真紅VSギョージ・サーカナー
- 173 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:19:31 ID:ZbHk6hj60
- 今回、登場する第五真紅丸の主な来歴。
真紅と記憶の海の黒いダイヤ
忘却の大河に幻の大ウナギを追え
真紅の誓い『さよなら 青島副船長』 - 174 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:24:00 ID:ZbHk6hj60
- .ィ/~~~' 、 私のおじさんは漁師だった……。
_/ /  ̄`ヽ} 休みの日には、おじさんの船に乗せてもらった。
。__》@ i(从_从))
__/||ヽ|| ^ω^ノ 魚を獲るための道具が木の板の上に並んでいて
___/.□□ |)と ) それらは不思議な形をしていて面白かった。
\ ヽ___|)o TTTT. そして……生臭かった。
\  ̄ ̄ ̄ ̄|
彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ - 175 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:27:23 ID:ZbHk6hj60
- ジュン「……何言ってんの真紅? 久しぶりの船でテンション上がりすぎてオツムわいたか?」
真紅「これは真紅ちゃん心のポエムよ」
金糸雀「ポエムって言えるのかしら、今のが……」
翠星石「そういうのは蒼星石が上手ですよ。いっぺん真紅は
蒼星石からポエムの作り方を一から学んだ方がいいです」
真紅「ふ、ポエムとは内なる情熱をそのままに表現したものであるべき。誰かから学ぶなど言語道断」
ジュン「真紅が内なる情熱を口にした場合、おじさんとか生臭いとかの単語が飛び交うのかよ」
真紅「これは漁師が、そもそもキリスト教では『人の心を捉える者』の暗喩でもあり
その点においては人々の憧れと歓心を一身に集め、まさに人の心を捉えて生きていく薔薇乙女も
言わば漁師の血統であると、そこはかとなく愛おしく言の葉で綴りあげた……」
雛苺「うにゅにゅ……?」
ジュン「はいはい。続きは船室の中でな」 - 176 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:29:07 ID:ZbHk6hj60
- §第五真紅丸・船室
ダニー「真紅船長。久しぶりの船はどうです?」
真紅「極上よ、ダニー副船長。しばらく漁から遠ざかっていて悪かったわね。
忘れていたわけじゃないのよ。色々とこちらも忙しくて。
紙幣を作ったり、イカのミイラを作ったり、エッセンシャルオイルを作ったりしてたから」
雛苺「ろくでもないものばかり作っていたのよね」
翠星石「まったくですぅ」
真紅「うるさいわね。でもダニー、驚いたわ、急に貴方から連絡を受けた時は。
情報は本当なのでしょうね? 『彼』が私に会いたいだなんて」
ダニー「ええ、自分も驚いています」 - 177 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:31:07 ID:ZbHk6hj60
- 金糸雀「彼?」
ジュン「誰だそれ? 今日はレストアした第五真紅丸を記憶の海で慣熟航行させてるんじゃないのか?」
真紅「それもあるけど、それだけじゃないってこと」
雛苺「お船に乗らないと会いにいけないような人なのよ?」
真紅「ええ」
翠星石「ひょっとして、真紅の元カレとかです?」
真紅「……いいえ。私も『彼』と会うのはこれが初めてよ。でも、私は……私達は彼を半分知っている。ずっと昔から……ね」
ダニー「真紅船長……」
金糸雀「もったいぶらずにもっと詳しく教えてほしいかしら!
ねえダニー! カナ達を招待してくれたその人は誰なのかしら?」
ダニー「彼の名はギョージ」
雛苺「ぎょうじ?」
ダニー「そう、ギョージ。……ギョージ・サーカナー3世」
翠星石「ギョージ・サーカナー? けったいな名前のやっちゃですねぇ」
真紅「私達の場合、彼の名前はこう言った方が分かりやすいかもね。『さかなクン3世』……と」
ジュン「さかなクン……!?」
翠星石「3世……ですと!?」 - 178 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:33:32 ID:ZbHk6hj60
- 真紅「そう! 第五真紅丸初代副船長さかなクンJr.には子供がいたのよ!」
ジュン「そういや何回か繁殖していたって言ってたな、あのエヌマグロ」
ダニー「その3世が、真紅船長をはじめとする薔薇乙女の皆様にどうしても会いたいと、私に連絡をよこしてきたのです」
金糸雀「皆様と言っても、ここにいるのは桜田メイデンとカナだけかしら」
真紅「さかなクンと接点があるのは私達だけだから、これでいいのよ」
ジュン「ふぅん……」
ダニー「ちなみに、これが3世との連絡に使ったボトルメールです」
雛苺「瓶の中にお手紙が入ってるの!」
ジュン「これでちゃんとやり取りできたってのも凄いな……」
ダニー「めちゃくちゃ時間かかりましたけど」
金糸雀「で、ギョージってどんな感じの魚なのかしら? イケメン?」
ダニー「手紙のやり取りだけで面識はありません。いつの間にか自分のところに
ボトルメールが届き、返事はボトルに詰めて海に流せば相手に届いたので」
真紅「人工精霊の出す手紙と似たようなシステムね」 - 179 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:36:47 ID:ZbHk6hj60
- 金糸雀「うーん。何だか胡散臭いかしら。結局ダニーはその3世さんと直接会って
話をしたわけじゃないってことになるんでしょ? カナたちを陥れるための誰かの罠だったりしたら」
真紅「その時はその時。私達にちょっかい出してきたその馬鹿を
コテンパンにのしてやるだけよ。『目には目と歯を』が私のモットーだからね」
翠星石「……頼もしい乙女ですね、真紅は」
ダニー「そろそろ約束の座標に船が到着するはずですが……」
雛苺「ヒナ、ちょっとお外に出て見てくるのよね」
金糸雀「カナも行くわ」
ジュン「走って転ぶなよ」 - 180 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:37:47 ID:ZbHk6hj60
- §第五真紅丸・甲板
雛苺「あ! 島よ! 大きな島があるの!」
金糸雀「あそこに3世さんがいるのかしら?」
真紅「どんなマグロなんでしょう、3世は。きっと父親似の精悍なエヌマグロに……」
ダニー「砂浜が見えますね。あそこにギリギリまで近づけます。揺れますので皆さん、お気をつけて」
翠星石「ラジャーでーす」 - 181 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:42:39 ID:ZbHk6hj60
- §島に上陸
ジュン「それで、この島のどこで待ち合わせなんだ?」
ダニー「事前に約束した座標では、まさにこの砂浜が待ち合わせ位置ですね」
翠星石「むっ! あっちに魚人が寝ているですよ!」
金糸雀「え!?」- ト-、___
_,,-‐‐‐‐‐‐t-:、_ `‐、、_
__,,,-‐'´ .:. ,,:.:``‐、;:;:;ヽ_
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ヒ;-'´ ````:‐:‐:-:-.:__,,、、、、、 ....:.:.:.:.:.:.`:.:.:.:,;,;,;,;.:.:.;,;...........ヽ、ヽT ◎ ヽ、
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````‐‐:-:-:-:-:‐"
ジュン「あっ、あいつか! さかなクンJr.にそっくりだ! と言うか、魚の顔なんて見分けつかねえ」
真紅「間違いないわ! 彼こそが3世……!!」 - ト-、___
- 182 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:46:22 ID:ZbHk6hj60
- 3世「……ん」ムクリ
雛苺「あ、起きたのよ」
3世「……」スタスタ
ジュン「こ、こっちに来たぞ」
ダニー「ここは先ず、私から挨拶をした方が?」
真紅「そうね、ずっとやり取りをしてくれたのはダニーだもの。任せたわ」
3世「……」
ダニー「君が手紙の主のギョージ・サーカナーだね?」
3世「そう言う君はダニエル・ラングゼン……」
ダニー「ああ、君の父親である、さかなクンJr.亡き後、パウル君を経て、今の副船長職を……」
3世「フンッッ!!」
ダニー「ぐぇっーーーー!?」ボギャアアア
金糸雀「えええっ!?」
翠星石「な、なんですぅ!? ダニーが3世の艶かしい足で蹴られたですよ!?」
真紅「ダ、ダニーーーーッ!!」
ジュン「な、何をするだーーーー!」
雛苺「ひどいのー! 許さないのー!」 - 183 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:47:43 ID:ZbHk6hj60
- 3世「フン、そして貴様らがローゼンメイデンとやらか」
金糸雀「な、なんなのかしら!? いったいこの展開は!?
やっぱりカナの予想通り、第3者がさかなクンの名を利用した罠を……!?」
3世「そうさ。コレは罠だ。しかし、サーカナーの一族を騙ってのことじゃあない!」
ダニー「ど、どういうこと……だ?」ヨロヨロ
3世「おっと、勝手に立ち上がろうとしてるんじゃあないぜ」ゲシッ
ダニー「ぐあっ!?」
翠星石「何しやがるです! ダニー副船長を離せです、このサカナヤロー!」
3世「いいや、離さないね。それと、さっき、そこのピンクが俺のことを許せないと言ったな」
雛苺「うぇ!? そ、そうよ! いきなり喧嘩する子は許せないの!!」
3世「……許せないのはこっちの方だ。お前らのせいで俺の祖父や父は死に追いやられたのだからなーーーッ!」
真紅「なっ!?」
ジュン「なんだと!? どういう意味だ!」 - 185 :名無しさん:2013/07/15(月) 19:59:10 ID:ZbHk6hj60
- 3世「うるせぇ! 俺が何も知らないとでも思うのか!! 祖父ギョージ・サーカナー(1世)は
お前らに釣り上げられた挙句、その後またお前らが釣ったグリードに食われて死んだ!!(※1)」
ジュン「なにぃ!? あいつが1世だったの!?」
3世「そして父ギョナサン・サーカナーは第五真紅丸で酷使されて死んだ上
お前らに刺身や唐揚げにされて食われたと聞いたぜ!!(※2)」
※1 タコで占う薔薇乙女たち 参照
※2 水銀燈と桜色のストゥーパ・ビブーティ 参照 - 186 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:01:56 ID:ZbHk6hj60
- 翠星石「そ、それは……」
3世「何かの誤解だと言うのか!?」
真紅「ほぼ事実よ! けど、少なくともさかなクンJr.は……ギョナサン・サーカナーは天寿で死んだのよ!!」
3世「ても、食べたんだろ?」
ジュン「……食べたような気もします」
雛苺「美味しかったの」
3世「許せねぇ……! 食物連鎖は世の常。それは分かる。
だが、分かっていても抑えられない気持ちというのも確かに存在する!」
ダニー「……復讐か、可哀想な奴め」
3世「ヘイッ! 分かったようなことを言って勝手に俺を憐れむような真似はよしな。
復讐とは自分の心に決着と納得をつけること。神聖な行為だ」
ダニー「……なら、好きにするがいい。俺だって復讐者だった」
3世「……?」 - 187 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:04:57 ID:ZbHk6hj60
- ダニー「だが真紅船長の海よりも広い心で救われた。船長はきっとお前の悲しみも救ってくれるはず……」
3世「分かったようなことを言うなと伝えたはずだ!
てめーの口は戯言吐いてないで、砂浜とキスしてりゃいいんだよ!」ドガッ
ダニー「ぐっ!?」ボフッ
真紅「それ以上、副船長に対する暴力をやめなさいギョージ!! さもなくば」
3世「あぁん? さもなくば、どうするってんだ?」
真紅「海や島の上では船長である私が皆を守る! だから貴方を倒さなくてはいけなくなる!」
3世「ふざけんなよぉ? じゃあ、どうしてオヤジを死なせた!?」
真紅「くっ!?」
ジュン「な、なんなんだアイツ! あの魚! 異常だぜ……」
金糸雀「憎しみで完全に目が濁っているかしら!」
翠星石「まるで死んだ魚のような眼をしているですぅ!!」
真紅「聞いてちょうだいギョージ! 貴方の父親は寿命だったのよ! それでも彼は満ち足りていた!
最後まで、彼の瞳は澄んでいてDHAに富んでいたわ! 煮つけにしたら美味しかった!
貴方のその行為こそ、父親の死を侮辱しているということが分からないの!?」
3世「うるせぇぞハナクソ!! 二言目には美味しかった美味しかったってよぉ!
なめてるのか俺を! 俺たちサーカナー家を! エヌマグロを!!」
真紅「くっ、しまった! ついつい本音が」 - 188 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:06:02 ID:ZbHk6hj60
- 雛苺「と、とにかく喧嘩はダメなのよー!」
翠星石「そうです! 翠星石達のことを誤解しているですよギョージ!
腹を割って話し合いをするです。話せば分かるですぅ!!」
3世「腹を割るだぁ!? てめぇら俺の内臓を取っ払って3枚に下ろして捌いて食うつもりかー!?」
翠星石「そ、そんなことは言っとらんですよ! ほら、真紅からも落ち着くように言ってやれですぅ」
真紅「エヌマグロはハラワタを塩辛にしても美味しいのよね。あとマグロだから3枚に下ろすと言うより解体だわ」
3世「ほら見ろ! 思いっきり料理するつもりじゃあねーか!」
ジュン「真紅! お前は事態を収拾したいのか混乱させたいのかどっちだ!!」
真紅「失礼。またもや、つい本音が」 - 189 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:08:38 ID:ZbHk6hj60
- 3世「くそぉ、グダグダと人を苛立たせるのが上手い奴らだ……。いいか! さっきも言ったとおり
俺の目的は復讐だ! なんと言われようとお前らと話し合いの場を設けるつもりはねー!」
ダニー「ギョージ……」
真紅「くっ……」
3世「真紅船長さんよぉ、ゆっくりと俺の方に近づいてきな。ぶっ殺してやる」
真紅「な!?」
3世「拒否権はてめーにはねー! 大切な副船長がどうなってもいいのか!?」グリッ
ダニー「うぐっ」
雛苺「はわわわわわ!? ダ、ダニー副船長が人質なのよ!」
金糸雀「そんな! 誇り高きサーカナー家がそんな卑怯な真似を?」
真紅「……」
ジュン「し、真紅? 行くんじゃない! 絶対罠だ!」
ダニー「そうです! 自分はどうなっても構わない! こんな奴の言うこと……!」
3世「お前は地面にキスしてろって言っただろーが、ダボが」ゲシッ
ダニ「ぐあっ!」ズキュウウウン
真紅「ダ、ダニーッ!!」 - 190 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:11:16 ID:ZbHk6hj60
- 3世「おっと、そうだ。真紅船長、さっき拒否権がないだなんて言ったが
たった一つだけ俺の要求を突っぱねる方法があるぜ……」
翠星石「な、なんですか、それは!?」
真紅「……」
3世「くっくっく! 気づかないフリはよしな、最初から考えていたはずだ。
このまま『副船長を見捨てる』っていう選択肢があることをよ!!」
ダニー「……ッ!」
金糸雀「!?」
雛苺「そ、そんなこと真紅はしないのよ!」
真紅「……」
3世「何も遠慮するこたぁねぇ。切り捨てなよコイツを。オヤジにしたみてーにな!
どうせ副船長なんてのはお前にとって使い捨ての駒なんだろ!」 - 191 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:14:11 ID:ZbHk6hj60
- 真紅「……」
ジュン「し、真紅?」
3世「フフ。正直な話、アンタがコイツを見捨てるとなると、俺は厳しい状況になるんだぜ?
今、俺がこんなに偉そうにできるのも、全ては人質の存在があればこそ」
金糸雀「……ッ?」
3世「だから、すっげーヤバい。ダニーに人質の意味がなくなるとすれば。
俺はただの丘に上がったエヌマグロ。お前らにとっちゃ、俎上の鯉に毛が生えた程度」
ダニー「そうです真紅船長! こいつの言う通りです! 俺はとうに真紅船長に命を捧げた身!」
真紅「……く」
金糸雀「し、真紅! 落ち着いてかしら! ギョージが自分に不利になる情報を
自ら明かすだなんておかしいわ! きっと、この話も何かの罠……」
翠星石「しかしですねカナチビ! 罠ばっかり疑っていたら、二進も三進もいかねーですよ!」
雛苺「うみゅみゅ!? す、翠星石はダニーを見捨てる方がいいって言うのよ!?」
翠星石「誰も、そこまでは言ってないですよ! けど、このままじゃ真紅が……」 - 192 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:16:54 ID:ZbHk6hj60
- 真紅「……」
ジュン「真紅、馬鹿なことは考えるなよ」
真紅「馬鹿なこと? それは具体的にどっちのことを言っているのかしら?」
ジュン「どっちのこと……て! お前、そりゃ……」
3世「さあ、そろそろ答えを聞かせてもらおうか真紅!」
真紅「ええ、既に心は決まっている」
ダニー「し、真紅船長! お、俺は貴女の足手まといになるぐらいなら……」
真紅「ダニー!! もし舌でも噛んで死のうと思っているのなら、よすことね。
そんなことをされても私は全然うれしくない。後でボコボコにぶん殴るわよ」
ダニー「船長……っ」
3世「ほほぉ、と言うことは副船長の代わりに船長自らその命を……。俺にとっちゃあ嬉しい展開だが
船長失格だな真紅さんよ。海の上では時に冷酷な判断も必要だぜ。だが、まあ、いい。じゃ、こっちに来な」 - 193 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:19:13 ID:ZbHk6hj60
- 真紅「いいえ。それは断る」
3世「は?」
真紅「私は貴方に近づかない」
金糸雀「真紅!?」
3世「んだとぉ!? てことは、こいつを見捨てるのかよ!?」
真紅「いいえ。それも違う」
翠星石「し、真紅?」
雛苺「どういうことなのよ」
3世「俺をおちょくってんのかテメー!! 答えは二つに一つ!
こいつか! お前か! どちらかの命を犠牲にするしか……!!」
真紅「ダニーの命も私の命も渡さない。両方、守るってのが私の答えよ」
3世「ほんっとーに、人を怒らせるのが上手な奴だ! 俺の要求に! どっちもNOって言うのか!
ふざけるな! とりあえずダニーは殺す!! お前が俺にそうさせたぁーッッッ!!」
ダニー「……」ドグシャアアアア
ジュン「ダ、ダニーーーッ!!」 - 194 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:21:28 ID:ZbHk6hj60
- 翠星石「ちょっ!? 真紅がギョージを逆上させたせいでダニーが殺されたですぅ」
金糸雀「なんであんな馬鹿なことを言ったのよ真紅!?」
真紅「落ち着きなさい。ダニーは死んでいない」
ジュン「え?」
雛苺「えええ?」
3世「な、なんだこりゃ!? このダニー……全然、手応えがない!? く、空洞? 中身が? 皮だけか、ここにあるのは」
雛苺「うにゅにゅ!? 中身はどこ行っちゃったのよ?」
ダニー「ここです」ツルーン
ジュン「うわっ? いつの間に!?」
真紅「よく、抜け出せたわねダニー」
3世「う、ぐ!? てめー脱皮しやがったのか!? 卑怯だぞ!」
ダニー「人質とるような奴に言われたくないな」
3世「ちくしょおっ! ……迂闊だった」
ダニー「俺を砂浜にキスさせたのがお前の失敗だ。口の中からゆっくり脱皮し、そのまま砂を掘って移動した」
ジュン「そんな器用に脱皮できたんだダニー」
金糸雀「し、真紅は知っていたのかしら!?」
真紅「ええ、でもまさか今、敵から逃げるために脱皮すると聞いた時は少し驚いたけどね」
3世「聞いた……だと? 俺の方がダニーに近かったはずだぞ! いつ、そんな会話を!?」 - 195 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:23:37 ID:ZbHk6hj60
- ダニー「モールス信号だ。まばたき、でな」パチパチ
3世「!?」
ジュン「え、マジで!?」
翠星石「そんなことやってたのですか真紅!?」
真紅「ええ、結構目が疲れたわ」
3世「馬鹿な……」
ダニー「まさか、まばたきで会話できるだなんて思わなかったか?
いや、それとも魚には瞼なんてないから、そんな発想自体なかったか」
3世「くそ……」
真紅「ここまでね。それじゃ、私達は帰るから」クルッ
ジュン「え、真紅……?」
3世「お、俺をこのまま放っておく気なのか!?」
真紅「言ったはず。私は貴方に近づかない」
金糸雀「真紅」
真紅「ダニーの命と自分の命を救えた、それで十分よ。貴方の命まで望むのは、それこそ欲張りというもの」 - 196 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:29:35 ID:ZbHk6hj60
- 3世「情をかけられて、俺の心が救われるとでも!?」
真紅「……思わないわ」
ダニー「真紅船長?」
真紅「私はローゼンメイデン。生き物としては外道の私が、生きるために……アリスゲームを戦うために
多くの人から恨みを買ってしまう。私は……憧れや歓心だけを漁(すなど)るような漁師になれない」
雛苺「真紅ぅ……」
真紅「けれど、そのことには慣れているつもりよ。ダニー副船長のように、その恨みが氷解することは稀」
ジュン「……」 - 197 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:33:36 ID:ZbHk6hj60
- 3世「……」
真紅「姉妹達とは戦うことで解決する問題も、貴方のような手合いとは解決しない。
あるいは時間が解決してくれるのかもしれない……ということを期待して、私は逃げることしかできない」
3世「お前……?」
真紅「勘違いしないで。つまり、今日のところは見逃してあげるってだけ。次は無いと……思いなさい」
3世「……」
真紅「……」
3世「……ギョージ・サーカナー」
真紅「?」
3世「ギョージ・サーカナー。いと深きものギョナサン・サーカナーの息子、ギョージ・サーカナーだ」
真紅「……真紅。ローゼンの娘、ローゼンメイデン第5ドール真紅よ」
金糸雀「?」
翠星石「ど、どうしたですぅ? 急に今さら二人で自己紹介なんかして?
名前なんて既にお互い知ってるですよね……?」
3世「いつか、また貴様の前に現れてやる。敢えて言う、覚えていろ」
真紅「いつでも来なさい」 - 198 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:35:34 ID:ZbHk6hj60
- §小一時間後・帰りの第五真紅丸・船室
雛苺「あれ? 真紅はぁ?」
金糸雀「疲れたって言って、船長室に閉じこもりっきりよ」
ジュン「精神的にこたえたのかなぁ。誤解とは言え、さかなクンJr.の息子にあれだけ恨まれてるんだもの」
翠星石「最後のあれは、ちょっと仲直りした証拠じゃねーのですぅ?」
金糸雀「そうよね。夕焼けの河川敷で殴りあった番長同士が仲良くなる……みたいな」
雛苺「……」
ダニー「ジュン君」
ジュン「何か? ダニー副船長?」
ダニー「紅茶を淹れたんで、真紅船長のところへ運んでもらえないか?」
ジュン「……僕が?」
ダニー「ええ、俺も脱皮したてで本調子じゃないのでね」
雛苺「そう言えば何だか白くて柔らかいのよ、ダニー副船長」ぷにぷに
翠星石「あ、本当ですぅ」プニプニ
金糸雀「くせになりそうな感触かしら」プニプニ
ダニー「あっ! やめて! 肌に手形が残っちゃう」 - 199 :名無しさん:2013/07/15(月) 20:39:55 ID:ZbHk6hj60
- §第五真紅丸・船長室
ジュン「入るぞ、真紅」ガチャッ
真紅「……」ササッ
ジュン「……? ひょっとして、泣いてたのか?」
真紅「い、いえ! 違うわ! これは、その! モールス信号で目が疲れたから目薬を……」
ジュン「強がらなくてもいいだろ、別に。辛いよな、解けない誤解ってのは」
真紅「そんなことをいちいち気にしていたら、外を歩けなくなるわよジュン」
ジュン「……はい、紅茶。ダニー副船長が持って行けってさ」コトッ
真紅「流石はダニー。気が利くわね」
ジュン「気休めだろうけど、あのギョージってのも丸っきりの馬鹿じゃあないようだし、その内に分かってくれるさ」
真紅「本当、スズメの涙ほどの気休めの極みだこと。もっと洒落た慰めの言葉は出ないの?」
ジュン「んだと、人が優しくしてれば……」
真紅「もういい。私、疲れてるの、だからマッサージお願いね、ジュン」ごろん
ジュン「慣れないことだから、肩がこったか」
真紅「今日みたいな頭脳プレイは真紅ちゃんにとっては日常茶飯事……」
ジュン「そっちじゃない。……人の恨みを買うことだよ」
真紅「それこそ慣れっこだと、さっきも言ったはずよ」
ジュン「目はそう言ってなかった」
真紅「……」
ジュン「モールス信号は分からないけど、真紅のことは分かるつもりだ、僕は」
真紅「……だったら早く肩を揉む!」
ジュン「はいはい」
真紅VSギョージ・サーカナー 【終】
2013/07/16 22:10:41 コメント21 ユーザータグ ローゼンメイデン