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特捜部がホリエモン立件を狙うことの意味は?

 16日のライブドア家宅捜索のニュースには正直、驚いた。証券取引法違反容疑の事件の場合は通常、証券取引等監視委員会がまず動き、その告発を得て東京地検特捜が強制捜査に乗り出すのがオーソドックスなやり方だ。今回はそうではなく、いきなり特捜部が同委員会と合同で電撃的に強制捜査に着手した。そのこと自体、特捜部がホリエモン立件に向けて〝やる気〟十分なことを示しているし、社会部記者たちの間で「前打ち」と呼んでいる事前報道がなかった、つまり特捜部でも証券監視委員会でも保秘が徹底されていたことからも、その本気さが伝わってくる。
 わたしは検察取材を通算で2年半ほど担当したことがある。また特捜部が手がけた数々の事件の公判も、裁判担当記者として取材した。その経験から言えば、特捜部は常にトップを狙う。ホリエモンの事情聴取は時間の問題だと思うし、容疑を否認すれば逮捕は必至だろう。
 気になるのは、小泉首相の構造改革路線の下で、竹中平蔵総務相が通信と放送の融合をぶち上げてから間もない時期の強制捜査の意味だ。自民党公認ではなかったものの、小泉路線と同調して昨年の衆院選に出馬までしたホリエモンは、今や立派に「体制」に認知された存在だと思っていた。
 ロッキード事件やリクルート事件、佐川急便事件や故金丸信自民党副総裁の巨額脱税事件などを手がけてきた東京地検特捜部は、体制内腐敗、なかでも政治腐敗を摘発できる史上最強の捜査機関の名声を欲しいままにし、「体制の守護神」として利権政治家や新興起業人から恐れられた。しかし、特捜部の独立不羈の姿勢も今は昔。鈴木宗男衆院議員の事件が典型かもしれないが、最近では政界や官界などの何がしかの思惑を背に負ったような「国策捜査」が目立っている。
 現政権の構造改革路線がメディアとインターネットの融合に舞台を移そうとしている中で、その華々しい旗手として認知されたはずのホリエモンが特捜部のターゲットになる。その背後に働いているのは、現政権の意向とは別の力学だろうか。やはり従来秩序を維持し新興勢力を排除しようとする体制内エスタブリッシュメントの意向なのだろうか。

追記(1月17日午前)
 17日の朝刊各紙も、紙面でこのニュースを大展開。朝日新聞総合面の「時時刻刻」の見出しは「錬金術に『落とし穴』」と、ライブドアの成長路線をマイナスイメージの用語で表現している。紙面はまだ見ていないが、他紙も大同小異であることは容易に察しがつく。特捜部の見立てを情報として発信するのは必要だが、そこで報道が終わらないように願う。少し時間を置いてからでもいいから、今回の強制捜査に働いた体制内力学をぜひ書いてほしい。

by news-worker | 2006-01-17 02:07 | 社会経済  

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