喰み、か」
覆面「そうじゃ」
3世「で、そのロゼリオンの意味は分かったが、ロゼリオンとは何だ? ただの肩書きか」
覆面「無論、それもこれから説明する。ロゼリオンに関しては第一人者である、まろの講義、ありがたく拝聴するがよい」
3世「……偉そうに」 - 261 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:05:31 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「ロゼリオンを構成するのは二つの要素でおじゃる。それすなわち『野薔薇』と『メメントリオン』」
3世「メメントリオン!?」
覆面「ほっほっほ。野薔薇の方は知らなくとも流石にメメントリオンは知っているでおじゃるな」
3世「記憶の海に棲む深き者どもの間ではそれなりに有名な生物だからな。
クリオネに似た形の大小さまざまな軟体動物だろ? ガキの頃、よく捕まえて食ってたぜ」
覆面「らしいの。エヌマグロの主食の一つがメメントリオン。だからこそ、そちを見込んだというのもある」
3世「?」
覆面「理由はおいおい分かるでおじゃる。かようにメメントリオンは脆弱であり素の状態では簡単に捕食されてしまうゆえ
ヤドカリのように防護壁を纏う。それはまさにただの小さな貝殻であったりもするが、時に沈没船などの巨大な鎧を
手に入れることもあるでおじゃる。そして、それに合わせてメメントリオンも急速に巨大化する」
3世「成長したメメントリオンには確かに敵わない。だが奴らは所詮、死肉あさり」
覆面「それは誤解でおじゃる。メメントリオンが食べるのは記憶の海の淀み。
呪いや穢れが凝り固まったもの、怨念や幽霊といったものじゃ」
3世「……腹にたまりそうにないメニューだな」 - 262 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:08:43 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「しかし、彼らがいるからこそ記憶の海という無意識の憎悪に染まりやすい場所も
清浄さを保っていられるでおじゃる。彼らがいなければ今にどす黒いもので溢れかえるぞ」
3世「あんた、本業は環境活動家か?」
覆面「まろは、ただの技術者でおじゃるよ。
さて、メメントリオンの話は一旦さておき次は『野薔薇』についての説明でおじゃる」
3世「……」
覆面「こっちは初耳であろうが、説明は簡単でおじゃる。ローゼンメイデンのデッドコピー……つまり模造品のことでおじゃ」
3世「模造品?」
覆面「ローゼンメイデンの高名にあやかり、雨後の筍のごとく類似品が雑多な錬金術師らによって
粗製濫造された時代があったのでおじゃる。その多くが打ち捨てられ、nのフィールドをさまよっているぞな」
3世「……」 - 263 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:12:01 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「偶然か必然かは知らぬが、海から陸に進出したメメントリオンが
息絶えた野薔薇の骸に宿り、その心臓となった。これが第1世代ロゼリオン」
3世「第1世代? ってことは、まさか……」
覆面「そう。その後に第2世代ロゼリオンと呼ばれる者も出現したでおじゃる。
しかし、同じロゼリオンでも第1世代と第2世代はかなり様相が異なっている」
3世「何が違うって言うんだ?」
覆面「第1世代は野薔薇の骸にメメントリオンが寄生しただけの存在であったが
第2世代は逆に野薔薇の方からメメントリオンを飲み込み、迎え入れた存在でおじゃる。
ゆえに第2世代は生きた野薔薇としての意志を持ったままロゼリオン化していた」
3世「メメントリオンを食べてもロゼリオン化するだと!? それじゃ俺も既に!?」
覆面「落ち着くでおじゃる。そのようなことができるのは野薔薇のような人形だけ。
普通(?)の生物の体内ではメメントリオンは栄養として消化されてしまうでおじゃる」
3世「……」
覆面「この第2世代は拡張性に富んでいて面白いものであった。
何しろ体内のメメントリオンに、他の呪いや怨念を食べさせることでパワーアップできたそうじゃからの」
3世「食えば食うほど強くなるってことか」
覆面「しかしながら、この後食いによる強化は今一のようで結局は第2世代ロゼリオンも姿を消していったでおじゃる」 - 264 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:15:34 ID:sNUlTRDw0
- 3世「……第3世代は?」
覆面「そちじゃ」
3世「……俺? 確かにメメントリオンをたくさん食べはしたが、それだけじゃロゼリオンにならないと今あんたが言ったばかりだろう」
覆面「いかにも。ロゼリオンとして必須なのは最初に言ったとおり、『野薔薇』と『メメントリオン』。この二つは絶対に外せぬ」
3世「……」
覆面「第2世代では効率がよくなかった『後食い』による強化を、とある方法で解決させる試みをまろは思いついたのでおじゃる」
3世「とある方法?」
覆面「後食いでは、既に出来上がった野薔薇とメメントリオンの繋がりの間に
新たな力が割って入ることが出来ぬと、まろは仮定しておる」
3世「……」
覆面「ならばロゼリオン誕生の瞬間に新たな力も同時に加えてやればいい。言わば三身合体でおじゃるな」 - 265 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:17:33 ID:sNUlTRDw0
- 3世「俺に、野薔薇とメメントリオンと合体しろということか」
覆面「ほっほっほ、そのとおり。やってくれるでおじゃるか?
そちは幼き頃よりメメントリオンを捕食していたし、ローゼンメイデンを食い殺しかねん怨念も充分。
生来、薔薇乙女を恨む野薔薇とも実に馴染むことであると、まろは睨んでいるでおじゃる」
3世「いいだろう。俺が薔薇喰みになってやる」
覆面「ほほ、実に色よい返事じゃの。もう少し逡巡するかと思ったが」
3世「サーカナー家は代々短命の一族。俺だってすぐにお迎えが来る。だったら一瞬でも、閃光のように……」
覆面「ならば、これを渡そう」
3世「注射器? これは?」
覆面「野茨の聖釘」
3世「ノイバラのセイテイ?」
覆面「この注射器の中には、圧縮された野薔薇の核とメメントリオンの魂が融合一歩手前の状態で
封じ込まれているでおじゃる。これをそちが自らに打ち込めば、そちの身を拠り代としてロゼリオンが誕生する」
3世「……」 - 266 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:19:53 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「ローゼンメイデンと限りなく同じ無機の体、限りなく同じ力、いや三位一体のそれは最早、彼女らを超えるはずでおじゃる」
3世「どうやって、こんなものを作った?」
覆面「企業秘密でおじゃる」
3世「……」
覆面「それを持って真紅と最後の決闘に臨むがよい。
ただし、野茨の聖釘を使うのは真紅と対峙して、いよいよとなってからの時にするでおじゃるぞ」
3世「何故だ?」
覆面「そちが真紅に丸め込まれて復讐をあきらめるなら、野茨の聖釘は返してもらいたいのでおじゃる。何しろ貴重品での」
3世「俺はもう、真紅の前に怖気づいたりはしない」
覆面「もしもということもある。年長者の言う事は聞くものぞ」 - 267 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:20:58 ID:sNUlTRDw0
- 覆面「真紅を目の前にして、それでも心が揺るがぬなら、己が心臓に聖釘を打ちたてよ。
そちの心臓は不完全な肉の棺より解放され、骸はロゼリオンとなる。
意識は……野薔薇とメメントリオンのものも溶け込むだろうが、その程度は我慢せぬとな」
3世「主導権は俺が握る。問題ない」
覆面「ならば良い。じゃが、迷ったら打つな、でおじゃるよギョージ・サーカナー。迷いがあれば
そちはせいぜい第2世代ロゼリオンどまりじゃ。いや、そもそもロゼリオンとなれるかも疑わしくなるの」
3世「……」 - 268 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:22:14 ID:sNUlTRDw0
- §決闘の小島
3世「迷ったら打つな……か」
真紅「ギョージ! 貴方いったい何を!?」
3世「我が心に一点の迷いなし」
真紅「!!」
3世「俺はマグロをやめるぞーーーーッッ! 真紅ぅうううう!!」ドスゥッ
真紅「ッ!? ギョ、ギョージが手に持っていたのは確かに注射器だった!
中身は何かの薬物? そ、それをギョージは自分の体内に……ッ!?」
3世「うわっははははははーーーーっ」ファゴオオオ
真紅「ギョージの体が光に包まれいてく!? な、何が起きているというの? 限りなく……どんどんと輝きが増していく!?」 - 269 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:40:06 ID:sNUlTRDw0
- \ ゚ o 。| 。 / 。 /
○ 。 ゚ |゜ O / o / 。゜
゜ 。 \ o ゚ O ゚ 。 /゚ 。 O
゚ 。 \ | ゚ o / ゚ 。 ゜
。 ゜ 。 。 。 ゚ 。o ゜
__。___ ゚ 。 ゜ ―O――――
゜ o 。 o ゚ 。 ゚ 。 ゚
゚ 。 O / 。 |゜ 。゚ \゜ O ゜
゜ 。 / 。 / ○゚ O \ 。 ゜
O ゜。 / ゚ | 。゜ ゚ 。 o
/ o 。゜ | o ゜ \
真紅「光がおさまってきた……? ギョージ? 貴方は何を……ッ?」
/´〉,、 | ̄|rヘ
l、 ̄ ̄了〈_ノ<_/(^ーヵ L__」L/ ∧ /~7 /)
二コ ,| r三'_」 r--、 (/ /二~|/_/∠/
/__」 _,,,ニコ〈 〈〉 / ̄ 」 /^ヽ、 /〉
'´ (__,,,-ー'' ~~ ̄ ャー-、フ /´く//>
`ー-、__,| ''
/, .
_,,,...//〃ー,_/(. /
,,イ';;^;;;;;;;:::::""""'''''''' ::"〃,,__∠_/
/;;::◎'''::; );_____ (
≧_ノ __ノ))三= _..、'、"^^^\ヾ
~''''ー< ___、-~\
/| >薔< |\
<_/ L.ィ´| \__」 l ゝ
/ィへ〈 ト、_」,. -」__}
ノ{ イヽ! l j`ヽ
/ ト |l ノj 1 \
/ ゝ=f ゝ/{_ノ | .}
/ / ゝリ Lヲ j |
3世「……」
真紅「ッッ!? ギョ、ギョージなの? 貴方? けど、そ、その姿は何と言うかあまりにも……」 - 270 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:42:46 ID:sNUlTRDw0
- 3世「……」
真紅「この雰囲気、その姿格好! まさか……!? 野薔薇? いえ、ロゼリオン!?
ど、どうしてギョージ!? 貴方が! ああ、そんな……ッ!!」
3世「これ……が人形の体というものか。ちょいと間接周りがギクシャクして
ぎこちないが、すぐ慣れるだろう。何より、今までにない力を感じる……」
真紅「あああ、なんてこと! ギョージ! なんてことをっ!」
3世「……」
真紅「貴方には祖先から受け継いだ誇るべき血と、美味なる肉があった!!
なのに、それを捨てて! 人形(?)へと身を貶めるだなんて! 何て馬鹿なことを!!」
3世「そうとも、私……、俺は馬鹿なことをやっている。
それでも、これで真紅、貴様に勝てるなら! 恨みが晴らせるなら!!」ゴオッ
真紅「は、早い!?」ズサッ
3世「一気に片をつける!!」
真紅「くっ!! 薔薇の尾(ローズテイル)!!」ブワッ
3世「薔薇の鱗(ローズスケイル)!!」ドバッ
真紅「ッッ!? 私のローズテイルにそっくりの技!?」 - 271 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:45:29 ID:sNUlTRDw0
- §ドールショップ・槐
薔薇水晶「ぼくをみて、ぼくをみて、ぼくのなかのかいぶつがこんなにおおきくなったよ。バリバリグシャグシャバキバキゴクン」
槐「……」
薔薇水晶「おなかのすいたかいぶつは、オットーをなかからたべてしまいました」
槐「薔薇水晶?」
薔薇水晶「え? あ! す、すいません、お父様! 近くに居られるのに気づかなくて」
槐「いや、それは全然かまわないんだけど、何やってるの?」
薔薇水晶「図書館から借りてきた絵本の朗読です」
槐「そういえば、君、図書館の民話朗読会とかに参加していたね(※)。でも何で今日はまた家で朗読やってるの?」
※狙われた柏葉巴 参照
薔薇水晶「朗読が上手くなれば……新アニメでも絵本の朗読役とかで出番がもらえるかと」
槐「ば、薔薇水晶……」
薔薇水晶「ぼくをみて、ぼくをみて、ぼくのなかのかいぶつがこんなにおおきくなったよ。
おとこのこは、おうさまもけらいもみんなたべてしまいました」
槐「……」
薔薇水晶「バリバリグシャグシャバキバキゴクン」 - 272 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:48:07 ID:sNUlTRDw0
- §決闘の小島
真紅「水平真紅チョップ!!」シュバッ
3世「口円錐触手(バッカルコーン)絡ませ式シビ肘鉄!!」ドゴッ
真紅「くあっ!? わ、私が押し負けた!!」ズザザ
3世「……」
真紅「つ、強い! ギョージがロゼリオン化したら、これほどとは! 何よりも私に向けられる一直線で純粋な悪意!!」
3世「まだまだまだまだまだまだまだまだまだまだぁ!!」ズドドドド
真紅「くっ! 水銀燈も戦いには悪意を持ち込むタイプだった!
でも彼女の悪意は私だけにではなく水銀燈自身にも、そして何よりもお父様へ向けての悪意が強かった……」
3世「うおおおおおおおおおお!!」ズドドド
真紅「しかし、これは! 目の前のギョージが発するこれは!
これが意思の力? ただひたすらに私だけに向けられる悪意の……!?」
3世「魚(うお)おおおおおおおおお!!」ズドドド
真紅「ギョージのラッシュをさばききれない!? このままでは……負ける! やられる!?」 - 273 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:50:36 ID:sNUlTRDw0
- 3世「ギョギョギョッ!?」びたっ
真紅「っ!? 止まった? ギョージの動きが急に……!?」
3世「ぐ……ああ……」ガクッ
真紅「ど、どうしたのギョージ!?」
3世「なんだ……これは!? 頭……が割れそうだ。僕……、俺のっ!」ガクガクッ
真紅「ギョージ!!」
3世「触るな!!」ビシッ
真紅「あうっ」
3世「お、俺はお前を許さない! お前のせいで父が、祖父が……!!」
真紅「……ッ」
3世「……私は貴女を許せない。貴女さえいなければ私は苦しみに満ちた生を受けることもなかった。お父様に捨てられることも!」
真紅「!?」
3世「……どうして君は僕を水槽から出したりしたんだ! 外の海は冷たくて、寒くて!!」
真紅「これはいったい!? ギョージの中に……誰かいる!?」
3世「あぎぎぎぎぎぎぎっぎゃあああ……」
真紅「ギョージじゃない? 貴方は誰!?」
3世「お、俺は……」 - 274 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:51:40 ID:sNUlTRDw0
- 真紅「この真紅が問うわ! 貴方は誰ッ!?」
3世「俺は……僕は……私は……ッ!」
真紅「!?」
3世「ぐあああっ!」ダダダッ
真紅「ッ!? どこへ行く気!」
3世「うぐぐ……勝負は預ける! 敢えて言う! 覚えていろ!!」ドボン
真紅「ギョージ!? ギョージッッ!? ……海の中へ潜られたか」 - 275 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:54:40 ID:sNUlTRDw0
- §nのフィールド某所
残党A「野茨の聖釘、使えるので?」
覆面「ぼちぼちといったところよの。やはり素体に大きく影響されるでおじゃる」
残党B「ギョージとやらも随分と苦しんでいたようですが?」
覆面「真紅と戦い続け、最後は逃げ出したとは言え生存しているのでおじゃる。
まろ達の実験では、被験者は聖釘使用後15分で、体内に圧が溜まり爆裂したぞよ」
残党C「今頃どこかの海の底で、あの魚薔薇がそうなっていないという保障もありませんよ」
覆面「それもそうでおじゃるな。しかし第3世代ロゼリオンにも光明が見えてきたの。幽かでありながらも星のように確かな光が」 - 276 :名無しさん:2013/07/26(金) 22:58:06 ID:sNUlTRDw0
- §大体終わって日が暮れて・桜田ジュンの部屋
真紅「それで、私は復讐で目が濁ったギョージに仕置きをこれでもかと……」ペラペラ
翠星石「うっひゃー、真紅の仕置きはきついですからねー」
雛苺「ギョージ、可哀想なのよ」
真紅「ま、この真紅様に刃向かったのが運の尽きってことだわだわ。
例え大恩あるギョナサン(さかなクンJr.)の子供であろうとも、手加減無用」
ジュン「ギリギリまで戦いを避けるんじゃなかったのかよ」
真紅「避けられない戦いが、そこにはあった」
ジュン「はいはい……」
翠星石「ところで乱心したギョージを仕留めたのなら、どうして魚肉を持って帰ってこなかったのですぅ?」
雛苺「うぃ! ヒナ達、久しぶりのエヌマグロのお刺身を期待して、お米を精米して待っていたのよ~」
真紅「……」
雛苺「真紅?」
真紅「ふ、ちょっと力を込めすぎて殴ったせいでギョージはバラバラに砕け散った。その肉片すらも消し炭に」
ジュン「リンダキューブか」
翠星石「ぬぬう、ローズテイル・ヒートエンド(※)を使ったですね真紅。
あれは完全に相手を焼き尽くし、消し飛ばすオーバーキルですよ! もっとよく考えて戦えです」
真紅「ごめんごめん」
※相手に拳をめり込ませた状態でローズテイルを接射し、敵の体内から爆裂させる漢気あふれる技。相手は死ぬ。 - 277 :名無しさん:2013/07/26(金) 23:01:00 ID:sNUlTRDw0
- 真紅(ギョージがロゼリオン化しただなんて、この子達には言えやしないわ。今はまだ、私の胸の中だけに)
ジュン「……ま、その……なんだ真紅」
真紅「?」
ジュン「あまり一人で色々と抱え込んで無理はするなよ」
真紅(……読まれた!?)
ジュン「真紅?」
真紅「うるさいわね! 下僕の癖に主人の心の中を汲むだなんて百億光年早いのだわ!」ビシッ
ジュン「あいたっ!? 心配してやっただけなのに、なんでぶたれなきゃいけないんだよ!
あと、光年は時間じゃなくて距離の単位……」
真紅「まだ口ごたえする気!!」ビシバシ
ジュン「ひぃいいいい……っ」
雛苺「ジュン可哀想なの」
翠星石「何にしろ真紅が無事に帰ってきてくれて良かったですぅ。
ギョージのことでかなりハートブレイクではないかと思ったですが……」
雛苺「真紅はジュンをいじめると元気になるのよね」
真紅VSギョージ・サーカナー2 終
2013/07/27 22:41:42 コメント22 ユーザータグ ローゼンメイデン