飯箸、創造力の作り方5:目的設定の方法とPBL-第82回SH情報文化研究会--感性的研究生活(142)
2019/04/12日投稿(2019/02/24講演)
飯箸、創造力の作り方5:目的設定の方法とPBL-第82回SH情報文化研究会--感性的研究生活(142)
ミニシリーズ「第82回SH情報文化研究会」
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<1>概要-第82回SH情報文化研究会
<2>飯箸、創造力の作り方5:目的設定の方法とPBL-第82回SH情報文化研究会
<3>外部講演など
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飯箸、創造力の作り方5:目的設定の方法とPBL-第82回SH情報文化研究会
この日の飯箸の発表を紹介いたします。
1. 表紙(創造力の作り方5:目的設定の方法とPBL)
皆さん、おはようございます。さて、今日は「目的設定」のお話をさせていただきます。学生生徒児童幼児に目的設定ができる能力を身に着けてもらう方法についてのお話しです。つまり、教師(私)の手の内を明かそうということです。
私は、一介の教員として、学生生徒児童幼児にやがては社会に参加して存分に生きて行ける「実力」を身に着けてもらおうと思ってきました。そのためには、知識学習(座学中心)も、課題学習(技能習得学習など)も必要ですが、私が勝手に命名している「生存活動型のPBL(ヒトの生存活動型を真似たProject Based Learning or Problem Base Learning)」も必要であると考えてきました。「生存活動型のPBL」 では、教師が学生生徒児童幼児に「課題を与える」のではなく、学生生徒児童幼児にプロジェクトの目的を自発的に設定することから始まります。
また、「生存活動型のPBL」では、プロジェクトの成果を大勢の前でこれを実行した学生生徒児童幼児が発表したり、現場の人々に伝えて現場の改革につなげたりすることを前提にしています。
何しろ、「脳」というものは、アウトプットなくしては働きませんから、覚えさせる(インプットさせる)だけでは「脳」が満足に処理しません。脳が働かなければ、「理解」することがありませんので脳に痕跡が残りません。つまり、アウトプットにつなげることで理解と記憶が可能になるのです。
[インプット]→[処理(プロセス)]→[アウトプット]
[感じる]→[理解する]→[対外活動]
先生方> 「I→P→Oは、分かった。しかし、・・・、ええっ!? 子供たちに課題を自分で探せと言うんですか?」「そんなことをしたら、いくら時間があっても足りませんよ。いくら待っていても子供らから課題なんて出てきませんからね」「課題は教師が与えるものでしょう? そなん教師の職場放棄じゃないですか」「そもそも、うちの生徒にそんな能力ないですよ」
私> はい、教えてあげなければ目的の設定なんてできませんね。生徒にない能力をつけてあげるのが教師の役目だと私は思ってきました。
先生> 「いやいや、私は、学生たちに "考えろ" と言い続けてきました。例えば"傘をなくす人が多いがなくさないようにするにはどうしたらよいか"というお題を出すと、傘に名前をつけるとか紐をつけるとかいうアイディアが手出来ますが、私は "なぜ傘ってなくしやすいのかな、考えてごらん" というと、学生たちは考えて "出がけに降っていた雨が駅についてら上がっていたとかがあると忘れやすいじゃない? 傘はみんなの共用にして使った後はその場においておけばいいんじゃないのかな" などの別のもっと良いアイディアが出てきます。これが目的設定じゃないんですか?」
私> それは、CDIOサイクルのConceive(考える)ステージのやり方ですね。Conceive(考える)だけでは足りないというのが私の考えです。おっしゃっている傘の事例でも、結局は教師がお題を与えていますね。学生が生き生きとした現実から "自分で" 課題を切り取ってきてはいないという弱点があります。若者が現実社会に入っていくと、だれもお題を与えてくれないのに目的を自分で設定して現実を切り開いてゆかなければなりませんね。それができなければ、例えば、キャリアアップもキャリアチェンジもできません。現実と向き合って、自分なりの目的設定ができるように実力をつけてあげるのが教師の役目ではないでしょうか。
先生> 「本当に、そんなことってできるんですか?」
私> できますよ。私は36年間、教壇に立ってきましたが、その教育実践を続けてきました。
まずは、聴いていただければ幸いです。
創造力の作り方5:目的設定の方法とPBL
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私(飯箸) は、このところ「創造力の作り方」についてシリーズで講演しています。今回はその5番目です。
「創造力の作り方」 では、飯箸が創案した「生存活動サイクル」のモデルに従って、説明を進めてきました。
「生存活動サイクル」 の各部分はどれも大事なことで、欠かすことはできません。
しかし、中でも、現代の教育で一番欠けているのは、「目的設定」のプロセスを教える部分であるように私には思えてなりません。自分で自分の目的を設定すること、これなくして何の人生でしょうか。王の命令に従う奴隷や雇い主の命令に背くことができない雇われ人たちは、もはやAI時代に突入している現代ではAIロボットにいつ置き換えられてもおかしくない人々です。目的設定が自分でできない人が、これからも生きてゆくことができるとは到底思われないのです。
「目的設定のプロセス 」や「目的設定のステージ」について、私が語り始めると、決まって「私だってやっている」と言い始める自称教師の一群の皆さんが立ち現れて、私の話の腰を折ろうと躍起になるのが通例です。この方たちは学生をロボットにしたい人たちで、人間を育てる気などさらさら「ない」に違いありません。
実際のところ、この方たちは、「生徒の学習目的を自分がして上げている」のです。いいことをしていらっしゃいますね。
しかし、ちょっと待ってください。この方たちは、学生に目的設定をさせているでしょうか。教師が設定していて、生徒は教師の目的を諾々と受け入れているだけですね。
私は、学生が "自分で「目的設定」できる能力" を身に着けさせる教育が必要であると申し上げたいのです。
学生は、これから、リアルな生活空間の中で生きて行かなければなりません。親はいつまでも生きているわけではありません。教師は親ほども一緒にいてあげられません。誰が本人のより良い目的設定をしてくれるのでしょうか。雇い主や商売の相手が自分を都合のいいように目的設定してしまうことから本人が免れて、自分の人生を自分で切りひくことができなければ一生を棒に振ることになってしまいます。
今回は、この「(学生・生徒による)目的設定の方法」について私の考え方とやり方をお話しさせていただきます。
2. 自己紹介
このスライドは、私の自己紹介です。この会場には、お時間が限られていますので、詳しい説明はいたしません。ご関心のある方は、お手元にもスライドの印刷物をお配りしてありますので、ご覧いただければ幸いです。
飯箸の自己紹介
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<概要>
一般社団法人協創型情報空間研究所 事務局長
元システムハウス代表取締役 37年
元科学ジャーナリスト 10年 / 元大学等講師 36年
<教育経験> ※教え子の総数8,000人超
駿台電算機専門学校/日本電子技術専門学校など
中小企業大学校(通産省・経産省傘下)
大正大学(国際文化)/明治大学(法・情コミ)/法政大学(工)/武蔵野美術大学(デザイン情報)/慶応大学(経営)/国士舘大学(理工)/早稲田大学(教育・院)
<学歴>
都立足立高校(ビートたけしと同級生)
東京大学理学部化学科卒
東京大学理学部情報科学科研究生修了
<経営経験>
経営 各種システムハウス、出版社、電算印刷業、データエントリ業、自動車教習所ほかの代表取締役・社長
顧問 化粧品メーカー、映像制作会社、ファッションWEB販売業、医療機器販売業、社会的企業ほかの顧問
<主な業績>
ラスタ・ベクタ変換(特許)、世界初フレーム型人工知能システムの開発、精密誘導アルゴリズム開発、世界初MMLシステムの開発、電力館展示コンサルタントなど。
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3. 目次
今日のお話はこの目次のような順でお話いたします。
目次
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0. 目的? ない・・・。学生の現実!! ・・・・・・・ 4
1. 生きていける人、いけない人 ・・・・・・・・・・・ 5
2. 目的設定ができる人材 ・・・・・・・・・・・・・・ 6
3. テーマ探しのコツ(学者の手の内など) ・・・・・・ 7
4. 目的は二方面から ・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
5. どうしたら目的設定ができるか ・・・・・・・・・・11
6. 目的設定の注意点 ・・・・・・・・・・・・・・・・12
7. 目的の階層構造(バリューダイアグラム) ・・・・・13
8. 当面の目的と人類の目的の整合性 ・・・・・・・・・14
9. 討論と沈思黙考 ・・・・・・・・・・・・・・・・・15
10. 決断はリーダが下す・・・・・・・・・・・・・・・17
11. CDIOサイクルの失敗 ・・・・・・・・・・・・・・18
12. 三つの学習法の比較・・・・・・・・・・・・・・・19
13. まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
14. 補足:OECD「Education 2030」・・・・・・・・・21
15. 終わり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・22
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4. 目的? ない・・・。学生の現実!!
皆さんは、学生に良かれと、いろいろなことを、学生に仕掛けて、やらせよう、と日々心を砕いていらっしゃいます。
しかし、先生方が努力すればするほど、学生は反発していないでしょうか。
学生たちは "ヤラサレ感" で、いっぱいいっぱい、パッツンパッツンです。爆発寸前なのです。
一方、先生方は、「こんなに面白いことを学生はなぜやらないの???」「将来役に立つことなのに・・・、もういいよ~、やらない学生には単位あげないからな(ね)、知らねぇぞ!(知らないわよ❣)」と、先生方は憤懣やるかたなしです。
でも、学生たちは、自分でやりたいことをしていないのですから、やらされているとしか感じませんね。
うるせぇんだよ!
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こんなときの教師の奥の手を公開したいと思います。
5. 生きていける人、いけない人
教師の方から見れば「教育」ですが、学生生徒児童幼児から見ると「学習」です。
学生生徒児童幼児は、放っておいても何かを学ぼうとします。哺乳類の子どもたちはみな同じです。
成長してやがては大人たちと同じように生きてゆくための方法を身に着けるために大人たちを「真似ぶ」のです。
このことは、たくさんの教育学者や現場の教師が幾度となく指摘してきました。しかし、放置しておいてよいわけではありません。放置しておけば、いわばオオカミ少年程度にとどまることは明らかです。いな、オオカミの習性さえ学べないかもしれません。未成熟なまま生まれるヒト類は、大人の支援なしには十分に学べないのです。
子供たちは、何はともあれ、「生きていける人」になることを希求し、希望がかなえられそうにないときには挫折したり、自暴自棄になったります。"ヤラサレ感" いっぱいで破裂寸前で「やってらんねぇよ~」とわめく学生の心の奥底にあるのは、「生きていける人」になる方法への渇望感です。
子供たちが生きてゆくために、大人たちは何をして上げられるのかをもう一度問うべき時代になりました。
巨大に膨れ上がった人の知識をすべて伝達して子ども一人一人の頭に詰め込むのはもはや不可能です。ヒトの替わりに、人工知能が知識のデータベース(知識ベース)で保持してくれるでしょう。知識は必要な時に引き出して利用すればよい時代になるはずです。
生きてゆくための「実力」を身に着けること、大人たちが生きてゆくために無意識にしていることを教えてあげればよいはずです。この点に的を絞ってモデル化したものが「生存活動サイクル(飯箸仮説)」です。変化する時代に通用する「実力」とは「生存活動サイクル(飯箸仮説)」を乗りこなす能力です。
大人たちは、このサイクルを自然にやりこなして生きています。
なれば、「生存活動サイクル(飯箸仮説)」のやり方を学生生徒児童幼児に教えてあげれば、学生生徒児童幼児の強い関心を惹きつけ、"ヤラサレ感" からは解放されるのではないでしょうか。これが、私の着眼点です。
学生生徒児童幼児の「学習モデル」を再検討する前に、私が「人間活動モデル」を「生存活動サイクル(飯箸仮説)」 として構築しなければならなかったのは、学生生徒児童幼児が自然に求める「人間生存のための実力」とは何かを明らかにする必要があったからです。
学生たちはこの「人間生存のための実力」を体得した時、学生たちのやる気エンジンに火がつくのです。私はこの現場を何度も見てきました。
学びたいことは「大人のように生きて行ける方法」--生存活動サイクル
「生存活動サイクル(飯箸仮説)」は次の6つのステージからなっています。
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①目的設定(『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではない--レイチェル・カーソン)
②情報収集(感じるのではなく、客観的条件を探る)
③戦略戦術を練る(≒プロジェクトデザイン、デザインシンキング)
④自助努力で実行(≒ アクション、アクティブラーニング)
⑤評価(成功か失敗か、成果と損失を客観的に)
⑥反省(残された課題や次の進むべき課題は何かを探り、次の目的設定の準備を行う。一方、①~⑤の間に行われた無数の「問題発見」とその「解決法」をすべて列挙し、同じ失敗を繰り返さない対策を記銘する)
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6つのステージを、もっと増やして細かく見ることもできますが、6つのステージよりも少なく分類することには賛成できません。
5つや4つにしてしまう人は、ひそかにどれか大事なステージを軽視したり無視したりしている危険性があります。
とりわけ、①と②は混同されやすく、①をしているつもりで「感じる」ことを忘れて調べ物をしているだけになっていたり、②をしているつもりで客観的な条件よりも感情に走ってでエセ科学にはまったり、欲望に駆られて「だろう」と「つもり」だけで突進して手ひどい失敗に終わる危険性をはらんでいます。①と②はしっかり区別して取り組むべきでしょう。
全てのステージを実施し尽くせば、失敗に終わっても成功しても、部分的成功にとどまっても、次に進むべき目的はおのずと見えているはずです。見えていなければ、最初の目的設定が間違っているのです。いずれにしても、先頭ステージの目的設定に戻って活動が再開されてゆくはずです。
また、それぞれのステージのどこでも、またはそのステージの途中でも、行き詰まりを悟ったら、引き返すのが自然です。ヒトは自己責任で生存活動を行いますから、現実のしっぺ返しを予感したら、だれのためでもないので、引き返すべきです。
他人の命令ならば、おかしいと思っても突き進まざるを得ないことがあります。案の定、失敗すれば実行者(自分)は失敗の被害を被って身も心もズタズタになりますが、失敗自体は命令した人(上司や上官、教師など)の責任になりますからある意味で気が楽です。
自己責任の生存活動サイクルでは、失敗も自分の責任ですから、できればしたくありません。一歩引き返して済む場合もあるでしょうが、1ステージ分戻ってやり直さなければならないことも少なくないはずです。それどころか、2ステージ分も3ステージ分も戻らなければならないケースもあります。2ステージ分、3ステージ分、、、と戻ってゆくと、結局はこのサイクルの先頭にある目的設定に戻ってやる直すことも出てきます。いつでもどこからでも、そしてどこにでも戻ってよいのが「生存活動サイクル」というものです。PDCAサイクルのように目的設定は他人まかせで、最後まで進まないと元に戻ることが許されないものとは、明らかに別のサイクルなのです。
6. 目的設定ができる人材
AI時代に求められる人材とはどんな人材でしょうか。
言われたことを正しく実行するのは人工知能が最も得意にするところです。
「言われたことを正しく実行できるだけの人」はAI時代には生き残れません。
言われたことではなくて、創造性のある仕事を自ら作り出すことができる人だけがいきのこれると考えられています。
創造力のある人は、目的設定も上手な人です。
AI時代に求められる人材
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①自分で目的が設定できて、
②自分で情報を集められて、
③自分で計画でき、
④自分で実行でき、
⑤結果の成否・良否を自分で客観的に判定できて、
⑥次の目的設定のための準備ができる
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創造力は目的設定のステージで半分鍛えられます。
残りの半分は、後のステージで遭遇する「問題」を発見して問題解決を図ることで鍛えられます。
創造力が鍛えられると、目的設定がうまくできて、「問題」を発見して問題解決を図る能力が高まります。
目的設定をひんばんに実行して、「問題」を発見して問題解決を図れば、ますます創造力は鍛えられてゆきます。
次には、まず、その半分である目的設定がどうしたらできるようになるかについて説明します。
7. 学者の手の内
目的設定のプロは「学者」です。彼らが一体何をしているのかを見て見ましょう。
テーマ探しのコツ(学者の手の内)
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私が知る限り、職業的研究者(学者) は、大きく言って、次の3つの方法でテーマを探しています。
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(1)穴あき発見法(しらみつぶし法)・・・プロ研究者の常套手段
特定の分野(ドメイン)の先行文献をしらみつぶしに読み漁り、
研究の方向性にいくつかのベクトルを見つけて2次元~多次元の
研究成果マップを作る。
研究成果マップ上に成果がなかったり、不完全なものしかない部
分(穴)をビンポイントで発見する。
観方(ベクトル)を替えるといくらでも穴は見つかる。
独創性はうかがえないが、新規性はあるので、論文にはなります。
←先行調査に十分な時間を割けるプロ向き。
当たり外れが少ない特徴がある。
(2)異世界間移注法(輸入法、借り物法)・・・ビジネスマンの常
套手段
異世界(複数ドメイン)の両方を知り、一方に足りていないもの
を他の世界から移し投入する。
簡単なようだが、移し入れるものを変形したり、関係者への説得
や投入先の物理的環境を改造したりしなければならないことがあ
る。
移注するだけでは、新規性も独創性もないが、結果として「(1)
穴あき法」や、場合によっては「(3)対立解消法」につながる
場合がある。移し入れるものを已むを得ず変形するだけで、新規
性を得る場合もある。
学際的研究と称されるものは、ほぼすべて、これらの可能性を狙
うものである。
←日常世界だけでなく異世界を覗けば思い立つ可能性が高いので、
初心者向き。
(3)対立解消法(第三案法、弁証法)・・・開拓者、チャレンジャ
の思考法
異世界間または同一の世界(複数ドメイン間または同一ドメイン)
の知識・手法・習慣・思想・制度などに違いがあり、統一した方
がよいと考えられるとき、どちら(または どれ)を採用しても解
決できない問題(対立)が生ずる場合、第三の案を考える。
←一発逆転を狙う若い研究者が好む方法。
しかし、思考の熟達者でなければ難しい。
当たり外れがあるので、安定指向には向かない。
=================================
ここで、職業的研究者(学者) の皆さんお尋ねしますが、何か異論はありますか?
これまで、このお話をする私に向かって異を唱えた職業的研究者(学者)の方はまだ一人もいないので、おおむね妥当なのではないかと思われます。
もちろん、「(2)移注法」のつもりが幸運にも「(3)対立解消法」に進んだり、「(3)対立解消法」のつもりで調べ物を進めるうちに「(1)穴あき法」の "穴" を発見したりと、思考の変遷は錯綜を極めるので、ここには3問一択のような単純さはありません。
さて、学生生徒児童幼児に目的設定を教えるには、これら3つのどれにすべきかという問題があります。若者は、どれに成果を上げるかは予測しがたいものがありますから、どれか一つにせよとか、この方法はやるななどという制約は無用です。
しかし、「(1)穴あき法」 は膨大な "文献読み" が必要ですから学生生徒児童幼児に取組ませるには荷が重いです。「(3)対立解消法」は思索経験が豊富でないと困難です。まずは、「(2)移注法」に誘導するのが最も容易で、教師の負担も他の方法に比べれば大きくありません。「(1)穴あき法」 も「(3)対立解消法」 も排除することなく、まずは「(2)移注法」を試みるのがベターと思います。
8. 目的の二方面
目的設定する場合に「当面の目的」にとらわれて、これだけに終始すると失敗することがあります。
学生生徒児童らが「秋葉原では18人殺した奴がいるから、俺は新宿で20人殺してやる」などという目的を立てても困ります。
「当面の目的」とともに、「人類の究極の目的」を想定して、それに沿わない生存活動は許されないことを教えなければなりません。
当面の目標は、学生生徒児童幼児が自ら発見することができますが、「人類の究極の目的」は人類史の中で人が発見して伝えてきたものなので、人生100年と言えども個人の生涯のうちに独力で発見することはほとんど不可能です。人生経験と学問の造詣深い大人、とりわけ教師が教えなければなりません。
目的設定の2方面(当面の目的と究極の目的)
<クリックすると拡大します>
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二方面から探す
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(1)目的の見つけ方<1> (個人の体験に依存する、当面の
目的)
①現場をいろいろ見る。
(非常に有効、引率する教師の興味が大事。生徒は先
生の熱意を学んで、先生が見なかったものを発見する)
②先輩の先例を学ぶ。
(非常に有効、しかし、単為生殖は染色体劣化を起こ
しやすい)
③疑似体験をする。
書籍・文献・WEB上のドキュメントや、小説などの仮
想ストーリによる仮想体験(シミュレーション)を行
う。
マンガやゲームの一部もこの仮想体験を提供している。
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(2)目的の見つけ方<2> (人類史の体験に依存する、究
極の目的)*
①自分が幸せに生きる。
②組織や社会に貢献する。
③人類の久遠の繁栄に貢献する。
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* (2)の①②③に矛盾なく目的が選べれば、大変幸せである。しかし、 (2)の①②③はしばしば矛盾する。
この矛盾を悩み、いずれかを捨ていずれかを採るか、どこかに妥協点を見出すかは、常に自己責任。
逆に、組織や社会に被害を与えれば法によって罰せられる。人類の未来に反すれば軍隊で滅ぼされたりする。
飯箸泰宏、‟主催者=飯箸の挨拶-三大学合同ゼミ成果発表会-第81回SH情報文化研究会--感性的研究生活(139)”, 最終更新019.02.02(2019.02.04)から。
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9. 目的の見つけ方<1> (個人の体験に依存する、当面の目的)
ここで、目的の見つけ方<1> を少し詳しく見て見ましょう。
当面の目的(目的の見つけ方<1> )
<クリックすると拡大します>
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<1> (個人の体験に依存する、当面の目的)
①現場をいろいろ見る。 「百聞一見」 というよりも「現場百
回」
非常に有効、引率する教師の興味が大事。学生は先生の熱意
を学んで、先生が見なかったものを発見する。
バイト( IT、飲食店、、、)、サークル、福祉ボランティア、
イベント(音楽フェス、学園祭、、、)、工場見学、インタ
ーン、会社訪問、学会聴講、他ゼミ訪問、、、。
←日常とは違った世界と遭遇することが大事。
②先輩の先例を学ぶ。
非常に有効、しかし、単為生殖は染色体劣化を起こしやすい。
見える範囲が世代を追うごとに狭まり意識家ベルも下がる傾
向がある。
←こんなことでもテーマになるのか?! がわかる。
③疑似体験をする。
書籍・文献・WEB上のドキュメントや、小説などの仮想スト
ーリによる仮想体験(シミュレーション)を行う。
マンガやゲームの一部もこの仮想体験を提供している。(マ
ンガやゲームにも役に立つものもあるが、役に立たない、犯
罪を助長する仮想体験を提供しているものもある)
←「現場百回」を補足するものである。
=================================
①現場をいろいろ見る。
「目的の見つけ方<1> (個人の体験に依存する、当面の目的)」で、真っ先に挙げたのは「①現場をいろいろ見る。」です。
これは、職業的研究者(学者)のテーマ探しの「(2)移注法」を引き起こすための誘導です。
「百聞一見」というよりも「現場百回」です。狙った現場に何度でも行ってみて感じてくることが大事です。
教師は自分の興味のある現場を情熱をもって学生生徒児童幼児に見せてあげるのが良いと思います。情熱の持てない事物を見せても学生生徒児童幼児はしらけるばかりでしょう。教師が熱心に語りつつ見せると学生生徒児童幼児も目を輝かせてみてくれるでしょう。しかし、教師が見せたいものではない別のものを発見して、感動してしまうのが子供たちというもので、そこが独創性の小さな目にもなり得るので、摘み取ることのないように、教師が見なかったものを見付けた学生生徒児童幼児はほめちぎってあげたいところです。
学校と家庭と塾くらいしか知らない学生生徒児童幼児は、新鮮な別世界に連れて行かれただけで、ドキドキワクワクするに違いありません。自分の日常世界にはない何かを見つけて、こちらに持ってきたらと考えたり、自分が日常知っている便利・楽しいを相手世界にもっていったらと考えたりすることはごく自然な発想です。
移注しようとしても単純にはいかないことが少なくありませんから、移注したいという動機の下に移注先の環境に合わせて工夫することが要求されます。その工夫への圧力が、新規性や独創性を誘発します。学生生徒児童幼児に創造力を育てる良い機会になるというわけです。
ここで、「「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではない」という言葉を思い出すが、Rachel Louise Carson, "sense of wonder"の中の彼女の使用例とは少し違って、自然や神秘的ストーリに対する "Wonder" だけではなく、学生生徒児童幼児に創造力を育てる感動は文化を異にする社会や集団や個性的な人物や科学的建造物や独特な作品などからも得られることを指摘しておきたい。大事なことは、Rachel Carson もいうように、その "Wonder" に同意して学生生徒児童幼児と一緒に感動する一番身近な大人にあなたがなることだということです。
②先輩の先例を学ぶ。
これは、現場に学生生徒児童幼児を連れて行って一緒に感動する教育行為よりは、良く行われている手法です。「現場百回」よりも教師にとって手間がかからないので手軽だからです。
手軽だから効果がないというわけではありません。教師という少し遠い存在よりも少しばかり身近な先輩の言葉には自然と心が開きます。何より、こんなことでもテーマになるのか?! がわかりますから、目的設定に向かう心のハードルを引き下げてくれるという絶大な力を発揮します。
しかし、同じ仲間のたとえば同じ研究室の先輩から後輩へと事例が引き継がれてゆくと、志の水準が代を経るごとに低下する形質劣化現象を引き起こす難点があります。後輩は、先輩の真似をして、先輩のなしえたことに近づこうとします。かなり近づくとそれでよしと安心してしまう傾向があります。これを私は「8割症候群」と言ったりしています。二代目が8割なら、三代目は6割に低下します。大学の研究室を生え抜きが跡を継ぐと同じ事が起こります。一代目が築いた名声を三代目が潰します。単為生殖は形質劣化しやすいという生命現象にも似ていますね。
先輩の事例紹介もたまには良いですが、「現場百回」を優先すべきだと私は思います。
③疑似体験をする。
「現場百回」の替わりに、書籍・文献・WEB上のドキュメントや、小説、映画などの仮想ストーリによる「仮想体験(シミュレーション)」を行うのも悪くはありません。特に、危険な現場(戦地、事故、天災被災、極寒気候、ジャングル、被傷、重病、絶命の危機など)をいくら教育のためとは言え、実際には体験させられませんから、替わりに「仮想体験(シミュレーション)」を学生生徒児童幼児に体験させることは大変有意義です。しかも学生生徒児童幼児たちは、その手の「お話」は大好きです。人類は歴史の長い期間、大人たちは子供たちに自分やご先祖が体験した危険な出来事や感動秘話を語って聞かせてあげるものでした。子供たちは目を輝かせてその話に耳を傾けていたはずです。現代の大人たちは、昔の親たちと同じことをして上げるだけのお話の技能と知識と時間を持ち合わせていませんから、足りない部分を補うために、せめて子供たちに良い仮想ストーリを選んで与えてあげたいものです。それが今どきの大人の役目だろうと思います。
うかつにしていると、人殺しや犯罪や似非科学を助長する「仮想体験(シミュレーション)」に子供たちが取り込まれていることがあります。これらを巧みに排除するのも大人の役目です。
しかし、これらも「現場百回」の補助的役割でしかありませんから、何よりも「現場百回」を重視すべきです。
10. 目的の見つけ方<2> (人類史の体験に依存する、究極の目的)
ヒトとしての普遍的な生存の目的は、当面の目的の中から見つけることは困難なので、人生の先達である大人たち、とりわけ教師が教えてあげる必要があります。
人類究極の目的(目的の見つけ方<2>)
<クリックすると拡大します>
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目的の見つけ方<2> (人類史の体験に依存する、究極の目
的)*
世界宗教(World Religions)や哲学における聖者、賢人、
哲人と言われる人たちが一致して指摘するのは、次のような
「人としての究極の目的」です。
①自分が幸せに生きる。
②組織や社会に貢献する。
③人類の久遠の繁栄に貢献する。
①②③に矛盾なく目的が選べれば、大変幸せです。しかし、
これら①②③はしばしば矛盾する。
この矛盾を悩み、いずれかを捨ていずれかを採るか、どこ
かに妥協点を見出すかは、常に自己責任。
永遠の人間ドラマです。
①を優先して、組織や社会を裏切るか、人類の未来を裏切
る人は利己主義または個人主義と言われます。
組織や社会に被害を与えれば法によって罰せられ、人類の
未来に反すれば軍隊で滅ぼされたりします。
しかし、②組織や社会、または③人類の久遠の繁栄を過度
に優先する人は家族から見放され、子孫を残せず、短命に
終わる場合もあります。
*「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」(夏目漱石、「草枕」)
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「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」(夏目漱石、「草枕」)は、なかなか含蓄が深いものがあります。
下記のような対応が成立するのかもしれませんね。夏目漱石が生きていたら聞いてみたいと思います。
智=人類の叡智=「③人類の久遠の繁栄に貢献する智慧」
情=巷間の情=「②組織や社会に貢献する情」
意地=自分の意地=「①自分が幸せに生きるための意地」
一つを貫こうとすると他の二つは疎かになる、、、。あぁ、とかくに人の世は住みにくい、
人類の究極の目的は、地上の人類に共通で普遍的なものですが、人類の長い歴史の中で発見され、風雪に耐えて今に伝えられているものです。個人は一代限りの短い時間しか持ちませんから、個人では障害を掛けてもこの原理に到達することはほとんど不可能です。親から子へ、世の賢人・哲人から大衆へ伝えられることによってのみ、あるいは世界宗教(World Religions)の教えとして知らされる知恵ということになります。
現代的な解釈としては、ヒトもまた生物なので、生物学者が言うように「個体の生存」と「種の保存」のために生きているということは間違いないでしょう。さらに、ヒトは社会を作る動物ですから、「社会や所属する組織の維持発展」のため生きているということもまた真実でしょう。
まとめると次のようになりますね。
・「個体の生存」 のために生存活動を行う
・「社会や所属する組織の維持発展」のために生存活動を行う
・「種の保存」のために生存活動を行う
つまりは、
①自分が幸せに生きる。
②組織や社会に貢献する。
③人類の久遠の繁栄に貢献する。
ということになります。これらは、姿を少しずつ変えながら、世界の思想に広く深く浸透しており、各国の憲法や基本法にも多くは反映しています。
また、この3点は、人類最古の世界宗教「拝火教」の後継宗教である「ゾロアスター教」の経典にも書かれていますから、人類史上の極めて古い時代から人々はこの原理を自覚していたということができます。「拝火教」または「ゾロアスター教」の分派として成立したユダヤ教やバラモン教やイスラム教、それらの分派としてのキリスト教や仏教などの多様な世界宗教のどれにも、この教えは引き継がれています。世界宗教の特徴は、民族の壁を越えて信徒の平等と融和および永続的繁栄を説くものになっています。
人類究極の目標は、現代的にも明白ですが、人類史的継承文化でもあるということです。
これについての詳しい説明は、過去の発表をご参照ください。
飯箸泰宏、"飯箸の発表「建造的(モノづくり的)思考の紹介」-sigedu 11月度月例会--感性的研究生活(133)"、2018.11.25、鐘の声ブログ(2019.04.11)の「3-4 ヒトの究極の目的 」
飯箸泰宏、"飯箸泰宏 「創造力の作り方2 情熱エンジンと創造力」、第78回SH情報文化研究会(6/7)--感性的研究生活(101)"、2018.06.10、鐘の声ブログ(2019.04.11)の「⑤「情熱エンジン」の中核をなすものが「自分で目標設定をする」」
11. どうしたら目的設定ができるか
学生生徒児童幼児を現場に連れて行っても、ただの物見遊山ですませたら、徒労に終わります。学生生徒児童幼児が「知る」だけではなくて「感じ」たら、グループ討議につなげてゆきます。発表会が設定されているPBLならば「発表のためのテーマ探し」がグループ討議の議題になるはずです。
ちなみに「生存活動型PBL」では、グルーブ学習が前提となっています。生存活動は社会的活動ですから、学習も社会的学習(コミュニティ型学習)でなければならないというのが私の考えです。
グルーブ討議は、ブレインストーミングを原則に行います。ブレインストーミングをしてみると、現場で子供たちはいろいろなものを見てきたことが分かりますが、子供ごとに見てきたものが違っていたりもしますが、そもそも子供ごとにバックグラウンドが異なりますから、見方が異なっています。目的はテーマ設定ですが、ワイワイガヤガヤ、いろいろな意見が出てきます。自分が見てこなかった何かを別の子どもたちが見ていることも少なくありません。「ウソっ、そんなことあった?」「自分が見たのはこうだったよ」「違うよ、こうだよ」「どっちわかんないよ」となる場合もありますし、「あそこどうなっていたのだっけ?」「課長さんはこれをなんて説明していたっけ?」など疑問がわくことも多いはずです。疑問が湧いたら、もう一度、現場に行けばよいはずです。帰って来てからまた議論するとまた疑問が湧いてきます。そうしたらまた現場に行きましょう。何度現場に行っても新しい発見があるはずです。
現場百回ループ
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どうしたら目的設定ができるか
目的設定の秘訣
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(1)現場百回ループ(10回でもいいですが・・・)
→→→→↓
↑ ↓
↑ 「現場百回」
↑ ↓
↑←ブレインストーミング(GL、グルーブ討議)
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(2)目的設定の注意点
①必要性と可能性
②目的の階層構造(バリューダイアグラム)
③当面の目的と人類の目的の整合性
④討論と沈思黙考
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日常的な世界を離れて、別世界の現場の感動を覚えたら、その感動を仲間と話し合いたいのが若者というものです。
グループ学習をセットにして、教室に戻ったら、見たものを学生生徒児童幼児同士で発表し合い、自分の感動(驚き、面白さ、奇妙さ、過剰さ、不足感、・・・など)を語りあい、自分たちにできることややるべきことがあるかを話し合わせます。
グルーブ討議は、ブレインストーミングを原則に行います。ブレインストーミングをしてみると、現場で子供たちはいろいろなものを見てきたことが分かりますが、子供ごとに見てきたものが違っていたりもしますが、そもそも子供ごとにバックグラウンドが異なりますから、見方が異なっています。目的はテーマ設定ですが、ワイワイガヤガヤ、いろいろな意見が出てきます。自分が見てこなかった何かを別の子どもたちが見ていることも少なくありません。「ウソっ、そんなことあった?」「自分が見たのはこうだったよ」「違うよ、こうだよ」「どっちわかんないよ」となる場合もありますし、「あそこどうなっていたのだっけ?」「課長さんはこれをなんて説明していたっけ?」など疑問がわくことも多いはずです。疑問が湧いたら、もう一度、現場に行けばよいはずです。帰って来てからまた議論するとまた疑問が湧いてきます。そうしたらまた現場に行きましょう。何度現場に行っても新しい発見があるはずです。現場百回です。
実際は、好奇心あふれる若者たちですから、「現場<>ブレインストーミング」を数回繰り返すだけで、「これやりたい」「あれにしたい」の気持ちが固まってきます。「百回」はしなくて済むはずです。
12. 目的設定の注意点
おもしろい発想は歓迎ですが、実際のところ、おもしろすぎる発想というものがあります。大人は笑ってしまうことでも、本人は真剣ですから、笑えないことが多々あります。
おもしろすぎる発想についての注意
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(1)おもしろい過ぎる発想
学生: センセー、目的を決めました。人生一発逆転で、月に行ってきます。
発表会で、体験報告します。優勝まちがいないでしょう~っ。
先生: 発表会までに月に行ってこれるのか?
学生: え~っ? だって、目的はなんでもいいって言ったじゃん。センセ。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
↓↓↓教えなければならないこと↓↓↓
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(2)必要性と可能性の両方がないと成果は出ない(必然にはならない)。
必要性+可能性⇒必然性
これを、「必然性の法則」という。
目的=欲求であり必要性。可能性はオマケではない(タダではついてこない)。
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★「可能性」は次のステージ「情報収集」と、その次の「戦略戦術の作成(デザインシンキング)」で
精査する。(次回以降に発表の予定)
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社会経験のある大人ならば、物事に取り掛かる前に「可能性」を吟味しなければならないことは当たり前のことですが、若いというのは無鉄砲ということでもあるので、面白すぎてしまうことがよくあります。
「僕はプロのゲーマーになります(大会に出たことあるのかな)」「マイクロソフトでAI技術者になります(採用されるような勉強しているかな)」「ブロックチェーンで億万長者になります(億万長者になったら、先生にビールおごってね)」の類は、良くあります。元気がよくてうれしくなりますが、大人は少しばかり老婆心を働かせて、可能性を高めるための条件や道筋を示したり本人が気づくようにしてあげる必要があるというわけです。
私は、こんなときに、「必然性の法則」ということを教えることにしています。
「必然性の法則」=「必要性だけでは必然性は生じない。成果を出すためには、可能性もそろえないといけない」
「可能性」については、次の機会に述べることにします。
13. 目的の階層構造(バリューダイヤグラム)
目的設定の際に、留意しなければならないことの一つとして、「目的には階層構造がある」ことを教えておくことが必要です。
このスライドでは、太郎が花子をパスタの店(サイゼリヤなど)に誘う例で、その階層構造を説明しています。
目的の階層構造(バリューダイヤグラム)の例
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説明事例
『太郎は花子をパスタのお店に誘った。
「パスタのお店に誘う」は目前の目的(q1)です。
お店についてみたら、臨時休業の張り紙がしてあった。
・・・
しまった~っ、と太郎はあきらめて、花子とバイバイす
るでしょうか。
太郎には、「花子とデートをする」というより上位の目
的(下心? p1)がありますよね。
「花子とデートをする」という大事な上位の目的(p1)
を達成するためには、別の下位の目的(q2)を見つけ
られないでしょうか?
あわてないで、周りを見るとサイゼリアの隣には焼肉屋
さんが開いていますよ。予算が少々オーバーしますが、
デートをするという大切な上位目的(p1)のためには、
下位の目的(サイゼリア、q1)を別の目的(牛角、q2)
に変更するのは止むをえないですね。
当面の目的を設定する際には、目前の(下位の)目的の
ほかに、必ず上位の目的を考えでおくことが挫折しない
ための秘訣です。』
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私の経験知だけのことですが、特にこれを教えておかなければいけないのは男の子です。女の子は相対的に見て比較的柔軟に物事に対処しますが、男の子は一途というか「思い込んだら百年目」(「ここで会ったが百年目」のもじり、江戸時代からこの用法があるそうです)的なところがあって、一つの目的を見つけるとそれが全部と思い込んでしまう傾向があります。思い込んだ目的がかなわぬことがわかると、そのとたんに挫折して生きる気力も失せてしまう(引きこもりになったりする)ということが起こりがちです。
もちろん女の子でも起こらないわけではありませんから、男女ともに若者には、目的の階層構造を教えて、当面の目的の上位の目的を常に意識しながら行動するように誘導することが大事であると思います。
14. 当面の目的と人類の目的の整合性
上位の目的にはさらにその上の目的があります。
「花子をパスタに誘う」の上位の目的=>「花子とデートする」
「花子とデートする」の上位の目的=>「花子と結婚する」
「花子と結婚する」の上位の目的=>「家庭を作って、子育てをする」
・・・
「家庭を作って、子育てをする」の上位の目的=>「子孫繁栄、人類発展を願う?」
のように、いくらでも上位目的が考えられるのですが、その最上位には、人類究極の目的が存在しているに違いないと信じられているわけです。誰も個別の事例では証明しませんが、恐らくそうだろうと何となく確信していらっしゃる方は多いでしょう。
私もそう思っている一人です。
上には上がある
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(執筆中、続きます)
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(準備中)
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琵琶
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