yonige presents かたつむりは投げつけないツアー ファイナル @高田馬場PHASE 10/14
- 2016/10/14
- 23:52
所属するMy Hair is Badのブレイクによって一躍注目レーベルとなった、THE NINTH APOLLO。そのTHE NINTH APOLLOのレーベルオーナーの渡辺旭氏のsmall indies tableに所属し、様々なフェスやイベントに呼ばれるようになっている大阪寝屋川の女子2人組バンド、yonigeが今年リリースのミニアルバム「かたつむりになりたい」のリリースツアーを開催。まだ地元の寝屋川でツアーファイナルを控えているが、東京編でのファイナルはこの日の高田馬場club PHASE。ゲストはTHE NINTH APOLLO所属のハルカミライ。
・ハルカミライ
先攻は八王子の4人組ハルカミライ。すでに超満員状態の観客の前でエモーショナルなギターロックを展開していく。レーベルのイメージ的にTHE NINTH APOLLOのギターロックというとやはりMy Hair is Badのイメージがよぎるし、実際にギターのサウンドなどはかなりマイヘアに似ているというか、かなり影響を感じさせるのだが、ボーカルの橋本学の太く逞しい声からはどこか青春パンクの要素も感じる。それは橋本が当時青春パンクバンドにも多かったピンボーカルであるという編成によるものかもしれないけれど。
「売れてるカッコ良くないバンドよりも、売れてないカッコいいバンドと一緒にやりたいってあいつは言った!バンドは心意気だと思った!それでツアー初日、中盤、ファイナルに呼んでもらったら出るしかないじゃないか!」
という、「2年前に初めて大阪のサーキットイベントで会った時に牛丸が泥酔しててちょっと引いた(笑)」というyonigeへの感謝のMCなど、ライブで見るとその熱量には呻らずにはいられないが、レーベルの先輩バンドに比べると、まだ「これぞ!」というような曲はない。しかしスケール的には小さく収まるようなバンドではないということはひしひしと感じるだけに、そうした曲(マイヘアで言うなら「真赤」、yonigeで言うなら「アボカド」など)が生まれたら、間違いなく大きな武器と言えるライブでの熱量も相まって、一気に突き抜けるような存在になりそうな予感もしている。
・yonige
転換のあと、場内にはThe SALOVERSの「ビオトープ -生物生育空間-」がSEとして流れ、牛丸ありさ(ボーカル&ギター)とごっきん(ベース)、サポートドラマーのkaichi(NEVERSTAND)の3人がステージに登場し、「センチメンタルシスター」からスタート。オーストラリアと日本のハーフである鮮やかな金髪美人の牛丸の声は高くはないし、可愛さという要素はあまり感じないが、だからこそyonigeのほぼすべての曲に共通する「別れ」の切なさに説得力が宿っている。
バンドの持つエモさは早くも2曲目の「恋と退屈」で爆発を見せる。轟音ギターとスリーピースならではの隙間を埋めるように音が動くごっきんのベースとサポートとは思えない軽やかで手数の多いkaichiのドラムの上に
「死に損ない死に損ない死に損ない死に損ない僕らは 不幸をどこかで待ってる」
という、牛丸の切実な叫びが響く。しかし歌詞の内容といい、この楽曲タイトルはやはり銀杏BOYZから来ているのだろうか、とファンの身としては思ってしまう。
しかしその轟音ギターによるサウンドのカッコよさももちろんだが、yonigeの魅力はその歌詞。結成して初めに牛丸が書いた曲の歌詞は
「生理2日目 ケツまで血まみれ」
という内容のものだったということだが(内容自体は引いてしまいがちだがちゃんと韻を踏んでるのは結成時点でさすがである)、
「三角公園でゲロを吐く最後」
というこれまでに他の誰も歌わなかったような歌詞がポップなメロディに乗った時、このメロディにはこの歌詞しかない!(逆もまた然り)と思わされるあたり、牛丸のソングライティング能力のあまりの高さに驚かされる。
「こんな週末にふさわしい曲を」
と一言言って「バッドエンド週末」を演奏したりと、このツアーが長かったということなどは話せど、基本的にはMCほぼなしで曲を連発していく。前回見た時はMCをしていたごっきんもこの日はMCせず。
中盤には「さよならアイデンティティー」でさらにエモさを加速させると、このツアーとアルバムのタイトルになっている
「かたつむりになりたい」
というフレーズが歌われる「あのこのゆくえ」と続く。そのフレーズだけだとただ単にシュールな歌詞だが、そのあとに
「男も女もない」
という、恋に破れるがゆえにかたつむりの生態に憧れるというフレーズが続くことによって、別れのラブソングにしてしまうという手腕は見事としか言いようがない。
「世間体なんてクソくらえ」
というサビの最後のフレーズでは牛丸が世間に対して中指を突き立てる。
サウンド的にはフェスなどで盛り上がるタイプの高速四つ打ちと言ってよく、実際にこの日唯一客席のミラーボールが輝いた「アボカド」はその面白すぎる歌詞を聴きながらだと全く踊れない。実際に客席は満員とはいえほとんど身動きを取らない人たちばかりだった(それは「恋と退屈」や「さよならアイデンティティー」などのアッパーな曲でもそうだった)が、もっと広い会場でライブをやるようになったらこの状態は一変するような気がしている。かつてチャットモンチーがデビュー直後は全く客席が身動きしなかったのが、ブレイク後はモッシュが起こるくらいになっていたように。
この日は2マンかつyonigeがメインということで珍しいロングセットであったためか、曲のアウトロと次の曲のイントロを繋げるようにアレンジした箇所も多々あったのだが、「アボカド」からkaichiが四つ打ちのキックを鳴らし続けてごっきんのベースが加わって始まった「バイ・マイ・サイ」、日記のようなショートチューン「最近のこと」と、エモさよりも切なさを強く感じさせる曲が続くと、
「45分ってなげーなーって思ってましたけど、やってみたらあっという間で。次で最後の曲です」
とまだ持ち曲が極端に少ないため、早くも最後の曲へ。
「バッドエンドを望むでもなく、ハッピーエンドにうんざりするでもなくー」
と言って軽快に慣らされたのは「トラック」。「かたつむりになりたい」の最後に収録されている曲だが、これまでのほとんどの曲が一人称の別れの曲という牛丸のパーソナルな歌詞ばかりだったのが、この曲はまるで少年が主人公の架空の物語のよう。そんな曲が最新作の最後に収録されているという事実が、これからのこのバンドのさらなる幅と聴かれる層の広がりを予感させる。これだけ独創的な歌詞が書ける牛丸が違うタイプの歌詞を書くとどうなるのか、楽しみでならない。
「バッドエンドでもハッピーエンドでもいい。また君に会えたら!」
という最後の牛丸の言葉がこのバンドの姿勢の全て。
一転してアンコールでは再び轟音ギターのサウンドが別れを告げる「さよならバイバイ」。
「さよならバイバイサンキュー 君のことは忘れないし」
というフレーズがかつて愛した人に対してのようでもあり、この日この会場にいた人に対して歌われていたかのようだった。
ついついこうしたバンドのことを語る際には使ってしまいがちだが、エモいと一言で言うと安っぽく感じてしまう。でもやはりyonigeは曲、歌詞、サウンドというバンドの音楽を構成するすべての要素がエモい。見た目は今時のギャルみたいな2人組だけど、すべての「死に損ない」のために鳴るこのギターロックが大きなステージで響く日も近い。
そしてそのエモさがSEに使っているThe SALOVERSの影響によるものだとしたら、彼らの音楽を愛していたものにとってこれ以上嬉しいことはない。
1.センチメンタルシスター
2.恋と退屈
3.最終回
4.サイドB
5.バッドエンド週末
6.さよならアイデンティティー
7.あのこのゆくえ
8.アボカド
9.バイ・マイ・サイ
10.最近のこと
11.トラック
encore
12.さよならバイバイ
アボカド
https://youtu.be/F3tnfgZhJME
Next→ 10/15 amazarashi @幕張メッセ
・ハルカミライ
先攻は八王子の4人組ハルカミライ。すでに超満員状態の観客の前でエモーショナルなギターロックを展開していく。レーベルのイメージ的にTHE NINTH APOLLOのギターロックというとやはりMy Hair is Badのイメージがよぎるし、実際にギターのサウンドなどはかなりマイヘアに似ているというか、かなり影響を感じさせるのだが、ボーカルの橋本学の太く逞しい声からはどこか青春パンクの要素も感じる。それは橋本が当時青春パンクバンドにも多かったピンボーカルであるという編成によるものかもしれないけれど。
「売れてるカッコ良くないバンドよりも、売れてないカッコいいバンドと一緒にやりたいってあいつは言った!バンドは心意気だと思った!それでツアー初日、中盤、ファイナルに呼んでもらったら出るしかないじゃないか!」
という、「2年前に初めて大阪のサーキットイベントで会った時に牛丸が泥酔しててちょっと引いた(笑)」というyonigeへの感謝のMCなど、ライブで見るとその熱量には呻らずにはいられないが、レーベルの先輩バンドに比べると、まだ「これぞ!」というような曲はない。しかしスケール的には小さく収まるようなバンドではないということはひしひしと感じるだけに、そうした曲(マイヘアで言うなら「真赤」、yonigeで言うなら「アボカド」など)が生まれたら、間違いなく大きな武器と言えるライブでの熱量も相まって、一気に突き抜けるような存在になりそうな予感もしている。
・yonige
転換のあと、場内にはThe SALOVERSの「ビオトープ -生物生育空間-」がSEとして流れ、牛丸ありさ(ボーカル&ギター)とごっきん(ベース)、サポートドラマーのkaichi(NEVERSTAND)の3人がステージに登場し、「センチメンタルシスター」からスタート。オーストラリアと日本のハーフである鮮やかな金髪美人の牛丸の声は高くはないし、可愛さという要素はあまり感じないが、だからこそyonigeのほぼすべての曲に共通する「別れ」の切なさに説得力が宿っている。
バンドの持つエモさは早くも2曲目の「恋と退屈」で爆発を見せる。轟音ギターとスリーピースならではの隙間を埋めるように音が動くごっきんのベースとサポートとは思えない軽やかで手数の多いkaichiのドラムの上に
「死に損ない死に損ない死に損ない死に損ない僕らは 不幸をどこかで待ってる」
という、牛丸の切実な叫びが響く。しかし歌詞の内容といい、この楽曲タイトルはやはり銀杏BOYZから来ているのだろうか、とファンの身としては思ってしまう。
しかしその轟音ギターによるサウンドのカッコよさももちろんだが、yonigeの魅力はその歌詞。結成して初めに牛丸が書いた曲の歌詞は
「生理2日目 ケツまで血まみれ」
という内容のものだったということだが(内容自体は引いてしまいがちだがちゃんと韻を踏んでるのは結成時点でさすがである)、
「三角公園でゲロを吐く最後」
というこれまでに他の誰も歌わなかったような歌詞がポップなメロディに乗った時、このメロディにはこの歌詞しかない!(逆もまた然り)と思わされるあたり、牛丸のソングライティング能力のあまりの高さに驚かされる。
「こんな週末にふさわしい曲を」
と一言言って「バッドエンド週末」を演奏したりと、このツアーが長かったということなどは話せど、基本的にはMCほぼなしで曲を連発していく。前回見た時はMCをしていたごっきんもこの日はMCせず。
中盤には「さよならアイデンティティー」でさらにエモさを加速させると、このツアーとアルバムのタイトルになっている
「かたつむりになりたい」
というフレーズが歌われる「あのこのゆくえ」と続く。そのフレーズだけだとただ単にシュールな歌詞だが、そのあとに
「男も女もない」
という、恋に破れるがゆえにかたつむりの生態に憧れるというフレーズが続くことによって、別れのラブソングにしてしまうという手腕は見事としか言いようがない。
「世間体なんてクソくらえ」
というサビの最後のフレーズでは牛丸が世間に対して中指を突き立てる。
サウンド的にはフェスなどで盛り上がるタイプの高速四つ打ちと言ってよく、実際にこの日唯一客席のミラーボールが輝いた「アボカド」はその面白すぎる歌詞を聴きながらだと全く踊れない。実際に客席は満員とはいえほとんど身動きを取らない人たちばかりだった(それは「恋と退屈」や「さよならアイデンティティー」などのアッパーな曲でもそうだった)が、もっと広い会場でライブをやるようになったらこの状態は一変するような気がしている。かつてチャットモンチーがデビュー直後は全く客席が身動きしなかったのが、ブレイク後はモッシュが起こるくらいになっていたように。
この日は2マンかつyonigeがメインということで珍しいロングセットであったためか、曲のアウトロと次の曲のイントロを繋げるようにアレンジした箇所も多々あったのだが、「アボカド」からkaichiが四つ打ちのキックを鳴らし続けてごっきんのベースが加わって始まった「バイ・マイ・サイ」、日記のようなショートチューン「最近のこと」と、エモさよりも切なさを強く感じさせる曲が続くと、
「45分ってなげーなーって思ってましたけど、やってみたらあっという間で。次で最後の曲です」
とまだ持ち曲が極端に少ないため、早くも最後の曲へ。
「バッドエンドを望むでもなく、ハッピーエンドにうんざりするでもなくー」
と言って軽快に慣らされたのは「トラック」。「かたつむりになりたい」の最後に収録されている曲だが、これまでのほとんどの曲が一人称の別れの曲という牛丸のパーソナルな歌詞ばかりだったのが、この曲はまるで少年が主人公の架空の物語のよう。そんな曲が最新作の最後に収録されているという事実が、これからのこのバンドのさらなる幅と聴かれる層の広がりを予感させる。これだけ独創的な歌詞が書ける牛丸が違うタイプの歌詞を書くとどうなるのか、楽しみでならない。
「バッドエンドでもハッピーエンドでもいい。また君に会えたら!」
という最後の牛丸の言葉がこのバンドの姿勢の全て。
一転してアンコールでは再び轟音ギターのサウンドが別れを告げる「さよならバイバイ」。
「さよならバイバイサンキュー 君のことは忘れないし」
というフレーズがかつて愛した人に対してのようでもあり、この日この会場にいた人に対して歌われていたかのようだった。
ついついこうしたバンドのことを語る際には使ってしまいがちだが、エモいと一言で言うと安っぽく感じてしまう。でもやはりyonigeは曲、歌詞、サウンドというバンドの音楽を構成するすべての要素がエモい。見た目は今時のギャルみたいな2人組だけど、すべての「死に損ない」のために鳴るこのギターロックが大きなステージで響く日も近い。
そしてそのエモさがSEに使っているThe SALOVERSの影響によるものだとしたら、彼らの音楽を愛していたものにとってこれ以上嬉しいことはない。
1.センチメンタルシスター
2.恋と退屈
3.最終回
4.サイドB
5.バッドエンド週末
6.さよならアイデンティティー
7.あのこのゆくえ
8.アボカド
9.バイ・マイ・サイ
10.最近のこと
11.トラック
encore
12.さよならバイバイ
アボカド
https://youtu.be/F3tnfgZhJME
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