the telephones 「メジャーデビュー10周年、まだ行ったことのない都道府県に行くツアー(決) 〜初上陸!!!DISCOさが錦〜」 @佐賀RAG-G 2/9
- 2019/02/10
- 17:39
2014年12月のTOKYO DOME CITY HALLでのワンマンにて活動休止を宣言し、翌年のさいたまスーパーアリーナでのLast Partyにて活動休止。
しかし昨年5月のVIVA LA ROCKにて突如活動再開し、8月にはかつてのおなじみライブであったUKFCにも出演。それは単発的な動きかと思っていたのだが、メジャーデビューから10年を迎えた今年、満を持してツアーの開催を発表。かつての活動時にバンドが後悔していたという行ったことのない都道府県に行くという名目のツアーであり、初日は佐賀県のRAG-Gというキャパ200人のライブハウス。メンバーやスタッフ以外は誰もどんな曲をやる、どんなライブになるのかは全くわからない、正真正銘the telephonesのツアーである。
石毛輝はUKFCでのツアー発表時に会場が地方ばかり(ツアータイトルの名目的に当たり前なのだが)なのに対して、
「土日だし、みんなもう歳取って働いてるから遠征するお金もあるでしょ?(笑)」
と都心から遠征することに対して肯定的な言葉を発してくれていたが、基本的に自分は「ツアーの地方公演はその土地に住む人たちのためのもの」だと思っているので、なかなかツアーで遠征はしないのだが(基本的に先行予約は申し込まないし一般発売直後に売り切れるやつは取ろうとしない)、一般発売の後でチケットがまだ残っていたので記念すべきツアー初日に意を決して参加することに。(結果的にソールドアウトした)
テレビの取材などもライブ前の先行物販から来ている中、会場のRAG-Gは水戸のclub sonicのような造りで、やはりキャパ200という至近距離。ステージにはミラーボールが飾られており、懐かしのサッカーTシャツを着た人たちがたくさんいるのが本当にthe telephonesのライブなのだなぁと実感する。
18時を少し過ぎると会場がいきなり暗転し、場内が大きな歓声に包まれた瞬間「happiness,happiness,happiness」のSEが鳴り、観客がリズムに合わせて手拍子。もうこの瞬間だけで本当にthe telephonesのワンマンが見れるんだ、と感慨深くなってしまう。
おなじみのアフロのカツラを被ったメンバーはそれぞれが違うバンドで活動するようになっているけれど、こうして4人が揃ってステージに立つとビジュアルは休止前と全く変わらないように感じるというかthe telephonesの4人だなという当たり前のことを思ってしまう。活動中にモヒカンなど度々大胆な髪型のイメチェンを強いられてきたドラムの松本誠治は髪が長くなっており、ヒゲを蓄えてメガネをかけ、さらにはヘッドホンを着用しているというあたりが見た目の変化を最も感じるポイントだったかもしれない。
「佐賀ー!今日はお互いにとって特別な日になるから、思いっきり楽しもうぜー!」
と石毛が叫ぶと「D.A.N.C.E. to the telephones!!!」からスタートし、ノブは早くもベースを弾く長島涼平の目の前で踊りまくる。かつておなじみだったこの光景もこうしてまた見れるのは実に感慨深い。涼平が先導する「D.A.N.C.E.」の人文字はメンバーがちょっと慣れない感じがしたのは久しぶりだからかもしれないが、初めて来る土地とはいえ観客はしっかり覚えている。
というかやはりかつてのTシャツとかを身につけている、これまでにthe telephonesのライブに行っていた人たちばかりだから、みんなtelephonesの曲が今でも完全に脳内や遺伝子レベルで刻まれている。だからライブで聴くのは久しぶりなんだけど全然懐かしいとかいう感じではなくてこれまでの延長線上という感じ。
「I Hate DISCOOOOOOO!!!」「HABANERO」というライブ定番曲が続いただけにより一層そんな感覚になる。
lovefilmでは敢えて封印していたハイトーンボイスはYap!!!を始動したことによって解禁されているが、the telephonesとしてのハイトーンボイスを轟かせた石毛が観客の
「おかえりー!」
という歓声に対して、
「ただいま、だけど初めまして。ようやく佐賀に来れました」
と挨拶。
「今日は思いっきり楽しもうぜー!」
と叫ぶも、MCでは緊張している様子を涼平にはしっかり悟られていた。
活動休止前にリリースされた、当時のラストアルバムにして現状の最新アルバムになる「Bye Bye Hello」の収録曲「Jesus」はリリース後にツアーをやっていないだけに実質初披露である。やはりファンとしてはライブで聴いたことのない曲を聴きたいというのもあるが、そうするとほかの曲が減ってしまうわけであって、やはりこのツアー以外にリリースから4年越しの「Bye Bye Hello」のツアーをやっていただけないものだろうか。
「ディスコ!」と叫ぶことによって楽しさがさらに加速していくというthe telephonesのライブでしかあり得ない空気に満たされる「A.B.C.DISCO」、打ち込みのサウンドが流れるとノブが客席の端にある椅子の上を渡り歩く「It's Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)」のアウトロの涼平と誠治のビートが徐々にイントロに変化するという繋ぎ方を見せた「electric girl」と、こうしたライブだからこそのアレンジを練ってきているあたりはメンバーたちが入念なリハーサルを重ねてきたことをうかがわせる。それぞれがthe telephones休止後に始めたバンドの活動で忙しい中でもこうしたアレンジをできるようになっているというのが、the telephonesがこのライブで終わりなんじゃなくてこれからも進んでいくバンドになったということを実感させてまた胸が熱くなってしまう。
the telephonesと言えば「DISCO」なわけで、タイトルに「DISCO」がつく名曲であり日本のロックシーンのアンセムを数々生み出してきたバンドであるために久しぶりのツアーとなるとそうした曲を連発するという選択肢もあったと思われるが、そもそもthe telephonesは石毛を筆頭に日本だけでなく世界中の音楽を聴きまくっているメンバーたちによるミュージックラバー集団であり、それを自分たちのバンドの音楽に取り入れてきたバンドである。
なのでアッパーなディスコパンク(この言葉も近年すっかり使うことがなくなってしまった)だけでなく、幅広い音楽性を今までにリリースしてきたアルバムの中で見せてきたわけだが、ワンマンはそうした面を見せるような曲をこれまでにも演奏してきただけに、今回も「Perfect World」(ライブで聴いたのはいつ以来だろうか)、石毛がハンドマイクで歌う、タイトルとおりに幻想的なサウンドの「My Final Fantasy」と、すでに数々出演が決定しているフェスではまず演奏されないであろう曲を聴くことができるのは嬉しい限りだし、こうしてツアーに参加することができて本当に良かったと思える。「Perfect World」は「DANCE FLOOR MONSTERS」に収録されている曲なだけに、リリース(=メジャーデビュー)から10周年ということで演奏されたのだと思うけれど。
だってthe telephonesはフェスでやる曲だけが良い曲だったバンドでは決してなく、こういうワンマンだからこそ聴ける曲が良い曲ばかりのバンドだからである。だからかつては良くも悪くも「フェスバンド」と言われ続けていたが、いつだってフェスよりもワンマンの方が圧倒的に楽しかった。それは去年フェスに2本出演したのを見てからのこの日も一滴の曇りもなくそう言い切れる。
「A.B.C.DISCO」と同時期にリリースされ、それまでのディスコシリーズとは違った新たなポップさを獲得した「kiss me, love me, kiss me」のアウトロの一気にアイリッシュパンクのようになる転調は今でも駆け出したくなるくらいに楽しいが、音源ではなくてこうしてライブという場で聴くと「この曲、あの時あの場所のライブで聴いたな〜」という記憶を思い起こさせる。この曲が収録された「Oh My Telephones!!! e.p.」は「A.B.C.D e.p.」とともに「春のtelephones祭り」と題して恵比寿リキッドルーム2daysでレコ発が行われ、初日は盟友のBIGMAMAが、2日目はその時期にプロデューサーという立場でバンドに関わっていた、石毛の師匠であるナカコーがiLL名義で出てたな〜というように。でもそうした思い出を、the telephonesがこうしてまたツアーをやることにしたおかげでこれからも増やしていくことができる。この日佐賀という地でこのバンドのライブを見れたことだってきっと忘れないはず。
バンドマンにとってツアー先でのMCというのはその地方の名物であったり料理であったりというのをメインのネタにするのが通例なので、この日もメンバーが揃って食べに行った佐賀の名物料理「シシリアンライス」の話をするも、客席からリアクションがほとんどないことにびっくりするメンバーたち。どうやらこの日は佐賀の人よりも福岡から来た人の方がはるかに多かったようで、そりゃあわからないわ、という空気に落ち着く。
しかしバンド1の問題児であるノブは自分たちのことを
「○○○○○○○(バンド名)の○○さんより今日の俺たちの方がカッコいい」(書かないでと言われたので伏せ字対応)
と口走り、石毛から
「お世話になりまくってる先輩になんてことを!(笑)」
と突っ込まれる。逆にノブからしたら仲が良い先輩だからこそ遠慮することなくこうして名前を出せるのだろう。
後半戦は「Keep Your DISCO!!!」から一気にアッパーに振り切れるのだがやはり「ディスコ!」と叫ぶタイミングはもちろん、手拍子のタイミングまでみんな完璧に覚えている。その様子を見ていると、活動休止から復活したんじゃなくて、ただ少しライブをやっていなかっただけというようにすら感じる。ノブはおなじみのキラキラシャツを脱いで上半身裸になっていたが、この真冬であっても灼熱の空間になってしまうのもかつてのライブハウスでのライブと全く変わらない。
観客が曲に合わせてアルファベットを叫ぶ「A A U U O O O」、上がりまくったボルテージに我慢できずについにダイバーが出現した「DaDaDa」と前のめりに突っ走ると、ワンマンということでドラムの誠治もMCを担当。
1人先乗りすることになった涼平(石毛とマネージャーが車で到着するのが遅れたため)、当日に新幹線で佐賀まで来た誠治とそれぞれがバラバラの方法でやってきただけに4人揃ったときの感慨もひとしおだったことを告げるも、「金髪まじりの長い髪にメガネにヒゲ」という出で立ちになったことによって涼平に
「ダイスケはんですか?」
と突っ込まれることに。
ノブ「ダイスケはんっていうかガチファン過ぎてダイスケはんに寄せてる人みたいな感じ(笑)」
涼平「ファンでこれだったらクオリティ高すぎじゃない?(笑)」
と最年長がいじられまくる姿もかつてのメンバーの関係性となんら変わらないが、こうした緩いムードで話ができるのは本人たちも言っていたとおりにワンマンならではだろう。
「Yeah Yeah Yeah」で飛び跳ねさせまくると、「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!」ではノブ自身が踊りまくることによって観客にさらに自由に踊ることを促すのだが、この日入っていたカメラが「Love Music」とスペシャによる密着であることから「L」と「S」という番組の頭文字を手で作りながら踊りまくるノブであった。
そして石毛による
「We are!?」
のコールの後に
「DISCO!!!」
の大合唱が轟いてから演奏された「Monkey Discooooooo」では石毛が歌詞を
「SAGA people」
とこの土地バージョンに変えて歌う。
やはりメンバーも歳を重ねているし、石毛がツアーを発表した時に言っていたように観客も歳を重ねている。でもこのバンドの演奏と客席の激しさからはそれを全く感じさせないし、the telephonesのライブなら普段は出ないような高音コーラスだっていくらでも出るし、いくらでも飛び跳ねていられるような無敵感を今でも感じさせてくれる。きっとその感覚はこの先メンバーと我々が40代や50代になっても変わらないんじゃないかと思う。
そしてあまりにあっという間の最後の曲はこの日ここに集まって、the telephonesがまた始まった瞬間を見届けてくれた人たちへの愛と感謝を示す「Love & DISCO」。
the telephones最大のキラーチューンにして2000年代後半最高のライブアンセムだったこの曲も、活動休止を宣言したTOKYO DOME CITY HALLではみんな現実を受け入れることができなくて踊ることができなかった。その後の武道館や各地でのフェス、さらには「Last Party」でも楽しかったのは間違いなかったけれど、やはりどこかこの曲が演奏されると「終わり」を実感せざるを得なかったし、それは去年出演した2つのフェスにおいてもそうだった。
でもこの日は心から笑顔で「Love & DISCO」とみんなが叫ぶことができるようになっていた。終わってしまう悲しみじゃなくて、また始まったことの喜びをこの日のこの曲は鳴らしていたから。その光景に思わず涙が溢れてしまったのだけど、その涙もかつての悲しい感情から出てくるものではなくて、間違いなく嬉しさによって出てくるものだった。10年とか何十年も待ち続けた末の奇跡の復活劇のようなことではなかったけれど、自分たちにライブの楽しさを教えてくれたthe telephonesが本当に帰ってきたのだ。
アンコールでは石毛の
「初日だけどファイナルみたいだね。まるでライブハウスでツアーをやっているかのような…」
という発言に
「いや、ライブハウスツアーなんだからそりゃそうでしょ」
とメンバーが当たり前過ぎるツッコミを入れると、佐賀からほど近い福岡のフェスで来月また九州に来ること、そのイベントでトリを担うことをフライング発表し、最後に演奏されたのは「Bye Bye Hello」のリード曲にして、活動休止前にも最後に演奏された「Something Good」。
「何かしら良いもの」
というタイトルは間違いなくthe telephonesというバンドの存在そのものだ。the telephonesのライブはめちゃくちゃ楽しいし、バンドの持つライブ力というのはとてつもないものがあるが、それは理屈では決して説明できないものだ。強いて言うならばそれは音楽への愛に溢れたこの4人だからこそ宿る魔法のようなもの。the telephonesがブレイクして以降、数えきれないほどのダンスロックバンドがシーンに現れたが、誰もthe telephonesの代わりになったり、超えるような存在になることはできなかった。決して爆発的に売れたバンドではなかったけれど、やっぱりthe telephonesはthe telephones peopleにとって本当に特別なバンドであるということを改めて教えられたかのような復活ツアーの初日だった。
活動休止を宣言する前、インタビューなどでもメンバーは「the telephonesをやること」に苦しんでいるのを感じさせるような発言やムードがあった。自分たちがやりたいことと、the telephonesというバンドについたイメージ、バンドに求められているもの。
そうした様々なことに悩まされているのをライブをしている姿からも感じてしまっていた。つまり、メンバーは100%心からこのバンドで活動することを楽しむことができていないんじゃないかと。
でもこの日はこうしてthe telephonesとして4人でライブをすることを誰よりもメンバーたちが楽しんでいるのが本当に伝わってきた。それはそれぞれが今はthe telephonesとは違う形でバンドをやっているということが大きいのだろうし、その姿を見ると悲しかった活動休止がバンドにとって必要なことで、それを経たからまたこうして笑顔で集まることができている。そして我々はそんなメンバーの姿を見ることができている。こんなに幸せなことはない。
例えばTHE BAWDIESがメジャーデビュー前からthe telephonesと「Kings」という共同体を形成していたり、the telephonesが対バンに呼んだり、石毛輝をはじめとしたメンバーが紹介したりしたことによって、自分は人生において大切な音楽がたくさん増えた。それは今でもそれぞれの活動によって増え続けているけれど、こうしてthe telephonesが再びツアーをやるようになって、今までバンド自体も自分自身も訪れたことがなかった佐賀という場所に足を踏み入れる機会が出来たことで、音楽だけじゃなくて大切な場所や大切な人までもが増えた。それはきっとこれからもthe telephonesが活動することで間違いなく増えていくし、そうして自分の人生をさらに楽しいものにしてくれる。
とはいえちょこちょこ書いたように、関東圏でも何個もフェスに出ることが決まっているし、バンドの地元である北浦和でのチケットこそ取れなかったが、きっと関東圏のもっと広いところでもワンマンをやってくれるはず。
ならばわざわざこんな遠いところまで行かなくてもそういうとこで見れるんだからいいじゃん、と思うこともあったけど、the telephonesを追いかけ続けてきた我々はその楽しい時間は永遠に続くものではないということも身をもって体感してしまっている。だからこそ後悔しないように。何にも変わっていないような感じもするけれど、1つ1つのライブとの向き合い方や意識は間違いなく変わった。だからこそ、また来月。お互いに行ったことのない場所で。
1.D.A.N.C.E. to the telephones!!!
2.I Hate DISCOOOOOOO!!!
3.HABANERO
4.Jesus
5.A.B.C.DISCO
6.It's Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)
7.electric girl
8.Perfect World
9.My Final Fantasy
10.kiss me, love me, kiss me
11.Keep Your DISCO!!!
12.A A U U O O O
13.DaDaDa
14.Yeah Yeah Yeah
15.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
16.Monkey Discooooooo
17.Love & DISCO
encore
18.Something Good
Love & DISCO
https://youtu.be/PDRdyrFk378
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しかし昨年5月のVIVA LA ROCKにて突如活動再開し、8月にはかつてのおなじみライブであったUKFCにも出演。それは単発的な動きかと思っていたのだが、メジャーデビューから10年を迎えた今年、満を持してツアーの開催を発表。かつての活動時にバンドが後悔していたという行ったことのない都道府県に行くという名目のツアーであり、初日は佐賀県のRAG-Gというキャパ200人のライブハウス。メンバーやスタッフ以外は誰もどんな曲をやる、どんなライブになるのかは全くわからない、正真正銘the telephonesのツアーである。
石毛輝はUKFCでのツアー発表時に会場が地方ばかり(ツアータイトルの名目的に当たり前なのだが)なのに対して、
「土日だし、みんなもう歳取って働いてるから遠征するお金もあるでしょ?(笑)」
と都心から遠征することに対して肯定的な言葉を発してくれていたが、基本的に自分は「ツアーの地方公演はその土地に住む人たちのためのもの」だと思っているので、なかなかツアーで遠征はしないのだが(基本的に先行予約は申し込まないし一般発売直後に売り切れるやつは取ろうとしない)、一般発売の後でチケットがまだ残っていたので記念すべきツアー初日に意を決して参加することに。(結果的にソールドアウトした)
テレビの取材などもライブ前の先行物販から来ている中、会場のRAG-Gは水戸のclub sonicのような造りで、やはりキャパ200という至近距離。ステージにはミラーボールが飾られており、懐かしのサッカーTシャツを着た人たちがたくさんいるのが本当にthe telephonesのライブなのだなぁと実感する。
18時を少し過ぎると会場がいきなり暗転し、場内が大きな歓声に包まれた瞬間「happiness,happiness,happiness」のSEが鳴り、観客がリズムに合わせて手拍子。もうこの瞬間だけで本当にthe telephonesのワンマンが見れるんだ、と感慨深くなってしまう。
おなじみのアフロのカツラを被ったメンバーはそれぞれが違うバンドで活動するようになっているけれど、こうして4人が揃ってステージに立つとビジュアルは休止前と全く変わらないように感じるというかthe telephonesの4人だなという当たり前のことを思ってしまう。活動中にモヒカンなど度々大胆な髪型のイメチェンを強いられてきたドラムの松本誠治は髪が長くなっており、ヒゲを蓄えてメガネをかけ、さらにはヘッドホンを着用しているというあたりが見た目の変化を最も感じるポイントだったかもしれない。
「佐賀ー!今日はお互いにとって特別な日になるから、思いっきり楽しもうぜー!」
と石毛が叫ぶと「D.A.N.C.E. to the telephones!!!」からスタートし、ノブは早くもベースを弾く長島涼平の目の前で踊りまくる。かつておなじみだったこの光景もこうしてまた見れるのは実に感慨深い。涼平が先導する「D.A.N.C.E.」の人文字はメンバーがちょっと慣れない感じがしたのは久しぶりだからかもしれないが、初めて来る土地とはいえ観客はしっかり覚えている。
というかやはりかつてのTシャツとかを身につけている、これまでにthe telephonesのライブに行っていた人たちばかりだから、みんなtelephonesの曲が今でも完全に脳内や遺伝子レベルで刻まれている。だからライブで聴くのは久しぶりなんだけど全然懐かしいとかいう感じではなくてこれまでの延長線上という感じ。
「I Hate DISCOOOOOOO!!!」「HABANERO」というライブ定番曲が続いただけにより一層そんな感覚になる。
lovefilmでは敢えて封印していたハイトーンボイスはYap!!!を始動したことによって解禁されているが、the telephonesとしてのハイトーンボイスを轟かせた石毛が観客の
「おかえりー!」
という歓声に対して、
「ただいま、だけど初めまして。ようやく佐賀に来れました」
と挨拶。
「今日は思いっきり楽しもうぜー!」
と叫ぶも、MCでは緊張している様子を涼平にはしっかり悟られていた。
活動休止前にリリースされた、当時のラストアルバムにして現状の最新アルバムになる「Bye Bye Hello」の収録曲「Jesus」はリリース後にツアーをやっていないだけに実質初披露である。やはりファンとしてはライブで聴いたことのない曲を聴きたいというのもあるが、そうするとほかの曲が減ってしまうわけであって、やはりこのツアー以外にリリースから4年越しの「Bye Bye Hello」のツアーをやっていただけないものだろうか。
「ディスコ!」と叫ぶことによって楽しさがさらに加速していくというthe telephonesのライブでしかあり得ない空気に満たされる「A.B.C.DISCO」、打ち込みのサウンドが流れるとノブが客席の端にある椅子の上を渡り歩く「It's Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)」のアウトロの涼平と誠治のビートが徐々にイントロに変化するという繋ぎ方を見せた「electric girl」と、こうしたライブだからこそのアレンジを練ってきているあたりはメンバーたちが入念なリハーサルを重ねてきたことをうかがわせる。それぞれがthe telephones休止後に始めたバンドの活動で忙しい中でもこうしたアレンジをできるようになっているというのが、the telephonesがこのライブで終わりなんじゃなくてこれからも進んでいくバンドになったということを実感させてまた胸が熱くなってしまう。
the telephonesと言えば「DISCO」なわけで、タイトルに「DISCO」がつく名曲であり日本のロックシーンのアンセムを数々生み出してきたバンドであるために久しぶりのツアーとなるとそうした曲を連発するという選択肢もあったと思われるが、そもそもthe telephonesは石毛を筆頭に日本だけでなく世界中の音楽を聴きまくっているメンバーたちによるミュージックラバー集団であり、それを自分たちのバンドの音楽に取り入れてきたバンドである。
なのでアッパーなディスコパンク(この言葉も近年すっかり使うことがなくなってしまった)だけでなく、幅広い音楽性を今までにリリースしてきたアルバムの中で見せてきたわけだが、ワンマンはそうした面を見せるような曲をこれまでにも演奏してきただけに、今回も「Perfect World」(ライブで聴いたのはいつ以来だろうか)、石毛がハンドマイクで歌う、タイトルとおりに幻想的なサウンドの「My Final Fantasy」と、すでに数々出演が決定しているフェスではまず演奏されないであろう曲を聴くことができるのは嬉しい限りだし、こうしてツアーに参加することができて本当に良かったと思える。「Perfect World」は「DANCE FLOOR MONSTERS」に収録されている曲なだけに、リリース(=メジャーデビュー)から10周年ということで演奏されたのだと思うけれど。
だってthe telephonesはフェスでやる曲だけが良い曲だったバンドでは決してなく、こういうワンマンだからこそ聴ける曲が良い曲ばかりのバンドだからである。だからかつては良くも悪くも「フェスバンド」と言われ続けていたが、いつだってフェスよりもワンマンの方が圧倒的に楽しかった。それは去年フェスに2本出演したのを見てからのこの日も一滴の曇りもなくそう言い切れる。
「A.B.C.DISCO」と同時期にリリースされ、それまでのディスコシリーズとは違った新たなポップさを獲得した「kiss me, love me, kiss me」のアウトロの一気にアイリッシュパンクのようになる転調は今でも駆け出したくなるくらいに楽しいが、音源ではなくてこうしてライブという場で聴くと「この曲、あの時あの場所のライブで聴いたな〜」という記憶を思い起こさせる。この曲が収録された「Oh My Telephones!!! e.p.」は「A.B.C.D e.p.」とともに「春のtelephones祭り」と題して恵比寿リキッドルーム2daysでレコ発が行われ、初日は盟友のBIGMAMAが、2日目はその時期にプロデューサーという立場でバンドに関わっていた、石毛の師匠であるナカコーがiLL名義で出てたな〜というように。でもそうした思い出を、the telephonesがこうしてまたツアーをやることにしたおかげでこれからも増やしていくことができる。この日佐賀という地でこのバンドのライブを見れたことだってきっと忘れないはず。
バンドマンにとってツアー先でのMCというのはその地方の名物であったり料理であったりというのをメインのネタにするのが通例なので、この日もメンバーが揃って食べに行った佐賀の名物料理「シシリアンライス」の話をするも、客席からリアクションがほとんどないことにびっくりするメンバーたち。どうやらこの日は佐賀の人よりも福岡から来た人の方がはるかに多かったようで、そりゃあわからないわ、という空気に落ち着く。
しかしバンド1の問題児であるノブは自分たちのことを
「○○○○○○○(バンド名)の○○さんより今日の俺たちの方がカッコいい」(書かないでと言われたので伏せ字対応)
と口走り、石毛から
「お世話になりまくってる先輩になんてことを!(笑)」
と突っ込まれる。逆にノブからしたら仲が良い先輩だからこそ遠慮することなくこうして名前を出せるのだろう。
後半戦は「Keep Your DISCO!!!」から一気にアッパーに振り切れるのだがやはり「ディスコ!」と叫ぶタイミングはもちろん、手拍子のタイミングまでみんな完璧に覚えている。その様子を見ていると、活動休止から復活したんじゃなくて、ただ少しライブをやっていなかっただけというようにすら感じる。ノブはおなじみのキラキラシャツを脱いで上半身裸になっていたが、この真冬であっても灼熱の空間になってしまうのもかつてのライブハウスでのライブと全く変わらない。
観客が曲に合わせてアルファベットを叫ぶ「A A U U O O O」、上がりまくったボルテージに我慢できずについにダイバーが出現した「DaDaDa」と前のめりに突っ走ると、ワンマンということでドラムの誠治もMCを担当。
1人先乗りすることになった涼平(石毛とマネージャーが車で到着するのが遅れたため)、当日に新幹線で佐賀まで来た誠治とそれぞれがバラバラの方法でやってきただけに4人揃ったときの感慨もひとしおだったことを告げるも、「金髪まじりの長い髪にメガネにヒゲ」という出で立ちになったことによって涼平に
「ダイスケはんですか?」
と突っ込まれることに。
ノブ「ダイスケはんっていうかガチファン過ぎてダイスケはんに寄せてる人みたいな感じ(笑)」
涼平「ファンでこれだったらクオリティ高すぎじゃない?(笑)」
と最年長がいじられまくる姿もかつてのメンバーの関係性となんら変わらないが、こうした緩いムードで話ができるのは本人たちも言っていたとおりにワンマンならではだろう。
「Yeah Yeah Yeah」で飛び跳ねさせまくると、「Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!」ではノブ自身が踊りまくることによって観客にさらに自由に踊ることを促すのだが、この日入っていたカメラが「Love Music」とスペシャによる密着であることから「L」と「S」という番組の頭文字を手で作りながら踊りまくるノブであった。
そして石毛による
「We are!?」
のコールの後に
「DISCO!!!」
の大合唱が轟いてから演奏された「Monkey Discooooooo」では石毛が歌詞を
「SAGA people」
とこの土地バージョンに変えて歌う。
やはりメンバーも歳を重ねているし、石毛がツアーを発表した時に言っていたように観客も歳を重ねている。でもこのバンドの演奏と客席の激しさからはそれを全く感じさせないし、the telephonesのライブなら普段は出ないような高音コーラスだっていくらでも出るし、いくらでも飛び跳ねていられるような無敵感を今でも感じさせてくれる。きっとその感覚はこの先メンバーと我々が40代や50代になっても変わらないんじゃないかと思う。
そしてあまりにあっという間の最後の曲はこの日ここに集まって、the telephonesがまた始まった瞬間を見届けてくれた人たちへの愛と感謝を示す「Love & DISCO」。
the telephones最大のキラーチューンにして2000年代後半最高のライブアンセムだったこの曲も、活動休止を宣言したTOKYO DOME CITY HALLではみんな現実を受け入れることができなくて踊ることができなかった。その後の武道館や各地でのフェス、さらには「Last Party」でも楽しかったのは間違いなかったけれど、やはりどこかこの曲が演奏されると「終わり」を実感せざるを得なかったし、それは去年出演した2つのフェスにおいてもそうだった。
でもこの日は心から笑顔で「Love & DISCO」とみんなが叫ぶことができるようになっていた。終わってしまう悲しみじゃなくて、また始まったことの喜びをこの日のこの曲は鳴らしていたから。その光景に思わず涙が溢れてしまったのだけど、その涙もかつての悲しい感情から出てくるものではなくて、間違いなく嬉しさによって出てくるものだった。10年とか何十年も待ち続けた末の奇跡の復活劇のようなことではなかったけれど、自分たちにライブの楽しさを教えてくれたthe telephonesが本当に帰ってきたのだ。
アンコールでは石毛の
「初日だけどファイナルみたいだね。まるでライブハウスでツアーをやっているかのような…」
という発言に
「いや、ライブハウスツアーなんだからそりゃそうでしょ」
とメンバーが当たり前過ぎるツッコミを入れると、佐賀からほど近い福岡のフェスで来月また九州に来ること、そのイベントでトリを担うことをフライング発表し、最後に演奏されたのは「Bye Bye Hello」のリード曲にして、活動休止前にも最後に演奏された「Something Good」。
「何かしら良いもの」
というタイトルは間違いなくthe telephonesというバンドの存在そのものだ。the telephonesのライブはめちゃくちゃ楽しいし、バンドの持つライブ力というのはとてつもないものがあるが、それは理屈では決して説明できないものだ。強いて言うならばそれは音楽への愛に溢れたこの4人だからこそ宿る魔法のようなもの。the telephonesがブレイクして以降、数えきれないほどのダンスロックバンドがシーンに現れたが、誰もthe telephonesの代わりになったり、超えるような存在になることはできなかった。決して爆発的に売れたバンドではなかったけれど、やっぱりthe telephonesはthe telephones peopleにとって本当に特別なバンドであるということを改めて教えられたかのような復活ツアーの初日だった。
活動休止を宣言する前、インタビューなどでもメンバーは「the telephonesをやること」に苦しんでいるのを感じさせるような発言やムードがあった。自分たちがやりたいことと、the telephonesというバンドについたイメージ、バンドに求められているもの。
そうした様々なことに悩まされているのをライブをしている姿からも感じてしまっていた。つまり、メンバーは100%心からこのバンドで活動することを楽しむことができていないんじゃないかと。
でもこの日はこうしてthe telephonesとして4人でライブをすることを誰よりもメンバーたちが楽しんでいるのが本当に伝わってきた。それはそれぞれが今はthe telephonesとは違う形でバンドをやっているということが大きいのだろうし、その姿を見ると悲しかった活動休止がバンドにとって必要なことで、それを経たからまたこうして笑顔で集まることができている。そして我々はそんなメンバーの姿を見ることができている。こんなに幸せなことはない。
例えばTHE BAWDIESがメジャーデビュー前からthe telephonesと「Kings」という共同体を形成していたり、the telephonesが対バンに呼んだり、石毛輝をはじめとしたメンバーが紹介したりしたことによって、自分は人生において大切な音楽がたくさん増えた。それは今でもそれぞれの活動によって増え続けているけれど、こうしてthe telephonesが再びツアーをやるようになって、今までバンド自体も自分自身も訪れたことがなかった佐賀という場所に足を踏み入れる機会が出来たことで、音楽だけじゃなくて大切な場所や大切な人までもが増えた。それはきっとこれからもthe telephonesが活動することで間違いなく増えていくし、そうして自分の人生をさらに楽しいものにしてくれる。
とはいえちょこちょこ書いたように、関東圏でも何個もフェスに出ることが決まっているし、バンドの地元である北浦和でのチケットこそ取れなかったが、きっと関東圏のもっと広いところでもワンマンをやってくれるはず。
ならばわざわざこんな遠いところまで行かなくてもそういうとこで見れるんだからいいじゃん、と思うこともあったけど、the telephonesを追いかけ続けてきた我々はその楽しい時間は永遠に続くものではないということも身をもって体感してしまっている。だからこそ後悔しないように。何にも変わっていないような感じもするけれど、1つ1つのライブとの向き合い方や意識は間違いなく変わった。だからこそ、また来月。お互いに行ったことのない場所で。
1.D.A.N.C.E. to the telephones!!!
2.I Hate DISCOOOOOOO!!!
3.HABANERO
4.Jesus
5.A.B.C.DISCO
6.It's Alright To Dance (Yes!!! Happy Monday!!!)
7.electric girl
8.Perfect World
9.My Final Fantasy
10.kiss me, love me, kiss me
11.Keep Your DISCO!!!
12.A A U U O O O
13.DaDaDa
14.Yeah Yeah Yeah
15.Don't Stop The Move, Keep On Dancing!!!
16.Monkey Discooooooo
17.Love & DISCO
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18.Something Good
Love & DISCO
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