THE BAWDIES × go! go! vanillas ”Rockin' Zombies Tour 2016” @Zepp DiverCity 10/29
- 2016/10/30
- 12:44
常に活動の軸を「ロックンロール」に定めてきた、THE BAWDIESとgo! go! vanillasという同事務所所属の先輩と後輩というよりはもはや自他共に兄弟を自認する2組がスプリット盤「Rockin' Zombies」をリリースしたことにより、当然その2組でスプリットツアーを開催。そのファイナルがこの日のZepp DiverCity。すでにTHE BAWDIESはもちろん、go! go! vanillasもZeppキャパでワンマンをやるようになっているため、チケットは当然ソールドアウトし、この日はライブ中継も行なわれる。
ハロウィンシーズンということでDiverCityのフードコートや施設内には仮装やゾンビメイクをした若い女性とTシャツを着てタオルを首にかけるライブ参加者が入り混じるカオスな状況になっている。物販ではスプリットグッズに加えて両バンドのグッズも販売されているが、どちらのグッズもこのツアーに寄せたデザインになっており、どれを着ていても「Rockin' Zombies」という統一感を感じさせる。
18時になると場内が暗転し、SEが流れて先攻として登場したのは、やはり弟のgo! go! vanillas。ステージにメンバーが揃うと、牧、プリティ、柳沢の3人が一斉にジャンプして音を鳴らし、「マジック」からスタート。牧は早くも歌詞に「Zepp DiverCity」という単語を入れたりとこのファイナルの日ならではのアレンジを見せてくれる。
バンドのキラーチューン「エマ」では薄暗い中で天井のミラーボールが回って観客を飛び跳ねさせて踊らせ、さらにはメンバーと観客一体となっての合唱をしたりと、序盤からロックンロールパーティーの楽しさに満ち溢れている。
この日はハロウィン間近ということでプリティが昔、まだハロウィンの仮装が日本に定着する前にメンバーで集まる時に「全員仮装しようぜ!」と言われて特殊メイクまで施してゾンビの仮装をして集合場所に行ったら他のメンバーは普通の格好をしていてものすごく恥ずかしくてすぐ帰った、というこの時期ならではの思い出話から、そのプリティが手がけたゾンビならぬデッドマンの「デッドマンズチェイス」ではメンバーが交代でボーカルを取るのだが、ドラムを叩きながら歌うジェットセイヤはマイクが下にズレて歌えなくなるとマイクスタンドを蹴っ飛ばして歌うのをやめてドラムを叩きまくるという自由っぷりを早くも見せる。この日、これ以上の自由っぷりがこの後見れることになるとは…。
このバンド加入前にはボーカルでもあった柳沢が真ん中で牧に匹敵するくらいに上手いボーカルを披露すると、最後には曲を手がけたプリティが真ん中で歌って締める。シングルのカップリングに収録されていた時はこの曲がここまでのキラーチューンになるとは思っていなかったが、メンバーと一緒に歌えるサビのキャッチーさも含めて、今やこのバンドのライブにおいてはなくてはならない存在の曲になってきている。
「ホラーショー」でもコーラス部分で合唱が起きるなど、ひたすらに楽しいロックンロールパーティーという様相は続く「セレモニー」で一変。牧が
「ロックンロールで、歌詞で会話したい」
という想いを込めたこの曲はパーティーのように盛り上がる曲ではないぶん、その歌詞と言葉をしっかりと噛み締めながら聞くことができる。
ツアーファイナルということで、このツアーの思い出をまずはプリティが語るのだが、
「ROYさん、俺にめちゃ当たりが強いから俺のこと嫌いなのかなぁ?って思ってたんだけど、打ち上げで隣の席になるとめちゃご飯よそってくれるから、やっぱりいい兄貴だな~って思ってたら、明らかにお腹いっぱいになってもどんどんよそってくるから、お腹いっぱいですって言ったら、めちゃ笑ってたから、嫌がらせされてただけだった(笑)」
と先輩ROYのいたずらっ子ぶりを明かすと、柳沢も
「ライブ後にホテルのMARCYさんの部屋で朝までyoutubeで音楽聴いてたら、新幹線の時間が近くなってたんで事務所の社長に新幹線のチケットを貰おうと思って、寝てる社長の部屋をノックして起こしたらその瞬間にMARCYさんがいなくなってて、俺1人が社長を無理矢理起こした、みたいな感じになってた(笑)」
と先輩のいじりっぷりを語る。こういうエピソードを聞くと、THE BAWDIESの面々がバニラズを本当に可愛がっているのがよくわかる。
そしてスプリット盤に収録された兄貴の「IT'S TOO LATE」のカバーももちろん披露。基本的にサウンドは原曲に忠実だが日本語訳バージョンというのがやはりこのバンドらしい。牧はまるでROYのように大声を超えて振り切れたシャウトを連発している。
後半は同じくスプリット盤に収録された、ツービートの「ヒンキーディンキーパーティークルー」からさらにパーティーっぷりを強めていく。「ヒートアイランド」では観客がタオルを掲げてから振り回して、パーティーから祭りに様相が一変するが、ロックンロールにあまり合うイメージがない「和」の要素をここまで融合させているのは実に見事。
そして「カウンターアクション」で柳沢のギターソロが唸りを上げる中、おそらくこのツアーの他公演にすでに行っているファンが「ありがとうー!」と終わりを知っているかのように叫ぶ中、最後に演奏されたのは「オリエント」。近年はライブで演奏される機会も少なくなってきている曲だが、
「僕を駆り立てる ここは東京!」
という歌詞の「東京」というフレーズを牧がまるでこの場所で歌われるべき曲であるかのように叫ぶ。その直後に加速していく演奏、そして最後に冒頭と同じように揃ってジャンプする3人。このツアーはこのバンドを本当にカッコいいバンドに成長させた、それが実によくわかるライブだった。
牧はこの日、「THE BAWDIESに勝ちに来てるんですよ!」と言った。その言葉の裏にはこれまでに悔しい思いをたくさんしてきた経験もあったと思う。
実際に自分が初めてこのバンドのライブを見たスペシャ列伝ツアーを一緒に廻った、KANA-BOON、キュウソネコカミ、SHISHAMOというバンドたちはこのバンドのはるか先を走っている。そういう意味では負けたくない存在がたくさんいるが、その3バンドが新たなトライアルをしてそれまでのイメージから脱却しようとしている中、バニラズはひたすらに自分たちのロックンロールを磨き上げていく道を選んだ。そしてこの日のライブを見ると、このスタイルのままでいつかそのバンドたちと肩を並べられる日が来る予感がしている。それくらいにこのバンドにはまだまだ底知れぬ伸び代を感じている。
THE BAWDIESがそうであったように、このバンドも今ロックンロールの「マジック」の真っ只中にいる。
1.マジック
2.ニューゲーム
3.エマ
4.デッドマンズチェイス
5.ホラーショー
6.セレモニー
7.スーパーワーカー
8.イッツ・トゥー・レイト
9.ヒンキーディンキーパーティークルー
10.ヒートアイランド
11.カウンターアクション
12.オリエント
ヒンキーディンキーパーティークルー
https://youtu.be/EDmD4MN8f8s
そして転換を挟んでSEの「ダンス天国」が流れると、手拍子に迎えられながら登場したのは、おなじみの爽やかな水色のスーツに身を包んだ、THE BAWDIESのメンバー。MARCYが金髪になっているのが見た目のイメージを一新させている。
「みなさん、心を裸にする準備はできてますか!?」
とROYがいきなり熱い言葉をぶつけまくる中、バニラズとは対照的にスプリット盤に収録された、初期衝動に立ち返ったかのようなガレージロックナンバー「45s」からスタートするのだが、やはりこのバンドのグルーヴと音圧は凄まじい。特別な楽器や機材は一切使ってない、ギターとベースとドラムだけのロックンロール。そこに特別さを与えているのはやはりROYのロックンロールの神に選ばれたとしか思えないようなボーカルである。いつ聴いても本当にすごい。
夏フェスでも毎回演奏していたメドレーで飛び跳ねさせまくると、
「私、いつも心を裸にしてくださいと言わせていただいてますが、今日は心のパンティを引きちぎってやる!そんなパンティークラッシャー渡辺ですが、今日みなさんがお家に帰った時に親御さんに「今日何してたの?」って聞かれたら「パンティークラッシャー渡辺に会ってた」って言えないじゃないですか(笑)
だからこう言ってください、パンティークラッシャー渡辺改め、心のパンティを脱がす男こと、ココパン先生に会っていたと!」
とおなじみのMCももはや名人芸の域にまで高められており、客席は常に笑いが絶えない。
そんな中「懐かしい曲を」と言って演奏されたのは、ROY、JIM、TAXMANの3人がセンターに集まってネックを合わせるようにしてイントロのフレーズを演奏する「I BEG YOU」。そのまま「I'M IN LOVE WITH YOU」と懐かしい曲が続くと、「LEMONADE」と聴かせる曲を続ける。ロックンロールパーティーというイメージの強いTHE BAWDIESだが、こうして日本のロックンロールのトップランナーになれたのはこうしたミドル~バラードの曲でも名曲ばかりだから。それこそかつては「SAD SONG」という名バラードをよく演奏していたし。
そんな熱狂からいったん落ち着いた雰囲気の中、ROYが懐かしい曲たちについてしみじみと語り出すと、
「I BEG YOUが出たのが2007年の時。その時、バニラズの柳沢なんか中学生ですよ?中学生と言えばうちのMARCYさんが泳げないのが悔しくてイルカの絵の海パン履いてた時代ですよ(笑)」
となぜかMARCYいじりに展開し、話はバニラズと同様にツアーの思い出話に。
「バニラズの牧がね、僕に対するリスペクトが日に日に薄れてきてる気がするんですよ。最近すぐ僕のお腹をぎゅーってつねってくるし(笑)
ツアー中に広島に行った時に、俺とTAXMANと牧と柳沢とプリティで厳島神社に行ったんですよ。鹿ばっかりいるところなんですけど、牧が俺と間違えてるのか、鹿のお腹をつねったりしてて(笑)そしたらTAXMANが野鳥の写真を撮りに行ってる時に、修学旅行の女子中学生3人組みが駆け寄ってきて。「バニラズのみなさんですよね?握手してください!」って。
で、俺はセイヤになりきろうかどうかって考えたんですけど(笑)、正直にTHE BAWDIESのROYです!って言って握手しようとしたら、「いや、大丈夫です」って言われて(笑)
それでもこっちから手を掴んで無理矢理握手して。そしたら最後の子が握手できないように手を後ろで組んでて(笑)その瞬間に牧が俺のお腹をぎゅーってつねってきた(笑)」
とつい先日の爆笑の実体験を開陳すると、
「そんな鹿みたいな我々がバニラズの曲のカバーをしました!」
と言って演奏されたのはバニラズの「カウンターアクション」のカバー。なのだが、原曲に忠実なアレンジだったバニラズ側とは全く異なり、荒々しいガレージロックに生まれ変わっている。the telephonesのトリビュートで「sick rocks」をカバーした時もそうだったが、カバーであっても完全にTHE BAWDIESの曲になってしまっている。歌詞を英語にしているのも含め、もはやこの4人で演奏すればどんな曲でもBAWDIESの曲になってしまうのである。
TAXMANがボーカルを取る人気曲「B.P.B」から、ROYの母親も気に入っているという、来月発売のシングルに入る新曲「THE EDGE」を披露。「45s」同様に荒々しい演奏のロックンロールだが、こうした曲が続くと次のアルバムはロックンロールを軸とした内容になるんじゃないかと期待が高まる。
TAXMANがテンションが上がると巻き舌になりすぎてなんて言ってるのかわからなくなるというのをROYが本人のモノマネを演じて再び爆笑を巻き起こすと、イントロから客席のファンが飛び跳ねまくる「JUST BE COOL」からはクライマックスへ。
おなじみの「HOT DOG」前の寸劇はJIMがゾンビになり、MARCYがJIMに噛まれてゾンビになる→TAXMANがライフルで撃とうとする→ROYがMARCYの好きだったソーセージを食べさせる→MARCYが「ワオ!アメリカンテイスト!」と言って曲に突入するというものだったが、明らかにMARCYが恥ずかしそうに言っていたのが面白い。曲が始まるとやはり一気に熱狂に包まれるが。
「SING YOUR SONG」では観客の大シャウトも響き、ラストはバニラズがカバーした「IT'S TOO LATE」の圧倒的迫力の本家バージョンで最後にはROYが超ロングシャウトを決めて大歓声を浴びてバシッと締めくくった。
アンコールを待つ中、明らかにステージのセッティングはコラボを想定したものとなり、ドラムセットやアンプが人数分並べられている。するとやはり両バンドのメンバーが集結。バニラズのジェットセイヤは花束を抱え、バラの花を口にくわえているというよくわからない状態。
ROYと牧が中央で司会者のようにハンドマイクを持って喋ったりしながら、ギター3人、ドラム2人(ROYがハンドマイクなのでベースはプリティのみ)という超豪華な編成で演奏されたのは「COUNTRY ROAD」のカバー。ROYと牧がボーカルを分け合うのだがROYは英語、牧は日本語というバンドのスタイルをこうしたコラボでのカバーでも貫いている。
ROYが「ロックンロールというふるさとがあって、これからもロックンロールという道を進んで行く」とこの曲を選んだ理由を語ったが、その言葉通りにアレンジもツービートのロックンロールになっている。
そしてもう1曲この編成でコラボしたのは、これからもこの2組がロックンロールし続ける意志を示すTHE BAWDIESの「KEEP ON ROCKIN'」。この曲では牧も原曲通りに英語で歌うが、メンバーそれぞれのソロ回しを終えたあたりからジェットセイヤがドラム叩かずに踊りまくる、MARCYがセイヤのドラムに移動して叩く、柳沢とJIMがギターを交換して弾くというそれぞれがやりたい放題な状態になり、合唱というかシャウトパートで観客のシャウトを求めてロックンロールとはなにかをいつものように説明するROYの後ろでセイヤがはしゃぎまくっていてなかなか言葉が入ってこない(笑)
そんな中、観客が振り切ったシャウトができないのはステージのメンバーに振り切ったシャウトをしてないやつがいるからじゃないのかというROYの問いかけの犠牲になったのはやはりMARCY。ドラムセットから引きずり出されると、TAXMANが代わりにドラムのキックを叩く中、ステージ中央まで連れ出されてROYにシャウトを指南されるもMARCYがそんな大声を出せるわけもなく、結局は観客のさらに振り切ったシャウトを引き出すために使われた形に。しかし初めてTHE BAWDIESのライブを見た時から実感していたが、やはりこの曲の持つロックンロールのパワーは凄まじい。普段だったら絶対大声で叫んだりしないような人たちがみんな最大限の声で叫んでいる。それを引き出せるバンドとこの曲はもはやこの国のロックンロールのスタンダードナンバーにすべき。
そんな熱すぎるコラボを終えると、恒例の大将ことTAXMANのわっしょいで締めるのだが、隣で茶々を入れまくるROYのせいで全然わっしょいの説明が終わらない(笑)
なんやかんやで15分~20分くらいはTAXMANとROYのやり取りが繰り広げられたが、ここまで長くなったのは本当に楽しかったこのツアーが終わってしまうのが寂しくて終わって欲しくなかったという感情もあったんじゃないだろうか。
そんなやり取りもありつつ、最後はRockin' Zombiesということでゾンビバージョンのわっしょいをすると、プリティがステージのタオルを投げ込みまくり、メンバーが飲んでいたビールの缶すらも客席に投下される中、ROYと牧は
「明日から普通の男の子に戻ります!」
と昔のアイドルのようにこのツアーを締めた。が、最後に1人残ったジェットセイヤは
「ここはダイバーシティーだー!」
と叫んで客席にダイブしまくり、最後には着ていたTシャツを自ら引きちぎりまくるという、最もロックンロールなはみ出しっぷりを見せてステージを去って行った。
THE BAWDIESのメッセージは「ロックンロールは最高にカッコよくて楽しい」それだけである。しかしバンドがそれを体現するライブを毎回やってるからこそ、本当に楽しいし力をもらえる。それはこれまでも、この日もそうだった。
1.45s
2.メドレー (YOU GOTTA DANCE ~ YEAH ~ LEAVE YOUR TROUBLES ~ YOU GOTTA DANCE)
3.NO WAY
4.I BEG YOU
5.I'M IN LOVE WITH YOU
6.LEMONADE
7.COUNTER ACTION
8.B.P.B
9.THE EDGE
10.JUST BE COOL
11.HOT DOG
12.SING YOUR SONG
13.IT'S TOO LATE
encore
14.COUNTRY ROAD w/ go! go! vanillas
15.KEEP ON ROCKIN' w/ go! go! vanillas
45s
https://youtu.be/pJsgdKES6Cs
THE BAWDIESとgo! go! vanillasの軸であるロックンロールは今や日本はおろか世界ですら全く流行っているスタイルではない。しかしそのロックンロールに若い人がこんなにもたくさん集まっている。何度死んでもこうしてゾンビのように蘇るロックンロールは、やはり無敵だ。
またこの2組がこうして集まる時には、もっと大きな会場で、たくさんの人が集まってロックンロールを楽しむような状況になっていることを願う。
Next→ 11/5 Bowline @新木場STUDIO COAST
ハロウィンシーズンということでDiverCityのフードコートや施設内には仮装やゾンビメイクをした若い女性とTシャツを着てタオルを首にかけるライブ参加者が入り混じるカオスな状況になっている。物販ではスプリットグッズに加えて両バンドのグッズも販売されているが、どちらのグッズもこのツアーに寄せたデザインになっており、どれを着ていても「Rockin' Zombies」という統一感を感じさせる。
18時になると場内が暗転し、SEが流れて先攻として登場したのは、やはり弟のgo! go! vanillas。ステージにメンバーが揃うと、牧、プリティ、柳沢の3人が一斉にジャンプして音を鳴らし、「マジック」からスタート。牧は早くも歌詞に「Zepp DiverCity」という単語を入れたりとこのファイナルの日ならではのアレンジを見せてくれる。
バンドのキラーチューン「エマ」では薄暗い中で天井のミラーボールが回って観客を飛び跳ねさせて踊らせ、さらにはメンバーと観客一体となっての合唱をしたりと、序盤からロックンロールパーティーの楽しさに満ち溢れている。
この日はハロウィン間近ということでプリティが昔、まだハロウィンの仮装が日本に定着する前にメンバーで集まる時に「全員仮装しようぜ!」と言われて特殊メイクまで施してゾンビの仮装をして集合場所に行ったら他のメンバーは普通の格好をしていてものすごく恥ずかしくてすぐ帰った、というこの時期ならではの思い出話から、そのプリティが手がけたゾンビならぬデッドマンの「デッドマンズチェイス」ではメンバーが交代でボーカルを取るのだが、ドラムを叩きながら歌うジェットセイヤはマイクが下にズレて歌えなくなるとマイクスタンドを蹴っ飛ばして歌うのをやめてドラムを叩きまくるという自由っぷりを早くも見せる。この日、これ以上の自由っぷりがこの後見れることになるとは…。
このバンド加入前にはボーカルでもあった柳沢が真ん中で牧に匹敵するくらいに上手いボーカルを披露すると、最後には曲を手がけたプリティが真ん中で歌って締める。シングルのカップリングに収録されていた時はこの曲がここまでのキラーチューンになるとは思っていなかったが、メンバーと一緒に歌えるサビのキャッチーさも含めて、今やこのバンドのライブにおいてはなくてはならない存在の曲になってきている。
「ホラーショー」でもコーラス部分で合唱が起きるなど、ひたすらに楽しいロックンロールパーティーという様相は続く「セレモニー」で一変。牧が
「ロックンロールで、歌詞で会話したい」
という想いを込めたこの曲はパーティーのように盛り上がる曲ではないぶん、その歌詞と言葉をしっかりと噛み締めながら聞くことができる。
ツアーファイナルということで、このツアーの思い出をまずはプリティが語るのだが、
「ROYさん、俺にめちゃ当たりが強いから俺のこと嫌いなのかなぁ?って思ってたんだけど、打ち上げで隣の席になるとめちゃご飯よそってくれるから、やっぱりいい兄貴だな~って思ってたら、明らかにお腹いっぱいになってもどんどんよそってくるから、お腹いっぱいですって言ったら、めちゃ笑ってたから、嫌がらせされてただけだった(笑)」
と先輩ROYのいたずらっ子ぶりを明かすと、柳沢も
「ライブ後にホテルのMARCYさんの部屋で朝までyoutubeで音楽聴いてたら、新幹線の時間が近くなってたんで事務所の社長に新幹線のチケットを貰おうと思って、寝てる社長の部屋をノックして起こしたらその瞬間にMARCYさんがいなくなってて、俺1人が社長を無理矢理起こした、みたいな感じになってた(笑)」
と先輩のいじりっぷりを語る。こういうエピソードを聞くと、THE BAWDIESの面々がバニラズを本当に可愛がっているのがよくわかる。
そしてスプリット盤に収録された兄貴の「IT'S TOO LATE」のカバーももちろん披露。基本的にサウンドは原曲に忠実だが日本語訳バージョンというのがやはりこのバンドらしい。牧はまるでROYのように大声を超えて振り切れたシャウトを連発している。
後半は同じくスプリット盤に収録された、ツービートの「ヒンキーディンキーパーティークルー」からさらにパーティーっぷりを強めていく。「ヒートアイランド」では観客がタオルを掲げてから振り回して、パーティーから祭りに様相が一変するが、ロックンロールにあまり合うイメージがない「和」の要素をここまで融合させているのは実に見事。
そして「カウンターアクション」で柳沢のギターソロが唸りを上げる中、おそらくこのツアーの他公演にすでに行っているファンが「ありがとうー!」と終わりを知っているかのように叫ぶ中、最後に演奏されたのは「オリエント」。近年はライブで演奏される機会も少なくなってきている曲だが、
「僕を駆り立てる ここは東京!」
という歌詞の「東京」というフレーズを牧がまるでこの場所で歌われるべき曲であるかのように叫ぶ。その直後に加速していく演奏、そして最後に冒頭と同じように揃ってジャンプする3人。このツアーはこのバンドを本当にカッコいいバンドに成長させた、それが実によくわかるライブだった。
牧はこの日、「THE BAWDIESに勝ちに来てるんですよ!」と言った。その言葉の裏にはこれまでに悔しい思いをたくさんしてきた経験もあったと思う。
実際に自分が初めてこのバンドのライブを見たスペシャ列伝ツアーを一緒に廻った、KANA-BOON、キュウソネコカミ、SHISHAMOというバンドたちはこのバンドのはるか先を走っている。そういう意味では負けたくない存在がたくさんいるが、その3バンドが新たなトライアルをしてそれまでのイメージから脱却しようとしている中、バニラズはひたすらに自分たちのロックンロールを磨き上げていく道を選んだ。そしてこの日のライブを見ると、このスタイルのままでいつかそのバンドたちと肩を並べられる日が来る予感がしている。それくらいにこのバンドにはまだまだ底知れぬ伸び代を感じている。
THE BAWDIESがそうであったように、このバンドも今ロックンロールの「マジック」の真っ只中にいる。
1.マジック
2.ニューゲーム
3.エマ
4.デッドマンズチェイス
5.ホラーショー
6.セレモニー
7.スーパーワーカー
8.イッツ・トゥー・レイト
9.ヒンキーディンキーパーティークルー
10.ヒートアイランド
11.カウンターアクション
12.オリエント
ヒンキーディンキーパーティークルー
https://youtu.be/EDmD4MN8f8s
そして転換を挟んでSEの「ダンス天国」が流れると、手拍子に迎えられながら登場したのは、おなじみの爽やかな水色のスーツに身を包んだ、THE BAWDIESのメンバー。MARCYが金髪になっているのが見た目のイメージを一新させている。
「みなさん、心を裸にする準備はできてますか!?」
とROYがいきなり熱い言葉をぶつけまくる中、バニラズとは対照的にスプリット盤に収録された、初期衝動に立ち返ったかのようなガレージロックナンバー「45s」からスタートするのだが、やはりこのバンドのグルーヴと音圧は凄まじい。特別な楽器や機材は一切使ってない、ギターとベースとドラムだけのロックンロール。そこに特別さを与えているのはやはりROYのロックンロールの神に選ばれたとしか思えないようなボーカルである。いつ聴いても本当にすごい。
夏フェスでも毎回演奏していたメドレーで飛び跳ねさせまくると、
「私、いつも心を裸にしてくださいと言わせていただいてますが、今日は心のパンティを引きちぎってやる!そんなパンティークラッシャー渡辺ですが、今日みなさんがお家に帰った時に親御さんに「今日何してたの?」って聞かれたら「パンティークラッシャー渡辺に会ってた」って言えないじゃないですか(笑)
だからこう言ってください、パンティークラッシャー渡辺改め、心のパンティを脱がす男こと、ココパン先生に会っていたと!」
とおなじみのMCももはや名人芸の域にまで高められており、客席は常に笑いが絶えない。
そんな中「懐かしい曲を」と言って演奏されたのは、ROY、JIM、TAXMANの3人がセンターに集まってネックを合わせるようにしてイントロのフレーズを演奏する「I BEG YOU」。そのまま「I'M IN LOVE WITH YOU」と懐かしい曲が続くと、「LEMONADE」と聴かせる曲を続ける。ロックンロールパーティーというイメージの強いTHE BAWDIESだが、こうして日本のロックンロールのトップランナーになれたのはこうしたミドル~バラードの曲でも名曲ばかりだから。それこそかつては「SAD SONG」という名バラードをよく演奏していたし。
そんな熱狂からいったん落ち着いた雰囲気の中、ROYが懐かしい曲たちについてしみじみと語り出すと、
「I BEG YOUが出たのが2007年の時。その時、バニラズの柳沢なんか中学生ですよ?中学生と言えばうちのMARCYさんが泳げないのが悔しくてイルカの絵の海パン履いてた時代ですよ(笑)」
となぜかMARCYいじりに展開し、話はバニラズと同様にツアーの思い出話に。
「バニラズの牧がね、僕に対するリスペクトが日に日に薄れてきてる気がするんですよ。最近すぐ僕のお腹をぎゅーってつねってくるし(笑)
ツアー中に広島に行った時に、俺とTAXMANと牧と柳沢とプリティで厳島神社に行ったんですよ。鹿ばっかりいるところなんですけど、牧が俺と間違えてるのか、鹿のお腹をつねったりしてて(笑)そしたらTAXMANが野鳥の写真を撮りに行ってる時に、修学旅行の女子中学生3人組みが駆け寄ってきて。「バニラズのみなさんですよね?握手してください!」って。
で、俺はセイヤになりきろうかどうかって考えたんですけど(笑)、正直にTHE BAWDIESのROYです!って言って握手しようとしたら、「いや、大丈夫です」って言われて(笑)
それでもこっちから手を掴んで無理矢理握手して。そしたら最後の子が握手できないように手を後ろで組んでて(笑)その瞬間に牧が俺のお腹をぎゅーってつねってきた(笑)」
とつい先日の爆笑の実体験を開陳すると、
「そんな鹿みたいな我々がバニラズの曲のカバーをしました!」
と言って演奏されたのはバニラズの「カウンターアクション」のカバー。なのだが、原曲に忠実なアレンジだったバニラズ側とは全く異なり、荒々しいガレージロックに生まれ変わっている。the telephonesのトリビュートで「sick rocks」をカバーした時もそうだったが、カバーであっても完全にTHE BAWDIESの曲になってしまっている。歌詞を英語にしているのも含め、もはやこの4人で演奏すればどんな曲でもBAWDIESの曲になってしまうのである。
TAXMANがボーカルを取る人気曲「B.P.B」から、ROYの母親も気に入っているという、来月発売のシングルに入る新曲「THE EDGE」を披露。「45s」同様に荒々しい演奏のロックンロールだが、こうした曲が続くと次のアルバムはロックンロールを軸とした内容になるんじゃないかと期待が高まる。
TAXMANがテンションが上がると巻き舌になりすぎてなんて言ってるのかわからなくなるというのをROYが本人のモノマネを演じて再び爆笑を巻き起こすと、イントロから客席のファンが飛び跳ねまくる「JUST BE COOL」からはクライマックスへ。
おなじみの「HOT DOG」前の寸劇はJIMがゾンビになり、MARCYがJIMに噛まれてゾンビになる→TAXMANがライフルで撃とうとする→ROYがMARCYの好きだったソーセージを食べさせる→MARCYが「ワオ!アメリカンテイスト!」と言って曲に突入するというものだったが、明らかにMARCYが恥ずかしそうに言っていたのが面白い。曲が始まるとやはり一気に熱狂に包まれるが。
「SING YOUR SONG」では観客の大シャウトも響き、ラストはバニラズがカバーした「IT'S TOO LATE」の圧倒的迫力の本家バージョンで最後にはROYが超ロングシャウトを決めて大歓声を浴びてバシッと締めくくった。
アンコールを待つ中、明らかにステージのセッティングはコラボを想定したものとなり、ドラムセットやアンプが人数分並べられている。するとやはり両バンドのメンバーが集結。バニラズのジェットセイヤは花束を抱え、バラの花を口にくわえているというよくわからない状態。
ROYと牧が中央で司会者のようにハンドマイクを持って喋ったりしながら、ギター3人、ドラム2人(ROYがハンドマイクなのでベースはプリティのみ)という超豪華な編成で演奏されたのは「COUNTRY ROAD」のカバー。ROYと牧がボーカルを分け合うのだがROYは英語、牧は日本語というバンドのスタイルをこうしたコラボでのカバーでも貫いている。
ROYが「ロックンロールというふるさとがあって、これからもロックンロールという道を進んで行く」とこの曲を選んだ理由を語ったが、その言葉通りにアレンジもツービートのロックンロールになっている。
そしてもう1曲この編成でコラボしたのは、これからもこの2組がロックンロールし続ける意志を示すTHE BAWDIESの「KEEP ON ROCKIN'」。この曲では牧も原曲通りに英語で歌うが、メンバーそれぞれのソロ回しを終えたあたりからジェットセイヤがドラム叩かずに踊りまくる、MARCYがセイヤのドラムに移動して叩く、柳沢とJIMがギターを交換して弾くというそれぞれがやりたい放題な状態になり、合唱というかシャウトパートで観客のシャウトを求めてロックンロールとはなにかをいつものように説明するROYの後ろでセイヤがはしゃぎまくっていてなかなか言葉が入ってこない(笑)
そんな中、観客が振り切ったシャウトができないのはステージのメンバーに振り切ったシャウトをしてないやつがいるからじゃないのかというROYの問いかけの犠牲になったのはやはりMARCY。ドラムセットから引きずり出されると、TAXMANが代わりにドラムのキックを叩く中、ステージ中央まで連れ出されてROYにシャウトを指南されるもMARCYがそんな大声を出せるわけもなく、結局は観客のさらに振り切ったシャウトを引き出すために使われた形に。しかし初めてTHE BAWDIESのライブを見た時から実感していたが、やはりこの曲の持つロックンロールのパワーは凄まじい。普段だったら絶対大声で叫んだりしないような人たちがみんな最大限の声で叫んでいる。それを引き出せるバンドとこの曲はもはやこの国のロックンロールのスタンダードナンバーにすべき。
そんな熱すぎるコラボを終えると、恒例の大将ことTAXMANのわっしょいで締めるのだが、隣で茶々を入れまくるROYのせいで全然わっしょいの説明が終わらない(笑)
なんやかんやで15分~20分くらいはTAXMANとROYのやり取りが繰り広げられたが、ここまで長くなったのは本当に楽しかったこのツアーが終わってしまうのが寂しくて終わって欲しくなかったという感情もあったんじゃないだろうか。
そんなやり取りもありつつ、最後はRockin' Zombiesということでゾンビバージョンのわっしょいをすると、プリティがステージのタオルを投げ込みまくり、メンバーが飲んでいたビールの缶すらも客席に投下される中、ROYと牧は
「明日から普通の男の子に戻ります!」
と昔のアイドルのようにこのツアーを締めた。が、最後に1人残ったジェットセイヤは
「ここはダイバーシティーだー!」
と叫んで客席にダイブしまくり、最後には着ていたTシャツを自ら引きちぎりまくるという、最もロックンロールなはみ出しっぷりを見せてステージを去って行った。
THE BAWDIESのメッセージは「ロックンロールは最高にカッコよくて楽しい」それだけである。しかしバンドがそれを体現するライブを毎回やってるからこそ、本当に楽しいし力をもらえる。それはこれまでも、この日もそうだった。
1.45s
2.メドレー (YOU GOTTA DANCE ~ YEAH ~ LEAVE YOUR TROUBLES ~ YOU GOTTA DANCE)
3.NO WAY
4.I BEG YOU
5.I'M IN LOVE WITH YOU
6.LEMONADE
7.COUNTER ACTION
8.B.P.B
9.THE EDGE
10.JUST BE COOL
11.HOT DOG
12.SING YOUR SONG
13.IT'S TOO LATE
encore
14.COUNTRY ROAD w/ go! go! vanillas
15.KEEP ON ROCKIN' w/ go! go! vanillas
45s
https://youtu.be/pJsgdKES6Cs
THE BAWDIESとgo! go! vanillasの軸であるロックンロールは今や日本はおろか世界ですら全く流行っているスタイルではない。しかしそのロックンロールに若い人がこんなにもたくさん集まっている。何度死んでもこうしてゾンビのように蘇るロックンロールは、やはり無敵だ。
またこの2組がこうして集まる時には、もっと大きな会場で、たくさんの人が集まってロックンロールを楽しむような状況になっていることを願う。
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TOWER RECORDS presents Bowline 2016 curated by キュウソネコカミ & TOWER RECORDS @新木場STUDIO COAST 11/5 ホーム
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