「辺野古工事再開」新基地建設強行を阻止する新たな闘いが始まった!
- 2016/12/29
- 02:14
Ryuukyuuheiwaより:
県は腰砕けせずに「埋め立て撤回」を早急に!
12月29日の琉球新報紙面
12月29日 琉球新報
辺野古新基地 沖縄県、埋め立て撤回視野 法的根拠積み上げ
翁長雄志知事は最高裁判決を受けて自ら行った名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを取り消したことに関連し、辺野古新基地建設を阻止する次の手として、承認の「撤回」に踏み切ることを視野に、その法的根拠を積み上げる作業に着手した。県は最初の段階として28日、沖縄防衛局に対し、工事に着手する前に実施設計や環境対策に関する事前協議を求める意見書を送付した。
防衛局は昨年10月、協議は終了したとの認識を一方的に県に通告している。防衛局が要求に応じず本格工事に踏み切った場合、県側は「意見書」から段階を高め、「行政処分」を知事名で出す方針。
「取り消し」処分は埋め立て承認を審査した段階にさかのぼり、違法な瑕疵(かし)があれば承認の効力を失わせるものだが、承認「撤回」は承認の事後に生じた事由に基づき行うもの。
事前協議の実施は、前知事が辺野古埋め立てを承認した際に県が条件とした「留意事項」に盛り込まれている。
また翁長知事は承認取り消しを巡る県敗訴の判決を受けて、知事公室、土木建築部、農林水産部、環境部などの関係部局に対し、工事阻止のために行使できる権限をゼロベースで洗い出すことを指示した。
これまでの検討作業で県は承認「撤回」処分に加え、工事の進展に大きな影響を与え得る3権限、影響を与え得る6権限を特定している。
一方、最高裁での敗訴を踏まえ、他にも工事に影響する知事権限がないか再検証する。年明けから洗い出し作業を本格化する。
県幹部によると、承認撤回を知事が最終判断する時期は未定。ただ撤回は法的根拠に基づく必要があることから、その積み上げ作業には着手した。今後、事前協議以外の根拠も洗い出しをする。弁護士とも協議し、それらが撤回の根拠となり得るか検討する。
防衛局は県との事前協議対象となる工事の「実施設計」に関して、海底ボーリング(掘削)調査の中途段階の結果を基に、一部先行的に行う護岸工事の計画を県に提出している。その後、同計画に関する質疑の往復を経て、県に協議の終了を通告した。
一方、県側は掘削調査を全て終えなければ工事の実施設計は適正に作成できないとして、全ての調査結果を踏まえた「成案」を基に県と事前協議するよう、28日の文書で求めた。
12月30日 琉球新報
社説:知事権限封じ検討 愚策やめて辺野古断念せよ
名護市辺野古の新基地建設で、政府が翁長雄志知事の承認が必要となる埋め立て計画の変更申請を避けることを検討している。知事権限での工事中断回避が目的だ。果たしてそんなことが可能なのか。
大型の埋め立て工事の場合、複数回の変更申請をするのが通例だ。防衛省は米軍岩国基地の滑走路沖合移設事業で8回の変更申請を山口県に提出した。中部国際空港(愛知)の埋め立て事業の変更申請も14件だ。
防衛省の地方協力局長は2014年の衆院安全保障委員会で辺野古の埋め立てについて「工事促進に資する工法への変更、環境保全の観点などから変更を申請することはあり得る」と述べている。ところが政府は知事の権限を封じるため、変更申請をしない方針へと舵(かじ)を切った。「なりふり構わぬ」とはこういう姿勢を指す。
ちょっと待ってほしい。沖縄防衛局は2件の作業方針を決めずに棚上げしているではないか。美謝川の水路と埋め立て土砂の運搬方法だ。美謝川は埋め立てで河口部をふさぐため、地下水路を整備する必要がある。当初の申請はキャンプ・シュワブの外に流れる切り替え案を示していた。これだと名護市との協議が必要となる。市は移設に反対しており、協議がまとまる見通しは立たない。
このため防衛局は市の権限の及ばないシュワブ内を通る水路に見直し、承認を許可した仲井真前県政に変更申請を出した。しかし水路の長さは当初計画の4倍以上に当たる1022メートルまで延び、仲井真県政も難色を示したため、防衛局は申請を取り下げた。
土砂運搬も当初はベルトコンベヤーを設置して実施するはずだった。辺野古ダムをまたぐため、市との協議が必要となり、市の同意が必要ない国道329号の上に工事橋を設置する方法に変えた。これも県に変更申請を出したものの、理解を得られず取り下げた。
どちらを選んでも2件の作業は市もしくは県の同意が必要となる。それとも美謝川は河口部をふさいだまま放置するのか。北部訓練場のヘリパッド建設のように、ヘリコプターで土砂を空輸するとでもいうのか。
政府関係者は「いくらかかってもそのまま造る」と言っている。愚策としか言いようがない。すでに工事は破綻している。往生際の悪いことなどせず、辺野古移設そのものを断念すべきだ。
「新たな闘いのスタート」12月27日早朝から200人が座り込み
12月27日 沖縄タイムス
「新たな闘いのスタート」 辺野古で200人座り込み 工事再開を警戒
米軍キャンプ・シュワブゲート前で工事再開を警戒する市民ら=27日午前6時52分、名護市辺野古
沖縄県の翁長雄志知事が辺野古埋め立て承認取り消し処分を取り消してから一夜明けた27日早朝、市民ら約200人が工事再開を警戒して米軍キャンプ・シュワブの工事車両用ゲート前で座り込みを始めた。
沖縄平和運動センターの大城悟事務局長は「止まっていた新基地建設がいよいよ強行される。新たな闘いのスタートだ」と強調。県統一連の中村司代表幹事は「私たちはここで座り込み、1年2カ月工事をストップさせた。これからも止めよう」と呼び掛けた。
海上にもカヌー12隻が出て、抗議した。午前9時半現在、工事資材の搬入などは確認されていない。
12月27日の琉球新報号外
12月27日の琉球新報紙面
12月28日 琉球新報
社説:辺野古工事再開 法治国家否定する暴挙だ 政府の虚勢に民意揺るがず
新基地建設に反対する県民の願いが年の瀬に踏みにじられた。年内工事再開の事実を突き付け、建設阻止を諦めさせる狙いが政府にあるならば大きな誤りだ。
沖縄防衛局は米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古への新基地建設に向け、工事を約10カ月ぶりに再開した。キャンプ・シュワブ内に保管しているフロート(浮具)を海上に設置する作業を進めた。
多くの県民はこの暴挙を政府の虚勢だと受け止めているはずだ。新基地建設ノーの強固な意思は、政府の強行策によって揺らぐことはない。むしろ県民の怒りの火に油を注ぐ結果を招くものだ。
政権の専横が露骨に
菅義偉官房長官との会談で翁長雄志知事は「事前協議を含め、話し合いを続けてほしい」と要請した。菅官房長官は「工事再開に向けて必要な準備を行っている。わが国は法治国家で、確定判決の趣旨に従って工事を進める」と拒否した。
まさしく問答無用であり、およそ民主国家が取るべき態度ではない。ここに安倍政権の専横が露骨に表れている。翁長知事が「強硬的にならざるを得ない」と対抗措置を示唆したのも当然だ。
菅官房長官は「法治国家」を説き、工事再開の根拠に最高裁判決を挙げた。しかし、沖縄を相手に法治国家を逸脱する行為を重ねてきたのは、ほかならぬ政府の方だ。
海上保安官による過剰警備に象徴されるように、選挙などで幾度も示された新基地拒否の民意と、それに基づく建設反対運動を政府は力ずくで抑え付けた。沖縄の自己決定権を否定するものであり、法の下の平等、言論の自由を規定する憲法の精神にも背くものだ。
そもそも翁長知事による名護市辺野古埋め立て承認取り消しを違法とする判断を下した最高裁判決も、新基地建設を強行する政府の主張を無批判に踏襲するものだ。
弁論を開かず、環境破壊や基地負担増の可能性を十分に吟味しないまま「辺野古新基地の面積は普天間飛行場の面積より縮小する」として建設は妥当との結論を導いた。まさに国策追従判決だ。
政府と最高裁が結託して新基地建設を推し進めているかのような態度は、まさしく法治国家の瓦解(がかい)を自ら表明するものだ。菅官房長官が、工事再開前の協議を求めた翁長知事の要請を拒否したのも、その一端でしかない。
法治国家を破壊するような政権の屋台骨を支える官房長官が工事再開にあたって法治国家を掲げる姿は、もはや茶番だ。沖縄以外でも同じような理不尽な態度を取れるのか、菅氏に問いたい。
早急に対抗措置整えよ
工事再開は、翁長知事が最高裁判決を受け、埋め立て承認取り消し処分の取り消しを沖縄防衛局に通知したことに基づく。裁判の過程で翁長知事は「確定判決には従う」と明言していた。沖縄側は法治国家の精神を守ったと言える。
判決に従うことで行政機関の信頼性を担保し、新基地建設阻止に向けた長期戦に備えるとの判断が働いた。取り消し処分をそのまま維持した場合、政府と司法がさらに強硬姿勢を取る恐れもあった。
今回の県判断に対し、異論があるのも事実だ。「最高裁判決には執行力はない」という指摘である。「県民への裏切り行為だ」という批判もある。県内識者の間でも見解が分かれている。
しかし、今回の取り消し通知によって新基地反対運動に足並みの乱れや分裂が生じることがあってはならない。
そのためにも県は判断に至った経緯を丁寧に説明しながら、政府への対抗措置を早急に整える必要がある。県民の不安を払拭(ふっしょく)してほしい。
県の対抗措置を無効化するため、政府は知事承認が必要となる埋め立て計画の設計概要の変更申請を避けることなどを検討している。それを実行すれば政府自ら無法状態を引き起こすことになる。断じて容認できない。
12月28日 沖縄タイムス
社説:辺野古工事再開]法的権限サヤに収めよ
民意が踏みにじられ、軽んじられ、国策が強行される。住民運動を力で排除し、公金をばらまき、地域をずたずたに分断して。
新基地建設を巡り、翁長雄志知事が「辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消し処分」を取り下げたことを受け、政府は27日、埋め立てに向けた工事を再開した。
行政上、仲井真弘多前知事の「埋め立て承認」が復活したことになるが、民主主義や地方自治の観点から検証すると、この移設計画には依然として問題が多い。
もう一度、辺野古問題の経緯を振り返りたい。
2010年、仲井真氏は「普天間飛行場の県外移設」を公約に掲げ再選を果たした。以降、毎年のように慰霊の日の平和宣言で「一日も早い普天間飛行場の県外移設」を求めた。知事が会長を務める軍転協も、同様に政府に県外移設を要請してきた。
政府・自民党の圧力で、自民党国会議員5人が「県外移設」の公約をかなぐり捨て、仲井真氏が県民への事前説明もほとんどないまま埋め立てを承認したのは、3年前のちょうどこの時期だ。すべての混乱の原因はここにある。
政治家の「裏切り」に県民の怒りが爆発し、その後の県知事選、衆院選、参院選では新基地建設に反対する候補者が当選したのだ。
しかし今やその民意さえお構いなしに、辺野古埋め立てが強行されようとしている。
普天間移設計画は当初の「基地内移設」から「基地の外への新基地建設」に変わり、住民の頭越しに進めないという方針も反故(ほご)にされた。
県が15年に実施した県民意識調査で、米軍基地が沖縄に集中する現状を約7割の人たちが「差別的だと思う」と回答した。
私たちが「差別」という重い言葉で本土の人たちに問うのは、基地負担の不均衡の解消である。自分たちが受け入れられないものを未来にわたって沖縄に押し付けようというのは公平・公正・正義に反する。
沖縄と本土との埋めがたい溝が、沖縄に基地を集中させる見返りに金をばらまくという「補償型政治」によってもたらされていることも忘れてはならない。
米軍再編交付金は、米軍再編への協力度合いに応じて支払われるという究極の「アメとムチ」政策である。
埋め立て予定地に近い「久辺3区」に直接補助金を出すのもなりふり構わないやり方だ。
工事再開を前に翁長知事は菅義偉官房長官を訪ね「事前協議」を求めた。しかし話し合いは物別れに終わった。
戦後、これだけ基地を押し付けておきながら、なぜこれから先も沖縄だけが負担を強いられなければならないのか。どう考えても理不尽である。
沖縄の人々が望んでいるのは、憲法で保障された普通の生活だ。基地の過重負担を解消してほしいというのは、決して過大な要求ではない。
政府は埋め立ての法的権限をサヤに収め、対話による解決を図るべきである。
県は腰砕けせずに「埋め立て撤回」を早急に!
12月29日の琉球新報紙面
12月29日 琉球新報
辺野古新基地 沖縄県、埋め立て撤回視野 法的根拠積み上げ
翁長雄志知事は最高裁判決を受けて自ら行った名護市辺野古の埋め立て承認取り消しを取り消したことに関連し、辺野古新基地建設を阻止する次の手として、承認の「撤回」に踏み切ることを視野に、その法的根拠を積み上げる作業に着手した。県は最初の段階として28日、沖縄防衛局に対し、工事に着手する前に実施設計や環境対策に関する事前協議を求める意見書を送付した。
防衛局は昨年10月、協議は終了したとの認識を一方的に県に通告している。防衛局が要求に応じず本格工事に踏み切った場合、県側は「意見書」から段階を高め、「行政処分」を知事名で出す方針。
「取り消し」処分は埋め立て承認を審査した段階にさかのぼり、違法な瑕疵(かし)があれば承認の効力を失わせるものだが、承認「撤回」は承認の事後に生じた事由に基づき行うもの。
事前協議の実施は、前知事が辺野古埋め立てを承認した際に県が条件とした「留意事項」に盛り込まれている。
また翁長知事は承認取り消しを巡る県敗訴の判決を受けて、知事公室、土木建築部、農林水産部、環境部などの関係部局に対し、工事阻止のために行使できる権限をゼロベースで洗い出すことを指示した。
これまでの検討作業で県は承認「撤回」処分に加え、工事の進展に大きな影響を与え得る3権限、影響を与え得る6権限を特定している。
一方、最高裁での敗訴を踏まえ、他にも工事に影響する知事権限がないか再検証する。年明けから洗い出し作業を本格化する。
県幹部によると、承認撤回を知事が最終判断する時期は未定。ただ撤回は法的根拠に基づく必要があることから、その積み上げ作業には着手した。今後、事前協議以外の根拠も洗い出しをする。弁護士とも協議し、それらが撤回の根拠となり得るか検討する。
防衛局は県との事前協議対象となる工事の「実施設計」に関して、海底ボーリング(掘削)調査の中途段階の結果を基に、一部先行的に行う護岸工事の計画を県に提出している。その後、同計画に関する質疑の往復を経て、県に協議の終了を通告した。
一方、県側は掘削調査を全て終えなければ工事の実施設計は適正に作成できないとして、全ての調査結果を踏まえた「成案」を基に県と事前協議するよう、28日の文書で求めた。
12月30日 琉球新報
社説:知事権限封じ検討 愚策やめて辺野古断念せよ
名護市辺野古の新基地建設で、政府が翁長雄志知事の承認が必要となる埋め立て計画の変更申請を避けることを検討している。知事権限での工事中断回避が目的だ。果たしてそんなことが可能なのか。
大型の埋め立て工事の場合、複数回の変更申請をするのが通例だ。防衛省は米軍岩国基地の滑走路沖合移設事業で8回の変更申請を山口県に提出した。中部国際空港(愛知)の埋め立て事業の変更申請も14件だ。
防衛省の地方協力局長は2014年の衆院安全保障委員会で辺野古の埋め立てについて「工事促進に資する工法への変更、環境保全の観点などから変更を申請することはあり得る」と述べている。ところが政府は知事の権限を封じるため、変更申請をしない方針へと舵(かじ)を切った。「なりふり構わぬ」とはこういう姿勢を指す。
ちょっと待ってほしい。沖縄防衛局は2件の作業方針を決めずに棚上げしているではないか。美謝川の水路と埋め立て土砂の運搬方法だ。美謝川は埋め立てで河口部をふさぐため、地下水路を整備する必要がある。当初の申請はキャンプ・シュワブの外に流れる切り替え案を示していた。これだと名護市との協議が必要となる。市は移設に反対しており、協議がまとまる見通しは立たない。
このため防衛局は市の権限の及ばないシュワブ内を通る水路に見直し、承認を許可した仲井真前県政に変更申請を出した。しかし水路の長さは当初計画の4倍以上に当たる1022メートルまで延び、仲井真県政も難色を示したため、防衛局は申請を取り下げた。
土砂運搬も当初はベルトコンベヤーを設置して実施するはずだった。辺野古ダムをまたぐため、市との協議が必要となり、市の同意が必要ない国道329号の上に工事橋を設置する方法に変えた。これも県に変更申請を出したものの、理解を得られず取り下げた。
どちらを選んでも2件の作業は市もしくは県の同意が必要となる。それとも美謝川は河口部をふさいだまま放置するのか。北部訓練場のヘリパッド建設のように、ヘリコプターで土砂を空輸するとでもいうのか。
政府関係者は「いくらかかってもそのまま造る」と言っている。愚策としか言いようがない。すでに工事は破綻している。往生際の悪いことなどせず、辺野古移設そのものを断念すべきだ。
「新たな闘いのスタート」12月27日早朝から200人が座り込み
12月27日 沖縄タイムス
「新たな闘いのスタート」 辺野古で200人座り込み 工事再開を警戒
米軍キャンプ・シュワブゲート前で工事再開を警戒する市民ら=27日午前6時52分、名護市辺野古
沖縄県の翁長雄志知事が辺野古埋め立て承認取り消し処分を取り消してから一夜明けた27日早朝、市民ら約200人が工事再開を警戒して米軍キャンプ・シュワブの工事車両用ゲート前で座り込みを始めた。
沖縄平和運動センターの大城悟事務局長は「止まっていた新基地建設がいよいよ強行される。新たな闘いのスタートだ」と強調。県統一連の中村司代表幹事は「私たちはここで座り込み、1年2カ月工事をストップさせた。これからも止めよう」と呼び掛けた。
海上にもカヌー12隻が出て、抗議した。午前9時半現在、工事資材の搬入などは確認されていない。
12月27日の琉球新報号外
12月27日の琉球新報紙面
12月28日 琉球新報
社説:辺野古工事再開 法治国家否定する暴挙だ 政府の虚勢に民意揺るがず
新基地建設に反対する県民の願いが年の瀬に踏みにじられた。年内工事再開の事実を突き付け、建設阻止を諦めさせる狙いが政府にあるならば大きな誤りだ。
沖縄防衛局は米軍普天間飛行場返還に伴う名護市辺野古への新基地建設に向け、工事を約10カ月ぶりに再開した。キャンプ・シュワブ内に保管しているフロート(浮具)を海上に設置する作業を進めた。
多くの県民はこの暴挙を政府の虚勢だと受け止めているはずだ。新基地建設ノーの強固な意思は、政府の強行策によって揺らぐことはない。むしろ県民の怒りの火に油を注ぐ結果を招くものだ。
政権の専横が露骨に
菅義偉官房長官との会談で翁長雄志知事は「事前協議を含め、話し合いを続けてほしい」と要請した。菅官房長官は「工事再開に向けて必要な準備を行っている。わが国は法治国家で、確定判決の趣旨に従って工事を進める」と拒否した。
まさしく問答無用であり、およそ民主国家が取るべき態度ではない。ここに安倍政権の専横が露骨に表れている。翁長知事が「強硬的にならざるを得ない」と対抗措置を示唆したのも当然だ。
菅官房長官は「法治国家」を説き、工事再開の根拠に最高裁判決を挙げた。しかし、沖縄を相手に法治国家を逸脱する行為を重ねてきたのは、ほかならぬ政府の方だ。
海上保安官による過剰警備に象徴されるように、選挙などで幾度も示された新基地拒否の民意と、それに基づく建設反対運動を政府は力ずくで抑え付けた。沖縄の自己決定権を否定するものであり、法の下の平等、言論の自由を規定する憲法の精神にも背くものだ。
そもそも翁長知事による名護市辺野古埋め立て承認取り消しを違法とする判断を下した最高裁判決も、新基地建設を強行する政府の主張を無批判に踏襲するものだ。
弁論を開かず、環境破壊や基地負担増の可能性を十分に吟味しないまま「辺野古新基地の面積は普天間飛行場の面積より縮小する」として建設は妥当との結論を導いた。まさに国策追従判決だ。
政府と最高裁が結託して新基地建設を推し進めているかのような態度は、まさしく法治国家の瓦解(がかい)を自ら表明するものだ。菅官房長官が、工事再開前の協議を求めた翁長知事の要請を拒否したのも、その一端でしかない。
法治国家を破壊するような政権の屋台骨を支える官房長官が工事再開にあたって法治国家を掲げる姿は、もはや茶番だ。沖縄以外でも同じような理不尽な態度を取れるのか、菅氏に問いたい。
早急に対抗措置整えよ
工事再開は、翁長知事が最高裁判決を受け、埋め立て承認取り消し処分の取り消しを沖縄防衛局に通知したことに基づく。裁判の過程で翁長知事は「確定判決には従う」と明言していた。沖縄側は法治国家の精神を守ったと言える。
判決に従うことで行政機関の信頼性を担保し、新基地建設阻止に向けた長期戦に備えるとの判断が働いた。取り消し処分をそのまま維持した場合、政府と司法がさらに強硬姿勢を取る恐れもあった。
今回の県判断に対し、異論があるのも事実だ。「最高裁判決には執行力はない」という指摘である。「県民への裏切り行為だ」という批判もある。県内識者の間でも見解が分かれている。
しかし、今回の取り消し通知によって新基地反対運動に足並みの乱れや分裂が生じることがあってはならない。
そのためにも県は判断に至った経緯を丁寧に説明しながら、政府への対抗措置を早急に整える必要がある。県民の不安を払拭(ふっしょく)してほしい。
県の対抗措置を無効化するため、政府は知事承認が必要となる埋め立て計画の設計概要の変更申請を避けることなどを検討している。それを実行すれば政府自ら無法状態を引き起こすことになる。断じて容認できない。
12月28日 沖縄タイムス
社説:辺野古工事再開]法的権限サヤに収めよ
民意が踏みにじられ、軽んじられ、国策が強行される。住民運動を力で排除し、公金をばらまき、地域をずたずたに分断して。
新基地建設を巡り、翁長雄志知事が「辺野古沿岸部の埋め立て承認取り消し処分」を取り下げたことを受け、政府は27日、埋め立てに向けた工事を再開した。
行政上、仲井真弘多前知事の「埋め立て承認」が復活したことになるが、民主主義や地方自治の観点から検証すると、この移設計画には依然として問題が多い。
もう一度、辺野古問題の経緯を振り返りたい。
2010年、仲井真氏は「普天間飛行場の県外移設」を公約に掲げ再選を果たした。以降、毎年のように慰霊の日の平和宣言で「一日も早い普天間飛行場の県外移設」を求めた。知事が会長を務める軍転協も、同様に政府に県外移設を要請してきた。
政府・自民党の圧力で、自民党国会議員5人が「県外移設」の公約をかなぐり捨て、仲井真氏が県民への事前説明もほとんどないまま埋め立てを承認したのは、3年前のちょうどこの時期だ。すべての混乱の原因はここにある。
政治家の「裏切り」に県民の怒りが爆発し、その後の県知事選、衆院選、参院選では新基地建設に反対する候補者が当選したのだ。
しかし今やその民意さえお構いなしに、辺野古埋め立てが強行されようとしている。
普天間移設計画は当初の「基地内移設」から「基地の外への新基地建設」に変わり、住民の頭越しに進めないという方針も反故(ほご)にされた。
県が15年に実施した県民意識調査で、米軍基地が沖縄に集中する現状を約7割の人たちが「差別的だと思う」と回答した。
私たちが「差別」という重い言葉で本土の人たちに問うのは、基地負担の不均衡の解消である。自分たちが受け入れられないものを未来にわたって沖縄に押し付けようというのは公平・公正・正義に反する。
沖縄と本土との埋めがたい溝が、沖縄に基地を集中させる見返りに金をばらまくという「補償型政治」によってもたらされていることも忘れてはならない。
米軍再編交付金は、米軍再編への協力度合いに応じて支払われるという究極の「アメとムチ」政策である。
埋め立て予定地に近い「久辺3区」に直接補助金を出すのもなりふり構わないやり方だ。
工事再開を前に翁長知事は菅義偉官房長官を訪ね「事前協議」を求めた。しかし話し合いは物別れに終わった。
戦後、これだけ基地を押し付けておきながら、なぜこれから先も沖縄だけが負担を強いられなければならないのか。どう考えても理不尽である。
沖縄の人々が望んでいるのは、憲法で保障された普通の生活だ。基地の過重負担を解消してほしいというのは、決して過大な要求ではない。
政府は埋め立ての法的権限をサヤに収め、対話による解決を図るべきである。