水銀燈と桜色のストゥーパ・ビブーティ
- 163 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:16:06.06 ID:ZZOOy/XO
- 翠星石「こ、こうですか?」
真紅「違う違う。ここをこうして、こう。腕を外側に捻るような感じで……」ガギギ
翠星石「がああああ! 痛っイイ! お、折れるう~~~!」
雛苺「そ、それ以上いけないの真紅!!」
真紅「……」 - 164 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:17:24.62 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「……何やってんだ? ケンカか?」
真紅「いいえ。翠星石が関節技を教えてくれというから指導しているだけよ」
翠星石「で、ですけど! 少しは手心というものを……っ!」
真紅「痛くなくては覚えないのだわ」
ジュン「そう言えば以前から真紅はサブミッションとかに凝っているみたいだけど、それって本当に有効なのか?
人形の球体関節とかにも? この間、雛苺を真後ろから呼んだら首だけ180度回して振り向いたぞ」
雛苺「本気出せば七回転半までできるの~」グリングリン
ジュン「気持ち悪いからやめろ」
翠星石「それ以上回すと首が抜けるですよチビチビ」 - 165 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:19:09.22 ID:ZZOOy/XO
- 真紅「大体はジュンの言う通りね。人間と全く同じ関節技が効くわけではないのだわ」
ジュン「だったら……」
真紅「けれども、薔薇乙女は限りなく人体の構造と似せられて作られている。
球体関節の三次元回転軸のうち二つが揃ってしまうとジンバルロックも起きる。
相手の関節に意図的にこれを仕掛けることで関節技も有効なの。分かった? 詳しくは銃夢LOなどを読んでちょうだい」
ジュン「何言ってるのか分からないけど、関節技も役に立つって事は伝わった」
雛苺「ヒナも全然分からないけど、アームロックは覚えたのよ」 - 166 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:20:14.78 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「要するに漫画に影響されて技を真似しているってことか。小学生じゃあるまいに」
真紅「だまらっしゃい。そもそも、これはジュンのためでもあるのよ?」
ジュン「はぁ? 僕のため?」
翠星石「そうですそうですぅ。昨今のアリスゲームではマスターの力を思う存分使えない状況になっていることが多いのですぅ」
真紅「肝心な時にマスターが昏睡してたりだとか、幽閉されたりだとか。
もはやスタンドバトルでは本体を叩くのが常識なように、アリスゲームではマスターを叩くのが常識となりつつある」
雛苺「おくゆかしき問題なの!」
ジュン「ゆゆしきな」 - 167 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:22:11.61 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「それとこれと関節技と何の関係が?」
真紅「関節技というよりも肉弾戦全般ね。飛び道具はエネルギー消費が大きいの」
ジュン「へぇ~、そうだったんだ」
翠星石「真紅のローズテイル、チビ苺の苺わだち、翠星石の如雨露ビーム、これらの燃費は最悪ですぅ。一昔前のベンツ並です」
ジュン「お前、ビーム出せたんだ」
真紅「というわけで、近接戦闘能力向上週間なのだわ」
雛苺「パンチとキックで戦うの!」
ジュン「随分とストイックなことを。今時、仮面ライダーでもかめはめ波バンバン撃つってのに」
真紅「理想は初代ウルトラマンね。肉弾戦で相手を弱らせてからトドメの必殺技を確実に当てたい。もしくはそのまま殴り倒す」
翠星石「これからの時代はローゼンメイデンも省エネですぅ!」 - 168 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:23:17.21 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「僕の負担が減るってことみたいだから、ありがたい話だな」
真紅「そうそう。ぶっちゃけ現代人はハングリー精神が薄いから私達も昔の感覚で戦ってるとすぐガス欠するのだわ」
翠星石「全くですぅ。先代マスター達は皆ハイオク並みの生命力だったですのに。
チビ人間ときたらレギュラーどころか軽油、いや、サラダ油ですぅ」
ジュン「……」
真紅「しかも、それをローゼンメイデン三人で共有だなんてジリ貧もいいところなのだわ」
雛苺「うぃ! 真紅の言うとーりなの」
翠星石「何言ってるですかチビチビ。昔のマスターのよしみでトモエからも力が吸えるハイブリッドメイデンのくせに」 - 169 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:24:51.38 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「お前らのエネルギー事情は分かった。まあ、せいぜい頑張ってくれ」
真紅「よし。では特訓再開よ翠星石」
翠星石「はいですぅ! 次は如雨露殺法の新技の型の確認を!」
真紅「じゃあ、私がステッキでこう上段から斬りかかったら……?」グワッ
翠星石「翠星石はそれを如雨露の注ぎ口で打ち落とす……ですよね」ガキッ
真紅「そうそう。杖や剣に対して如雨露をまともにぶつけてはいけない。
正面から当てるのではなく、打ち落とす。そうすれば……」
翠星石「如雨露の蓮口が相手の顔に向けられている姿勢になっているですから」
雛苺「そこで水を出せば確実に相手に当たるのよ!」
ジュン「なんだか本格的っぽい……」
翠星石「驚いたですかチビ人間? もう一度言うですが、これからは省エネの時代です。
無駄撃ちを減らして美しく決めるのが薔薇乙女の最新トレンドですぅ」
ジュン「へーへー」 - 170 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:26:24.22 ID:ZZOOy/XO
- 真紅「じゃあ、次は私の新技の練習につきあって翠星石」
翠星石「いいですよ」
ジュン「お、真紅も新しい技を開発したのか?」
真紅「新しいというよりも、コンビネーションだけどね」
雛苺「ワクワクするの」
真紅「基本はパンチ」ぶんっ
翠星石「えーと、とりあえずガードですぅ」がしぃ
真紅「で、インパクトの瞬間に手を開くと同時にローズテイル」
翠星石「ッ!?」
真紅「今は模擬だから撃たないわよ翠星石」
翠星石「……ほっ」
真紅「他には相手に喉輪かましてローズテイル接射とか。これもさっきの翠星石の新技と同じで確実に当てるための策ね」
ジュン「えげつねぇな。ほとんどゴッドフィンガーのヒートエンドじゃねえか」 - 171 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:27:06.17 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「バ~っカじゃないのぉ?」
真紅「!?」
翠星石「す、水銀燈ッ!?」
ジュン「いつの間に僕の部屋に?」
雛苺「全然、足音がしなかったのよ」
水銀燈「おバカ、私は飛べるのよ。ったく幼稚な組み手なんかやっちゃって……」 - 172 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:29:29.31 ID:ZZOOy/XO
- 真紅「これはこれは師匠……」
水銀燈「師匠~? 何寝ぼけたこと言ってんの? 脳ミソまで筋肉になったの真紅?」
真紅「私らには脳も筋肉も無いのだわ。それより、アリスゲームに肉弾戦主体の流れを持ち込んだのは水銀燈でしょ?
元祖を称えて師匠と呼んであげただけなのだわ」
水銀燈「単なる嫌味でしょうが」
ジュン「グラップラーみたいな真似を始めたのは水銀燈が最初なのか?」
真紅「最初と言うよりも、最近になって急によく格闘を使うようになったのよ。
マスターが死にかけだったり、元気になったと思ったら雪華綺晶に取られたりと苦労してるから」
水銀燈「ち、違うわよ! 私はただ、アリスゲームの戦術に幅を……」
翠星石「そんな嘘をついてもしょうがないですよ水銀燈。知ってる人は知ってるんですから。
おたくのエネルギー事情が、まともにやると翠星石達と同じかそれ以上に苦しいってのは」
水銀燈「ちぃっ……」 - 173 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:30:51.55 ID:ZZOOy/XO
- 雛苺「それで水銀燈は何のご用なのよ? ヒナ達と一緒に特訓するの?」
真紅「手を貸してもらえるのならありがたいわね。アグレッサーとして申し分ないし」
翠星石「仮想敵どころか仇敵ですけどね」
水銀燈「冗談。あんたらに稽古つけるぐらいなら、野良猫にダンスでも教えた方がまだ有意義」
ジュン「じゃあ、何しに来たんだ水銀燈? 金の無心か?」
水銀燈「そんなわけ無いでしょ。私が来たのは……」
真紅「私が来たのは……?」
水銀燈「……やっぱ帰る」
雛苺「え?」 - 174 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:32:06.08 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「じゃ」
翠星石「ちょ、ちょい待ち! アンタってお人はそんな思わせ振りのお預けをかますような姉だったですか!?」
水銀燈「……」
雛苺「そうよそうよ! このままだとヒナ、気になって今夜は眠れないの!」
真紅「確かにあなたらしくない。ここまで来て、無駄足で帰るつもり?」
水銀燈「……」
ジュン「何か困りごとか? 力にはなれないかもしれないけど相談ぐらいなら。金は貸さないが」 - 175 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:34:04.73 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「……真紅」
真紅「私?」
水銀燈「船……貸してくれない?」
真紅「ふ?」
雛苺「ね?」
翠星石「や、ヤブから棒に何を言ってるですか!?」
水銀燈「金糸雀から聞いたのよ。真紅、あんたが庭師の双子に対抗して『夢の漁師』になるとかフカシこくに飽き足らず……
記憶の大海原にまで乗り出せる船を手に入れたそうじゃない」
真紅「ええ、その通りよ。その名も第五真紅丸。だけど、どうしてそれをあなたが借りたいの?」
水銀燈「いいから、黙って貸しなさい」
真紅「あのねぇ、第五真紅丸は私用に調整済みの漁船よ。
『はいそうですか』って船だけ貸したところで、あなたもろとも海の藻屑になるのがオチ」
翠星石「そうです。ちょっと無茶苦茶言ってるですよ水銀燈」
雛苺「わがままさんなの」
水銀燈「……」 - 176 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:35:20.11 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「何のために船が必要なんだ? まさかお前も漁師になりたいとか?」
水銀燈「違う。……いいわ、ここまできたら全部説明してあげる。
『塔灰(ストゥーパ・ビブーティ)』が記憶の大海原のド真ん中で眠っている。それを回収するのに、真紅の船を使いたい」
翠星石「スープバー? どうしてnのフィールドの海の底にスープバーがあるのですぅ?」
水銀燈「スープバーじゃない。ストゥーパ・ビブーティ。大雑把に言えば昔のインドの偉い人の遺灰ってとこね」
ジュン「なんで、そんなのを欲しいんだ? 高く売れるのか?」
水銀燈「私は欲しくないわよ。しかし、高く売れると言えば高く売れる」
雛苺「うゅ?」
真紅「なんだか、まだ話が見えないわね。ちゃんと全部説明してちょうだい」 - 177 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:37:23.53 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「……くり返すけど、『塔灰』は昔のインドの高僧の遺灰よ。
どこかの盗掘屋がそれが収められていた塔をあばいて、灰を手に入れた」
ジュン「ふんふん」
水銀燈「しかし、どうやらその盗掘屋は呪われたらしく、夜ごと悪夢にうなされ、やがて夢遊病の相を呈してきた」
雛苺「ドロボーさんはメッメッ! なのよね」
水銀燈「ある深夜、彼はついに発狂。一心不乱に塔灰を使って砂絵を描いた。そして、そのまま夜明けと共に絶命」
真紅「あらら」
水銀燈「残されたのは薄く血の色が滲んだかのような桜色の塔灰による砂絵。
絵柄は高僧の生前の姿だったとも、魔神だったとも言われている」
翠星石「怪談ですねぇ」
水銀燈「祟りを恐れた、盗掘屋の仲間達はすぐさま砂絵を崩し塔灰を回収。
ガンジス川に流して捨て去った。結局、皆その後に熱病で死んだらしいけど」
ジュン「そいつらは何で灰を元の塔に戻さなかったんだ?」
水銀燈「そこまでは知らないわよ。どうせ、塔をあばく時に発破でもしてたんじゃない」 - 178 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:39:53.50 ID:ZZOOy/XO
- 真紅「ガンジス川に放棄された塔灰がどうしてnのフィールドの記憶の海底にあるの?」
水銀燈「……聖人の遺灰だという理由だけでなら、nのフィールドで再構成されはしない。
問題は塔灰で描かれた『桜色の砂絵』よ。非常に優れた美術品はnフィーで物体の幽霊として出現することがある」
真紅「まさか、塔灰の砂絵は?」
水銀燈「ええ、そうよ。真紅も噂には聞いたことぐらいあるでしょ? 七大怪画。
『桜色の塔灰(ストゥーパ・ビブーティ)』もその一つ。砂絵ではなく、その材料となった遺灰が……ね」
ジュン「七大怪画?」
真紅「世に七つ存在すると言われているオカルティズム溢れる奇妙な絵のこと」
水銀燈「けれども、もはや七つの内の五つはnのフィールドの中よ。
しかも塔灰以外の四つはネクロポリタン美術館に飾られている」
ジュン「なんだっけ? ネクロポリタンってのは聞いたことあるぞ」
翠星石「物覚えの悪いチビ人間ですねぇ。脳ミソまでチビサイズですか」
ジュン「なんだと」
真紅「nのフィールド内に存在する強力な集団よ」
ジュン「そうだそうだ、そうだった。トップ5の一つだったよな」 - 179 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:41:40.40 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「この塔灰を手に入れれば、ネクロポリタン美術館が高く買い取ってくれる」
翠星石「ッ!?」
真紅「本気で言ってるの!? 水銀燈!」
水銀燈「……」
ジュン「呪いとか祟りとか怖くないのかよ!」
真紅「私達が驚いているのはそういうことじゃないのだわジュン」
ジュン「へ?」
雛苺「『ねくろぽりたん』の『きゅれーたー』は怖い人達なのよ!」
ジュン「?」
翠星石「あそこの学芸員(キュレーター)どもは七大怪画の収集にも熱心ですが、薔薇乙女の収集にはもっと熱心なんですぅ!」
真紅「そうよ。初対面でいきなり投網を放たれたのだわ! 水銀燈なんてぶちぎれて、仕返しに当時の美術館を半焼させたじゃない!」
水銀燈「昔は昔。今は今よ」
雛苺「水銀燈……」
真紅「く、そこまでしてお金が欲しいの!?」 - 180 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:45:24.08 ID:ZZOOy/XO
- 青年「いえいえ。水銀燈嬢が欲しいのは金じゃあない」ツカツカ
真紅「何者ッ!?」
翠星石「誰です!?」
ジュン「ま、また勝手に僕の部屋に人が!?」
青年「お初にお目にかかります妹君様達。私、この度の桜色の塔灰回収に同行させていただく者」
真紅「ネクロポリタン美術館の……っ!?」
翠星石「キュレーター!?」
青年「はいぃ。いかにも。しかし、まだまだ『新入り』ゆえ、皆様も私のことは『新入り』と呼んでくれるとありがたいですね」 - 181 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:47:59.24 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「……あんたは家の外で待っている約束でしょうが」
新入り「水銀燈嬢が戻ってこないので話がこじれいているのかと。ならば私からの助け舟がいるだろうと思ってね」
翠星石「く……。蒼星石がネクロポリタンと水銀燈との間に何かあると言っていたことがあったですが……」
ジュン「それよりも水銀燈が欲しいのは金じゃないってのは、どういうことだ?」
新入り「『ロゼリオン計画』。私達キュレーターはそれの情報を持っている」
真紅「!」
雛苺「!」
翠星石「!」
ジュン「ロゼリオンて……!」
水銀燈「へぇ? アンタらも名前ぐらいは知ってたのね」 - 182 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:51:59.45 ID:ZZOOy/XO
- 真紅「名前だけよ。nのフィールドの『オズ教団』『東果重工』『渡し守の集い』による合同作戦。
そのコードネームがロゼリオンだということしか……」
翠星石「ネクロポリタンは部外者じゃねーのですか?」
新入り「ウチも計画に参加するよう呼びかけられたことがある、ということ。そして諸般の事情により断わった」
真紅「うさんくさいわねぇ。どうにも信用ならない」
新入り「困ったな。水銀燈嬢が船を用意できると言ったから、ついてきたのに」
水銀燈「……塔灰の前金として、ロゼリオン計画のさわりぐらい話しなさいな新入り。
それぐらいは下手に出てもいいんじゃない?」
新入り「是非もない、か。いいでしょう、ロゼリオンとは要するに貴女達ローゼンメイデンの模倣。
それも工場制手工業による大量生産」
ジュン「なっ!?」
真紅「……」
雛苺「……」
翠星石「……」
水銀燈「……」
新入り「あ、あれ? 驚いたのは男の子だけ……?」 - 183 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:53:15.65 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「あのねぇ、そういう手合いはもう私達は飽き飽きしてんの」
真紅「私達のパチモン作ろうなんて発想は百年以上前からあるわよ」
翠星石「槐しかり、雪華綺晶の悪巧みしかりですぅ」
水銀燈「しかも大量生産ですって? バカ言ってんじゃないわよぉ」
新入り「へ?」
水銀燈「一人の人間が最初から最後まで心血を注いで作り上げるからこそドールに魂が宿り、力が宿り、運命が宿る。
ベルトコンベアのライン作業で作ろうだなんて全くのナンセンス。
それで出来上がるのは、見てくれだけ綺麗なジャンク以下のお飾りよ」
真紅「どんな大層な計画かと思いきや……」
翠星石「打ち切られるのが目に見えているプロジェクトですぅ」
雛苺「ヒナでも、そんなのはダメだって分かるのよ」
ジュン「そ、そうなんだ……」 - 184 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:55:49.26 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「悪かったわね真紅。私がもっと早く新入りから、この程度のことを聞き出せていれば無茶な注文をせずに済んだものを」
真紅「いいってことだわ」
新入り「ちょちょ、ちょっと待って! 話はまだ半分。彼らだってそれぐらいのことは把握している!
問題は、その計画を実行させるに足る物を彼らは持っているということ!」
翠星石「『実行させるに足る物』? なんですかそれ?」
新入り「そ、それは桜色の塔灰に対する残り半分の報酬ということで……」
水銀燈「……どうする、真紅?」
真紅「ちょっと気になるのだわ。思い返してみれば、個人としてお父様の模倣をする錬金術師は後を絶たなかった。
けど、工場でバイトやパートに作らせようとする突拍子も無い人間はいなかった」
水銀燈「曲がりなりにも、それを決意させた『何か』」
真紅「好奇心はあるわね。よし、船を出しましょう」
新入り「ホッ……、良かった。これで私も美術館をクビにされずにすむ」 - 185 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:58:08.38 ID:ZZOOy/XO
- §数時間後・nのフィールド・記憶の漁港
.ィ/~~~' 、
_/ /  ̄`ヽ}
。__》@ i(从_从))
__/||ヽ|| ^ω^ノ 「さあ、みんな! 乗った乗った!」
___/.□□ |)と ).
\ ヽ___|)o TTTT
\  ̄ ̄ ̄ ̄|
彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ彡ミ
雛苺「わぁい! クルージングなの~」
翠星石「翠星石も実物見るのは初めてですけど、立派なモンですね」
水銀燈「……」
新入り「すばらしい。さすがは水銀燈嬢の妹君」
ジュン「褒めすぎじゃないの?」
新入り「とんでもない。nのフィールドでは船は超貴重」
ジュン「そうだったんだ」
水銀燈「幽霊船とか変なのは多いけどね。人が自由に操作できる船ってのはまず無い」
新入り「東果重工がいくつか所有している軍艦を除けば渡し守の集いが使っている小舟がせいぜいいいところだ」
ジュン「へぇ~」 - 186 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 18:59:28.94 ID:ZZOOy/XO
- 真紅「みんな乗ったわね。では、出発の前に船室で航海の無事を祈りましょう」
水銀燈「祈るぅ? 神頼みだなんて真紅らしくも無い。人間達の神様とやらは人形には思し召しをくれなくてよ」
翠星石「相変わらず不信心なお人ですぅ」
ジュン「ここで祈るのは神様にじゃないぞ水銀燈」
水銀燈「は?」 - 187 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:01:29.75 ID:ZZOOy/XO
- ┏━━━━━━━┓
┃ / \ ┃
┃/ .\┃
┃`ヽ、_ ┃
┃ `‐、. ┃
┃、 ヽ、 ┃
┃ヽT ◎ ヽ、. ┃
┃.:.:.:.:.ヽ、__ ,-== .┃
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┗━━━━━━━┛
【偉大なる副船長・さかなくんJr.の肖像】
真紅「この船のために命を捧げた偉大なる魚類さかなくんJr.よ。
彼に感謝と哀悼と航海の無事を祈る黙祷を捧げるのが第五真紅丸の習い」
水銀燈「……魚拓の遺影に祈りを捧げるだなんて、潮風で頭が錆びついたの真紅?」
翠星石「こればっかりは翠星石も水銀燈の意見に同意ですぅ」
雛苺「クレイジーなのよ真紅」 - 188 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:04:28.31 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「水銀燈、お前は知らないかもしれないがな。
真紅が船を手に入れて動かせるようになったのは、彼の功績あったればこそなんだぞ」
水銀燈「はぁ?」
真紅「そう。彼とはこの船を発見して修理して以来のベストパートナー。
一時はジュンからさかなくんJr.にマスターを変えようかとも考えたほど」
ジュン「それは初耳だった」
真紅「けど、彼は悲しいかな魚類。アッサリと短い寿命が尽きてしまったの」
新入り「nのフィールド内なのに世知辛いな」
雛苺「かわいそうなの……」
真紅「しかし、彼は死の間際に私にこの船の操縦や整備の全てを伝えてくれた。
それまで名ばかり船長だったこの真紅は彼の技術を受け継ぎ、この船を自由自在に操れるようになったというわけ」
水銀燈「へ、へぇ~……」
真紅「彼の技術は私の心の中で、彼の血肉も私の体の中で共に生き続ける」
翠星石「前半の技術は分かるですが、後半の血肉ってのはどういう意味ですぅ?」
ジュン「ああ、さかなくんJr.は今、船室の冷蔵庫の中にサク(※)となって眠っているんだよ」
※刺身にする前段階としてブロック状に解体された魚肉のこと
水銀燈「え?」
真紅「とにかくグダグダ言ってないで早くお祈りを捧げるのだわ。『いただきます』……と」
水銀燈「やってられるか」 - 189 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:06:02.41 ID:ZZOOy/XO
- §出航後しばらくして食事タイム
ジュン「で、何処まで行くんだこの船は?」ムシャムシャ
真紅「座標は水銀燈のメイメイが把握している。彼とホーリエに操舵は任せているから、心配なくてよジュン」ムシャムシャ
水銀燈「あら、このマグロ(さかなくんJr.)のからあげ美味しいじゃない」ムシャムシャ
ジュン「自信作です」モグモグ
新入り「海の上でここまで美味しい食事にありつけるとは」ムシャムシャ
雛苺「ううう……さかなサンかわいそうだけど美味しいのよ」モグモグ
真紅「死んだのだから仕方ないわよ。もう、あれはさかなくんJr.ではなく、ただの魚肉」パクパク
翠星石「真紅の言うとおりですぅ。美味しくいただいてやるのが、せめてもの供養です」モグモグ - 190 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:07:59.43 ID:ZZOOy/XO
- §さらにしばらくして目的海域に到着
新入り「さて、ここからは私の仕事! サンキューでした、紅い妹君」
真紅「へ?」
水銀燈「桜色の塔灰の回収は新入りの作業よ。まさか、私がダイビングするとでも思ってた?」
ジュン「いや、それは……」
新入り「ネクロポリタンから海底で泥化しているであろう塔灰を回収するための秘密道具を持ってきています。
その名も『骨壷バキューム君』。これさえあればチョチョイのチョイって寸法ですよ」
翠星石「なんですか、そのけったいなネーミングは……」
水銀燈「私とキュレーター達との約束は彼を『桜色の塔灰(ストゥーパ・ビブーティ)』が眠る海域に案内するところまで。
つまり、これで契約達成ってわけ」
雛苺「ほへぇ~」
新入り「では、暫く失礼!」ドッボーン - 191 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:09:14.19 ID:ZZOOy/XO
- ジュン「あ! な、何もつけずに飛び込んじゃったぞ! 溺れないのか!?」
真紅「現実の海とは異なるから窒息はしない。それに新入りもキュレーターならnのフィールドをねぐらとする住人のはず」
雛苺「で、でも記憶の海のど真ん中だなんて危ない場所なのよ!」
翠星石「まったくですぅ。チビ人間なんて浅瀬に足をつけただけでグロッキーだったですのに」
ジュン「しょ、しょうがないだろ。精神汚染が始まるんだから」
水銀燈「だからよほど心を強く持たないと、記憶の海で泳ぐこと……ましてダイビングなんて」
翠星石「新入りっていう奴もちょびっとチャラ男っぽいくせして、実は『できる男』ですぅ」
水銀燈「この海同様、底の見えない奴よ。気さくな態度に心を許さないことねアンタらも」
ジュン「忠告か? 優しいな水銀燈」
雛苺「妹思いなの!」
水銀燈「ち、違うわよ」 - 192 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:11:16.19 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「お待たせでした。無事、塔灰の回収は完了」ザバッ
ジュン「も、もう!?」
真紅「アッサリしたものね」
水銀燈(それだけ、この新入りの手際がいいってこと。
そもそも、これだけの深さの海の底まで短時間の内に潜って戻ってきただけでも驚愕に値する)
雛苺「それじゃ、これでお仕事は全部終わったのよね」
新入り「ええ、ええ。全面的な御協力まことに感謝」
翠星石「感謝だけじゃ足らんですよ。ほらほら、ロゼリオンについて残り半分の情報を教えやがれです」
真紅「それは帰りながら聞くことにしましょう。ホーリエ、メイメイ。船を帰路に」
ホーリエ「!」こくこく
メイメイ「!」ばひゅっ - 193 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:14:54.11 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「ええと、どこから話したらいいものか」
水銀燈「ここにきてもったいぶる真似はよしなさい新入り。簀巻きにして海に放り込んでやってもいいのよ」
新入り「勘弁してくださいよ水銀燈嬢。……あっ! あれを見て!!」サッ
ジュン「あれ?」くるっ
雛苺「にゅ!? 大きなお船なの!」
翠星石「いつの間にあんなところに? でも、なんだかボロボロです。ということは……」
水銀燈「幽霊船……。別に記憶の海じゃ珍しくも無いってのは既に言ったでしょうが」
新入り「ああいう船にはメメントリオン(記憶食い)という幻獣が住みついていることが多いのは御存知で?」
水銀燈「はいはい。存じてるわよ、それぐらい」
真紅「nのフィールドに漂う穢れた魂を食べて、浄化して消化する掃除屋さんみたいな存在でしょ?」
新入り「大雑把に言えばそのとおり。メメントリオン本体は小さなクリオネのような形をしている。
その身を守るために、ああいった巨大な幽霊船なんかにまでヤドカリみたいに寄生する」
翠星石「それが何だと言うのです? 翠星石達が知りたいのはロゼリオンについてです。
名前が似ているとはいえ、メメントリオンのことはどうでもいいんですぅよ」 - 194 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:15:25.79 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「いやいや、ロゼリオンの本体もずばりメメントリオンなんだな、これが」
水銀燈「!?」
真紅「ッ!?」
ジュン「ええ!?」
翠星石「メメントリオンが……ロゼリオン!?」 - 195 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:21:03.70 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「ここ最近になって地球人口が急増したせいか、nのフィールド内にも人間の魂が増えてきた。
それを狙って、本来は海にしか生息していないメメントリオンが陸上にまで進出するようになってきているのが事の始まり」
水銀燈「海から陸へ……」
新入り「陸に上がったメメントリオンは今度は船ではなく旅館や病院、学校など建築物の幽霊を鎧として纏うようになっていく」
雛苺「なるほどなるほど」
新入り「しかし、ここで一つ問題が起きた。建築物は船のように自在には動かせない。
これでは、なかなかエサである死魂を探しに行けない」
ジュン「……」
新入り「多くのメメントリオンは待ち伏せ戦法を採用した。が、例外があった。
そいつは元々は学校の幽霊に寄生していたメメントリオン。運よく獲物が学校に入り込んでホクホクだったのも束の間」
真紅「……」
新入り「何らかのトラブルで、獲物を取り逃がした。さあ、ハラペコのメメちゃんは困った。このままじゃ飢え死にしてしまう。
かと言ってクリオネ型の本体を晒しての移動はこれ以上したくはない。陸は彼(彼女)の知らない危険でいっぱいだ」
雛苺「メ、メメちゃんはどうしたの!?」
新入り「『動かしやすい鎧』をすぐ傍に見つけたんだよ。何の因果か、それは校庭に埋まっていたそうだ」
ジュン「動かしやすい鎧?」
水銀燈「まさか……」 - 196 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:23:10.72 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「ええ、ええ。水銀燈嬢が『飽き飽きしている手合い』。個人の錬金術師達がローゼンを志した『夢の残骸』。
ローゼンメイデンもどき、貴女達はこれを『野薔薇』とも呼ぶ」
翠星石「の、野薔薇に! メメントリオンが!?」
新入り「正確には野薔薇の亡骸、ボディにメメントリオンが宿ったということ」
真紅「それが……ロゼリオン?」
新入り「イエス。この偶然によって生まれたロゼリオン第一号を捕まえたのはオズ教団」
ジュン「……!」
新入り「その仕組みを理解したオズ教団は、これを量産することを計画する。
しかし、自分達だけでは到底なしえないことに気づき、他集団に協力を依頼した」
水銀燈「それが東果に渡し守にネクロポリタンだと言うの?」
真紅「庭師連盟には打診しなかったのかしら?」
新入り「これらトップ5の力は僅差とは言え、組織として一番統制がとれているのは庭師連盟だ。
第一の敵である彼らにまで新兵器を作らせては意味が無い……らしい」 - 197 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:28:06.20 ID:ZZOOy/XO
- 翠星石「新兵器だなんて……そんなバカな……」
新入り「はいぃ。まったくもって馬鹿な真似ですよ。昔の錬金術師が残した遺産に
突然変異の化け物を入れようなどと。だから我々はその申し出を断わった」
水銀燈「……」
新入り「兵器であろうと人形であろうと私達は美しい『本物』にしか興味が無い。
産廃の寄せ集めのような物を作ることに加担するなど、とてもとても」
真紅「工場を作るとも言ってたわよね。それは何の工場? 野薔薇を作るつもり?」
新入り「いえ、どうやらそういうことじゃないらしい。集めた野薔薇の亡骸を保管しメメントリオンを入れるための工場だ。
そもそもメメントリオンは古めかしいのを宿として好む。新築には興味が無いとさ」
雛苺「うう~、気持ちが悪くなってきたのよ」
新入り「野薔薇についても東果重工の調査兵団が回収作業に当たっている。やっこさんらコツを掴んだようでしてね。
最近はわんさと野薔薇を捕まえているよ。何しろ生け捕りじゃなくていいんだ。荒っぽい真似はしたい放題」
ジュン「……くそっ!」
新入り「野薔薇自体はもう、油田が見つかったようなもの。そもそもローゼンメイデンが超有名だから模造品はそれこそ星の数」
翠星石「むむむ」 - 198 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:31:29.01 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「ガワは準備できた。次は中身だが、これも適材適所。
渡し守の集いは細々とだが昔からメメントリオンの養殖をやっていたらしい」
ジュン「養殖ぅ!?」
新入り「渡し守は魂の水先案内人。その仕事をより発展させるために……
穢れた魂を浄化する性質を持つメメントリオンを自由に使役したいと考えていたんだろう」
真紅「なんてこと……」
新入り「こうして偶然から得られたサンプルを礎に計画は動き出した。ボディは野から捕まえ、中身は養殖の研究が進んでいる。
大人しい天然物じゃあなく、もっと凶悪で攻撃性の高いやつを育てるための、な」 - 199 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:32:07.87 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「以上がロゼリオン計画の概要だ。現在はもう少し進んでいるだろうが」
水銀燈「聞いてて胸糞の悪くなる話ね。でも、それを教えてくれたことには感謝する」
新入り「水銀燈嬢にそう言ってもらえれば誉れの極み」
翠星石「し、しかし! このやり場の無い怒りは誰に向けたらいいですか!!」
雛苺「ヒナもなんだかイライラするのよ……」
ジュン「翠星石、雛苺……」
真紅「……」 - 200 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:33:24.76 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「やり場がないことはないでしょう?」
翠星石「す、水銀燈!?」
水銀燈「オズ教団のロゼリオン第一号、東果重工の調査兵団、渡し守の養殖場、怒りの矛先はそれこそ……より取り見取り」
真紅「あなた、まさか?」
新入り「……」 - 201 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:35:51.21 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「野薔薇なんて大っ嫌いだったわよ。
お父様の足元に及ばない塵芥が作ったローゼンメイデンもどきだなんて邪悪でおぞましい」
ジュン「水銀燈」
水銀燈「けどね、野薔薇も動かなくなったら最早ただのジャンク。
破れた夢だとしても、死の安息についた戦士。それを利用するだなんて」
翠星石「そ、そうです! 許されることじゃないですよ! それこそ邪悪より最も悪い……『最悪』ってやつです!!」
雛苺「ヒナも許せないの!」
水銀燈「……」
真紅「やる気なのね水銀燈」
水銀燈「ええ、そうよ。奴らを叩く、叩いて潰す。徹底的に」
新入り「本気なので? そもそも可能なので?」
水銀燈「できるできないは関係ない。奴らは私を本気で怒らせた」
雛苺「こ、怖いのよ……水銀燈」
翠星石「流石は第一ドールの貫禄ですぅ」 - 202 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:37:47.33 ID:ZZOOy/XO
- 水銀燈「……陸が近くなってきたわね。ここからなら私一人でも戻れる。ちょっと一足先に失礼させてもらうわよ」ばさっ
真紅「ッ!? 水銀燈、待ちなさい! いくらなんでも一人じゃ」
水銀燈「勘違いおしでないわよ。いくらブチ切れたからって、いきなり特攻しかけるほど私もバカじゃあない。今は時を待つ」ばささっ - 203 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:39:43.55 ID:ZZOOy/XO
- 新入り「あーあ……、行っちゃいましたね」にやにや
ジュン「何笑ってるんです? あなた、ひょっとしてこうなることを?」
新入り「先輩達から聞いていたんですよ。水銀燈嬢を怒らせたらただじゃあ済まないって。
何しろウチの美術館は以前、お嬢の怒りに触れて半分燃やされたそうだし」
ジュン「……」
真紅「利害が一致したとは言え、水銀燈を自分達の鉄砲玉にしたんだから……
それ相応の支援は期待できるわよね新入りサン? 高見の見物決め込んでいたら今度は全焼よ」
新入り「わ、分かってますって……っ!」 - 204 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:40:29.49 ID:ZZOOy/XO
- §第五真紅丸・帰港
翠星石「ふぅ~、やれやれ。やっと帰ってこれたですぅ」
雛苺「ヒナはもうちょっとお船に乗っていたかったのよ」
新入り「では、私もこれで」
真紅「待ちなさい! あなた達! 航海が無事終了した事に対して、さかなくんJr.に感謝とごちそうさまの祈祷を……!」
翠星石「あんだけヘビーな話の後に、よくそういうふざけた真似が出来るですね真紅」
真紅「私はふざけていないのだわ!」
ジュン「そうだぞ翠星石。真紅は到って真面目だ。ベクトルおかしいけど」
翠星石「へいへい」 - 205 :創る名無しに見る名無し:2012/01/04(水) 19:44:08.10 ID:ZZOOy/XO
- ホーリエ「……」ばひゅ~ん
真紅「あ、ホーリエも操舵ご苦労様」
メイメイ「ッ? ッッ!?」
雛苺「水銀燈なら、途中で空を飛んで帰っちゃったのよメイメイ」
メイメイ「ッ!」がびーん
ジュン「なんだなんだ? 水銀燈のやつメイメイを置き去りにしちゃったのか?」
メイメイ「……」おろおろ
翠星石「しょうがないお人ですねぇ。ま、その内、気づくはずですから、それまでチビ人間の家にいろですメイメイ」
メイメイ「……」こくり
真紅「困ったものね水銀燈にも。人工精霊を忘れるだなんて」
メイメイ「……」
新入り「気性の激しいお嬢の専属では疲れることも多いだろうに」
翠星石「新入りサンもせいぜい気をつけるこってす。妹である翠星石達ですら一緒にいるだけで、くたびれるんですから」
ジュン「やれやれだな」
水銀燈と桜色のストゥーパ・ビブーティ 『完』
2012/01/04 23:04:51 コメント19 ユーザータグ ローゼンメイデン