Linux KernelのLTSサポート期間が6年に延長!Androidへの影響は…… |
アメリカ・サンフランシスコにて2017年9月25日(月)から29日(金)に開催されたLinuxとそのエコシステムに関連したイベント「Linaro Connect San Francisco 2017(SFO17)」でLinux KernelのLTSサポート期間を2年から6年に延長することが明らかにされました。
これはイベントの9月28日(木)に行われた基調講演にてGoogleのIliyan Malchev氏が発表し、Androidでも利用されているLinuxの核を成すLinux Kernelに関する内容となります。
今回はこのLTSサポート期間が延長されたことによるAndroidへの影響、具体的にAndroidを利用するユーザーはどんな恩恵を受けられるのかを簡潔にまとめてみたいと思います。
【そもそもLTSとは何か】
本題に入る前に「LTS」とは一体何なのでしょうか。これは「Long Term Service」の略称で、長期サポートのことを指します。
本来、ソフトウェアのバージョンアップが行われてしばらく経つと、以前のバージョンのサポート期間が終了するのはご承知の通りかと思われます。
例えば、Linux Kernelは70日間隔でバージョンアップが行われます。そのため、いくつかバージョンアップが行われると、古いバージョンはサポートされなくなります。
このような仕様はハードウェアベンダーにとっては非常に大きな問題で、製品を発売してもすぐにサポート期間が切れてしまうので、バージョンアップを頻繁に行う必要があります。
バージョンアップを頻繁に行うと、せっかく製品販売で得られた利益があったとしても、バージョンアップにかかる経費が膨れ上がり、得られる利益が少なくなってしまいます。
そんな事態を避けるために、前述したLTS版というものが出てきます。通常と比べて長い間サポートされるため、頻繁にバージョンアップを行う必要がなくなります。
【Linux KernelのLTS期間は2年しかなかった】
これまでLinux Kernel 4.4未満のLTS期間は2年しか設定されていませんでした。一般ユーザーからすると、なぜ「2年しか」と表現するのかいまいちピンときませんよね。
2年間もサポートされるのであれば、何の問題もないのでは?と感じるかも知れませんが、通常、Android搭載製品の開発を開始してから、製品発売に至るまで少なくとも1年程度はかかってしまいます。
そうなると、ユーザーの手元に製品が届いた時点で、すでにLinux Kernelのサポート期間は1年しか残っていません。仮にAndroid搭載製品を利用する期間を、各携帯電話会社の料金プランの基本利用年数2年とすると、サポート期間が1年足りなくなってしまいます。
そのため、サポート期間が切れた後にLinux Kernelで深刻な脆弱性が発見された場合でもそのバージョン向けのセキュリティーアップデートは提供されなくなります。Linux Kernelのバージョンアップには、非常に大きな工数がかかるため、例え体力のあるメーカーでもなかなか動きづらいのが現状です。
【Androidエコシステムの問題解決に一石を投じられるか】
そんな中、今回、Linux KernelのLTSサポート期間が6年に伸びるということはメーカーにとって非常にうれしいニュースとなるわけです。新しい製品の開発を始めて1年後に販売開始したとしても、まだLinux Kernelのサポート期間は5年も残っています。なので、LTSサポート期間が2年だった頃と比べ、アップデートが提供しやすくなるわけです。
Androidエコシステムは、バージョンアップが精力的に提供されないという非常に大きな問題を抱えていますが、今回のLinux KernelのLTSサポート期間延長を受けて、問題解決の第1歩となるか非常に気になるところです。
ソフトウェア提供側がLTSサポート期間を延ばしたとしてもメーカーが改善に向けて動かなければ、どう頑張っても解決には至りませんからね……。とはいえ、そこはメーカーのがんばりに期待したいものです。
記事執筆:YUKITO KATO
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・Keynote: Iliyan Malchev (Google) - SFO17-400K1 - Linaro Connect
・Android users rejoice! Linux kernel LTS releases are now good for 6 years | Ars Technica
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