源氏物語〔14帖 澪標 2〕
源氏物語〔14帖 澪標 2〕「Dog photography and Essay」では、「愛犬もも」と「源氏物語14帖 澪標(みおつくし) の研鑽」を公開してます。須磨の夜に父帝が源氏の夢に現れて以来、父帝の死を悼む源氏は京への帰還を果たした今日、父帝の冥福を祈るべく法要の準備を進め、十月に法華経の八講を催した。参列者は往年の盛況に匹敵するほど集まり、その中で太后は源氏を不遇に追い込むことができなかったことを惜しんだ。帝は院の遺言を思い出し、報いが自身に及ぶ恐れを抱きつつも最近は心穏やかに過ごし、眼疾も快方に向かっていたが、短命を予感しつつ源氏をよく召し、政治についても率直に意見を求めた。宮廷内では源氏の意見が多く採用され、その状況を多くの者が喜んでいた。一方で帝は自身の近い譲位を考えつつも尚侍を心配し、「私がいなくなればあなたはどうなるのか。あなたは私をそれほど思わなかったが私は誰よりもあなたが大事だ」と涙ながらに語った。尚侍も涙を流し、帝の愛情はますます深まるばかりであった。また、帝は「なぜあなたに子ができないのか」と嘆き、尚侍に対する愛情を示しながらも、その未来を憂いた。尚侍はこの深い愛に触れつつ、自分の過去の行いが招いた源氏との事件や自身の不幸を悔いた。翌年二月、東宮の元服が行われた。十二歳の若さながら大人びた美しさを持ち、源氏の面影を二重に映したような姿に世間は称賛したが、母宮は密かに心を痛めた。帝も東宮の立派さを喜び、即位後の心得を懇切に伝えた。同じ月の二十日過ぎに譲位が行われ帝は太后を慰めながら静かに過ごしたい意向を示した譲位により東宮には承香殿女御が生んだ皇子が立ち新しい御代が始まるその日から世間は華やかさに満ち新たな気分が広がる源氏は内大臣に任じられたが摂政への期待には応じず致仕の左大臣がその役を引き受けた源氏は説得を試み大臣は太政大臣となったかつて不遇に見えたその家も栄光を取り戻し子息たちも出世を遂げる中宰相中将は権中納言となりその家族も繁栄した源氏の子も美しさと品位で注目を集め後宮にも出入りする存在となったかつて葵の上を失った悲しみも源氏の栄光によって家から払拭され源氏は老夫婦を訪問し女房たちにも厚く報いた。