SLPY

103 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:23:50.97 ID:kpp4dePH
§年の暮れも迫ったある日の桜田家

のり「皆さん! オハヨーゴザイマスッ!!」

ジュン「おはようございます」

真紅「おはよう」

翠星石「おはようですぅ」

雛苺「おはようなの」

のり「それではまず、今朝の薔薇乙女お約束条項の唱和はヒナちゃんでお願いします」

雛苺「うぃ! みんな、ヒナの後にちゃんと言うのよ」

真紅「はーい」

翠星石「へーい」

雛苺「お約束条項その1」

他の4人『お約束条項その1』

雛苺「お家の中の物を勝手に売らない」

他の4人『お家の中の物を勝手に売らない』


104 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:24:43.04 ID:kpp4dePH
雛苺「お約束条項その2」

他の4人『お約束条項その2』

雛苺「外から帰ったら靴の土を落としてから家に上がる」

他の4人『外から帰ったら靴の土を落としてから家に上がる』

雛苺「お約束条項その3」

他の4人『お約束条項その3』

雛苺「転んでも泣かない」

他の4人『転んでも泣かない』



中略



雛苺「お約束条項その10」

他の4人『お約束条項その10』

雛苺「ジュンやのりのパンツで変態仮面ごっこをしない」

他の4人『ジュンやのりのパンツで変態仮面ごっこをしない』

雛苺「ご唱和ありがとうございましたなのよ!」

のり「よくやったわヒナちゃん! ちゃんと10まで覚えられたのね!」

雛苺「えへへ! ヒナ頑張ったの!」

ジュン「よし、来週は翠星石の番だからな。11から20までちゃんと言えるようにしとけよ」

翠星石「げろげろ」

真紅「なんて声を出しているのよ翠星石」


105 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:27:10.83 ID:kpp4dePH
のり「お約束条項の唱和が無事終わったところで早速はじめるわよ今日のメーンイベント!」

真紅「ごくり……」

のり「かねてより告知していた通り! 今日は桜田家の大掃除でーす!!」

翠星石「おお~」

雛苺「ついにこの日が来たのよね」

ジュン「二人とも大掃除とは何なのか、ちゃんと分かってるのか?」

翠星石「ば、馬鹿にすんじゃねーですよ」

雛苺「それぐらいちゃんと知ってるのよ」

翠星石「大掃除とはズバリ! いつもの掃除では綺麗にすることのできない、しつこい汚れや隠れたところのホコリ
     爛れた人間関係、そしてあの夏の甘い思い出を消し去る! ちょっとばかり、おセンチな行事ですぅ!」

ジュン「うん、まぁ……大体あってる」

翠星石「イェーイ! 大体あってるーっ!」

雛苺「大体あってるーっ!!」

のり「さあ、それじゃあ皆! 今日の意気込みを一言ずつ語って頂戴」

ジュン「引きこもる前より美しく」

のり「自虐ネタ出せるだなんてメンタル強くなったわねジュン君!」

雛苺「お家の中を全部ピカピカにするのよ!」

のり「頼もしいわヒナちゃん!」

翠星石「♪今年の汚れ! 今年のう・ち・にッ! ですぅ」

のり「そのとおりよ翠星石ちゃん」

真紅「今年の伏線、今年の内に」

ジュン「何の話をしてるんだお前は」


106 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:28:25.73 ID:kpp4dePH
§そんなこんなで大掃除スタート

ジュン「さぁて、僕達は自分の部屋から始めるぞヤロウども」

真紅「ヒャッハー! 水だ水だー! 水をまくのよ翠星石!」

雛苺「全てを水に流してキレイにするのよー!」

翠星石「よーし、まかせろですぅ!」

ジュン「待て待て待て。水拭きは最後だ、最後」

翠星石「えぇ~、折角やる気モリマンのところに水を差すなですよチビ人間」

ジュン「お前らの変なガラクタ類が水でびしょ濡れになってもいいってんなら、それでも構わないけどな」

翠星石「うっ……、そ、それは困るです。まだ全部読みきってないマンガ本とかを部屋中に置いてあるです」

ジュン「置いてあると言うか、ほったらかしにしていると言うか。ともあれ先にそういうもののお片づけから始めろ」

雛苺「うぃ……」

翠星石「よし! それじゃあ気持ちよく片付けるためにも途中までしか読んでないマンガ本を全部読破するですぅ」

ジュン「いきなり大掃除の罠にはまるんじゃない翠星石」ヒョイッ

翠星石「ああっ!? なぜ漫画を取り上げるですかチビ人間!」

ジュン「掃除しろ」


107 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:31:34.95 ID:kpp4dePH
ジュン「いいか、大掃除の極意は捨てることだ。お前達が溜め込んでいるもので
     ここ最近使ってないものや必要の無いものは思いきって捨てろ。分かったか」

真紅「分かった」サッ

翠星石「よーし、それじゃあ思いきって……」ササッ

雛苺「ジュンを捨てちゃうの~~」ヒョイッ

ジュン「はい、さっさと僕を降ろす。そんなお約束は必要ないから。
     お前達が真面目にやらないのなら僕が勝手に判断して物を捨てるぞ」

真紅「ッッ!?」

ジュン「まずコレ。くんくん探偵DVD」

真紅「ちょっ!? ふざけないでジュン!! それは私の魂よ! 承太郎の記憶DISCよりも貴重なものだわ!」

ジュン「なんでその貴重なDISCが三枚もダブってんだよ。それぞれの巻数が
     違うとかじゃあない。おんなじ話のDVDが三つ! 一つあれば充分だろ!」

真紅「そ、それは……」

ジュン「ひょっとして観賞用、保存用、布教用の3つだとかほざくんじゃなかろうな?」

真紅「いいえ」

ジュン「じゃあ、何なんだよ?」

真紅「一つはコンビニ予約限定特典くんくんカレンダー付きで
    一つはネット予約限定オリジナルくんくんカード付き。あとの一つは北米版よ」

ジュン「オマケ目的で!? しかも最後の北米版て何!?」

真紅「過激な発言や表現が解禁されているのだわ」

翠星石「北米版くんくん探偵は口癖が『ファックユアマザー』になっているですぅ」

雛苺「ダーティな魅力あふれるくんくん探偵が見られるのは北米版だけなの!」

ジュン「小さい子の教育に良くないので捨てまーす(実際には後で中古屋に売ります)」ポイッ

真紅「ああっ! ディテクティブドッグくんくーーーーーん!?」

雛苺「ひ、ひどいのー!」

翠星石「なんてことするですかチビ人間!!」

ジュン「桜田ジュン容赦せん」


108 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:32:44.29 ID:kpp4dePH
真紅「ああああっ……」ガックリ

ジュン「さぁ、ドンドン捨てちゃいますからね~」

雛苺「うにゃにゃにゃにゃ……」

翠星石「チビ人間は本気ですぅよチビ苺! うかうかしていると翠星石達の宝物が全て捨てられてしまうです!」

ジュン「当たり前だ。お前達が来てからドンドン僕のスペースが削られていったんだ。コレを機に領土を一気に奪還する」

翠星石「ぬぅッ!? なんという強気外交」

ジュン「おぉっと? 怪しげな段ボール箱はっけーん!」

雛苺「ッ!? ダ、ダメー!! それに触っちゃダメなのよー!!」

ジュン「おーおー、やっぱり雛苺のか。随分とガラクタ溜め込んでいるみたいだが」ズシッ

雛苺「やあああああああっ! 見ないでぇええ! やめてぇ! 開けないでなのよーっ!」

ジュン「やめませーん。開けまーす」パカッ


109 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:41:02.96 ID:TVJ64qNm
ジュン「……なんだこりゃ? 木の枝か? どうしてこんなに木の枝ばっかり箱に?」

雛苺「だめぇ! 汚い手で触っちゃダメなのー! ジューーーンーーーーー!!」

ジュン「僕の手は汚くねーよ」

翠星石「つーかチビ苺、マジで何で木の枝をこんなに集めてるですか?」

真紅「流木? アクアリウムでも始める気?」

雛苺「ううう、お散歩中に見つけた形のいい木の枝なのよ」

ジュン「何でそんなものイチイチ拾ってんだよ。ビーバーだったらダムが出来るわ」

翠星石「お、ナイスツッコミですよチビ人間」

真紅「腕を上げたわね」ポンポン

ジュン「やかましい。ともかく、この枝は全部捨てるからな。……たくもう、こういうの処分するの地味に大変なんだぞ。
     可燃ゴミじゃなくて特殊ゴミ扱いされることもあるんだから」

雛苺「うゆゆ……」

ジュン「はい、お次は翠星石の私物。ワケの分からん少女漫画誌やら何やら全部捨てます」

翠星石「なんとーっ!?」

ジュン「目当ての漫画の単行本買ったなら、掲載誌の方は要らないだろ」

翠星石「いやいやいやいやいやいや! 本誌と単行本での違いを……
     トーン修正や微妙な台詞の変更を確認するのが通の楽しみ方ですよ!?」

ジュン「お前がそんな地味な作業してるとこ見たことないんだが」

翠星石「うぐっ!?」


110 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 19:41:26.73 ID:bUokJ2/G
ジュン「はい、コレも捨て! アレも捨て!」ポイポイポイ

真紅「うーむ、ジュンのお掃除魂に火がついてしまったわね」

翠星石「絶好調のチビ人間は誰にも止められんですぅ」

雛苺「ヒナが止めてみせるの! ジュンの過ちはヒナが粛清するのよー」ガバッ

ジュン「あ!? コラ! 邪魔するな雛苺!」

雛苺「ジャマじゃないの! ジュンの目を覚ましてあげるだけなんだから! ジュンを目覚めさせるのはヒナのお仕事なのッ!」

ジュン「ええい、このっ……!」

雛苺「うにゃっ!?」ピカーーーッ

翠星石「な、なんですぅ!?」

真紅「ジュンが手をかざしたら、雛苺から謎の光が……ッ!?」

雛苺「……」しーん

翠星石「お、おい? チビ苺どーしたです? 薇(ゼンマイ)でも切れたですか?」

雛苺「ごめんなさいなのよジュン! ヒナも頑張って要らないものドンドン捨てるの」キリッ

ジュン「おう、分かればよろしい」

翠星石「チ、チビ苺!?」

真紅「こ、これは必殺マエストロ・リカバー!!」

翠星石「何が起きたのか分かったのですか真紅!?」

真紅「ジュンの男前度が最大限に上昇した時に発揮されるマエストロパワーにより邪なカラクリ等が正常かつ善なる状態に
    修復されてしまうのよ! ドラクエで言うなら、シャナクやニフラムとかを足して3で割ったような特技!!」

翠星石「ひぃいいいい!? な、なんという恐るべき必殺技!?
     チビ人間が翠星石達よりもレベルが高かったら消されてしまうですか!?」

雛苺「ヒナの生き甲斐はガムテープをクルッとまいたヤツで絨毯のホコリを取ることなの」

翠星石「あわわわわわわ、チビ苺のヤロー、完全に目から光を失っているですぅ。
     白薔薇が作った蒼星石の幻影と同じ眼差しですよアレは」

真紅「ジュン……恐ろしい子!」

ジュン「無駄に驚いてないで、お前らも雛苺を見習ってちゃんと掃除しろ。
     ここはさっさと終わらせて、姉ちゃんを手伝わなくちゃいけないんだから」


111 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:28:52.56 ID:kpp4dePH
§しばらくしてジュンの部屋の掃除は終了

のり「ジュン君達、自分の部屋は終わったの?」

ジュン「うん。三馬鹿が足ひっぱたせいで時間かかったけど。次はどこをやれば? ここ(台所)を手伝えばいいのかな?」

のり「それならちょうど良かった。欠けた食器(※)や、古くなったお鍋とか捨てたいの。
    近所の粗大ゴミ置き場まで持って行ってくれない?」



※薔薇乙女達は陶器製の食器に含まれる希少土類元素等を摂取するために食事時に茶碗の縁を齧る癖がある



ジュン「ああ、それぐらいならお安い御用……」

翠星石「はいはいはーーーーい! それなら翠星石が志願するですぅ!」

真紅「私も!」

雛苺「ヒナも!」

のり「あらぁ~、みんなやる気マンマンねぇ~!」

ジュン「……外に出られるからって、サボるつもりじゃないだろうな?」

雛苺「そ、そんなことないのよ!」

翠星石「翠星石達は純粋な善意で申し出たのですよチビ人間!!」

真紅「そうよそうよ!」

ジュン「はいはい……じゃあ三人ともちゃんと30分以内で帰って来いよ。少しでも遅れたら全員に『大福の刑』だからな」

翠星石「が……合点ですぅ」

雛苺「乙女にジュゴンは無いのよ」

真紅「それを言うなら二言よ雛苺」


112 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:30:12.02 ID:kpp4dePH
§粗大ゴミ置き場

翠星石「けーっ! な~にが30分以内に戻らないと罰を与える! ですか!!」

雛苺「お掃除でジュンがハイテンションになってるの! ヒナも洗脳されちゃっていたの」

真紅「しょうがない。ギリギリ30分間、油を売ってから帰るわよ」

翠星石「癪ですが、そうするしかねーですね」

雛苺「んーと、でもねでもね」

真紅「? 何? 雛苺?」

雛苺「この壊れたお鍋やヤカンをね、真紅が時間を巻き戻したら捨てる必要は無いはずなのよ」

翠星石「馬鹿ですねチビチビ、んなことしたら翠星石達が外に出る理由も無くなるです」

真紅「全くなのだわ。それにのりは既に新しい鍋やヤカンを取り揃えていた。
    古くなった物は捨てられる、それが自然というか社会の摂理」

雛苺「ヒナ達も……いつか捨てられちゃうの……?」

翠星石「つまんねーこと考えるんじゃねーですよチビ苺」

真紅「ほら、ボチボチ帰るわよ。遅れたらジュンにほっぺを大福にされる」

雛苺「うにゅにゅ……」


113 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:33:01.47 ID:kpp4dePH
§真紅達が立ち去った後の粗大ゴミ置き場

金糸雀「♪かっかっかしらの金糸雀は~っ」テクテク

ピチカート「……」ふわふわ

金糸雀「♪か~ぜに吹かれてユ~ラユ……ッ!?」ぴたっ

ピチカート「?」

金糸雀「ちょ、ちょっとピチカート!? コレを見て!」ガサゴソ

ピチカート「……?」

金糸雀「間違いないかしら! これは桜田家のヤカンかしら!」

ピチカート「!」

金糸雀「あああっ! ど、どうして!? 何故こんなことに!? 桜田家に潜入(失敗)しては、真紅達の
     お茶を淹れさせられる日々の中で貴方(ヤカン)との語らいだけがカナのオアシスだったと言うのに(※)」



※金糸雀にはヤカンに喋りかける性癖がある



ヤカン「……」

金糸雀「え? 何々? お湯が沸いた時のピーッという鳴き声が出せなくなったからお払い箱になって
     後釜にはシースルーかつ耐熱ガラス製のスイーツでお洒落なヤカンが!?」

ピチカート「……」

金糸雀「ヤカンなのに後釜とは、これいかに」チラッ

ピチカート「……」しらーっ

金糸雀「こほん。と、とにかく! 歌を忘れただけでヤカンを捨てるとは
     信じられない鬼畜かしら桜田家の面々は! マータイさんに呪われるがいいわ!」

ピチカート「……」

金糸雀「いいえ! それだけじゃあ生ぬるい! この子(ヤカン)の無念はカナが
     晴らすしかない! 行くわよピチカート! 桜田家へ討ち入りかしら!!」

ピチカート「ッ!?」


114 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:35:34.33 ID:kpp4dePH
§桜田家

金糸雀「たのもーっ! かしらーーー!!」

のり「あ、金糸雀ちゃん! ちょうどいいところへ!」

金糸雀「へ?」

翠星石「カナチビじゃねーですか、何しに来たですか?」

真紅「大掃除中の小休止のティータイムを狙ってくるとは意地汚い策士ね」

金糸雀「え? え?」

のり「新しいヤカンで沸かしたお湯で紅茶を淹れたところなのよ~。ほら、金糸雀ちゃんも飲んで、飲んで」

金糸雀「!?」

ジュン「その代わり、後で大掃除手伝えよ」

金糸雀「い、いや、そうじゃなくてカナは!」

のり「はいどうぞ」コトッ

金糸雀「待つかしら! カナの話を」

真紅「黙って早く飲む。紅茶が一番美味しい温度の時に飲まないのは紅茶に対する冒涜よ」

金糸雀「うっ……、わ、分かったわ」ゴクッ


115 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:36:47.97 ID:kpp4dePH
金糸雀「ふわ……!? な、何コレ!? いつもよりダンチで美味しいかしら!」

翠星石「ほほう、カナチビにも分かるですか」

金糸雀「な、なんで?」

真紅「ふ、コレが新しいヤカンの力よ。耐熱ガラス製ゆえに
    余計な金属臭さがお湯に移らない。故に紅茶本来の味と香りが楽しめる」

のり「それに透明だから、外からお湯が沸騰しそうなのがすぐ分かるのよね~」

ジュン「いい買い物したよな」

金糸雀「確かに! この味を知ってしまったら、今までの金属製ヤカンで
     沸かしたお湯で淹れた紅茶はとても飲めたものじゃ……ハッ!?」

古ヤカン「……」しょぼーん

雛苺「あれ? ヒナたちが捨てたはずのヤカンなのよ?」

翠星石「なんで、ここに戻ってきているのですか?」

古ヤカン「……」しょぼぼーん

金糸雀「ち、違うかしらヤカンさん! カナは決してそんなつもりじゃ……」

古ヤカン「……」タタタッ

金糸雀「ああ!? ま、待ってぇ!!」タタタッ



のり「……何しに来たのかしら金糸雀ちゃん?」

翠星石「だからタダ茶しばきに来ただけですよ」

ジュン「と言うか、あの古ヤカン、勝手に動かなかったか?」

真紅「中にピチカートでも入ってたんでしょ」

雛苺「金糸雀の新しい一人遊びなのよ、きっと」

翠星石「馬鹿のやることは、よう分からんですぅ」

ジュン「そうか。それじゃあそれはそれとして、僕達も休憩は終わりだ。掃除再開!」

翠星石「げろげろ」


116 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:39:36.35 ID:kpp4dePH
§真紅@お風呂掃除

真紅「……」ゴシゴシ

ジュン「お! 真面目に掃除しているようだな。感心感心……」

真紅「……お次は排水口まわりを」カパッ

ジュン「そうそう」

真紅「このピンセットで」ひょいひょい

ジュン「……何をやってるんだ?」

真紅「え? 排水溝に溜まった髪の毛類の中からジュンのちぢれ毛を探すために
    一本一本並べているのだけど? あ、これは残念ながら、のりのね。ツヤが違う」

ジュン「……何のために?」

真紅「トモエや鳥海皆人が高く買ってくれるかもと思って」

ジュン「……」ザバーッ

真紅「ああああっ!? 折角、回収したジュンの初々しいちぢれ毛達が流水にさらわれていく!?
    都市鉱山の金脈ならぬ風呂鉱山の珍脈が! なんてことをするのよジュン!!」

ジュン「それはこっちの台詞だ。風呂掃除は僕がするからお前はあっちへ行け」

真紅「くっ……!!」すごすご


117 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:40:54.78 ID:kpp4dePH
§翠星石@リビング掃除機がけ

翠星石「うははははははは! 掃除機が似合う薔薇乙女3年連続ナンバーワンの
     翠星石の掃除機さばき! とくと見やがれですぅ」

のり「ち、ちょっと翠星石ちゃん! それ新しい掃除機(※)だからもっと優しく扱って~~っ!」



※古い掃除機は以前に翠星石が乗り回して原型をとどめないほどに壊れた



翠星石「このスーパーサイクロンオロチに吸えぬものは無いです! ゴキブリだろーとネズミだろーと36万Gの暗黒の亜空間で
     バラバラの粉微塵にしてくれるですよーーーっ! 36万Gにはサイヤ人ですら逆らえんですぅ! ぐはははははは!!」

真紅「あらあら、絶好調ね翠星石。馬鹿笑いが廊下にまで響いていたわよ」テクテク

のり「真紅ちゃん? お風呂掃除もう終わったの?」

真紅「ええ。私にかかればお風呂の一つや二つ、どうってことないのだわ」


118 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:44:21.53 ID:kpp4dePH
翠星石「きゃーーーーーっ!?」

のり「ッ!?」

真紅「どうしたの翠星石!?」

翠星石「ま、間違えてスィドリームを吸いこんでしまったですぅ!!」

真紅「なんですって!?」

翠星石「どどどどど、どうしようです! このままじゃスィドリームがバターになるですよ!」

のり「早くスイッチを切って! とにかく掃除機を止めなくちゃ!」

翠星石「そ、そうでした! ポチッとな」

掃除機「!!」グオオオオオオオオオオン

真紅「な!? 全然、止まらない!? まさか暴走!?」

のり「翠星石ちゃん! ボタン間違えてない!?」

翠星石「おぎゃーっ!? パワーを『最強』にするボタンを押してしまったですぅ!」

真紅「何やってんのよ! 押すのは電源オフのボタン!!」

翠星石「ひぃいいいい! わざとじゃないです! 今度こそ、ポチッとな」

掃除機「……」スヒィィィン

のり「なんとか止まったわ」

翠星石「大丈夫ですかスィドリーム!! 無事なら返事か何か合図を送れですぅ」

掃除機「……」しーん

真紅「応答なし……ね」

翠星石「こいつぁヘビーです! 早いとこオロチの腹を掻っ捌いて助けださねば! のり! 包丁を持ってこいですぅ!」

のり「翠星石ちゃん! 掃除機相手に包丁を使っちゃいけないわ!」

翠星石「じゃあ、どうしろと!?」

真紅「ジュンを呼びましょう」

のり「そ、そうね! ジュン君! ジュンくーーーーん!!」


119 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:50:38.39 ID:TVJ64qNm
ジュン「はぁ? スィドリームが掃除機に吸いこまれたぁ? 何やってんだよ翠星石」

翠星石「不慮の事故ですぅ!! そんなことより早くスィドリームを助けてやってくれです!!」

ジュン「そんなの、掃除機の説明書にでも書いてあるだろ。小動物とか吸いこんだ時のためのトラブルシューティングが」

真紅「女はマニュアルを読めない生き物よ」

ジュン「何だよその偏見。ったく、しょーがないなぁもう、余計な仕事ばかり増やしやがって」

翠星石「ファイトですぅ! チビ人間!」

真紅「スィドリームを助けてくれたら私達が『いいこと』してあげるわ!」

ジュン「じゃあ、真面目に掃除しろ」

真紅「くっ! なんというドライな男」


120 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:51:06.28 ID:bUokJ2/G
§5分後

スィドリーム「……」へろへろ

ジュン「なんだ、集塵箱のフタ開けただけで出てきたじゃないか」

翠星石「おお~っ! 無事だったですかスィドリーム! 翠星石を許しておくれです!
     もう二度とオロチを振り回したりしないですから~~」

ジュン「他の人工精霊にも伝えておけよ。動いている掃除機には近付かないように」

真紅「だそうよ、分かった? ホーリエ?」

ホーリエ「!」こくこく

のり「ベリーベルちゃんも、ぼ~っとしてることが多いから気を付けてね……て、アレ?」

ジュン「ん? ベリーベルがいないな」

真紅「と言うか、雛苺もいないわね」

のり「あ! そう言えば物置き部屋の雑巾がけを頼んでたんだ」

ジュン「……随分時間がかかってるな」

翠星石「まさか……」


121 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:57:22.22 ID:TVJ64qNm
§物置き部屋

雛苺「……zzZ」

ベリーベル「……zzZ」

のり「あらあら……」

真紅「熟睡ね。ベリーベルまで」

翠星石「こ、このバカチビがーーーっ!」

雛苺「ひっ!?」ビクッ

ベリーベル「!?」バッ

翠星石「チビ人間! 罰を! 罰を与えろです! コーンポタージュには大福の刑ですぅ!!」

真紅「コーンポタージュじゃなくてサボタージュよ翠星石」

ジュン「覚悟はいいな雛苺?」

雛苺「ち、違うのよ! ヒナ寝てないもん! ヒナはただ目をつぶっていただけなのよ!」

ジュン「その言い訳、何度目だ。おまけに、よだれダラダラで説得力ゼロ」

雛苺「!?」

ジュン「はーい、大福の刑を執行しまーす!」ギュッ

雛苺「いにゃああああああああああ! 離してぇえええ!」

ジュン「よいしょーっ!」

雛苺「ぴぇええええええっ!」ギュイーン

翠星石「おーおー、今日は一段と良く伸びるですねぇチビ苺のほっぺは」

真紅「新記録じゃない?」


122 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 20:57:44.28 ID:bUokJ2/G
§あっという間に夕暮れ時

真紅「よ、よーやく大掃除が終わったわ……」

翠星石「もーう、駄目です! 1ピコメートルも動けんです」

雛苺「くたくたなのよ」

ジュン「まあ、ボチボチの仕上がりってところか」

のり「でも真紅ちゃん達が手伝ってくれたおかげで早く終わったわよねジュン君!」

ジュン「逆じゃないか? 余計な手間ばかりかけさせやがって」

翠星石「うるせーですぅ」

真紅「まあまあ翠星石、これ以上お手伝いはないのだから」

雛苺「うぃ、ご飯までゆっくり休憩していたいのよ」

翠星石「む……」

ジュン「あ、そうそう。お前ら、ここが終わったんだから次は薔薇屋敷に行けよ」

翠星石「は!?」

雛苺「はぁ!?」

真紅「ハァァアアアアアアアアアアーッ!?」

ジュン「蒼星石と約束してあるんだ。うちの労働力をあっちの大掃除にも貸すって」

翠星石「な、な、何を勝手にそんな契約を蒼星石と交わしているですかアホンダラ!」

雛苺「ひどいのよ! ヒナ達はジュンの奴隷じゃないの~っ!」

真紅「枕営業ね! 蒼星石からどういうサービスを受けたの!? 汚らわしいのだわジュン!」

ジュン「お前の発想が汚らわしいわ」


123 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 21:03:55.02 ID:TVJ64qNm
のり「ジュン君、お姉ちゃんも翠星石ちゃん達がちょっと可哀そうな気が」

翠星石「おお、のり! のりの言うとーりです!」

真紅「ジュンは、いたいけな美少女達を酷使して心が痛まないの!?」

ジュン「自分で『美』をつけるな、『美』を」

雛苺「児童相談所にギャン改で訴えるのよ!」

ジュン「誰がいつ『大型ビームソードを振り抜いた』んだよ。それを言うなら『虐待』な」

雛苺「にゅにゅ……」

ジュン「そもそもだ、お前らは結菱さん家で大暴れしたことをもう忘れてるのか?」

翠星石「な、なんのことですぅ?」

ジュン「しらばっくれるなよ。シャンデリア落としたりバスタブに紅茶葉を山ほど放り込んで排水管とか詰まらせただろ(※)」

真紅「ッッ!?」



桜田ジュンの懊悩『蒼の魔術師』 参照


124 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 21:04:25.29 ID:bUokJ2/G
のり「あらやだ、それ本当なの? ジュン君?」

ジュン「ああ。結菱さんは何も苦情を言ってきてないが、今回、蒼星石がその被害総額の簡易見積もり書を送ってきた」ピラッ

真紅「ッッ!?」

雛苺「な、なにこれ!? ゼロがたくさん並んでいるのよ!?」

翠星石「そ、蒼星石……」

ジュン「大変だな~、お前らのお小遣いじゃ完済するのに何年かかるやら」

真紅「くっ……」

雛苺「うゆゆ……」

ジュン「それを蒼星石は、これからたった数時間の大掃除のお手伝いでチャラにしてくれると言っている」

翠星石「うぎぎぎ……」

ジュン「行ってこい。行って薔薇屋敷を綺麗にして自分達も綺麗な体になって戻ってこい」

真紅「わ、分かったわよ」しぶしぶ

雛苺「行くしかないのね」とぼとぼ

翠星石「何も桜田家の大掃除と同じ日に被せなくてもいいですのに蒼星石……」

ジュン「ほ~ら、駆け足! 遅れると蒼星石にどやされるぞー!」

三馬鹿『えいさっ……! ほいさっ……!』ドッタドッタ



―――こうして桜田家の三馬鹿は蒼星石の監視下で地獄の清掃労働を課せられたそうな


125 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 21:06:27.22 ID:bUokJ2/G
§その頃の柿崎めぐの部屋

めぐ「ふぅ……。大掃除、疲れた。水銀燈の抜け羽根って、ちぢれ毛みたいに色んな場所に潜りこむわよねぇ」

水銀燈「その例えはやめてよぉ!!」


126 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 21:06:38.92 ID:TVJ64qNm
§その頃のEnjuDoll(槐の店)

薔薇水晶「大掃除はしないのですか、お父様?」

槐「ん~? いいよ~、そんなの。いつも薔薇水晶が綺麗に掃除してくれてるし。それより年明けセールの準備をだね……」


127 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 21:08:37.34 ID:kpp4dePH
§その頃の雪華綺晶のフィールド

ラプラス「なんで、私が貴女のお手伝いを……」

雪華綺晶「口だけじゃなくちゃんと手も動かしてください。苗床に捕らえて眠らせてある人間達を
       このように、たまにはひっくり返さないと床ずれになってしまうんですわ」

ラプラス「ぷぷぷ、苗床だけに床ずれですか。上手いこと言いますね」

雪華綺晶「……」ニョキッ

ラプラス「じょ、冗談です! 怒らないでください。アイホールの白薔薇ニョキニョキさせるのはやめましょう。それ怖いんですから」


128 :創る名無しに見る名無し:2012/12/28(金) 21:11:02.15 ID:kpp4dePH
§その頃のとある河川敷

ヤカン『もう、ほっといてくれよ! 俺なんて! 俺なんてどうせ!!』

金糸雀「ヤカンの甘ったれ馬鹿ーーーっ!」バコッ

ヤカン『な、殴ったね!? 桜田家の暴君真紅さんにも4~5回しか殴られたことないのに!!』

金糸雀「それが甘ったれだと言うのかしら! 叩かれもせずに一人前になったヤカンなんて無いわ!
     貴方だってプレス成型されて今の形になったはず(※)」

ヤカン『そ、そう言われればッ!』ガガーン



※全てのヤカンがプレス成型で作られているわけではありません



ヤカン『へ、へへ……効いたぜ金糸雀さん、今の一発はよ。形が歪んで、熱伝導効率が落ちるほどになぁ……』

金糸雀「ヤ、ヤカンさん!?」

ヤカン『けど、それ以上に歪んでいた俺の心を金糸雀さんは正してくれた』

金糸雀「ヤカンさん……!」

ヤカン『もう一度やり直すよ俺。ヤカンとしては駄目でも資源ゴミとして……皆の役に立つ何かにまた生まれ変わるさ』

金糸雀「ヤカンさん!!」だきっ

ヤカン『金糸雀さん!!』がしっ



子供「ねぇ~、ママぁ? あのお姉ちゃん、ヤカンを抱きしめて何やってるの~?」

母親「しっ! 見ちゃいけません!!」



大掃除する薔薇乙女達・完



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2012/12/29 07:19:54 コメント15 ユーザータグ ローゼンメイデン

コメント

※92996:No name:2012/12/29 08:00:17
あれこれ言いながら掃除はちゃんとやったドールズに安堵
毛などに若干の心配は残れど、
明くる年からはきっときれいな真紅さんが見られるはずっ…!
※92999:No name:2012/12/29 09:43:44
ヤカンは つくもんになったのか…
ローゼンメイデン自体 九十九神みたいなもんだから 優しくしてあげれ
※93003:No name:2012/12/29 11:07:13
縮れ毛は短く切りそろえておくとどこかに潜り込まないぞ!
問題は多少公衆浴場に行きづらくなることかなっ!

>※薔薇乙女達は陶器製の食器に含まれる希少土類元素等を
>   摂取するために食事時に茶碗の縁を齧る癖がある
経口摂取で補えるんかい!他にタイミングは考えづらいけど食事時に茶碗をかじるなよと

しかしお約束条項を作って覚えさせたのはのりだろうか?さすが(ボス猿)といいたい
※93004:No name:2012/12/29 11:21:43
欠けた食器は捨てるんじゃなく、かじる用にとっといちゃいかんのか…
※93005:No name:2012/12/29 11:35:32
大福の刑ってdools talk ネタじゃ…w
※93008:No name:2012/12/29 11:47:24
なんかやかんに足生えてるの想像してワロタ
※93011:No name:2012/12/29 14:45:09
あーん!ジュン様が今回あんまりひどい目にあわなかった!
※93013:No name:2012/12/29 15:16:40
今回やたらとテンション高いノリで笑った
ローゼンで笑ってはいけないアリスゲーム24時が見たいなあ
※93019:No name:2012/12/29 18:36:32
うーたを忘れたカナリヤはうーらのお山に捨てましょか
※93025:No name:2012/12/29 22:53:46
姉弟がやる気モードなればあの3人形に退廃的な爛れた空気に居直られる事もないのだな
特に今回のキレキレ男前ジュンならば
仮に梅岡先生が頼みもしないのに前の失態をチャラにするとか手伝い来て分かっちゃねぇ掃除しやがって寝正月に追い込まれる事も…あるかなやっぱ
※93027:No name:2012/12/29 23:50:30
>ジュンの初々しいちぢれ毛
なぜだろう。トゥモエの他にも大枚をはたいても欲しがる者達がいる気がするのは・・・
※93042:No name:2012/12/30 03:39:12
いちいち注釈が面白い
※93083:No name:2012/12/30 21:54:03
大掃除しねーとなーって思った(思うだけ)

ドールショップ槐の初売り行きたい
※93087:No name:2012/12/30 23:08:07
今話の雛苺は
元気あり洗脳ありシリアスおセンチありの涎垂らすおネムありの大福
ちびっ子は活発がいいっすね
※93150:No name:2013/01/01 00:45:26
雛苺のほっぺぷにぷにしたい
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