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フランス滞在(3)-国際哲学コレージュ・セミナー 公式HP映画「哲学への権利――国際哲学コレージュの軌跡」

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フランス滞在(3)-国際哲学コレージュ・セミナー

2011年3月24日および28日、パリ批評研究センターにて、国際哲学コレージュのセミナー「哲学の(非)理性的建築としての大学」が開催された。昨年、ディレクターに選出されてから初のセミナーで、初回は40名ほど、2回目は15名ほどの聴衆が集まった。

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冒頭で、国際哲学コレージュと日本の関わりに言及した。1983年10月にコレージュが創設された直後に、デリダは日本を訪問した。彼は中村雄二郎氏に依頼し、翌11月に彼の講演「『場所の論理』と共通感覚」が実現した。初の海外研究者の催事にもかかわらず、会場にコレージュ関係者はほとんどおらず、デリダはとても失望したという。今期のディレクター構成は外国人13人中、アジア人は私一人だけで、西欧のディレクターばかりだ。私としては、東アジアへとコレージュの活動を展開させたいと考えている。

初回のセミナーでは、90年代以降の日本の大学の現状を説明した上で、近年の自分の活動を紹介し、最後に今後の研究計画の展望を概観した。

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これまで30分程度のフランス語の発表は何度も経験してきたが、今回、フランス語で二時間のセミナーを担当するのは初めて。日本の大学では90分なのに、不自由なフランス語で二時間も話し続けることなどできるのだろうか、と思っていた。幸い二時間話し続けることはできたが、その内実は決して満足できるものではない。時間が経つにつれて、精神的・体力的に余裕がなくなり、勢いが衰えていった。来年度のセミナーに向けて大いに改善するべき課題である。

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28日は藤田尚志(九州産業大学)氏を招いて、発表「条件付きの大学」をしてもらった。藤田氏は巧みなフランス語でフランスの大学についての制度的考察をおこない、デリダ『条件なき大学』への批判的コメントを寄せた。藤田氏の余裕のある話し方とその充実した議論からは大いに学ぶことがあった。あらためて感謝申し上げる次第である。

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初回には日本人・韓国人の留学生が多数詰めかけた。アジア系の研究者がフランスの公的研究機関でポストを得て、セミナーを開催しているのはとても稀な事例で、ひとつのロールモデルとして何かを感じてもらえればと思っている。また、同じ日本人研究者がどの程度のフランス語で、どの程度の議論ができるのかを観察することは、留学生にとって参考になる機会ではないかと思う。しかし、2回目のゼミでは日本人・韓国人の留学生はほとんどいなかった。初回の方は、両者の懇親会も開催されたため、なかば動員された形で参加者が多かっただけなのだろう。そう勘ぐりたくなるほど、参加者数の落差は圧倒的だった。日本人・韓国人の若手研究者は国際的な舞台でどのように活躍するべきか。敢えて言うと、2回目のゼミでの彼らの不参加状況を見て、彼らの研究活動の国際的な意識の低さを目の当たりにした気がして、いささか落胆した夜だった。
[ 2011/03/28 21:20 ] 報告・取材記 | TB(0) | コメント(-)