―21―
和室の前を通るとき、
昼寝から覚めた妹の泣き声が聞こえた。
走って階段をのぼりきったら、
目の前にいたのは弟。
手にブロックのかたまりを持って立っていた。
「わぁっ!びっくりした。
ねぇ、ほら、みてみてー!ロボット!」
うれしそうに笑う弟を見た瞬間、
僕の体中にあふれていた後悔と不安が
イライラに切り替わった。
さっきまでどうやっても動いてくれなかった口が
勝手に言葉を吐き出す。
「なにそれ?カエル?」
弟の表情が固まる。
「……ロボットだけど、
あんまり上手じゃないかも。
カエルみたい?カエルだったら上手?」
泣いてるような笑ってるような顔になりながら
震える声で弟がきく。
こんなこと言わせたいわけじゃない。
こんな顔見たいわけじゃない。
だめだよ。
いじわるだよ。
わかってるけど。
だけど。
こういう時の僕は弟が泣くまで止まらない。
「変なの。カエルでも下手くそ」
弟の顔がきゅっとすぼんで
「ぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
泣き出す。
さっきまでこらえていた涙をぼろんぼろんこぼしながら、大きな大きな声で。
別に泣き顔を見たからって満足するわけじゃない。
ひとまわり大きくなった後悔を抱えて僕は部屋に飛び込んだ。
ー22へつづくー