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YG性格検査(矢田部ギルフォード性格検査)の内容と解釈法を詳しく解説

2016.09.01.Thu.18:09
YG性格検査(通称「ワイジー」)は心理学における代表的な質問紙法による性格検査の1つです。

ちょっと前にホンマでっかTVで取り上げられた性格分類の元となっているようで、ここに来て知名度がまた上がっているみたいです。

その際はディレクター、ブラックリスト、カーム、エキセントリック、アベレージという5つの分類をしていました。


今回はそんな話題のYGについて解説していきたいと思います。



■YG性格検査の概要


まずは基本的な情報を引用します。

“ギルフォードの性格検査を矢田部達郎が日本人用に標準化した性格検査であり、日本で最も多く使われている。120項目で12の性格特性を測定する。また、測定結果で5つの類型に分類することも可能である。はい、いいえ、どちらでもない、の3件法である。MMPIのように妥当性尺度がないため、回答の歪みを判断できないため、妥当性に問題がある。”
(臨床心理士指定大学院対策 鉄則10&キーワード100 心理学編 (KS専門書)より)


YGは小・中・高・一般で標準化されていて、日本では学校現場や仕事現場、臨床現場などでとても良く用いられます。


この日本ではという所がくせもので、実はこのYG性格検査は国際的にはマイナーです。

YGが普及してきたのは文献を見る感じだと1980年代初めで、このころはまだビッグファイブの質問紙であるNEO-PI-Rもありませんでした(NEO-PI-Rは1991年刊行)。
※ビッグファイブについてはこちら
性格を表す5つの特性 ビックファイブ -特性論2-

なんでもこの業界作っちゃったもん勝ちらしく、いい感じの性格検査がまだ出そろっていないころに標準化して世に送り出したため、普及したみたいです。


120項目という割合少ない項目数で12の特性を測定できるところ、特性論でありながら類型論的に解釈できるところ、あるいは普及した人の手腕が高かったのかわかりませんが、とにかく良く使われます。

※特性論についてはこちら
適性検査で使われる性格の捉え方 -特性論1-


一方で問題点も多く指摘されています。一例としては

・研究には使わない方が良い(国際的にマイナーのため)
・意図的な反応歪曲に弱い(わざと望ましそうな方向に回答されてもそれを特定できない)。
※一応の対策としては、この検査は本来検査者が項目を読み上げて回答させる強制速度法というやり方ではある。
・因子の妥当性が低い(同一因子の項目よりも他の因子の項目と高い相関があるなど)


では測定している内容を見ていきましょう。



■YG性格検査の12因子


YGは12の因子から構成されています。

実際にやるとわかるのですが、この得点は最終的にグラフになるので、視覚的に特徴を捉えることもできます。


1.D尺度(抑うつ性)
悲観的気分や罪悪感などの性質をみる尺度。

2.C尺度(回帰性傾向)
気分の動揺しやすさなど情緒的不安定さの性質に関する尺度。

3.I尺度(劣等感)
自信の欠如や自己への過少評価などに関する尺度。高いと自信過剰といえる。

4.N尺度(神経質)
ちょっとしたことが気になる、心配性などに関する尺度。低いとくよくよしないということ。
ビッグファイブやMPIでもおなじみの尺度。

5.O尺度(客観性のなさ)
ありそうもないことを空想したり、過敏性の性質に関する尺度。低いと客観的で現実的。

6.Co尺度(協調性のなさ)
不信感、不満感のもちやすさに関する尺度。低いと協調性が高い。

7.Ag尺度(攻撃性・愛想の悪さ)
気が短い、衝動的といったことに関する尺度。情緒が安定したうえで高ければ、社会的に積極的で好ましいが、不安定なうえで高ければトラブルを起こしやすい。

8.G尺度(一般的活動性)
仕事の速さ、動作の機敏性、活発さに関する尺度。

9.R尺度(のんきさ)
好刺激性、おとなしくしているのは苦手などに関する尺度。低いとのんきではないということなので、慎重で気難しく、優柔不断といった傾向となる。

10.T尺度(思考的外向)
深く物事を考えない、大雑把、軽率であるかに関する尺度。高いと外向的(雑)、低いと内向的(熟慮する)となる。

11.A尺度(支配性)
社会的指導性、リーダーシップに関する尺度。低いと追従的となる。

12.S尺度(社会的外向)
人付き合いの広さなど、対人関係において社交的かどうかに関する尺度。高いと外向的(社交的)、低いと内向的(非社交的)となる。
ビッグファイブやMPIでもおなじみのビッグツー。



■YG性格検査における類型


YGでは12の下位尺度得点の他に、系統値というものを算出し、5つの類型に分けることができます。

これにはA、B、C、D、E類型というものがあります。

各類型の特徴については以下が参考になります。
http://www.seikakutype.com/free_9_5.html


この類型がホンマでっかTVで取り上げられているもので、例えばB型であればブラックリストタイプ、等のキャッチーな名称を付けて面白く伝えています。


やってみたい方は以下で簡略版を実施できます。
http://psycho.longseller.org/yg.html


とはいえ、類型は典型といわれるバッチリ当てはまるものから、準型混合型(AC型など)といった分類まで様々あり、厳密にやるとTVみたくはいきません。


番組では先生方のいくつかの質問に答える形ですが、実際のYGは自己記入式です。
(裏で事前にやっている可能性もありますが)



■実際の解釈


実際には類型の判断に加えて、6つの集合因子と呼ばれるいくつかの因子をまとめたもののまとまり具合や、飛び抜けて高い得点(突出因子)、因子間の得点に矛盾があるか(矛盾因子)などを総合的に見て所見を作成します。


YGは採用の適性検査として使われることもあるらしいです。


確かにYGは仕事の能力と関係しそうな因子を含んでいますし、病理的というよりは一般的な性格を測定する項目が多いので適用範囲が広いでしょう。


その際は、因子単独で解釈せず、類型や矛盾因子などを総合的に見て判断するのが良いかなと思います。



■まとめ

ホンマでっかでの分類がYGを元にしているというのは出演者の先生本人たちが言っていたのでしょうか。
番組を見てないのでソースがどこかわからないのですが、ぱっと見MPIにも見えます。

YG
※http://ok723.hatenablog.com/entry/2016/01/27/210000より引用


とは言え、おもしろい部分もあるので気軽にやってみるのが良いかもしれません。



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