「弱虫のロック論2(仮)」リリースパーティー 出演:奥田民生 / NICO Touches the Walls @豊洲PIT 10/4
- 2016/10/05
- 12:04
音楽評論家の平山雄一氏が著作の第2弾を発表するということで、合わせてライブイベントを開催。前回はアジカンと奥田民生という組み合わせだったが、今回はNICO Touches the Wallsと奥田民生という、実に前回と近いような組み合わせ。(所属レコード会社は3組とも同じ)
会場の豊洲PITには前半分が椅子が用意されており、前は椅子席、後ろはスタンディングという変則的な客席の構成。入場時にはしっかり平山氏の著作をプレゼントされるというのは前回の時と同じだが、スクリーンに平山氏が普段からインタビューしているアーティストのコメントが映し出されるのだが、この日出演する2組に加え、大橋トリオやGLIM SPANKY、BRADIO、ONIGAWARAという幅広い面々の中、前回のイベントの時にも映像コメントで出演したものの、風の強い屋外で撮影したために何を言っているか全くわからなかったMISIAは今回はコメントだけで映像はなし。
・奥田民生
最初にステージに登場したのは、主催者の平山雄一。挨拶をしたあとに
「私がスイッチを押すと音が流れて、奥田民生さんが出てきます」
と言ってSEを鳴らすと、いつものようにハット、サングラス、ワークシャツという三種の神器を身にまとった奥田民生が登場。キャリア的には大先輩だが先攻である。
周りにギターが何本か置かれた椅子に座ると、軽く挨拶してから「野ばら」を弾き語り。この日は全編アコギの弾き語りという数ある奥田民生の活動スタイルの中で最もシンプルな形。
「最近はユニコーンのツアーやってるから、ソロの曲を忘れてしまってる(笑)」
と笑わせつつ、本当に曲前にギターのコード進行をチェックしてから曲に入る。そうして練習している割にはやはりギターはもちろん、歌も非常に上手いというか、安定感がずば抜けている。それはキャリアを積んできたのはもちろん、飄々としていながら自身のコンディションに誰よりも気を使っているからであろう。
「花になる」「MOTHER」というソロでの代表曲というような曲から、「たったった」「息するように」という渋めの曲まで、
「ダラダラとやっていきます」
とあくまで自分のペースを守りながらのライブ。1時間という持ち時間が長いと感じているからか、やたらと時計を気にしては「まだ10分くらいしか経ってない(笑)」と口に出していた。
前半はひたすらに奥田民生の歌とギターに聴き入っていた客席側も、「ロボッチ」からは手拍子などをしたりと、徐々に聴いているだけの状態から盛り上がりを見せていくが、歌詞を間違えてしまったらしく、
「歌詞間違えないやつなんてだいたい口パクですよ(笑)」
と民生節を炸裂させ、シンプルかつストレートな「The STANDARD」から、客席からリクエストが上がった「メリハリ鳥」まで披露。
「我ながらタイトルがダサい!(笑)なに「メリハリ鳥」って(笑)
でもタイトルダサくても曲はいいですから。逆よりはいいでしょ。タイトルがかっこ良くて曲がダサいよりかは(笑)」
と自虐して爆笑を起こすと、「これもタイトルが意味わからない曲」という「イージュー★ライダー」で
「Aメロからお願いします!」
と呼びかけてほぼ全編観客に歌を任せると、大きな合唱が起こり、最後は自身が大ファンの広島カープが優勝したことを喜びながら「風は西から」を歌って終了し、観客の歓声に両手でピースして応えながらステージから去って行った。
全編弾き語りだと少し眠くなったり飽きたりしてしまうこともあるが、そのスタイルだからこそのMCの多さにより、終始笑いが絶えないライブだった。そしてそのシンプルなスタイルだからこそ、奥田民生が本当に歌とギターが上手いということがよくわかる。それはユニコーンのライブを見るよりもこうして弾き語りを見る方がわかりやすいはず。
1.野ばら
2.解体ショー
3.花になる
4.たったった
5.MOTHER
6.息するように
7.ロボッチ
8.The STANDARD
9.メリハリ鳥
10.イージュー★ライダー
11.風は西から
イージュー★ライダー
https://youtu.be/Mg7rtAWKdok
・NICO Touches the Walls
転換中には普段インタビューを行う側である平山雄一氏が女性ラジオDJから逆にインタビューを受ける。現在の音楽のターニングポイントとして、東日本大震災を挙げ、「震災以降、歌詞が長くなった」と言っていたのは実に納得のいくところ。
そして後攻のNICO Touches the Walls。メンバーがサラッと登場すると、古村のギターが従来のアレンジとは全く違う深遠な空気を作り上げ、光村がそれに合わせてサビをそのアレンジで歌う「ローハイド」からスタート。
「準備オーライ 準備オーライ」
という歌詞がライブの始まりを告げるが、原曲とは全く違うアレンジなだけにイントロの段階ではなんの曲かわからなかったが、対馬と坂倉のリズム隊の駆け抜けるようなリズムはこの曲のMVのメンバーの姿を彷彿とさせる。
続いてはまさかの「anytime,anywhere」という今となっては実にレアな選曲。しかし今のメンバーの状態と技術でこの曲を演奏するとこうなります、というのを示すかのように、ややジャジーなリズムを取り入れた、まるで曲自体が子供から大人に育ったかのような進化を見せている。
照明が鮮やかな最新カップリング曲「BAD ROBOT」はライブで聴くとかなり踊れるタイプの曲であるということがよくわかるが、夏フェスではひたすらに代表的シングル曲を連発していたのとは全く異なるセトリで、ニコのファンにはたまらない選曲。そうしたセトリになった理由を光村が
「平山さんにリクエストをいただいて。最近ライブでやってないような曲ばかりリクエストしていただいたんですけど(笑)、半分はそれに応えつつ、半分は応えないで、という感じでお送りしたいと思います」
と語り、
「次はリクエストに応えます」
と言って演奏されたのは初期の名曲バラード「梨の花」。イントロから悲鳴のような歓声をあげるファンもいたくらい人気の高い曲。自分が初めてこのバンドのライブを見た、インディーデビュー直後から、まだ音源化されていなかったこの曲はよくライブでやっていた。その頃からバンド随一のバラードだったが、メタファーを駆使して直接的かつ単純な表現にしないラブソングにするという光村らしい歌詞はこの頃からすでに培われていたが、そうした技術を10代の頃からすでに持っていたという事実に改めて驚かされる。
当時はまだ若いのに渋くて深い、でもポップというイメージのバンドだったが、やはりこういうサイドのニコも素晴らしいと思うし、今聴くとまた当時とは違って聴こえてくる。
さらに「ページ1」というこれまた意外な選曲が続くが、こちらも原曲よりさらに跳ねるようなリズムにアレンジされており、曲の持つ明るい空気をさらに引き出している。ライブでおなじみの曲はもちろん、こうした滅多にライブでやらない曲すらもこうしてアレンジしまくるということは、普段ライブではやらないけどスタジオとかではいろんな曲をアレンジしまくってみんなで遊んだりしているんだろうか、と想像してしまう。
すると光村と古村の間にマイクスタンドがセッティングされ、期待が高まる中登場したのは、やはり奥田民生。自身のライブでは使わなかったレスポールを弾きながら、「手をたたけ」をコラボ。メロでは光村とボーカルを分け合いながら、サビではともに歌うのだが、弾き語りでその歌唱力に改めて驚かされた奥田民生に光村も全く負けていない。だからこそ、キャリア的には全く違うが、あくまで対等なコラボになっている。間奏では奥田民生と古村のレスポール同士の激しいギターバトルも展開され、メンバー全員が本当にこのコラボを楽しんでいるのがよくわかる表情。
このコラボに至ったのが、先日光村がユニコーンのツアーを見に行って楽屋に挨拶しに行った時、奥田民生が
「弾き語りだから前座らしく先にやりたい(笑)」
と言ったことに対し、
「じゃあ後にやりますから、なんか一緒にやってください」
と切り出したところ、こころよく「なんでもやるよ」と言ってくれたからと説明し、
光村「この曲を民生さんが歌ってるのを見たことあるんですよ」
民生「うん、この曲はよく知ってるからなんも見なくても歌える」
と言ってもう1曲、矢野顕子「ラーメン食べたい」のカバーでのコラボまで展開される。基本的にはニコがカバーしたアレンジがベースでそこに奥田民生が乗っかるという形だが、さすがに奥田民生もこの曲は慣れているのがよくわかる余裕を感じる。どこかオリエンタルな雰囲気は残しながらもニコなりのロックチューンに変身させ、坂倉と対馬も楽しそうにタイトルのコーラスをしているところも見逃せないが、曲終わりには光村が
「そのシャツください~」
と先輩におねだりすると、
「あげる~」
と即答し、まさしくこの日にしか見れないコラボは終了した。
コラボが終わったことにより、すっかりライブそのものが終わりみたいな空気になりつつあるが、まだニコのライブは続き、ここまでアレンジしまくってきただけに、シンプルなリズムが新鮮に聴こえる新曲「マシ・マシ」を披露。前シングル「ストラト」もそうだったが、このシンプルな曲が続いているのは何かバンドのモードを表すようなものなのだろうか。仮にこうした曲が増えていくとするなら、次のアルバムは過去最高に光村の歌を前面に押し出した内容になりそうな予感がしている。
さすがに終盤はリクエストのレアな曲というわけにはいかず、「マシ・マシ」のアウトロからそのままイントロにつながる「天地ガエシ」でスタンディングの観客はもちろん、椅子席の観客も立ち上がって飛び跳ねる中、ラストの「THE BUNGY」では間奏でメンバーのソロ回しを展開。強烈なギターソロを弾く古村、ベースなのにまるでギターのようにメロディを弾く坂倉、曲にさらに勢いを与える対馬、そして最後まで声の伸びやかさに全く変わりがない光村とメンバーそれぞれが自身の持ち味を存分に発揮して本編は終了した。
やや長めの転換を経ると、ステージにはまたしても奥田民生用のマイクスタンドが。ということはアンコールでもコラボをするということなのだが、登場したメンバーは先ほど光村が欲しいと言っていた、奥田民生のワークシャツを着て登場。しかもそれぞれ胸に奥田民生直筆による名前を書いてもらっている。(転換が長かったのはそのため?)
そんなメンバーからしたら嬉しくてしょうがないという状態で最後にコラボしたのは、光村が大好きだという奥田民生「息子」。これも光村と奥田民生がメロを分け合い、サビは2人で歌うのだが、ボーカルのタイプは全く違うのに、光村の歌唱には全く違和感がない。スピッツやGRAPEVINEからの影響を強く感じるだけに、あまりユニコーンや奥田民生の影響は感じられることは少ないが、奥田民生の作ってきた音楽がこのバンドの血肉になっているということが実によくわかるコラボだった。おそらくこの曲をカバーするのは今回だけだと思われるが、そのためにこの曲を演奏できるようになったバンドはやはりさすが。しかし奥田民生カバーアルバムでこの曲はチャットモンチーがカバーしていたが、数々の名曲がある奥田民生の中でこの同世代のバンドがこの曲をフェイバリットに挙げているというのは、何かあるんだろうかと考えたくなってしまう。
前回のこのイベントの時もびっくりしたのだが、主催の平山雄一氏はこれまでに5000本以上のライブを見てきたらしい。音楽評論家という職掌柄なれど、ケタが違うし、自分なんぞまだまだ甘すぎる。でもいつか自分が還暦を超えた時、少しでもそこに近づけるような人生であったら、とも思う。
1.ローハイド
2.anytime,anywhere
3.BAD ROBOT
4.梨の花
5.ページ1
6.手をたたけ w/奥田民生
7.ラーメン食べたい w/奥田民生
8.マシ・マシ
9.天地ガエシ
10.THE BUNGY
encore
11.息子 w/奥田民生
手をたたけ
https://youtu.be/MTcqIgVBfuk
Next→ 10/9 忘れらんねえよ @Zepp DiverCity
会場の豊洲PITには前半分が椅子が用意されており、前は椅子席、後ろはスタンディングという変則的な客席の構成。入場時にはしっかり平山氏の著作をプレゼントされるというのは前回の時と同じだが、スクリーンに平山氏が普段からインタビューしているアーティストのコメントが映し出されるのだが、この日出演する2組に加え、大橋トリオやGLIM SPANKY、BRADIO、ONIGAWARAという幅広い面々の中、前回のイベントの時にも映像コメントで出演したものの、風の強い屋外で撮影したために何を言っているか全くわからなかったMISIAは今回はコメントだけで映像はなし。
・奥田民生
最初にステージに登場したのは、主催者の平山雄一。挨拶をしたあとに
「私がスイッチを押すと音が流れて、奥田民生さんが出てきます」
と言ってSEを鳴らすと、いつものようにハット、サングラス、ワークシャツという三種の神器を身にまとった奥田民生が登場。キャリア的には大先輩だが先攻である。
周りにギターが何本か置かれた椅子に座ると、軽く挨拶してから「野ばら」を弾き語り。この日は全編アコギの弾き語りという数ある奥田民生の活動スタイルの中で最もシンプルな形。
「最近はユニコーンのツアーやってるから、ソロの曲を忘れてしまってる(笑)」
と笑わせつつ、本当に曲前にギターのコード進行をチェックしてから曲に入る。そうして練習している割にはやはりギターはもちろん、歌も非常に上手いというか、安定感がずば抜けている。それはキャリアを積んできたのはもちろん、飄々としていながら自身のコンディションに誰よりも気を使っているからであろう。
「花になる」「MOTHER」というソロでの代表曲というような曲から、「たったった」「息するように」という渋めの曲まで、
「ダラダラとやっていきます」
とあくまで自分のペースを守りながらのライブ。1時間という持ち時間が長いと感じているからか、やたらと時計を気にしては「まだ10分くらいしか経ってない(笑)」と口に出していた。
前半はひたすらに奥田民生の歌とギターに聴き入っていた客席側も、「ロボッチ」からは手拍子などをしたりと、徐々に聴いているだけの状態から盛り上がりを見せていくが、歌詞を間違えてしまったらしく、
「歌詞間違えないやつなんてだいたい口パクですよ(笑)」
と民生節を炸裂させ、シンプルかつストレートな「The STANDARD」から、客席からリクエストが上がった「メリハリ鳥」まで披露。
「我ながらタイトルがダサい!(笑)なに「メリハリ鳥」って(笑)
でもタイトルダサくても曲はいいですから。逆よりはいいでしょ。タイトルがかっこ良くて曲がダサいよりかは(笑)」
と自虐して爆笑を起こすと、「これもタイトルが意味わからない曲」という「イージュー★ライダー」で
「Aメロからお願いします!」
と呼びかけてほぼ全編観客に歌を任せると、大きな合唱が起こり、最後は自身が大ファンの広島カープが優勝したことを喜びながら「風は西から」を歌って終了し、観客の歓声に両手でピースして応えながらステージから去って行った。
全編弾き語りだと少し眠くなったり飽きたりしてしまうこともあるが、そのスタイルだからこそのMCの多さにより、終始笑いが絶えないライブだった。そしてそのシンプルなスタイルだからこそ、奥田民生が本当に歌とギターが上手いということがよくわかる。それはユニコーンのライブを見るよりもこうして弾き語りを見る方がわかりやすいはず。
1.野ばら
2.解体ショー
3.花になる
4.たったった
5.MOTHER
6.息するように
7.ロボッチ
8.The STANDARD
9.メリハリ鳥
10.イージュー★ライダー
11.風は西から
イージュー★ライダー
https://youtu.be/Mg7rtAWKdok
・NICO Touches the Walls
転換中には普段インタビューを行う側である平山雄一氏が女性ラジオDJから逆にインタビューを受ける。現在の音楽のターニングポイントとして、東日本大震災を挙げ、「震災以降、歌詞が長くなった」と言っていたのは実に納得のいくところ。
そして後攻のNICO Touches the Walls。メンバーがサラッと登場すると、古村のギターが従来のアレンジとは全く違う深遠な空気を作り上げ、光村がそれに合わせてサビをそのアレンジで歌う「ローハイド」からスタート。
「準備オーライ 準備オーライ」
という歌詞がライブの始まりを告げるが、原曲とは全く違うアレンジなだけにイントロの段階ではなんの曲かわからなかったが、対馬と坂倉のリズム隊の駆け抜けるようなリズムはこの曲のMVのメンバーの姿を彷彿とさせる。
続いてはまさかの「anytime,anywhere」という今となっては実にレアな選曲。しかし今のメンバーの状態と技術でこの曲を演奏するとこうなります、というのを示すかのように、ややジャジーなリズムを取り入れた、まるで曲自体が子供から大人に育ったかのような進化を見せている。
照明が鮮やかな最新カップリング曲「BAD ROBOT」はライブで聴くとかなり踊れるタイプの曲であるということがよくわかるが、夏フェスではひたすらに代表的シングル曲を連発していたのとは全く異なるセトリで、ニコのファンにはたまらない選曲。そうしたセトリになった理由を光村が
「平山さんにリクエストをいただいて。最近ライブでやってないような曲ばかりリクエストしていただいたんですけど(笑)、半分はそれに応えつつ、半分は応えないで、という感じでお送りしたいと思います」
と語り、
「次はリクエストに応えます」
と言って演奏されたのは初期の名曲バラード「梨の花」。イントロから悲鳴のような歓声をあげるファンもいたくらい人気の高い曲。自分が初めてこのバンドのライブを見た、インディーデビュー直後から、まだ音源化されていなかったこの曲はよくライブでやっていた。その頃からバンド随一のバラードだったが、メタファーを駆使して直接的かつ単純な表現にしないラブソングにするという光村らしい歌詞はこの頃からすでに培われていたが、そうした技術を10代の頃からすでに持っていたという事実に改めて驚かされる。
当時はまだ若いのに渋くて深い、でもポップというイメージのバンドだったが、やはりこういうサイドのニコも素晴らしいと思うし、今聴くとまた当時とは違って聴こえてくる。
さらに「ページ1」というこれまた意外な選曲が続くが、こちらも原曲よりさらに跳ねるようなリズムにアレンジされており、曲の持つ明るい空気をさらに引き出している。ライブでおなじみの曲はもちろん、こうした滅多にライブでやらない曲すらもこうしてアレンジしまくるということは、普段ライブではやらないけどスタジオとかではいろんな曲をアレンジしまくってみんなで遊んだりしているんだろうか、と想像してしまう。
すると光村と古村の間にマイクスタンドがセッティングされ、期待が高まる中登場したのは、やはり奥田民生。自身のライブでは使わなかったレスポールを弾きながら、「手をたたけ」をコラボ。メロでは光村とボーカルを分け合いながら、サビではともに歌うのだが、弾き語りでその歌唱力に改めて驚かされた奥田民生に光村も全く負けていない。だからこそ、キャリア的には全く違うが、あくまで対等なコラボになっている。間奏では奥田民生と古村のレスポール同士の激しいギターバトルも展開され、メンバー全員が本当にこのコラボを楽しんでいるのがよくわかる表情。
このコラボに至ったのが、先日光村がユニコーンのツアーを見に行って楽屋に挨拶しに行った時、奥田民生が
「弾き語りだから前座らしく先にやりたい(笑)」
と言ったことに対し、
「じゃあ後にやりますから、なんか一緒にやってください」
と切り出したところ、こころよく「なんでもやるよ」と言ってくれたからと説明し、
光村「この曲を民生さんが歌ってるのを見たことあるんですよ」
民生「うん、この曲はよく知ってるからなんも見なくても歌える」
と言ってもう1曲、矢野顕子「ラーメン食べたい」のカバーでのコラボまで展開される。基本的にはニコがカバーしたアレンジがベースでそこに奥田民生が乗っかるという形だが、さすがに奥田民生もこの曲は慣れているのがよくわかる余裕を感じる。どこかオリエンタルな雰囲気は残しながらもニコなりのロックチューンに変身させ、坂倉と対馬も楽しそうにタイトルのコーラスをしているところも見逃せないが、曲終わりには光村が
「そのシャツください~」
と先輩におねだりすると、
「あげる~」
と即答し、まさしくこの日にしか見れないコラボは終了した。
コラボが終わったことにより、すっかりライブそのものが終わりみたいな空気になりつつあるが、まだニコのライブは続き、ここまでアレンジしまくってきただけに、シンプルなリズムが新鮮に聴こえる新曲「マシ・マシ」を披露。前シングル「ストラト」もそうだったが、このシンプルな曲が続いているのは何かバンドのモードを表すようなものなのだろうか。仮にこうした曲が増えていくとするなら、次のアルバムは過去最高に光村の歌を前面に押し出した内容になりそうな予感がしている。
さすがに終盤はリクエストのレアな曲というわけにはいかず、「マシ・マシ」のアウトロからそのままイントロにつながる「天地ガエシ」でスタンディングの観客はもちろん、椅子席の観客も立ち上がって飛び跳ねる中、ラストの「THE BUNGY」では間奏でメンバーのソロ回しを展開。強烈なギターソロを弾く古村、ベースなのにまるでギターのようにメロディを弾く坂倉、曲にさらに勢いを与える対馬、そして最後まで声の伸びやかさに全く変わりがない光村とメンバーそれぞれが自身の持ち味を存分に発揮して本編は終了した。
やや長めの転換を経ると、ステージにはまたしても奥田民生用のマイクスタンドが。ということはアンコールでもコラボをするということなのだが、登場したメンバーは先ほど光村が欲しいと言っていた、奥田民生のワークシャツを着て登場。しかもそれぞれ胸に奥田民生直筆による名前を書いてもらっている。(転換が長かったのはそのため?)
そんなメンバーからしたら嬉しくてしょうがないという状態で最後にコラボしたのは、光村が大好きだという奥田民生「息子」。これも光村と奥田民生がメロを分け合い、サビは2人で歌うのだが、ボーカルのタイプは全く違うのに、光村の歌唱には全く違和感がない。スピッツやGRAPEVINEからの影響を強く感じるだけに、あまりユニコーンや奥田民生の影響は感じられることは少ないが、奥田民生の作ってきた音楽がこのバンドの血肉になっているということが実によくわかるコラボだった。おそらくこの曲をカバーするのは今回だけだと思われるが、そのためにこの曲を演奏できるようになったバンドはやはりさすが。しかし奥田民生カバーアルバムでこの曲はチャットモンチーがカバーしていたが、数々の名曲がある奥田民生の中でこの同世代のバンドがこの曲をフェイバリットに挙げているというのは、何かあるんだろうかと考えたくなってしまう。
前回のこのイベントの時もびっくりしたのだが、主催の平山雄一氏はこれまでに5000本以上のライブを見てきたらしい。音楽評論家という職掌柄なれど、ケタが違うし、自分なんぞまだまだ甘すぎる。でもいつか自分が還暦を超えた時、少しでもそこに近づけるような人生であったら、とも思う。
1.ローハイド
2.anytime,anywhere
3.BAD ROBOT
4.梨の花
5.ページ1
6.手をたたけ w/奥田民生
7.ラーメン食べたい w/奥田民生
8.マシ・マシ
9.天地ガエシ
10.THE BUNGY
encore
11.息子 w/奥田民生
手をたたけ
https://youtu.be/MTcqIgVBfuk
Next→ 10/9 忘れらんねえよ @Zepp DiverCity
忘れらんねえよ Zeppワンマン 「僕とあなたとあんたとお前のデカいステージ」 @Zepp DiverCity 10/9 ホーム
a flood of circle / Bentham A FLOOD OF CIRCUS大巡業 2016 @新代田FEVER 10/1