MONOEYES Mexican Standoff Tour 2018 @新木場STUDIO COAST 6/20
- 2018/06/21
- 21:04
昨年、MONOEYESとthe HIATUSでツアーを行った際に、
「来年はリリースはしない」
と宣言していた、細美武士。リリースこそはないが、MONOEYESとしてこうして対バンツアーを開催。(そもそもMONOEYESのアルバムもリリースからそこまで日が経ってないが)
そして何よりも細美武士における大ニュースが発表されただけに、リリースがなくても仕方ない。
新木場STUDIO COASTでの2daysとなる今回は、前日のMAN WITH A MISSIONに続き、細美武士の恋人としてthe LOW-ATUS名義でもともに活動している、TOSHI-LOW率いるBRAHMANが出演。意外にこの2バンドでのツーマンというのはそこまで多くないだけに実に楽しみ。
・BRAHMAN
先攻のBRAHMAN。おなじみのSEでKOHKI、MAKOTO、RONZIの3人が登場すると、最後にTOSHI-LOWがいつものようにゆっくりとステージに登場。SEが終わると、
「思いっきりやっちまうその前に!」
と、ツアーでは最後に演奏している「満月の夕」から始まる意表のつき方。これには先日発生した大阪の地震へ想いを馳せざるを得ない。この曲はソウル・フラワー・ユニオンの中川敬が阪神大震災が発生した時に作った曲だから。
「満月の夕」が終わるとバンドロゴの幕が姿を現し、始まりと終わりを告げる「真善美」からメンバーがステージを暴れまわりながら演奏。すると「Speculation」という先日のツアーでは演奏していなかった曲も演奏される。
全くいつもと変わらない緊張感と殺気に溢れたライブだが、TOSHI-LOWは少し喉がキツそうな感じもする。しかしながらそれでも鍛え抜かれた体は全く休むことをせず、その姿に応えるように次々とダイバーがステージの方へ飛んでいく。
見事だったのは「BOX」「BEYOND THE MOUNTAIN」という全く間を置かない曲のつなぎ。BRAHMANのライブには無駄な時間というものが全く存在していないが、こうしたアレンジはその最たるもの。だから対バンに招かれた身であっても、持ち時間をフルに使って他のバンドのワンマンくらいの曲数を演奏することができるし、我々もたくさんの曲を聴くことができる。
先日キュウソネコカミがカバーした「不倶戴天」からの「警醒」でいよいよTOSHI-LOWが客席に飛び込むと、ダイバーもTOSHI-LOWに向かって次々と飛び込んでいく。この日はやたらとTOSHI-LOWへの命中率が高く、TOSHI-LOWも何度も沈みそうになりながらも観客の上に直立すると、カオスな状態の中にあっても大きな歓声が上がる。
そんな状態なので観客すらも倒れる人が続出するのだが、TOSHI-LOWは何度も「上げろ」というジェスチャーを行い、
「何度だって立ち上がるんだよ!」
と観客と、この曲の主人公たちである福島第一原発で作業する人たちを励ますように「鼎の問」を歌う。その姿はついさっきまでダイバーを振り払いまくっていた姿とは全く違い、慈愛に満ちている。
「三陸の海に行ってきたんだよ!」
と言っての「ナミノウタゲ」を終えると、
「昨日、MAN WITH A MISSIONのジャン・ケン・ジョニーが打ち上げで細美武士に殴られたっていう話をしてたらしいけど、細美武士は酔っ払うと変身しちゃうじゃん?(笑)太美武士に(笑)
打ち上げって基本的にパートごとに集まって話をしがちで。ドラマーは端っこの方で暗くはなしているし、ベースはおばちゃんの集会みたいな話をしているし、ギターはギターの話をしている。で、ボーカルはというと、この歳になると健康の話をしている(笑)
細美武士も最初は「大好きなんです!」って言ってくる後輩とかと仲良く喋ってるんだけど、酒が進んでくると、
「お前のボーカルはダメだ!」
みたいになってくる。もう全否定(笑)でもあれは結婚の挨拶をしにきた男に対する父親みたいなもんで(笑)本当に認めてるやつにしかそういう態度は取らない。俺はまだ殴られたりしたことないから、まだボーカルとして認められてないのかなぁ、と思ってたら、この前ついに頭突きをされました(笑)
太美武士とかじゃなくて、あれは、酒乱だ(笑)」
と、終始リラックスし過ぎというか、いつものように考えさせる話は全くない。それこそ大阪の地震のことも。それはそのことをどうでもいいと思ってるんじゃない。細美武士がいるから、細美武士のことを喋りたくて仕方がないのだ。だからこそ、
「俺たちとMONOEYESのファンなら、言わなくてもちゃんとわかってくれる」
と両バンドのファンも同じ存在であることを語り、
「7年前、被災地に支援物資を運んでるときの写真を見たら、俺たち老けたな、と思った。でも、今の方がいい顔だ。これからもそうやって一緒に歳を取っていきたい」
と、細美武士との出会いが自身の人生を大きく変えたことを語り、「今夜」ではその細美武士が登場してTOSHI-LOWと並んで歌い、
「次はMONOEYES!天国にいるあいつと、酒を飲みながらライブを見るよ!その前にもう1曲だけ聴いてくれ!」
と言って演奏されたのは、こうしてBRAHMANのステージに細美武士が立つきっかけとなった「PLACEBO」。細美のコーラスがTOSHI-LOWのボーカルに重なることによって生まれる、この2人の絆と優しさを感じさせる歌声。歌い終わると、2人は肩を組んで先にステージを去った。その後に音が止まってステージを去るRONZI、MAKOTO、KOHKIが笑みを浮かべながら何度も観客に頭を下げるのを見て、TOSHI-LOWだけじゃなくてメンバーみんなが心から楽しんでいたんだな、と思った。
1.満月の夕
2.真善美
3.Speculation
4.雷同
5.賽の河原
6.AFTER-SENSATION
7.天馬空を行く
8.守破離
9.BOX
10.BEYOND THE MOUNTAIN
11.不倶戴天
12.警醒
13.鼎の問
14.ナミノウタゲ
15.今夜 feat.細美武士
16.PLACEBO feat.細美武士
今夜
https://youtu.be/G4LUegu-yVc
・MONOEYES
そしてメンバー本人たちによる転換がものすごく早く終わると、おなじみのスターウォーズのSEとともにステージ背面にバンドのロゴがせり上がり、MONOEYESのメンバーが登場。
拍手がそのまま手拍子となり、もう我慢できないとばかりにそこまで激しい曲ではないのにダイバーが続出した「Leaving Without Us」から、サビ前のブレイクで戸高とスコットが楽器を抱えて高くジャンプするというロックバンドのカタルシスに満ちた「Free Throw」という立ち上がりは昨年リリースのアルバム「Dim The Lights」のオープニング通りの流れ。
「My Instant Song」でメンバーだけでなく観客も飛び跳ねまくり、会場が多幸感に満ち溢れていくと、
「今日は年に数回あるかないかっていうくらいの機嫌の良さ。朝からずっとTOSHI-LOWと一緒にいるからね(笑)」
といきなりラブラブっぷりを見せつけるも、
「今回のツアーではコラボTシャツを売ってるんだけど、俺は並んでまで欲しいものがないからわかんねぇけど、昨日のはもう22000円で転売されてた。次からは数量限定とか、その日しか買えないとかはやめる」
と今回のツアーで販売された、対バン相手とのコラボTシャツの販売方法を再考することを語る。チケットの問題もそうだし、本来ならバンド自身が考えなくてもいいことすらも考えている。ただ「売れました、オッケー」ではないというのが実に細美らしい。それは基本的に自身のバンドを自分たちだけの最小限のスタイルで回しているからこそできることなのかもしれないが、レールにちょっとでも乗ることをよしとしないこの男の人生そのものである。
カップリング曲でありながらライブの定番曲であり続ける、ストレートなツービートパンクの「When I Was A King」は細美のカップリング曲とシングルのタイトル曲との境界線が全くないことを示しており、この日最初の
「スコットが決めるぜー!」
と言っての「Roxette」では髭が濃くなり、ワイルドさを増したスコットが細美に劣らぬメインボーカルでの歌唱を見せ、
「今回のツアーで細美さんが何人を殴ったんだろう(笑)」
と、相変わらず完璧な発音で、もはや日本人と変わらぬ流暢なMCも展開。
細美武士はライブハウスという場所に強いこだわりと愛着を持っているが、それが強いメッセージとなって曲の意味合いをさらに増す「End Of The Story」「Run Run」「Like We've Never Lost」と1stアルバムからのパンクな曲もこの日は多く演奏された。このあたりな特定のリリースツアーではないからこそだし、そもそもまだアルバムが2枚しかないバンドだからこそでもあるが、フェスなどでは演奏されない曲も多くなっただけに、こうしてライブで聴けるのが実に嬉しい。
スコットメインボーカルの2曲目はカップリング曲の「Moth To Flame」というレアな選曲で、さらに激しく走り抜けるようなパンク曲が多かったこの日の中で深く自己の中に潜っていくような「Get Me Down」は大きなアクセントを残していてインパクトが大きい。
そして
「俺は高校生の頃とかに本当に嫌われ者だった。みんなが海水浴とか行ったりしてるのを楽しそうだな、って思いながら1人でバイクで海に行って。そういう人生もかっこいいんじゃないかと思って生きてて。
ハリネズミみたいに、遠目で見てると面白いんだけど、触ると痛くなる。でもバンドを始めてからそんな俺を面白いって言ってくれるやつがたくさんできて。それってなんかに似てるな、って思ったんだけど、その嫌われまくってた高校生の時に俺が学祭でバンドとしてステージに立ったらみんなが楽しそうな顔をしてくれた時と同じだなって。だからお前らも俺を面白いやつだって思ってくれてるのがわかった!」
と、過去の自分がバンドを始めて大きく変わったことを語ると、細美のことを最も面白いと思っている男であるTOSHI-LOWとの2人の曲である「Two Little Fishes」では曲途中でTOSHI-LOWが上半身裸で登場という赤鬼スタイル。TOSHI-LOWのコーラスパートでの振り付けもいつの間にか完全に定着したのか、観客がみんな一緒にやっているのがシュールで面白いが、ラストサビ前での細美とTOSHI-LOWが向かい合って交互に歌う姿は両者の揺るぎない絆を感じさせる。
この2人は震災以降に急接近して、こうした関係性になった。もうお互いに30代後半という年齢の時である。30代ともなると、なかなか新しい友達が生まれにくい。基本的に普段交流するのは仕事相手ばかりだし、そうした人と「友達」という関係、さらには深い絆を持つというのは実に難しい。しかしこの2人の姿を見ていると、まだ出会ってはいないが、この先の人生で我々もこうした人に出会えることもあるんじゃないか、と思える。そしてその2人が抱き合う姿はもう40代半ばのおっさん同士とは思えないくらいに美しい。
時間的にも、TOSHI-LOWが出てきたっていうことを踏まえてもそろそろ終わりかな?と思っていたら、「明日公園で」でスコットがベースを銃のようにしてドラムの一瀬に向けたりと、さらに曲を続ける。
「最後にスコットが決めるぜー!」
と演奏された、スコットのバンドALLiSTERの「Somewhere On Fullerton」はワンマンでの定番曲であり、もはやMONOEYESの曲でもあると言っていいくらいだが、スコットはALLiSTERでこの曲を演奏していた時、後に日本人たちと一緒のバンドでこの曲を演奏し、日本人の観客がみんな笑顔でダイブしていくという光景を想像していただろうか。それはスコットのメンバーとファンへの愛によって生み出された光景である。
これでいよいよ本編は終わりかと思いきや、
「このツアーの東京をこの2日間でここでやろうと思ってCOASTに問い合わせたら、その2日間は違うバンドが仮押さえしてるので、その仮押さえがなくなればできますと。そしたら仮押さえがなくなったんで無事にできるようになったんだけど、ちなみにその仮押さえしてたバンドって誰?って聞いたら、BRAHMANです、って。自分たちのツアーの追加公演用に押さえてたのを俺たちに譲ってくれたんだって。結局出てるけど(笑)
俺はあいつの隣に並んでも恥ずかしくないくらいに強くなりたいと思うのに、あいつはいつも一歩先にいる。でも俺はいつか追う立場じゃないところまで行きたい。追いかける方が楽だからね。いつかあいつの一歩先を歩けるように、もっともっと強くなる」
と、本来はこの2日間はBRAHMANがワンマンを行う予定であったことを明かす。
TOSHI-LOWはこうした他者への善意を自分の口から語るようなことはしない。ひたすらにその行動の姿を自身の背中で見せる。だからその姿を見ている人たちがいるからこそ、TOSHI-LOWの人間らしさ、優しさが広がっていく。TOSHI-LOWが本当に強いのは、肉体ではなくてその精神である。
そして信じられないくらいに素朴な歌詞の「Vostok」から、さらにラストは「Dim The Lights」の最後の曲にして、またここから行こうと気分を高揚させる「3,2,1 Go」と、ツーマンなのにもかかわらず、まるでワンマン並みのボリュームのライブであった。
アンコールでは細美武士が上半身裸で登場し、
「木札作戦、ご協力いただいた方、ありがとうございました!あの木札はみかん公園の遊具を解体したものなんだけど、みかん公園に弾き語りに行った時に「STAND BY ME」を歌ったら、77歳のカズエさんっていう人が、「あのDarlin Darlin~っていう曲をアンコールでもう一回歌って欲しいって言ってきて。「矢井田瞳のかな?」って思ったんだけど(笑)、「いいっすよ~」って言って歌ったあとに、カズエさんに「またね!」って言ったら、
「私77歳だから、もう会えないかもしれない」
って言われて。ああ、そうだな、いつでもこれが最後かもしれない。また会える人がいたらまた。さよなら!」
と、被災地に足を運び続けている細美だからこそ話せるエピソードを語り、最後のスコットボーカル曲「Borders & Walls」から、まさに今この場所、こういう世界があるならまた行ってみたいと思わせてくれるほどに感動的な「グラニート」で締めくくった。
しかしそれでもアンコールを求める声は止まず、ダブルアンコールに。
「俺たちのことを覚えていてくれっていう意味を込めて」
と言って、個人的にMONOEYESの持ち曲の中で最もラストに相応しいと思っている「Remember Me」でダイブやモッシュではなく、ミドルテンポだが轟音の演奏と、パンク的なバンドのボーカルの中では最も素晴らしい歌唱力の持ち主である細美武士の、これだけ長い時間と多い曲数を、しかも酒を飲みながらなのに全く変わらないどころか、さらに伸びやかになるという驚異的なボーカルが描き出す景色は本当に美しかった。この瞬間を、覚えていないわけがない。
「ありがとうございました、MONOEYESと、BRAHMANでした!」
とあくまでこのライブはBRAHMANが一緒だからこそ作れたということを最後まで強調すると、細美はスコットのピックを勝手にばら撒き、一瀬は本当にやり切ったような表情で何度も顔を下げてからステージを後にした。メンバーがいなくなっても、熱気だけは確かに残っていた。
もはや5月以降、ロックシーン最大の話題はELLEGARDENの再始動である。しかし、完全に真似できるバンドがいないくらいに独自の音楽を追求しているthe HIATUSに比べて、ELLEGARDENができるのにもかかわらず、ELLEGARDENと音楽性が近いMONOEYESを細美がやっている意味とは?
それは間違いなくバンドのメンバーである。ELLEGARDENにはないものが確かにMONOEYESにはある。それはスコットのボーカル曲もそうだし、このメンバーだからこそ音から滲み出る人間性。もはや、このバンドは「上手く演奏しよう」という気持ちなど全くないだろう。それよりも、ただただ思いっきり激しい音楽を楽しいやつらとやりたい。そもそもが東北にライブをやるために足を運ぶ時の細美武士のソロプロジェクトだったはずが、完全にこの4人でしかないバンドになったという事実がそれを証明している。
それはMONOEYESだけでなく、「このメンバーである意義」は違えど、the HIATUSもそう。そして、もちろんELLEGARDENも。だからELLEGARDENは休止を選んだのだ。細美武士のバンドには必ずそのメンバーと一緒でなければならない理由がある。だからこそ、どのバンドのライブを見ても全く違う感動がある。そして生きている実感をくれる。果たしてこれから3つのバンドを自身の音楽生活の中でどうやって並行させていくのか。ELLEGARDENが復活しても、MONOEYESだってガンガンやって欲しい。
1.Leaving Without Us
2.Free Throw
3.My Instant Song
4.When I Was A King
5.Parking Lot
6.Roxette
7.End Of The Story
8.Get Up
9.Run Run
10.Like We've Never Lost
11.Moth To Flame
12.Get Me Down
13.Two Little Fishes feat.TOSHI-LOW
14.明日公園で
15.Somewhere On Fullerton
16.Vostok
17.3,2,1 Go
encore1
18.Borders & Walls
19.グラニート
encore2
20.Remember Me
Two Little Fishes
https://youtu.be/uRGa3eooU1A
Next→ 6/22 amazarashi @中野サンプラザ
「来年はリリースはしない」
と宣言していた、細美武士。リリースこそはないが、MONOEYESとしてこうして対バンツアーを開催。(そもそもMONOEYESのアルバムもリリースからそこまで日が経ってないが)
そして何よりも細美武士における大ニュースが発表されただけに、リリースがなくても仕方ない。
新木場STUDIO COASTでの2daysとなる今回は、前日のMAN WITH A MISSIONに続き、細美武士の恋人としてthe LOW-ATUS名義でもともに活動している、TOSHI-LOW率いるBRAHMANが出演。意外にこの2バンドでのツーマンというのはそこまで多くないだけに実に楽しみ。
・BRAHMAN
先攻のBRAHMAN。おなじみのSEでKOHKI、MAKOTO、RONZIの3人が登場すると、最後にTOSHI-LOWがいつものようにゆっくりとステージに登場。SEが終わると、
「思いっきりやっちまうその前に!」
と、ツアーでは最後に演奏している「満月の夕」から始まる意表のつき方。これには先日発生した大阪の地震へ想いを馳せざるを得ない。この曲はソウル・フラワー・ユニオンの中川敬が阪神大震災が発生した時に作った曲だから。
「満月の夕」が終わるとバンドロゴの幕が姿を現し、始まりと終わりを告げる「真善美」からメンバーがステージを暴れまわりながら演奏。すると「Speculation」という先日のツアーでは演奏していなかった曲も演奏される。
全くいつもと変わらない緊張感と殺気に溢れたライブだが、TOSHI-LOWは少し喉がキツそうな感じもする。しかしながらそれでも鍛え抜かれた体は全く休むことをせず、その姿に応えるように次々とダイバーがステージの方へ飛んでいく。
見事だったのは「BOX」「BEYOND THE MOUNTAIN」という全く間を置かない曲のつなぎ。BRAHMANのライブには無駄な時間というものが全く存在していないが、こうしたアレンジはその最たるもの。だから対バンに招かれた身であっても、持ち時間をフルに使って他のバンドのワンマンくらいの曲数を演奏することができるし、我々もたくさんの曲を聴くことができる。
先日キュウソネコカミがカバーした「不倶戴天」からの「警醒」でいよいよTOSHI-LOWが客席に飛び込むと、ダイバーもTOSHI-LOWに向かって次々と飛び込んでいく。この日はやたらとTOSHI-LOWへの命中率が高く、TOSHI-LOWも何度も沈みそうになりながらも観客の上に直立すると、カオスな状態の中にあっても大きな歓声が上がる。
そんな状態なので観客すらも倒れる人が続出するのだが、TOSHI-LOWは何度も「上げろ」というジェスチャーを行い、
「何度だって立ち上がるんだよ!」
と観客と、この曲の主人公たちである福島第一原発で作業する人たちを励ますように「鼎の問」を歌う。その姿はついさっきまでダイバーを振り払いまくっていた姿とは全く違い、慈愛に満ちている。
「三陸の海に行ってきたんだよ!」
と言っての「ナミノウタゲ」を終えると、
「昨日、MAN WITH A MISSIONのジャン・ケン・ジョニーが打ち上げで細美武士に殴られたっていう話をしてたらしいけど、細美武士は酔っ払うと変身しちゃうじゃん?(笑)太美武士に(笑)
打ち上げって基本的にパートごとに集まって話をしがちで。ドラマーは端っこの方で暗くはなしているし、ベースはおばちゃんの集会みたいな話をしているし、ギターはギターの話をしている。で、ボーカルはというと、この歳になると健康の話をしている(笑)
細美武士も最初は「大好きなんです!」って言ってくる後輩とかと仲良く喋ってるんだけど、酒が進んでくると、
「お前のボーカルはダメだ!」
みたいになってくる。もう全否定(笑)でもあれは結婚の挨拶をしにきた男に対する父親みたいなもんで(笑)本当に認めてるやつにしかそういう態度は取らない。俺はまだ殴られたりしたことないから、まだボーカルとして認められてないのかなぁ、と思ってたら、この前ついに頭突きをされました(笑)
太美武士とかじゃなくて、あれは、酒乱だ(笑)」
と、終始リラックスし過ぎというか、いつものように考えさせる話は全くない。それこそ大阪の地震のことも。それはそのことをどうでもいいと思ってるんじゃない。細美武士がいるから、細美武士のことを喋りたくて仕方がないのだ。だからこそ、
「俺たちとMONOEYESのファンなら、言わなくてもちゃんとわかってくれる」
と両バンドのファンも同じ存在であることを語り、
「7年前、被災地に支援物資を運んでるときの写真を見たら、俺たち老けたな、と思った。でも、今の方がいい顔だ。これからもそうやって一緒に歳を取っていきたい」
と、細美武士との出会いが自身の人生を大きく変えたことを語り、「今夜」ではその細美武士が登場してTOSHI-LOWと並んで歌い、
「次はMONOEYES!天国にいるあいつと、酒を飲みながらライブを見るよ!その前にもう1曲だけ聴いてくれ!」
と言って演奏されたのは、こうしてBRAHMANのステージに細美武士が立つきっかけとなった「PLACEBO」。細美のコーラスがTOSHI-LOWのボーカルに重なることによって生まれる、この2人の絆と優しさを感じさせる歌声。歌い終わると、2人は肩を組んで先にステージを去った。その後に音が止まってステージを去るRONZI、MAKOTO、KOHKIが笑みを浮かべながら何度も観客に頭を下げるのを見て、TOSHI-LOWだけじゃなくてメンバーみんなが心から楽しんでいたんだな、と思った。
1.満月の夕
2.真善美
3.Speculation
4.雷同
5.賽の河原
6.AFTER-SENSATION
7.天馬空を行く
8.守破離
9.BOX
10.BEYOND THE MOUNTAIN
11.不倶戴天
12.警醒
13.鼎の問
14.ナミノウタゲ
15.今夜 feat.細美武士
16.PLACEBO feat.細美武士
今夜
https://youtu.be/G4LUegu-yVc
・MONOEYES
そしてメンバー本人たちによる転換がものすごく早く終わると、おなじみのスターウォーズのSEとともにステージ背面にバンドのロゴがせり上がり、MONOEYESのメンバーが登場。
拍手がそのまま手拍子となり、もう我慢できないとばかりにそこまで激しい曲ではないのにダイバーが続出した「Leaving Without Us」から、サビ前のブレイクで戸高とスコットが楽器を抱えて高くジャンプするというロックバンドのカタルシスに満ちた「Free Throw」という立ち上がりは昨年リリースのアルバム「Dim The Lights」のオープニング通りの流れ。
「My Instant Song」でメンバーだけでなく観客も飛び跳ねまくり、会場が多幸感に満ち溢れていくと、
「今日は年に数回あるかないかっていうくらいの機嫌の良さ。朝からずっとTOSHI-LOWと一緒にいるからね(笑)」
といきなりラブラブっぷりを見せつけるも、
「今回のツアーではコラボTシャツを売ってるんだけど、俺は並んでまで欲しいものがないからわかんねぇけど、昨日のはもう22000円で転売されてた。次からは数量限定とか、その日しか買えないとかはやめる」
と今回のツアーで販売された、対バン相手とのコラボTシャツの販売方法を再考することを語る。チケットの問題もそうだし、本来ならバンド自身が考えなくてもいいことすらも考えている。ただ「売れました、オッケー」ではないというのが実に細美らしい。それは基本的に自身のバンドを自分たちだけの最小限のスタイルで回しているからこそできることなのかもしれないが、レールにちょっとでも乗ることをよしとしないこの男の人生そのものである。
カップリング曲でありながらライブの定番曲であり続ける、ストレートなツービートパンクの「When I Was A King」は細美のカップリング曲とシングルのタイトル曲との境界線が全くないことを示しており、この日最初の
「スコットが決めるぜー!」
と言っての「Roxette」では髭が濃くなり、ワイルドさを増したスコットが細美に劣らぬメインボーカルでの歌唱を見せ、
「今回のツアーで細美さんが何人を殴ったんだろう(笑)」
と、相変わらず完璧な発音で、もはや日本人と変わらぬ流暢なMCも展開。
細美武士はライブハウスという場所に強いこだわりと愛着を持っているが、それが強いメッセージとなって曲の意味合いをさらに増す「End Of The Story」「Run Run」「Like We've Never Lost」と1stアルバムからのパンクな曲もこの日は多く演奏された。このあたりな特定のリリースツアーではないからこそだし、そもそもまだアルバムが2枚しかないバンドだからこそでもあるが、フェスなどでは演奏されない曲も多くなっただけに、こうしてライブで聴けるのが実に嬉しい。
スコットメインボーカルの2曲目はカップリング曲の「Moth To Flame」というレアな選曲で、さらに激しく走り抜けるようなパンク曲が多かったこの日の中で深く自己の中に潜っていくような「Get Me Down」は大きなアクセントを残していてインパクトが大きい。
そして
「俺は高校生の頃とかに本当に嫌われ者だった。みんなが海水浴とか行ったりしてるのを楽しそうだな、って思いながら1人でバイクで海に行って。そういう人生もかっこいいんじゃないかと思って生きてて。
ハリネズミみたいに、遠目で見てると面白いんだけど、触ると痛くなる。でもバンドを始めてからそんな俺を面白いって言ってくれるやつがたくさんできて。それってなんかに似てるな、って思ったんだけど、その嫌われまくってた高校生の時に俺が学祭でバンドとしてステージに立ったらみんなが楽しそうな顔をしてくれた時と同じだなって。だからお前らも俺を面白いやつだって思ってくれてるのがわかった!」
と、過去の自分がバンドを始めて大きく変わったことを語ると、細美のことを最も面白いと思っている男であるTOSHI-LOWとの2人の曲である「Two Little Fishes」では曲途中でTOSHI-LOWが上半身裸で登場という赤鬼スタイル。TOSHI-LOWのコーラスパートでの振り付けもいつの間にか完全に定着したのか、観客がみんな一緒にやっているのがシュールで面白いが、ラストサビ前での細美とTOSHI-LOWが向かい合って交互に歌う姿は両者の揺るぎない絆を感じさせる。
この2人は震災以降に急接近して、こうした関係性になった。もうお互いに30代後半という年齢の時である。30代ともなると、なかなか新しい友達が生まれにくい。基本的に普段交流するのは仕事相手ばかりだし、そうした人と「友達」という関係、さらには深い絆を持つというのは実に難しい。しかしこの2人の姿を見ていると、まだ出会ってはいないが、この先の人生で我々もこうした人に出会えることもあるんじゃないか、と思える。そしてその2人が抱き合う姿はもう40代半ばのおっさん同士とは思えないくらいに美しい。
時間的にも、TOSHI-LOWが出てきたっていうことを踏まえてもそろそろ終わりかな?と思っていたら、「明日公園で」でスコットがベースを銃のようにしてドラムの一瀬に向けたりと、さらに曲を続ける。
「最後にスコットが決めるぜー!」
と演奏された、スコットのバンドALLiSTERの「Somewhere On Fullerton」はワンマンでの定番曲であり、もはやMONOEYESの曲でもあると言っていいくらいだが、スコットはALLiSTERでこの曲を演奏していた時、後に日本人たちと一緒のバンドでこの曲を演奏し、日本人の観客がみんな笑顔でダイブしていくという光景を想像していただろうか。それはスコットのメンバーとファンへの愛によって生み出された光景である。
これでいよいよ本編は終わりかと思いきや、
「このツアーの東京をこの2日間でここでやろうと思ってCOASTに問い合わせたら、その2日間は違うバンドが仮押さえしてるので、その仮押さえがなくなればできますと。そしたら仮押さえがなくなったんで無事にできるようになったんだけど、ちなみにその仮押さえしてたバンドって誰?って聞いたら、BRAHMANです、って。自分たちのツアーの追加公演用に押さえてたのを俺たちに譲ってくれたんだって。結局出てるけど(笑)
俺はあいつの隣に並んでも恥ずかしくないくらいに強くなりたいと思うのに、あいつはいつも一歩先にいる。でも俺はいつか追う立場じゃないところまで行きたい。追いかける方が楽だからね。いつかあいつの一歩先を歩けるように、もっともっと強くなる」
と、本来はこの2日間はBRAHMANがワンマンを行う予定であったことを明かす。
TOSHI-LOWはこうした他者への善意を自分の口から語るようなことはしない。ひたすらにその行動の姿を自身の背中で見せる。だからその姿を見ている人たちがいるからこそ、TOSHI-LOWの人間らしさ、優しさが広がっていく。TOSHI-LOWが本当に強いのは、肉体ではなくてその精神である。
そして信じられないくらいに素朴な歌詞の「Vostok」から、さらにラストは「Dim The Lights」の最後の曲にして、またここから行こうと気分を高揚させる「3,2,1 Go」と、ツーマンなのにもかかわらず、まるでワンマン並みのボリュームのライブであった。
アンコールでは細美武士が上半身裸で登場し、
「木札作戦、ご協力いただいた方、ありがとうございました!あの木札はみかん公園の遊具を解体したものなんだけど、みかん公園に弾き語りに行った時に「STAND BY ME」を歌ったら、77歳のカズエさんっていう人が、「あのDarlin Darlin~っていう曲をアンコールでもう一回歌って欲しいって言ってきて。「矢井田瞳のかな?」って思ったんだけど(笑)、「いいっすよ~」って言って歌ったあとに、カズエさんに「またね!」って言ったら、
「私77歳だから、もう会えないかもしれない」
って言われて。ああ、そうだな、いつでもこれが最後かもしれない。また会える人がいたらまた。さよなら!」
と、被災地に足を運び続けている細美だからこそ話せるエピソードを語り、最後のスコットボーカル曲「Borders & Walls」から、まさに今この場所、こういう世界があるならまた行ってみたいと思わせてくれるほどに感動的な「グラニート」で締めくくった。
しかしそれでもアンコールを求める声は止まず、ダブルアンコールに。
「俺たちのことを覚えていてくれっていう意味を込めて」
と言って、個人的にMONOEYESの持ち曲の中で最もラストに相応しいと思っている「Remember Me」でダイブやモッシュではなく、ミドルテンポだが轟音の演奏と、パンク的なバンドのボーカルの中では最も素晴らしい歌唱力の持ち主である細美武士の、これだけ長い時間と多い曲数を、しかも酒を飲みながらなのに全く変わらないどころか、さらに伸びやかになるという驚異的なボーカルが描き出す景色は本当に美しかった。この瞬間を、覚えていないわけがない。
「ありがとうございました、MONOEYESと、BRAHMANでした!」
とあくまでこのライブはBRAHMANが一緒だからこそ作れたということを最後まで強調すると、細美はスコットのピックを勝手にばら撒き、一瀬は本当にやり切ったような表情で何度も顔を下げてからステージを後にした。メンバーがいなくなっても、熱気だけは確かに残っていた。
もはや5月以降、ロックシーン最大の話題はELLEGARDENの再始動である。しかし、完全に真似できるバンドがいないくらいに独自の音楽を追求しているthe HIATUSに比べて、ELLEGARDENができるのにもかかわらず、ELLEGARDENと音楽性が近いMONOEYESを細美がやっている意味とは?
それは間違いなくバンドのメンバーである。ELLEGARDENにはないものが確かにMONOEYESにはある。それはスコットのボーカル曲もそうだし、このメンバーだからこそ音から滲み出る人間性。もはや、このバンドは「上手く演奏しよう」という気持ちなど全くないだろう。それよりも、ただただ思いっきり激しい音楽を楽しいやつらとやりたい。そもそもが東北にライブをやるために足を運ぶ時の細美武士のソロプロジェクトだったはずが、完全にこの4人でしかないバンドになったという事実がそれを証明している。
それはMONOEYESだけでなく、「このメンバーである意義」は違えど、the HIATUSもそう。そして、もちろんELLEGARDENも。だからELLEGARDENは休止を選んだのだ。細美武士のバンドには必ずそのメンバーと一緒でなければならない理由がある。だからこそ、どのバンドのライブを見ても全く違う感動がある。そして生きている実感をくれる。果たしてこれから3つのバンドを自身の音楽生活の中でどうやって並行させていくのか。ELLEGARDENが復活しても、MONOEYESだってガンガンやって欲しい。
1.Leaving Without Us
2.Free Throw
3.My Instant Song
4.When I Was A King
5.Parking Lot
6.Roxette
7.End Of The Story
8.Get Up
9.Run Run
10.Like We've Never Lost
11.Moth To Flame
12.Get Me Down
13.Two Little Fishes feat.TOSHI-LOW
14.明日公園で
15.Somewhere On Fullerton
16.Vostok
17.3,2,1 Go
encore1
18.Borders & Walls
19.グラニート
encore2
20.Remember Me
Two Little Fishes
https://youtu.be/uRGa3eooU1A
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