2007-09-25(Tue)
ロイヤル・コンフリクト(いわゆる「忠誠葛藤」)について
複数の養育環境で育った子どもには、ロイヤルティ・コンフリクト(Loyalty conflicts)、いわゆる「忠誠葛藤」というものがあるの。
日本では、この忠誠葛藤は、離婚家庭の子どもが、どちらの親につくのか迷い、気持ちが引き裂かれる状態をいうのね。
でも、離婚家庭だけではなく、親が育てられない子どもたちも、特定の大人に気持ちを傾け、依存しようとするの。実子家庭や、乳児期からの里親・養親家庭では、実親や里親・養親となると思うの。
養護施設で育ち、特定の職員との気持ちのつながりができる子どももいると思う。小さい頃から施設で育ち、愛着相手がいなくても、たまたま気持ちが向かう職員もいると思うの。それは、施設職員だけでなく、学校の先生ややさしくしてくれた近所の人なのかもしれない。
絆に飢えた子は、日常的なやさしい言葉かけやあいさつさえ、思いを持ってしまうことがある。主たる養育者のいない子どもの哀しさだと思うけど…。
で、日本では里親家庭や施設の子どもの「忠誠葛藤」についての理解が少ないから、海外の検索エンジンで、"loyalty conflicts Foster care"をキーにして検索をかけると、たくさん出てくるのね。
これは、Wisconsin州の「A Series on Adoption and Foster Care Issues(養子縁組と里親養育の問題シリーズ)」というPDF資料だけど、
How Adoption and Foster Care Affect the Family System
養子縁組と里親養育は、家族システムにどのように影響するか
(略)
Loyalty conflicts affect everyone in the family system. The
foster children struggle with divided loyalty between their
birth parents and their foster parents. Foster parents may
feel their loyalty to the needs of the foster children and the
needs of their “own” children often conflict.
忠誠葛藤は、家族システムの全員に影響します。 里子は実親の里親の間の二股の忠誠心と戦います。 里親は、里親家庭の子どもとしての忠誠心と、子ども自身の忠誠心が、しばしばぶつかると感じるかもしれません。
あと、イリノイ(Illinois)州のHPにも、Foster Caregiver In-Service Training(里親養育提供者の実地訓練)と題したPDF資料があったわ。
※それにしても、日本の自治体HPの里親制度の紹介ページは、ろくなものがないわね…ボソッ(-.-)
Module 5 Supporting Relationships Between Children and Their Families (9 hours of training)
Content: This training focuses on helping foster parents learn how to help kids attach to caregivers and at the same time stay loyal to birth families. Caregivers learn about how to prepare and support children for and after visits with the birth family and how to share the parenting role with birth parents.
第5項 子どもと実親家庭との関係性の維持の支援(9時間)
内容:里親家庭の子どもが、里親(caregivers)と同時に出生家族に忠誠を持たせる方法を学ぶトレーニングに焦点をあてています。 里親(caregivers)は、出生家族との訪問の後、どのように子供に準備させて、支持するか、そして、どのように出生両親と子育ての役割を共有するかに関して学びます。
さて、お勉強はこれくらいにして、ある里親さんから聞いた話。
その方は、里親や施設職員の心得として、
「子どもの前では、実親の悪口、育った施設の悪口、育った里親家庭の悪口を言っていけない」というの。
どんなにひどい環境であったとしても、子どもはその環境で生きてきたのだし、ストックホルムシンドロームにみられる、生存のための過剰な環境適応もあると思うの。
だから、虐待家庭から里親家庭・養護施設に行った子、施設から里親に行った子、里親家庭から施設に戻された子、それぞれに、以前の養育者の悪口を言うということは、その養育環境にいた子ども自身が否定された気持ちになると思うの。
問題ある養育環境で育った子ども本人を否定しないで、
以前の養育環境で身に付いた間違いは正していく。
ようするに、「罪を憎んで人を憎まず」なんだと思うのよ。
子どもに愛情を持ち、子どもの過去は否定しないけど、過去に身に付いた問題行動はやんわりと修正していく。
これが、里親や子どもの養育に関わる大人に求められる態度だと思うの。
あたしはLeiちゃんによくいうの。
「Leiちゃんは大好きだけど、
あたしから離れて一人になろうとするLeiちゃんの行動は嫌い」って。
う~ん、まだ、うまく整理できていないわね。
うまく書けた文章は、我ながら詩的な文章と思う程、オーラがにじみ出るのだけど、論旨の練り込みが足りないわね。また、改めて書きます。ま、中間報告と思って読んで下さいね。
あともうひとつ。
養護施設というシステムで育ったあたしたちが、「子どもたちを施設ではなく里親家庭で育てて欲しい」と主張すると、怒る施設育ちの方がいる。それは、とても判る。
自分の過去を否定された気持ちになるから。
だけど、自分の過去を肯定したら、将来、子どもを施設に入れる親になりかねない。
施設で育った自分は否定しないけど、
子どもが施設で育つことは否定する。
ここが、施設育ちのアイデンティティの確立の難しさなの。これも、やっつけで書くには大変なテーマだから、改めて書くわね。